小児眼科と針治療    2016.9.1   1.006 本文へジャンプ

・近視(仮性近視を含む)、斜視、弱視、遠視、網膜色素変性、アトピー性皮膚炎に伴う眼疾患、外傷、先天性疾患やその他の不明な視機能障害

当院では、眼疾患の患者さんを優先させていただく理由から、近視治療についての新規患者さんの受け入れを休止しています。近視についての考え方や対処法は、以下の説明を参考にお願いいたします。

○小児眼科とは
○眼科向け小児はり治療
○眼科領域を専門とする当院の針治療
○子どもの目を強度近視へ進行させないために
○当院の針治療の評価方法
○小児眼科領域の治療成績について
○患者さんからよくある質問
○院長からひと言
○関連リンク、参考文献


小児眼科とは


・小児の眼は通常6才頃までに発達のピークを迎え、小児眼科分野の治療は10才前までに十分な視力(1.0)を確保する必要があるとされています。その理由は眼科医学の常識として、10才頃までの矯正も含めた視力が生涯の限界視力になるからです。
・10才を超えて適切な矯正を行っても、視力が十分に出ない場合には、後からどのような治療をしても10才以前の最高視力を超えることはありません。矯正視力で1.0以下に下がらないことを目標とする成人と異なり、1.0以上への到達を目指すことが小児眼科の目標になります。

・千秋針灸院では、概ね7才頃までの子どもさんには、刺入が無く安全で針による痛みも無い、当院独自の小児打鍼術。8才以降では大人と同様の治療を小児向けに鍼を細くし、体への負担を減らした針治療を行っています。
眼科分野の様々な疾患に対して実績がありますので、小児期のどのような時期や状況に対しても、針治療で可能な範囲での最善の結果を目指すことができます。眼科領域の難病への対応は容易ではありませんが、針治療は従来の眼科医療とは異なるアプローチですので、意外にも良好な結果が得られる場合もあります。

・なお小児近視への当院の考え方として、メガネ等による過矯正は避けるべきと考えますが、小児期に適切な視力などの確保は、正常な視機能の発達への必要条件と考えています。「メガネ等は絶対に避けたい」等、様々な要望をいただきますが、子どもさんの状況に合わせた、最低限必要なメガネ等の矯正をお勧めする場合があります。どの子どもさんも視機能は限られた期間しか発達することはありませんし、成長に伴い状況は変化し、その時点で対応も変わっていきますことをご理解下さい。

・網膜色素変性症など、当院が専門的に解説している内容については、該当するページもご覧ください。

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眼科向け小児はり治療


当院の打鍼術は出血や痛み、副作用などのリスクも無い、最も安全な治療法です=対象は7才以下

 
打鍼用具(木槌と銀製の堤鍼)

・当院考案の全く鍼を刺さない打鍼法による治療です。薬を使わないばかりではなく、鍼を刺すこともしないため、副作用や痛み、感染、内出血等、全てのリスク要因が全く存在しない治療法になります。ただし通常の鍼に比較して若干効果が薄い面があり、治療開始から1〜2ヶ月は、できる限り週に2回程度の治療が必要になるようです。概ね7才以下の子どもさんが対象となります。

・先天性の眼科難病などでは、現代医学での治療法が無かったり、年齢によっては鍼治療も難しい場合がありますが、当面は打鍼法により様子を見るという方法も選択することができ、通常の鍼治療が可能な年齢まで治療を繋げていくことが可能です。

・なお8才以上の子どもさんの場合、打鍼法による効果は成長と共に弱くなり、効果が得られにくくなる傾向がありますので、打鍼を希望される場合は、とりあえず打鍼法をしばらく行ってみて、効果が不十分な場合は通常の針治療への切り替えをお勧めします。特に近視(仮性近視を含む)の場合は、子どもさんの成長と共に8才以降は効果が薄れることを確認しています。

