精製度の高い炭水化物食は女性の心疾患リスクを高める
最新疫学研究情報No.21
オランダのユトレヒト大学Joline W.J.Beulens博士の研究チームによって、「高GI食・高GL食は女性の心疾患リスクを高める」という研究報告がなされました。
研究チームは、GI(グリセミック・インデックス)及びGL(グリセミック・ロード)と心血管疾患発症リスクの関係を調べる前向きコホート研究を9年間にわたって行いました。研究対象となったのは、糖尿病や心血管疾患の持病のない49~70歳のオランダ人女性15714人です。調査期間の間に、556人が冠状動脈性心臓病、234人が脳血管障害を発症しました。
この研究調査の結果、GI・GLはともに心血管疾患(冠状動脈性心臓病)発症に関係する傾向があることがわかりました。高GL食を摂っている女性の心血管疾患発症リスクは、低GL食を摂っている人の1.5倍になりました。また、過体重(BMI≧25)の人の場合は、そのリスクは1.8倍にもなったということです。
研究者は、「この研究は、食事において精製度の低い炭水化物食品を選ぶこと(*例えば、白いパンやコーンフレークなど精製度の高いものではなく、全粒のパンやミューズリ、オートミールがゆなどを選ぶ)が大切であることを示している」と述べています。
この研究は、GI・GLと心疾患の関係を調べたものです。その結果から研究者が指摘するように、正しい炭水化物(精製度の低い炭水化物)を選ぶことが重要です。しかしGI・GLは、食材の調理法や組み合わせによって大きく値が変わるので、絶対的な指標とは言えません。その意味で、この研究にはまだ多くの問題が残されています。
※高GI食、高GL食とは、白パンやクッキー、甘い飲み物のような吸収が早く血糖値を上げやすい精製度の高い炭水化物食品のことです。
※GI(グリセミック・インデックス)とは、摂取した炭水化物が、血糖(グルコース)に変わる速度の指標です。「血糖上昇反応指数」とも言われます。炭水化物が消化され、血糖値が上昇するまでの変化を、純粋グルコース(ブドウ糖)を100として他の食品と比較した数値を言います。
※GL(グリセミック・ロード)とは、GI×1食あたりの炭水化物の量(g)÷100で求められます。1食当たりに含まれる炭水化物の量は食品によって大きな差があります。GIは、実際に摂取した炭水化物の量については考慮されていません。GLは、それを是正するために考え出された指標です。
出典
- 『米国心臓学会誌 2007年7月3日号』