心の病気の発生原因――ホリスティック精神学の「病理論」

ここではホリスティック精神学の「病理論」について見ていきます。「ホリスティック精神学」では、心の病気の原因をどのように考えているのでしょうか。

心の病気(精神障害)とは――不自然で不調和な心が表面化したもの

現代人の間では、うつ病をはじめさまざまな精神障害が急増していますが、そうした心の病気は、今述べてきたように不自然で不調和な心が表面化したものです。心の病気の原因は―「自然法則(摂理)」から逸脱した不自然で不調和な心にあるのです。

それは心が肉優位(肉主霊従)の状態に陥っている、利己性・自己中心性に支配されている、ということです。その結果、全身を循環する生命エネルギーが枯渇し、心の病気が引き起こされるようになるのです。

※“統合失調症”という心の病気は、一般の精神障害とはその原因も発生メカニズムも全く異なっているため、別枠で扱わなければなりません。それは「霊媒体質」という特殊な体質と、「心の霊的遺伝要素(カルマ)」が関係して発症するものです。統合失調症については、『スピリチュアル・ヒーリングとホリスティック医学』(日本スピリチュアル・ヒーラーグループ発行)で詳しく述べていますので、ここでは省略します。

心の病気の先天性と後天性の問題

これまで長い間、心の病気の「先天性と後天性の問題」が議論されてきましたが、いまだ明確な結論には至っていません。現代西洋医学では、心の病気(精神障害)の原因を遺伝的な要因に求める傾向があり、最近では多くの人々が遺伝子診断を受けるようになっています。“遺伝子信仰”と言ってもいいような風潮が広がりをみせています。一方、心理学者のように、育児教育や社会環境といった後天的な要因が心の病気の原因であると考える人もいます。

現在では、「先天的(遺伝的)要因」と「後天的(環境的)要因」の両方が関係して心の病気が発生するという考え方が主流になってきましたが、その比率については研究者によってさまざまです。先天的要因のほうが大きいとする研究者がいる一方で、後天的要因のほうが大きいと主張する研究者もいます。

遺伝的要因は、それほど大きくない

単一の遺伝子の異常が病気を発症させる“遺伝病(遺伝子疾患)”の存在はよく知られていますが、心の病気(精神障害)の中にも、遺伝的要因が強く関係しているものがあります。現代西洋医学では、発達障害などについても遺伝子の異常に原因があると考え、後天的要因を軽視する傾向があります。

しかし、最近になって一般の病気と遺伝子の関係を調査した結果、遺伝的要因はそれほど大きくないことが明らかにされています。たとえ遺伝子の異常(病気遺伝子)があったとしても、それが直接、病気の発生につながるわけではありません。複数の病気遺伝子にスイッチが入ったとき初めて、病気が発生するようになるのです。ガン関連遺伝子を多く持っているからといって必ずガンに罹(かか)るというものではなく、複数のガン遺伝子にスイッチが入るかどうかが問題なのです。

また最近の研究では、遺伝子はその人間の一生の運命を決定するほど強いものではなく、生まれたあとの環境(本人の考え方・生き方)によって遺伝子の働きが変化すること(エピジェネティクス)も分かってきました。これは環境によって遺伝子のスイッチがオン・オフされる(遺伝子の働きが左右される)ようになることを意味しています。この事実は、病気になるかどうかは生まれつき決定しているとする従来の遺伝子信仰の間違いを、はっきりと示しています。

後天的な影響から生じる“心の病気”――遺伝より、育児教育や人間関係や社会環境の影響のほうが大きい

心の病気(精神障害)の多くが、先天的(遺伝的)要因と後天的(環境的)要因が重なり合って発症しています。しかし重要なことは、心の病気を引き起こす原因としては、先天的要因より後天的要因のほうが、はるかにウエイトが大きいということです。

心の病気の発症には、後天的要因が深く関わっていますが、その中で特に強い影響力を持っているのが“育児教育”と“人間関係”です。人間の心は、生まれた時から触れ合う人間関係(愛情関係)を通して育っていきます。親や家族と触れ合う中で、大切な心の要素である“霊性・人間性・社会性”が養われることになります。育児教育と人間関係は、心の形成に決定的な影響を及ぼします。人間は動物と違って“霊的存在者”であり、他者との愛情関係を通して「心(精神)」を形成していくようになっているのです。

育児教育のプロセスが「自然法則(摂理)」に一致した形で進んでいくなら、子供の心には霊性・人間性・社会性が養われ、健全な心を持った人間として成長していくことができるようになります。育児教育を通して「自然法則」に一致した生活を送る中で、バランスのとれた心が形成されるようになるのです。

現代では、この育児教育という重要なプロセスに問題があって、子供の心が正しく育っていません。異常なケースが多く発生しています。「自然法則(摂理)」に反した間違った育児教育が、子供の心を不自然で不調和なものにし、霊性・人間性・社会性の欠如した偏った人間をつくり出すことになっています。間違った育児教育を受けた子供は、不自然で不調和な心を持ったまま大人になっていきます。それによって、さまざまな心の病気が引き起こされるようになるのです。

“霊的未熟さ”と“人格的未熟さ”が心の病気の根本原因

心の病気(精神障害)は、不自然で不調和な心が表面化したものです。不自然で不調和な心とは、別の言い方をすれば――「霊的成長をしていない心」「子供のままの幼稚な段階にとどまっている心」ということです。それは霊的未熟さ(霊性の欠如)と、人格的未熟さ(人間性・社会性の欠如)を併せ持った心のことなのです。

そうした未熟な心を持った人間は、肉体本能に支配され、最低限の自己コントールさえできません。他人に迷惑をかけても気にせず、他人の心の痛みも分からず、常に自己中心的な考え方をします。現代では、こうした霊的・人格的に未熟な大人が実に多いのです。それが現代人の間に“心の病気”が急増している理由です。

“心の病気”の蔓延は、親と社会と人類全体の霊的・精神的未熟さの反映

不自然で不調和な心は、十分に霊的エネルギー(生命エネルギー)を取り入れることができず、常にエネルギー不足の状態にあります。生命エネルギーが枯渇しているため、外部からストレス(精神的圧力)がかかると、簡単に破綻(はたん)状態に陥ってしまいます。こうして発生するのが“心の病気(精神障害)”です。心の病気の根本原因は、霊的・人格的な未熟さにあります。霊性・人間性・社会性の欠如した未熟な心にストレスが加わることで、心の病気の引き金が引かれるようになるのです。

未熟な心を持った人間が子供を産んで親になっても、子供の心を正しく育てることはできません。社会全体が“物質中心主義”に支配され、皆が「物質的な成功が人生の成功である」と勘違いをしている状況の中で、親は子供に少しでも高い学歴と特別な能力を身につけさせようとします。それが、子供への愛であると錯覚しているのです。こうして育てられた子供は、不自然で不調和な心・未熟な心を持った大人になっていきます。そして今度は、そうした大人が子供をもうけることになるのです。

親と社会と人類全体の霊的・精神的未熟さが、“心の病気”を蔓延させることになっています。

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