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眼科領域を専門とする当院の針治療


眼科領域の針治療は概ね8才以上が対象 (子どもさんによっては、6才頃から可能です)

・当院は眼科領域を専門としており、概ね8才〜18才までの患者さん向けには、通常の成人向けの針治療を年齢に合わせて、刺激量を軽減した内容として効果を上げてきました。中学生以上では状況により治療開始から数ヶ月は、できる限り週に2回程度の治療が必要になりますが、小学生については最初から週に1回の治療で効果が上げられるようです。その後は週1回〜隔週1回として治療間隔を延長していきます。ただし小学校高学年以上では成長と共に勉強量の増加等もあり、視力を保つのは難しいこともありますので、矯正視力の維持や近視の進行抑制が目標となる場合もあります。(眼軸が長くなる軸性近視については根本的な解決は困難です)

・概ね8才以降で小児打鍼術(刺さない鍼)の効果が薄れ、視力が徐々に低下していく場合でも、通常の針治療に切り替えることで近視(仮性近視を含む)などでは、再び視力が回復していく症例を確認しています。小児打鍼術を行っている患者さんで、成長に伴い効果が薄れてきたと考えられる場合は、通常の針治療への切り替えをご検討下さい。

・網膜色素変性症等の難病においても針治療は効果を示し、当初週1回(数ヶ月)、以降隔週1回での比較的少ない治療回数でも数年以上に渡り視力や網膜感度の向上、視野の拡大を眼科医により認められています。

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子どもの目を強度近視へ進行させないために


※当院では、眼疾患の患者さんを優先させていただく理由から、新規患者さんの受け入れを休止しています。

・千秋針灸院では眼科領域への針治療を通して、近視の進行を可能な限り防ぐために、適切な指導も行っています。近視については「病気」ではなく、これまで眼科医や眼鏡店では利害関係もあり、あまり明確な説明はされない傾向がありました。しかし、眼鏡やコンタクトなどの誤った矯正や使用方法が近視を進行させ、将来の目に関わる病気を増やしている可能性があります。近視の進行する仕組みと問題点を簡単に説明してみます。

子どもの近視は仕方ないの?
・小学校へ入学すると、多くの子どもさんが学校の健診で「昨年はAだった視力が、CやDになった」ということで、眼科を受診したり、眼鏡を作ったりします。近視は病気ではないと説明され、どのような対策をしても一定度は進んでしまうことから、進行に合わせて眼鏡などを作り直す等して対応してきたのが実状です。両親からの遺伝とか、ゲームや読書のし過ぎ、食生活、運動不足、眼鏡の過矯正など様々な説がありますが、現代の私たちの生活は簡単に変えることは難しく、近視の進行は「仕方ない」と済ませてしまいがちです。しかし近視が大きく進行すると多くの場合、眼球の奥行きが長くなることにより、網膜が薄く引き伸ばされた強度近視の状態になってしまいます。

強度近視は将来、様々な目の病気の原因に
・眼科領域を専門としている千秋針灸院では、強度の近視が発症や進行に関わる、多くの難病と向き合ってきました。強度近視には眼球の奥行きが拡大していることから、網膜は薄く脆弱になります。若年者に多い近視性黄斑変性や、網膜剥離、他の眼疾患を発症した場合での回復の悪さや手術後のトラブルは、網膜の脆弱性が大きく関わります。また緑内障の発症リスクも-3Dの軽度近視で1.85倍、-3Dを超える近視では2.60倍になります。近視自体は「環境への適応」であり、病気ではありませんが、網膜が薄くなり強度近視まで進行してしまっては、後から治療することはできません。小児期の近視をできる限り進行させないことが、将来の重大な眼疾患を防ぐ大きなポイントになります。

