現代西洋医学に対する反省と、ホリスティック医学への志向

現代西洋医学に対する疑問と批判

しかし、そうした圧倒的な力を誇ってきた西洋医学も、20世紀の半ばからさまざまな問題が噴出し、そのあり方に疑問が投げかけられるようになりました。「西洋医学の対症療法で、本当に病気を治すことができるのか?」「ただ単に表面上の異常を取り除くだけで、病気の根本原因を取り除いていないのではないか?」「治療を受けたときは病気が治ったように思えても、しばらくして再発したり、他の症状として現れるようなことはないのか?」「熱心に治療すればするほど、病気を悪化させるようなことはないのか?」「病気の根本原因を取り除かず、問題を先送りしているだけではないのか?」といった疑問の声があがっています。

そして現代西洋医学に対する反省が起こり、それとともに新しい医学が模索されることになりました。こうして新しい医学として「ホリスティック医学」が提起されることになったのです。

代替医療と統合医療

現代西洋医学の治療に対する不信感は、人々を伝統医療や民間医療(民間療法)へと向かわせることになりました。今では国民の半数以上が、西洋医学以外の代替医療(伝統医療や民間療法など)に頼っています。

代替医療(医学)とは、現代西洋医学に属さない医学・医療の総称で、その中には世界各地の伝統医学や民間療法、あるいは西洋医学に反対して成立したさまざまな健康法や健康思想運動などが含まれます。代替医療とは、「西洋医学の唯物的な人間機械論に反対する医学・医療の総称」と言うことができます。

欧米では病気で苦しむ患者の多くが、現代西洋医学の治療を受けながら代替医療を併用するという形で治療を進めています。代替医療の関係者は、自分の治療の優秀さを誇示し、過剰ともいえる自画自賛をしますが、代替医療が万能でないことは、実際の治療結果が端的に示しています。いかに誇大な宣伝をしても、謳(うた)い文句ほど際立った成果を上げているわけではありません。

こうした状況の中で、現代西洋医学の良いところと代替医療の良いところを合体させて新しい医学をつくろうとする動きが現れました。それが「統合医療」です。統合医療では、感染症対策や外科的分野・緊急治療に関しては、無条件に西洋医学を採用します。また、病気の診断・検査に関しても最新の科学技術を積極的に導入し、副作用の少ない西洋医学の治療法を取り入れます。一方、代替医療には人体の自然治癒力を認め、その働きを高める治療を心がけるという自然を尊重する姿勢があります。予防医学的要素・養生法的要素があり、それは西洋医学にはない代替医療の長所です。統合医療は、そうした代替医療の優れた点を積極的に取り入れます。現代西洋医学と代替医療のいいとこ取りをして統合し、より優れた医療を目指そうとするのが「統合医療」なのです。 

統合医療は、現時点における現実的でベストの方法と言えますが、そこには「共通の理論モデル」がないため、関係者各自がバラバラの主張をしているだけで統一した方向性を見いだせずにいます。統合医療は、西洋医学と代替医療の長所を取り入れるという形で、これまでの西洋医学一辺倒のあり方を変えようとする静かな医学改革と言えますが、それはまだホリスティック医学に至る1つのプロセスにすぎません。現在の統合医療は、未来の医学である「真のホリスティック医学」に至る前段階の医学(医療)と捉えるべきものなのです。

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