大豆イソフラボン(ゲニステイン)による骨密度への効果
最新疫学研究情報No.20
これまで大豆イソフラボンの一種であるゲニステインが“骨の損失を防ぐ”と言われてきましたが、確かな科学的証拠は示されてきませんでした。しかし、今回イタリアの3つの大学病院の研究チームによって、「ゲニステインの摂取は、閉経後の女性の骨密度を増加させる」との公式な報告がなされました。
研究チームは、骨密度が低め(*大腿骨頸部の骨密度が0.795g/cm2未満)の女性389人(49~67歳)を対象に、「ゲニステインを1日54mg摂取するグループ(191人)」と「プラセボを摂取するグループ(198人)」に分けて、2年間の比較調査を行いました(二重盲検・無作為割付)。どちらのグループも、カルシウム(500mg/日)とビタミンD(400IU/日)を同時に摂取しました。
調査から1年後、ゲニステインを摂取したグループは、骨の損失が止まっただけでなく、骨密度が増加し始めたことが確認されました。一方プラセボのグループは、カルシウムやビタミンDを摂取していたにもかかわらず、骨密度が低下していました。
2年間の追跡調査の結果、ゲニステインを摂取したグループは、腰椎と大腿骨頸部の骨密度がともに増加(+0.049g/cm2,+0.035g/cm2)し、プラセボのグループは、腰椎と大腿骨頸部の骨密度がともに低下(-0.053g/cm2、-0.037g/cm2)したことが明らかになりました。また尿検査や血液検査においても、ゲニステインの摂取は骨の損失を防ぎ、骨を形成する効果があることが確認されました。
※大豆イソフラボンは植物エストロゲンの一種で、女性ホルモンと似た作用をすると言われています。イソフラボンの多量摂取により、子宮組織の異常増殖を引き起こす可能性があることが指摘されていますが、今回の調査では、ゲニステインを摂取した人に子宮内膜の増加は見られませんでした。
またこの調査では、ゲニステインを摂取したグループは、プラセボのグループよりも胃腸障害を起こした人が多く見られました。現段階ではイソフラボンを、サプリメントではなく食品から摂取する方がベターと言えるでしょう。
出典
- 『内科学アナルズ Vol.146 2007年6月19日号』