-3.0D程度までの近視は環境への適応
・近視の進行の仕組みを最も簡潔に説明しようとすると、「近視は環境への適応」と言えます。近視の指標であるジオプトリの-1.0Dとは、1mまでの距離で適切にピントを合わすことができることを意味します。-2.0Dなら50cm、-3.0Dなら約33cmということになり、このあたりが主に読書や勉強などでピントを合わせる距離になります。目は子どもさんの成長に伴い、目も近くを見ることの多い生活環境に適応していきます。これが近視の始まりであり、近くのものを見ることに目の調節機能が最適化されることから、遠見視力(5m以上)の低下が起こります。小児の眼球は柔軟性が高く、現代の生活環境へ合わせて、目の調節機能を適応させながら成長を続けていくのです。

・日本では5mの指標を使った遠見視力が、多くの場合に重視されます。外出時や自動車の運転など、遠見視力が必要な場合は少なくないのですが、現代の生活には、読書や携帯電話・パソコンの操作など、室内で行う作業の多くに必要な視力として、近見視力(30cm)や中距離視力(50cm〜1m)が重要になっています。5mの遠見視力だけに偏重したメガネ・コンタクト等の矯正は、疲労感を感じやすく、日常生活に重要な中距離以下の見え方を低下させている事例は少なくありません。遠見視力にこだわるあまりに、近見視力で過矯正とならないよう注意が必要です。

近視はなぜ進行してしまうのか
・近視の子どもさんに遠見視力を得るための適切な矯正(眼鏡等)をすると、当然ですが視力検査に用いる5mの距離で、充分な視力が得られます。この時の適切な矯正は例えば-2.0Dとします。しかし-2.0Dに矯正したまま、50cm付近に焦点を合わせる機会が読書などで多い場合、目は環境に合わせて今度は-4.0Dへ適応しようとします。しばらくして眼鏡が合わないからと次に-4.0Dへ矯正すると、今度は-6.0Dへと適応しようとします。多くの場合に20歳代前半まで、間違った矯正と適応が繰り返され、近視は一定度まで進行した後に大体停止します。これが一般的な近視の進行の仕組みです。つまり近視とは目の悪化ではなく、環境への適応能力が発揮されたことと理解すべきで、進行してしまうのは多くの場合、遠見視力への矯正による、近見視力への過矯正が原因です。

近視を進ませ難い矯正の仕方
・近視を進ませないためには、読書など手元に近いところを見る際に、遠見視力を得るために矯正した眼鏡等を使用しないことに尽きます。例えば授業中は黒板の字が見えない場合には眼鏡をかけ、教科書を読む時は眼鏡を外す必要があります。やや頻繁な着け外しが必要ですので、基本的にコンタクトレンズはスポーツなどの時間を除けば、学生には不向きです。近くを見るときと遠くを見るときで、同じ強さに矯正したレンズを使用し続けることが、近視を進行させる主な要因です。概ね-4.0Dを超えて近視が進んでいる場合には、手元(近見)用と外出(遠見)用の二種類の眼鏡を用意します。少なくとも20代前半までは状況に合わせた適切な矯正を行い、近視の進行を少しでも防ぐことが大切です。

 WOC-i PRO (ワック)

・当院では、雲霧法を利用したWOC-i PRO(ワック)を導入し、眼の疲労による調節を防いで、視力測定・評価値の安定化を目指したり、毛様体筋の緊張を解くことで、毛様体筋の持続した疲労による近視化や、近視の進行を防ぐことに力を入れています。ワックは全国の多くの眼科医療機関で、近視の進行を防ぐ目的で使用されている器械です。但し、既に進行した軸性近視(目の奥行きが大きくなる屈折異常)を改善することはできません。

その他の注意点
・活発な屋外での活動は近視の進行を抑制することが、数千人規模でのコホート研究により証明されています。屋外での遠方視による調節緩和だけではなく、皮膚や網膜などが太陽光線を浴びることによって、ドーパミンの分泌が増えることや、縮瞳により高次収差が減ることでクリアな網膜像が得られ、眼軸長の進展抑制につながると考えられています。子どもさんは、できる限り屋外で活動させてあげましょう。結果として体力、運動能力の向上に加え、近視の進行抑制も得られることになります。

