肉や脂肪の多い食事は、皮膚ガンのリスクを増加させる
最新疫学研究情報No.18
これまでの研究では、食事と皮膚ガンの関係は明らかではありませんでしたが、オーストラリアのクィーンズランド医学研究所のTorukiri I.Ibiebele博士の研究チームによって、「肉や脂肪の多い食事は、野菜や果物の多い食事に比べて皮膚ガンのリスクを増加させる」との報告がなされました。今回の研究で、初めて食べ物を組み合わせて摂取した場合の皮膚ガンへの効果が確認されました。(*従来の研究は、単一の栄養素や食品、あるいは数種の 栄養素との因果関係を調査するものでしたが、ここでは食事全体を研究対象にするという画期的な調査となっています)
研究チームは、地域ベースの皮膚ガン研究に参加していた25~75歳の1360人を対象に、食事のパターンと皮膚ガンの関係について調査しました(1992~2002年)。11年間の追跡調査の結果、肉や脂肪の多い食事の摂取は、扁平上皮ガンのリスクを増加させることが明らかになりました。特に皮膚ガンの病歴があり、肉や脂肪を大量に摂取している人は、扁平上皮ガンのリスクがさらに増加しました。一方、野菜や果物の多い食事の摂取は、扁平上皮ガンのリスクを54%低下させることが確認されました。(*研究者によれば、「この効果は緑黄色野菜によるものである」ということです)
Torukiri博士は、「特に皮膚ガンの病歴のある人は、脂肪・加工食品・砂糖の摂取を控えるようにしてください」と述べています。
※扁平上皮ガンは、一般的には日光にさらされる場所に生じる皮膚ガンです。この研究では、基底細胞ガン(最もよく見られる皮膚の悪性腫瘍で、顔に生じることが多い)についても調査されましたが、食事との関連性は見られませんでした。
※この研究以外にも、食事パターンとガンとの関連性が報告されています。ハーバード大学医学校の研究チームによる調査(米国臨床腫瘍学会の年次総会にて2007年6月発表)によれば、西洋型の食事(肉・脂肪・精製穀物・デザートなど)を最も多く摂取している人は、少なかった人に比べて、直腸ガンの再発と死亡率のリスクが4倍も増加することが確認されています。
出典
- 『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション 2007年5月号』