食事改善の3つのステップ

悪い食品を、きっぱりとやめる決心を固める――食事改善の第1ステップ

食事改善の第一歩は、体にとって悪い食品・健康に有害な食品を排除するところから始まります。特に問題の多い食品・有害性の大きい食品は――「きっぱりとやめる」ようにしなければなりません。少し害がある程度のものは後回しにして、明らかに有害度の高いものを真っ先に取り除くようにします。

ところが厄介なことに“有害な食品”のほとんどは、現代人、特に若者や子供たちの好きなものばかりなのです。ハンバーグ・焼肉・ステーキ・から揚げ・フライ・コロッケ・ピザなどの肉料理・高脂肪料理は、まさに病気になるための食べ物です。砂糖たっぷりのケーキやソフトドリンク、添加物だらけのインスタント食品・加工食品なども病気の強力な元凶です。 

これらの有害性の大きい食品を完全に排除しようとすると、大半の人々は1週間の食事の半分以上に穴が空いてしまうことになるでしょう。それは現代人の食事が、いかに有害な食品で埋め尽くされているかということをよく示しています。そして、こうした悪い食品をきっぱりとやめるのが「食事改善の出発点」なのですから、食生活を変えることのたいへんさを実感されるはずです。

しかし、ここで後込みしていては先はありません。第一歩さえ踏み出せない人には、食事改善は無理なのです。これまでどおり自分流に自由にやっていくしかありません。病気への道を歩み続けるのか、思いきって方向転換するのかは、皆さん自身が決めることなのです。

すでにアトピーなどの病気に苦しみ、その治療のために食事改善に踏み出す場合には、有害食品の除去は厳格でなければなりません。一定の治療期間(※6カ月〜1年)は、それらをいっさい口にしない覚悟が必要です。例外をつくってはダメなのです。

アトピー・アレルギーなどでは“悪い食品”を摂った結果が、ただちに身体に現れます。1回の気のゆるみが、何日にもわたって尾を引くことになります。そのため症状がしっかり改善して安定するまで、ひたすら厳格に守っていかなければなりません。

現在、病気や不調のない健康な人が悪いものをたまに摂ることは、さほど問題ではありません。有害な食品も月に1〜2回程度ならば、楽しみとして食べてもいいでしょう。

よい食材を手に入れるルートを確保する――食事改善の第2ステップ

悪い食品を排除したら、次は健康的な食品を積極的に取り入れます。有害な食品に代えて、野菜・豆・海藻・果物・ナッツなど安全で品質のよいものを増やしていきますが、そのためには信頼できる入手ルートを確保する必要があります。農産物・海産物・調味料など良質の食材を、安心して買うことができる店を探さなければなりません。食生活の改善には――「よい食材を確保する」ことが重要な問題となります。

近くにそうした店があればいいのですが、なければ宅配や生協などを利用するといった方法もあります。真剣に探そうとするなら現在では、何らかの信頼できる入手ルートが見つかるはずです。

メニューの立て方(食材の組み合わせ)の原則――メニューづくり3つのルール

食材が準備できたら、メニューづくりに取りかかります。言うまでもないことですが、よい食材を集めたからといって、それだけで優れた食事ができ上がるわけではありません。次は――「食材を、どのように組み合わせるのか」ということが問題となってきます。

食品の組み合わせによって食事全体の栄養バランスが決まりますが、それだけでなくよいメニューであれば、食事のトータル的な力を高めることができます。その反対に食品の組み合わせが悪ければ、食事のすべてを台なしにしてしまうことにもなりかねません。

メニューをつくるに際して、必ず守らなければならない3つのルールがあります。そのルールをしっかり覚え、常にそれを指標としてメニューづくりをします。次に、その3つのルールについて説明していきます。

(1)主食と副食の比率を守る――ルール1

伝統的な食事では例外なく、主食と副食の区別が明確になっています。そしていずれの民族においても、主食の位置は穀類によって占められています。日本人における主食は言うまでもなく“米”です。

「主食」とは文字どおり食事の中心となるものであり、栄養的に優れているだけでなく、毎日食べても飽きない食材でなければなりません。めん類やパンは、いくら好きな人でも食べ続ければ飽きてしまいますが、米はそうではありません。日本人にとって“米”は、毎日おいしく食べられる唯一の食品なのです。そうした理想的な食材である米に麦や雑穀を加えれば、栄養的にも味覚的にも「最高の主食」になるのです。

主食は、食事全体の半分以上(約6割)を占めるようにしなければなりません。主食となる穀類にはカロリー栄養素であるデンプンが多く含まれているため、主食をしっかり摂っていれば、他の悪い食品を食べることができなくなります。また主食だけでかなりの必須栄養素が補給され、栄養バランスの土台ができ上がります。