・安全な近視予防法として、ランダム化比較試験を基にしたメタ解析(最も信頼性の高い研究)から、累進屈折力レンズを用いることで、近視進行や眼軸長の伸展を抑制することが明らかになっています。屈折度で0.14D/年、眼軸長で0.054mm/年の抑制効果があり、平均20%程度は近視の進行を遅らすようです。千秋針灸院で推奨している眼鏡の使い方に似てはいますが、実際の使用感として累進屈折力レンズは不自然な見え方になりがちなため、やはり単焦点レンズの眼鏡を使い分けた方が現実的と思われます。

・眼科で処方されることのあるミドリンM(0.4% トロピカミド)については、米国をはじめ海外では用いられていません。日本では普通に用いられるトロピカミドですが、海外の研究では近視予防には無効であると結論付けられています。副作用として全身症状や過敏症、眼圧上昇などが生じやすいため、使用しない方が賢明です。

・眼鏡を作成する場合に、機械(オートレフラクトメーター)測定のみでレンズ度数を決定することは、過矯正のリスクが非常に大きくなります。適切な測定が行われた眼科検査に対して、2D以上も異なる場合があります。機械での測定だけでなく、必ず手動での測定やレンズ合わせを丁寧に行う眼鏡店で作成しましょう。一般に激安店では機械任せにされてしまう傾向が強く、過矯正により近視が進行してしまう恐れがあります。

千秋針灸院では視力測定やジオプトリの簡易測定を行い、近視の状況を把握します。また適切な矯正方法の指導をはじめ、専門家として目に関わる様々なアドバイスやサポートを行っていきます。目に影響する眼科領域以外の病気や服薬、生活環境などに対しても、可能な限りお答えし、近視の進行予防を目的とした鍼治療を行っています。

当院での針治療についての評価方法


 
NIDEK SC-2000 小児向けチャート

・視力についての効果判定は、当院の測定器NIDEK、SC-2000の小児向け視力チャート、もしくはランドルト環を用いて行います。子どもさんの視力は、毎日の体調や集中力などによる変化が比較的大きい傾向がありますが、変化の流れを掴み効果判定を行っていきます。当院で視力についての向上を確認できた症例では、眼科医の診断でも同等の結果が得られています。また視野やその他については、必要に応じて様々な測定チャートを使い分けています。

・近視については、簡易ジオプトリ(屈折力)測定も行います。一般に近視=視力低下と思われがちですが、正しくは光が網膜より手前で結像してしまう屈折異常が近視であり、離れた2点を識別できる能力を表す視力とは関わりは深いのですが、別の意味になります。千秋針灸院では視力・屈折力の両方を把握した上で、小児の眼の発達を踏まえて、近視を進行させないための適切なアドバイスを行っています。また子どもさんの視力測定には、疲労などの調節が関与しやすいため、雲霧法(ワック)を行い、正しい測定値が得られるよう配慮しています。

評価方法については、こちらのリンク でも解説しています。

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小児眼科領域の治療成績について


・千秋針灸院や提携治療院で針治療を継続して行い、複数症例以上で得られた傾向、結果をまとめています。


弱視
・適切な矯正を行っても視力が上がらない、原因不明の弱視については、6歳までなら小児打鍼法、7歳以降なら出来る限り早期に針治療を試みることをお勧めします。多くの場合に効果が上がり易いですが、後から難病等の診断を受ける場合があり、こうしたケースでは十分な視力の向上は得られ難いです。幾つかの難病は当院の治療経験から見え方の傾向が分かっていますので、当院から疾病の可能性を指摘できることもあります。眼科医学の常識を超えて、10代〜20代の患者さんの弱視が、大幅に改善したケースがあります。また片眼のみの弱視については改善する可能性が高い傾向です。

