地中海地方の伝統食は2型糖尿病の発症リスクを半減させる
最新疫学研究情報No.81
スペインのロビーラ・ヴィルジリ大学のジョルディ・サラス・サルバード博士らによる研究チームによって、「オリーブ油やナッツが豊富な地中海地方の伝統食は、心臓疾患の発症リスクが高い高齢者の糖尿病予防に効果がある」との報告がなされました。
今回の研究は、PREDIMED研究(※1)の一環として実施されました。研究者たちは、心血管疾患の発症リスクが高い(*高血圧・高コレステロール・肥満・喫煙などのリスク要因のうち、3つ以上に該当する)55~80歳の男女418人を対象に、下記の3つの食事グループに分けて(無作為割付)、糖尿病の発症率について4年間追跡調査を行いました。
①地中海式の食事(*全粒の穀類・豆類・新鮮な野菜や果物・魚貝などを中心とした地中海地方の伝統食)+ヴァージンオリーブ油(*実を絞ってろ過しただけの良質な未精製油で、これを研究チームが無償で提供)1L/週
②地中海式の食事(*①と同様)+ナッツ(*クルミ・アーモンド・ヘーゼルナッツをミックスしたものを、研究チームが無償で提供)30g/日
③地中海式の食事ではない低脂肪食(*動物性脂肪と植物性油をともに減らした食事)
その結果、3つの食事グループの糖尿病の発症率は、①10.1%、②11%、③17.9%であることが確認されました。①と②の地中海式の食事グループでは、③の低脂肪食グループに比べ、糖尿病の発症リスクが52%も低減したことが明らかになりました。
研究チームは、「今回の研究により、植物由来の良質な油が豊富に含まれている地中海地方の伝統食は、摂取カロリーや運動量に関係なく、糖尿病の発症リスクを低減させることが示された。地中海式の食事を厳格に実行した人ほど、その発症リスクが低下したことも明らかになった」と述べています。
米国糖尿病協会(*本論文の掲載誌『Diabetes Care』の発行元)のスポークスマンは、「今回の研究では、地中海式の食事が、カロリー制限や運動による体重管理をしなくても糖尿病の発症リスクの低減に効果をもたらすことが示唆された。しかしこの結果は、カロリー制限や定期的な運動の重要性を否定するものではない」とコメントしています。
※1PREDIMED研究は、地中海式の食事による心血管疾患の予防効果を明らかにするための大規模臨床試験です。スペイン保健省の支援を受け、国内の17の研究グループが心血管疾患の発症リスクの高い男女を対象に(約9000人が参加)調査を実施しています。これまでの研究で、地中海料理に欠かせないオリーブ油やナッツに含まれる不飽和脂肪酸(オレイン酸やアルファ・リノレン酸など)や抗酸化物質(ポリフェノールなど)が、心臓疾患のリスク要因の改善に効果をもたらすことが確認されています。この研究機関は、地中海式の食事と心臓疾患との関連性だけでなく、その食事による糖尿病・ガン・認知症などの予防効果についても調査しています。
出典
- 『Diabetes Care 2010年10月13日online版』Medline plus より
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