1.動物性脂肪と植物性油

動物性脂肪の害

牛や豚など陸上動物の脂肪(fat)は、ラードやヘット(牛脂)のように常温では固体です。スーパーに並ぶ牛肉の脂肪が白く固まっているところから、それがよく分かります。またミルクからつくられるバターも固体状です。それに対し、野菜や魚に含まれる油(oil)は液体です。

現代栄養学では、まず「動物性脂肪の害」が指摘されました。常温では固体であるということは、それが溶け出す温度(融点)が高いということです。つまり動物性脂肪は、低い温度では固まりやすい性質をもっているのです。むろん体温が約39℃の陸上動物の体内では支障はないのですが、体温がやや低い人間の体に入ると問題が起きることになります。(※人間の体温は36〜37℃です。)

動物性脂肪は、私たちの血液の粘度を高め、血流を悪化させます。人間の体温が低いために、固体化の方向に向かうからです。動物性脂肪を摂ると、血液の粘度が増し、毛細血管の先端部分に赤血球が行き渡りにくくなります。事実、肉をたくさん食べた後、血液を電子顕微鏡で見ると、赤血球がベタベタとくっつき合っているのが確認されます。血流の悪化が直接観察されるのです。

血流が悪くなるということは、細胞への酸素の供給量が減るということです。実験によれば、動物性脂肪を摂って数時間後には、細胞全体に対する酸素の供給量が20〜30%も減少することがあると言われます。酸素の供給量が減れば、細胞での燃焼効率は低下し、エネルギーの供給量も減ることになります。酸素が運ばれないということは、栄養素も運ばれないということです。

肉を摂ると元気になると思っている人がいますが、本当はエネルギー不足の状態になり、グッタリするということです。肉食はエネルギーを高め、パワフルにするのではなく、逆に活力を奪い去ってしまうのです。肉食の弊害についてはすでに述べましたが、「血流を悪化させる」という問題点もあるのです。

動物性脂肪の過剰摂取は、血液をネバネバにし、中性脂肪やコレステロール(※よく言われる悪玉コレステロール・LDL)を増やします。そして細胞や組織を硬化させ、脳卒中や心臓病などの循環器系疾患を引き起こします。また肥満を招き、糖尿病をはじめ、さまざまな現代病・成人病を生み出します。こうしたことは現在では、一般の人々にもかなり知られるようになっています。

欧米では早くから「動物性脂肪の害」が認識され、肉食を減らす人々が増えてきました。また肉を食べるときは、できるかぎり脂肪をそぎ落とし、赤身の部分だけを食べるようにしたり、牛肉や豚肉ではなく、脂肪の少ない七面鳥を使うなど、意識が変わってきました。

一方、日本ではどうかというと、肉の摂取量はいまだに増加の一途をたどっています。しかも“霜降肉”などという、赤身の中にわざわざ脂肪を散らした肉をありがたがっています。そもそも健康な牛なら、赤身と白身がはっきり分かれるはずです。霜降肉は明らかに病的な肉なのですが、それが異常な高値で売買されています。そして日本人は一様に、口の中でとろけるようにおいしいと、その肉を賛美しています。まさに日本だけの“狂った食習慣”の実態があるのです。

植物性油の害

アメリカでは、動物性脂肪の摂り過ぎが動脈硬化や心臓病を引き起こすことが知られるようになると、人々は植物油へと向かうようになりました。植物油がコレステロールを下げるといった実験結果が発表されると、その傾向は一気に進んだのです。なかには植物油を薬として、スプーンで飲むような人まで現れました。「植物油は健康によい」というある種の神話が、先進諸国の間に広まりました。

そうした情報は日本にも伝わり、植物油ブームが起こり、油料理がひんぱんに食卓にのぼるようになりました。バターに代わってマーガリンが好まれるようになり、植物油が贈答品として多く用いられるようになりました。植物油は体によい、植物油は成人病を防ぐと、誰もが信じていました。

日本に植物油の流行が定着し始めた頃(1981年)、アメリカでは、非常にショッキングな研究結果が発表されました。NCI(アメリカ国立ガン研究所)が20年にわたる研究の末、植物油はコレステロール値や心臓病発生の確率を下げることはなく、それどころか「ガンの発生率を高める」ことを公表したのです。

今まで最高の薬であると思っていたのに、それが心臓病の予防にならないだけでなく、ガンを引き起こす原因であることを知って、アメリカは大混乱に陥りました。その後、このNCIの発表内容は、他のさまざまな研究機関によって確かめられました。そしてFDA(アメリカの食品医薬局)は、植物油が心臓病の予防や治療に効果があると主張するのは違法と見なす、との警告を発するに至るのです。こうした一連の状況は、日本の製油会社には当然知られていたはずですが、日本国内では相変わらず、植物油は健康によいと宣伝され続けてきました。

植物油を摂取すると、一見コレステロール値が下がったように見えることがあります。しかし、それは植物油がコレステロールを肝臓や筋肉に付着させるため、血液中の値がいっとき減ったように見えるだけなのです。コレステロールの代謝の問題が、根本的に解決されたわけではありません。

現代栄養学では、植物油は酸化しやすく、細胞・組織を変性させ、その過剰摂取がガンを発生させることを明らかにしています。また植物油は血栓をつくり、脳卒中や心臓病を引き起こすことも知られています。さらにはアレルギーや炎症性疾患をひどくし、免疫力を抑制してあらゆる病気にかかりやすくします。植物油も動物性脂肪と同様に、健康を害することが明確にされているのです。

こうした「植物性油の害」については、いまだに日本国民の中に十分浸透しているとは言えません。今もお歳暮やお中元の季節になれば、健康によい食品との触れ込みで、植物油がPRされ店頭に並んでいます。

※最近では、「体に脂肪がつきにくい!」を謳い文句に、次々と健康によいという植物油が売り出されています。コレステロールの吸収を抑え、これまでの植物油に比べて体に脂肪がつきにくいので、安心して油料理・揚げ物料理に使えると言うのです。

現代病が蔓延する背景に「油の過剰摂取」がありますが、こうした油を使えば、本当に健康になれるのでしょうか? 現代病・成人病から守られるのでしょうか?

高脂血症(高コレステロール)は、油脂の摂取を減らし、健全な食事に変えれば、自然に治るものなのです。そのうえ他の病気にもかからなくなり、健康になれるのです。

健康によいとPRされる油の問題点を1つ1つ挙げるまでもなく、一面の利点だけを取り上げ、油の摂取を勧めることは間違っています。

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