レーベル病
・10代前半に発症することの多い遺伝性の視神経疾患ですが、当院の針治療では一定度まで視力の回復や中心暗点の縮小が得られています。実際に見やすくはなるのですが、1.0以上までの完全な回復は難しいようです。当院ではコエンザイム等のビタミン剤と針治療を併用することで、視力回復が高まる傾向を確認しています。

・個人差もありますが、低周波治療器による電気針(パルス)治療を取り入れることで、眼科で視野の改善が確認されたり、視力の改善幅が大きくなる症例があります。現在の当院のレーベル病治療については、原則として全て電気針(パルス)治療となっています。

常染色体優性視神経症(ADOA)
・原因不明の弱視と診断された場合に、網膜色素変性と並んで散見される疾患です。矯正しても0.5以下程度の状態が続きますが、多くの場合に進行はせず疾患が原因で失明に至ることはありません。視野測定で大きな問題がなく、当院のBlue on Yellowボードでの測定やD-15(色覚)測定で疑われた場合、眼科で精査すると常染色体優性視神経症の診断に至る場合があります。

・当院での針治療の症例では、残念ながら眼科で視力改善の目安となる2倍以上(LogMar0.3)の症例がありません。数ヶ月程度など期間を限定して針治療に取り組む試みでも成功した事例はなく、当院では針治療をお勧めすることはありません。針治療の不適応疾患と思われます。


網膜色素変性症
・つまづくことが多い、ボールを見失う、暗い所を怖がる、弱視等、特徴的な症状がある場合に、小児から診断が付くケースがあります。診断が付いた場合には可能な限り早くから針治療に取り組むことで、視力・視野を大きく改善させる可能性がある上、進行が抑られる分、将来の視機能の予後を大きく変えることに繋がります。6才未満の場合でも、小児打針法などを行い、できるだけ視機能を成長させ、良好な状態を確保することで、将来の進行に向かうスタート地点が変わってきます。小児期から診断が付いた場合には、早期に針治療を行うことを特にお勧めします。

・10才前後の小児期から針治療を継続している数名の患者さんは、5年以上経っても視力低下・視野狭窄が進行しないばかりでなく、治療開始当初に比較して明確に改善しています。網膜色素変性では小児期の症例を含めた、140名もの統計症例報告「網膜色素変性症への鍼治療」を、公開しています。診断が付いた場合には、小児期から鍼治療に取り組むべきと思います。当院での多くの症例から分ってきた、日常生活での注意点もアドバイスしています。

●関連リンク・・・『網膜色素変性への鍼治療』 Web公開版・電子書籍 2012.12.24発行

近視(仮性近視を含む)
 
※当院では、眼疾患の患者さんを優先させていただく理由から、新規患者さんの受け入れを休止しています。

・当院では矯正が可能な近視は基本的に、積極的な治療は必ずしも必要ないと考えています。しかしながら「小学生の内は眼鏡はかけたくない」、「特定の仕事を目指すために裸眼視力を守りたい」、「強度近視になることを避けたい」等、様々な要望があります。適切な針治療は成長過程での近視進行のブレーキとしては役立ちますが、眼軸の延長による近視もありますので、下がっている視力を大きく上げたい場合には確実ではありません。視力については、過大な期待には沿えない場合もあると考えて下さい。

・近視自体の治療については様々な情報が溢れていますが、眼軸長が長くなるような近視に対して、水晶体などの調節筋の疲労を取り、屈折調節力が少しくらい改善したところで、数段階程度の視力向上はあるものの、屈折異常(ジオプトリ値)が大きく改善するものではありません。眼科医や眼科学を正しく学んだ方が、一般の視力回復を目的とした治療に対して、懐疑的に考えられていることは当然と思います。しかし近視の進行にブレーキをかけ、強度近視を防ぎたいという目的に対しては、当院での専門的な針治療やアドバイスを生かすことができます。「近視とは何か」、「近視が進む理由」を正しく理解して将来の目の健康に繋げていくことが、子どもさんのために現在必要な治療であると、当院では考えています。