このように主食によって基本的な栄養素は摂取しますが、不足分は副食によって補います。主食の足らないところを補うのが「副食」の役割です。食事の核である主食と、それを引き立てる副食の組み合わせによって、食事全体のバランスが強化されるようになるのです。

しかし何といっても重要なのは――「主食がしっかりしている」ということです。もし主食が必須栄養素を大きく欠乏させていれば、いくら副食を補っても食事全体の栄養バランスをとることは難しくなります。反対にしっかりした主食が食事の中心的位置を占めていれば、多少副食が貧弱であったり乱れていても、深刻な問題とならずにすむのです。 

欧米型の食事では、主食と副食の区別が明確ではありません。それどころか本来は副食であるはずの肉料理などが、メインディッシュとして食事の中心を占めるようになっています。この点から、すでに大きく狂っているのです。副食であるおかずの方に、より多くの栄養素があると勘違いしている人たちは、「ご飯を減らして、おかずを多く摂れ」などと言いますが、主食の重要性が分かれば―「おかずは残してもいいが、ご飯だけはしっかり食べなさい」ということになるのです。

主食の中には穀類だけでなく、豆や種子も含めます。「豆・種子類」は、本質的には穀類と同じ性質をもった食品だからです。穀類・豆・種子類は、自分たちの種の子孫を残すために必要な栄養素や生命力をすべてその中に備えています。これらが私たち人類に、“天の恵み”として健康と生命力をもたらしてくれることになるのです。

主食とは、単にデンプンという物質的エネルギー源を補給するだけのものではありません。もっと広く、私たちの生命活動を支えるエネルギーの源というようにとらえるべきなのです。その意味で主食には、豆・種子類を含めるのです。

食事の土台を固める主食と、それを補う副食の理想的な比率は――「6:4」です。つまり主食が食事全体の約60%を、副食が約40%を占めるようにするということです。

(2)食材間の比率を守る(「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝類」の比率)――ルール2

さらに私たちの食事は、摂取する食品の種類別に細分化されます。各食品の比率は、穀類が全体の約50%、豆・種子類が10%で、これらが主食を構成し、合わせて60%ということになります。副食40%のうち、30%は野菜・海藻類で、残り10%が魚貝類(動物性食品)という比率になります。つまり「穀類」「豆・種子類」「野菜・海藻類」「魚貝類」の比率は―「5:1:3:1」ということになります。

食卓に並ぶ食品が、こうした比率になっているかチェックしてみましょう。(※1日の食事をとおしてチェックしたとき、食材間の比率は守られているでしょうか。また1週間分の食事は、適正な比率になっているでしょうか。)

(3)植物性食品と動物性食品の比率を守る――ルール3

正しい食事の一番の原則は、「人間の体に適合した食材の組み合わせからなっている」ということです。動物の歯は、それぞれの動物の“食性”に適した形状をしています。ライオンなどの肉食動物は、生肉を食べるのにふさわしい歯をもっています。ゾウなどの草食動物は、草を食べるのにふさわしい歯をもっています。もし、これらの動物たちが自分の歯に合わない食べ物を摂るとするなら、生きていくことはできなくなります。 

こうした観点から見ていくと、私たち人間には、どのような食べ物がふさわしいのかが明らかにされます。結論を言えば人間の歯は――「穀類」と多種類の「野菜類」「果物」などを摂って生きていくようにつくられています。この事実は、人間はもともと植物性食品摂取動物であることを示しています。人間は決してライオンのような肉食動物ではないのです。 

したがって人間が、菜食中心の食事をやめて肉食に偏るならば、健康を損なうことは当然です。まさに現代人は、“肉類過剰”の食生活によって多くの病気を引き起こしているのです。一昔前の栄養学では、「デンプンよりタンパク質を多く摂れ」「米を減らして肉を摂れ」というようなことが言われましたが、それは根本的に間違っています。

人間の歯の構成からすると、植物性食品だけでよいということになります。現在の日本人は、動物性食品の割合をもっと少なくすべきです。日本人は、米や野菜の栽培に適した風土の中で“伝統食”を築いてきました。そこでは植物性食品と動物性食品の摂取比率が――ほぼ「9:1」となっており、圧倒的に植物性食品にウエイトが置かれていたのです。日本の伝統食は完璧なベジタリアンとまではいかなくても、きわめて理想に近い形になっています。伝統食の比率に近づけることが、メニューづくりにおける大切な指針となります。

つまり正しい食事とは――「動物性食品をまったく摂らないか、ほんの少しだけ摂る菜食」ということです。そして長寿村の食事は、まさにこの原則と一致したものになっています。(※動物性食品は多くても10%までということです。)

それに対して大半の現代人が好む欧米型の食事は、植物性食品と動物性食品の比率が大きく逆転しています。

メニューづくりの3つのルールを図示すると、次のようになります。

メニューづくりの3つのルール
食材の比率

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