食生活改善は本当のおいしさを追及するもの・・・“正しい菜食”は決してまずくない

新・菜食主義(新・ベジタリズム)

バランスのとれた健全な食事とは、伝統的な日本食や長寿村の食事であることを述べてきました。食生活の改善とは、こうした食事をモデルにして、それに近づける努力をすることです。ホリスティック食事学が行き着いた“正しい食生活”の内容は――自然と調和した「健全な菜食主義」のことだったのです。つまりホリスティック食事学に基づく食事改善とは、現代栄養学の最新の知識を導入して健全な菜食主義を目指すことなのです。

菜食は、まずい食事か?

さて“菜食主義”などと言うと、ヨーガの行者や、仏教の修行僧などのイメージを思い浮かべるかもしれません。食事の喜びを捨て去った、無味乾燥した食事スタイルのように考えるかもしれません。「菜食主義に戻せ」などと言うと、かなりの人々が「あんなまずいものはイヤ」「病気になってもいいから、おいしいものを食べたい」と言います。ファーストフードに味覚が支配された現代人にとって、“素食・菜食”はとても耐えられない食事のように映るのです。大半の人々は、よほどひどい病気にでもなって、いやおうなく食事改善を強いられないかぎり、菜食など口にすることはないでしょう。(*素食とは、肉類を加えない野菜を中心とした料理、シンプルな普段の食事を言います。)

しかし、こうした考えはすべて間違っています。健康になるために、まずい食事を無理をして食べる必要はありません。食事は私たちの肉体を維持するためのものである以上、十分な栄養素を含んでいることが大切ですが、それだけでなくおいしいものでなければなりません。食事は人間にとって毎日の生活・営みの中心であり、健康と同時に、喜びと楽しみをもたらしてくれるものなのです。“おいしさ”という喜びを与えてくれるものでなければ、よい食事とは言えません。ホリスティック食事学の勧める食事は、決してまずいものではないのです。

健全な身体は、正しい食事がおいしい

ファーストフードの味になれた人間でも、いっとき我慢して食事改善を始めると、食の好みが180度変化するようなことが起こります。それまでおいしいと思っていたものが、おいしくなくなるようなことがたびたび生じます。味覚が健全化して、大好物だったはずの油っこい料理や甘いお菓子・ソフトドリンクなどに、あまり魅力を感じなくなるのです。

私たちの身体は本来、健康にプラスとなるものを“おいしい”と感じるようにつくられています。栄養のあるものにおいしさを感じられなかったり、まずいと思うことは、すでに健全な味覚が失われていることを示しています。感覚がマヒして、正常な反応ができなくなっているのです。肉体が不健康で病的だったりすると、自然と不健全なもの・肉体を弱らせるようなものへと嗜好が傾くことになるのです。

精神的に不健全な人間は、騒がしい人込みや大都会の雑踏、あるいは本能的な欲望を満たしてくれるような歓楽街を好みます。しかしそうした人間も、いつまでも同じ環境にとどまり続けることはできません。やがて耐えられなくなり、無意識のうちに心の休まる環境を求めるようになります。精神的に健全な人であれば、初めから人込みや雑踏を敬遠し、自然と触れ合うことのできる落ち着いた環境を求めます。そこが一番居心地がよいからです。

こうしたことが、身体の健康と味覚の関係についても言えるのです。身体が健康であれば、おのずと体によいものを求め、それをおいしいと感じます。身体が不健康であれば、不健全な食べものがおいしくなります。そして病気になって破綻をきたすまで、次々と体に悪い刺激的な食べ物を求めるようになっていくのです。

味覚革命!

食事改善は、体によい食べ物が自然においしくなり、それを常に欲しくなるようなレベルにまでもっていかなければなりません。これまでの「味覚異常」という習性を断ち切ることは容易ではありませんが―そのためしばらくは、時々の楽しみとして悪いものを食べることがあっても――最終的には、体に悪い食品においしさを感じなくなるところにまで至ることを目標にすべきです。

体によいものが「おいしい!」と感じられる人は、本当に素晴らしい宝を得たと言えます。なぜならその人は、一生を健康に過ごすことができるからです。どれほどお金があっても健康を買うことはできないことを考えれば、まさに人生の宝を得たということになります。それは、親が子供たちに与えることのできる“最高の宝”であることは間違いありません。

これから食事改善に取り組む皆さんに知っていただきたいことは、現代人から見るとあまりにもシンプルで、おいしくなさそうに見える昔の人々の食事も、当時の人々にとっては決してまずいものではなかったということです。彼らの誰もが、おいしい食事を感謝して食べていたはずなのです。もし昔の人々が現代人の食べ物を口にしたなら、きっとあまりのまずさに吐き出してしまうことでしょう。

こうしたことを考えると、現代人の大半、特にグルメ指向を自慢する人々の多くが、実はたいへんな「味覚異常・味覚音痴」であることが分かります。

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