当院で近視(仮性近視を含む)への針治療を行われる場合には、雲霧法として多くの眼科でも用いられているWOC(ワック)を併用し、正しい視力測定・評価や、近視の進行予防を目指していきます。必要な患者さんには、家庭向けの簡易バージョンであるWOC-iもご紹介いたします。(当院では業務用・上位機であるWOC-i PROを使用しています)

・針治療の効果としては、ご家庭での近視の進行を防ぐ適切な指導ができている前提では、半数以上の方で視力は2倍〜3倍(例えば0.2なら0.4〜0.6、0.5なら1.0以上)が見込めます。しかし、近視の進行抑制への意識が低かったり、受験勉強などで近くを見続ける機会・時間が多くなる場合には、近視の進行にブレーキがかかる程度となり、結果として長期的には緩やかに近視が進むケースも多いです。ある意味治療以上に生活習慣が関与し、近視単独では病気とはいえないこと。小児を含めた眼科疾患の患者さんを優先させていただく理由から、今後当院では新規患者さんの受け入れを休止させていただくことになりました。

外傷

・ボールが当たる、交通事故や転落による打撲などが原因となり、黄斑円孔や網膜剥離、外傷性散瞳など様々な外傷や手術後の後遺症が残るケースがあります。

・外傷の場合、針治療では受傷から時間が短いほど順調に回復する可能性が高まり、特に小児の場合は成人以降に比較して、早期の回復や回復量などに驚かされる症例が多くあります。回復可能な期間も数年はあるようです。(成人は受傷から1年程度までが多い) 一方で外傷の程度により回復が見込めないケースや、部分的に障害の残るケースもありますので、一度当院で診せていただくことをお勧めしますが、測定機器が限られた状況でもありますので、予後は不明な場合が多いことをご了承下さい。

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患者さんからよくある質問


Q.先天性の眼の病気があることが分かりました。(7才以下) 針治療を受けるべきでしょうか?

A.まず眼科医から早めに手術を勧められているような疾患(例えば強い斜視等)については、手術を行われることをお勧めします。また当院では7才以下の場合には、成人と同様の鍼治療を行うことが難しいため、「打鍼法」による刺さない鍼で治療を行っています。この治療法は当院が独自に開発した眼疾患向けの治療法であり、提携治療院を含めた他院での同様な治療はできません。当院からの紹介により、他院で治療を希望される場合には、通常の小児はり治療になると考えてください。

・先天性の眼科疾患は様々ですが、当院で治療実績があり、複数症例で有効と認められる疾患は、網膜色素変性症、レーベル病、弱視等です。こう書くと頼りなく感じられてしまうかもしれませんが、先天性の疾患はそもそも稀なものも多く、また成人のように測定・評価法が確実ではありません。当院や提携治療院では、様々な小児眼科領域の難病治療に取り組んでおり、有効な場合もあますが、残念ながら分からない場合もあります。

・成人とは異なり、小児の眼は発達の過程にありますので、年単位で経過を見て行く必要があります。特に小学校入学前までは、子どもさんの眼の状況も体の発達と共に大きく変化します。当院の「打鍼法」による治療は、眼を含めて正常な発達を促す治療法ですが、進行性の病気ではない場合には、無治療で様子を見ていても良い場合もあります。8才以上であれば成人同様の鍼治療が行えますので、小学校入学後に視機能に問題が生じている場合には特にお勧めします。「打鍼法」から通常の鍼への切り替えは、子どもさんの状況と測定結果から必要な時期(6〜8才)を、親御さんとご相談しながら見つけていきます。


