心が身体に及ぼす強い影響力――心は身体の健康状態を決める最大の要因

現代医学も認める心と身体の相関関係――「心身相関医学」の誕生

4つの健康条件の中で「心」の影響力が最も強いということは、心の不自然さ・不調和が、身体(肉体)の病気を発生させる最大の要因であるということを意味しています。心の重要性が分からない現代西洋医学では、心と肉体の病気の関係を理解しないどころか、その影響力を頭から無視してきました。しかし、近年になって心と肉体の病気の関係を認めざるをえなくなり、「心身相関医学(心身医学)」という新しい医学の分野が誕生することになりました。

最新の心身医学で、心が肉体の病気を引き起こすメカニズムが明らかにされるようになりました。ハンス・セリエ(*カナダ人生理学者)に始まるストレス研究は年々、進歩発展し、最近では「精神神経免疫学」という新しい心身医学も生まれています。今後、この分野の研究はさらに進歩し、心と肉体の関係がいっそう明らかにされるようになります。それにともない、「心は脳の産物であり、心が肉体に影響を及ぼすことなどない」としてきた従来の唯物的な西洋医学の見解は、根底から否定されるようになっていきます。

現時点ではまだ、現代西洋医学に属する精神医学は、心の異常を“脳の異常”として理解しようとしています。そして“唯物的な治療法(薬物療法)”によって心の異常を治療しようとしています。その一方で、心の異常を“心理療法”によって治療する試みもなされています。しかし、心理療法の分野ではあまり大きな成果を上げることができず、現在も手探り状態の中で治療が進められています。

真のホリスティック医学が明らかにする「心」の強い影響力

スピリチュアリズムによってもたらされた霊的知識を土台とした「真のホリスティック医学」では、心が肉体に及ぼす影響力の強さを明らかにしましたが、現代の精神医学でも今述べたように、ストレス研究に端を発して心と肉体の関係を少しずつ解明してきました。心の状態が全身調節系(自律神経・ホルモン)に影響を及ぼし、さらに生体維持機能(ホメオスターシス・免疫システム・自然治癒力)にも影響を及ぼすというプロセスを通して、心が肉体の健康状態に大きな影響力を持っていることが明らかにされるようになりました。皮肉にも唯物医学である現代医学が、心と肉体の密接な関係を解明することになったのです。

真のホリスティック医学では、「心・食・運動・休養」という4つの健康条件によって自律神経やホルモンといった全身調節系の働きが決まることを示し、人間が健康を手にするためには「調和のとれた健全な心」「正しい食生活」「適度な運動」「十分な休養」が不可欠であることを明らかにしました。また、4つの健康条件は身体に直接的な影響を及ぼしている一方で、身体の内外に生息する微生物との共生関係にも強い影響力を持ち、健康状態を左右していることも明らかにしました。

ホリスティック健康学では、「心・食・運動・休養」の4つの健康条件が人間の健康状態を決定する根本的な要因であることを示しただけでなく、4つの健康条件の中で「心」が最も強い影響力を持っている事実をも明らかにしたのです。

病気の最大の原因はストレス

遺伝病(単一の遺伝子の異常による病気)のように純粋に先天的(遺伝的)要因による病気は、病気全体の中のほんの一部にすぎません。それはむしろ稀(まれ)なケースであって、病気の大部分は後天的(環境的)要因によって発生しています。遺伝的要因が関係している病気であっても、実際に病気が発生するについては、複数の病気遺伝子が活性化することが不可欠です。その病気遺伝子は、心の持ち方や生活習慣といった後天的(環境的)要因によってスイッチが“オン”になったり、“オフ”になることが明らかにされています。

この事実は、たとえ先天的に病気遺伝子を持っていても、オンのスイッチが入らなければ病気は発生しない、ということを意味しています。そのため現在では、「先天的に病気遺伝子を持っているだけでは病気は発生しない」という見解が主流になっています。遺伝的影響は、すべての病気の5%程度にすぎない、というのが定説になりつつあります。病気の発生には、先天的(遺伝的)な影響より、後天的(環境的)な影響のほうが大きいのです。

現在、地球上では「生活習慣病(成人病)」が蔓延(まんえん)していますが、そのほとんどは後天的(環境的)要因によって発生しています。病気の多くが、日常生活における間違った考え方や不健全な生活スタイルによって発生しているのです。自然法則(摂理)に反した不自然で不調和な考え方や生き方から生じるさまざまな“ストレス”――これが病気の最大の原因なのです。

ストレスの中でも特に大きな影響力を持っているのが、心のストレスです。心のストレスとは、不安や恐れ・憎しみ・怒り・悲しみといったマイナスの感情が生みだすもので、それは心を異常な緊張状態に置くことになります。心のストレスの原因は、利己的・自己中心的な考え方や生き方にあります。利他的な考え方をし、物欲に流されることなく霊的・精神的なものを優先するなら、心のストレスはずっと少なくなります。心のストレスは、自分がつくり出すものです。不自然で不調和な考え方や生き方によって自分の首を絞め、健康を害するようになるのです。

現代人は、人間関係や仕事を通して絶えず緊張を強いられています。忙しい生活を送る中で焦りや不満を募らせ、ストレスを溜め込むようになっています。ストレスを上手に解消し、心のバランスを保って生きていくことができればよいのですが、なかなかそうはいきません。多くの人がストレスを抱え、苦痛を感じながら毎日を過ごしています。

長引くストレスが、免疫システムをアンバランスにする

マイナスの感情や過労によって生みだされる心身のストレスが長引くと、“交感神経”の働きが異常に高まり、緊張状態が続くようになります。交感神経は、免疫を司る白血球の1種である“顆粒球”に連動しており、交感神経の働きが高まることで、顆粒球が増加するようになります。それに対し“副交感神経”は、同じく白血球の1種である“リンパ球”に連動しており、副交感神経が活性化されることで、リンパ球が増加するようになります。

健康な人の場合、“顆粒球”と“リンパ球”の比率は、一定に保たれています。顆粒球が約60%、リンパ球が約35%になっています。これが免疫システムが自然界と一体化し、調和している状態です。しかし“交感神経”が過剰に緊張したり、反対に“副交感神経”が過剰に刺激されると、顆粒球とリンパ球の正常な比率が崩れ、どちらかに大きく傾くことになります。それによって免疫システムがアンバランス状態に陥ってしまいます。

自律神経の観点から言えば“ストレス”とは――「交感神経の過剰な緊張状態」を指します。交感神経が過剰に緊張することで免疫システムのバランスが崩れ、その働きが低下して病気が引き起こされるようになります。病気を防ぎ、健康を維持するための免疫システムが弱化することによって、病気が発生するようになるのです。このように考えれば、病気の原因の多くは“ストレス”にあることが分かります。

過剰なストレスから病気が発生

心の影響力の大きさ

心は、生体維持機能に大きな影響を及ぼし、全身の健康状態を左右します。また心は、他の3つの健康条件(食・運動・休養)に働きかけて、それぞれの条件の影響力を決定することになります。こうした状況をトータル的に考慮すると、心が健康に及ぼす影響力は9割にものぼることが分かります。まさに心が、私たちの健康状態を決定しているのです。病気を発生させているのは、私たちの心です。不自然で不調和な心が身体をむしばみ、病気を発生させているのです。

「ホリスティック精神学」は、人間の健康に最も深く関係している「心(精神)」の健全化を図るものです。自然界と調和した心を持つことで、身体を健康にすることを目指しているのです。

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