Q.親が強度の近視ですが、子どもへの針治療は有効でしょうか? 眼鏡を使えば視力は上がりますが、小学生で既に強い近視です。

A.眼軸長が物理的に伸びているタイプの近視は、基本的に遺伝も関与しますので、針治療を行っても眼の調節機能は改善や疲労は軽減されるものの、大幅な視力向上は考えにくいです。屈折性の近視については、眼の調節機能の改善や疲労を軽減するため、近視の改善や進行予防に役立てることができます。子どもさんの近視がどのようなタイプであるかは、眼科医の診断から知ることができます。眼軸長が伸びたタイプと屈折性のタイプの2種類と言われてますが、実際には両者が複合したタイプや、両者が関わり合って進行していくタイプが多いようです。千秋針灸院では鍼治療と共に、適切な指導を行っていますので、近視の進行を抑える目的であれば有効といえます。

・小児の基本的な視機能は概ね10才頃までに完成しますが、視力に関しては矯正して1.0以上が得られていれば、問題ありません。小児の視力には目の使い方、体の発育、運動が大きく関与していることが、当院での臨床から分かってきています。近視を進みにくくするために大切なことは、テレビ・ゲーム等の時間を制限することも必要ですが、遠見視力に対して矯正された眼鏡を近くを見るときに使わないこと、屋外で十分に運動することです。当院では通常の近視に対しては、必ずしも針治療をお勧めしてはいませんが、眼科などで完全に矯正しても十分な視力が得られない場合(弱視や不明の視機能未発達など)は、特に10才前までに針治療を始められることをお勧めします。

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院長からひとこと


・小児眼科分野は成人に対しての一般眼科と異なる、様々な病態や評価法上の課題があります。例えば眼科での視力検査では集中力をはじめとした諸条件による結果が不安定なために、一度きりの視力検査で子どもの視力を判断することは不可能に近いことは常識です。また視野検査なども中心固視が難しく、正確な値は得られ難いものです。機械(オートレフラクトメーター)を使った検査は手動検査との差が小さくはないことや、間違った眼鏡やコンタクトレンズの使い方が近視を進行させてしまったり、小児の使用している眼鏡の多くが過矯正である事実は、小児眼科分野の正確な評価が難しいことを表しています。(一般に過矯正は近視を加速させてしまいます)

・私は眼科領域を専門に、延べ50.000名以上(眼科領域のみ)の患者さんへ針治療を続けてきましたが、小児期の近視を強度近視へと進行させてしまうことが、将来の様々な眼に関わる難病の原因になることを、思い知らされてきました。少しでも多くの子どもさんに強度近視への進行を防ぐことは、小児眼科分野での医療としての役割と考えています。今後も目の健康を考え、眼科医療機関とは異なる角度から、眼科領域の治療に取り組んでいきますので、ご期待ください。

・当院の眼科領域の針治療、眼科向け小児はり(打鍼法)は、共に薬による副作用がないこと、完全な無痛もしくは小児向けに用意している極細鍼を使用するため痛みは少ないこと、眼科学に基づいた測定法により評価するため、眼科での診断結果に相似した、確実な結果が得られる特徴があります。この結果、難病に指定されている小児の網膜色素変性症から原因不明の弱視、軽度の斜視、遠視まで、視力や視野、実際の見え方の改善に効果を上げています。また針治療、眼科向け小児はり(打鍼法)は、共に眼科を中心にした他の訓練法や治療法との相性も良いため、同時に併用することも可能です。基本的な視機能を成長させる小児期は限られた期間ですので、他の治療で順調に視力等が向上しない場合には、有力な選択肢のひとつになると思われます。

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関連リンク、参考文献


関連リンク

●眼科領域の諸疾患 (当院ページ)

●眼科領域の難病治療を提携治療院で(当院ページ) 
※眼科向け小児はり治療は当院オリジナルのため、現時点では提携治療院でも受けられません。

参考文献

●参考文献・蔵書一覧 (当院ページ)

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本ページの内容は現代の眼科医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
内容や画像は千秋針灸院の著作物です。無断での転用や複製はお断りします。