甲状腺眼症   更新日 2014.7.21   2.003 本文へジャンプ
甲状腺眼症、甲状腺性視神経症、眼球突出、眼瞼腫脹、眼瞼浮腫、眼球運動障害、目周囲痛など

○現代医学での概要と当院の針灸治療
○眼球突出の評価方法
○患者さんからよくある質問
○院長からひとこと
○関連リンク・参考文献


現代医学での概要と当院の針灸治療

バセドウ病
甲状腺機能亢進症のひとつ〔最近では厳密にバセドウ病と甲状腺機能亢進症は区別しない傾向〕で、甲状腺ホルモンの過剰な分泌により、甲状腺中毒の症状を起こす病気です。思春期から更年期の女性に多く見られますが、男性に発症することもあります。全身倦怠、易疲労、発汗、体重減少、微熱、神経質、情緒不安定、頭痛、食欲亢進、下痢、甲状腺腫、眼球突出、動悸、頻脈等の様々な症状があります。予後は比較的良好で、適切な治療が行われれば数年程度で治癒しますが、長期にわたり寛解と増悪を繰り返すこともあります。

びまん性の甲状腺腫、眼球突出、頻脈が三大症状とされますが、眼球突出は半数程度の患者さんにみられます。抗甲状腺薬が第一選択になります。強いストレスや疲労から悪化することもありますので注意を要します。

甲状腺眼症
・バセドウ病に伴い発症する眼疾患で、特徴的な眼球突出をはじめ、眼瞼腫脹、眼瞼後退、結膜充血、上輪部角結膜炎、眼窩部痛、眼球運動障害、外眼筋腫大、複視、視力低下、眼圧上昇、視神経障害等の症状を生じます。こうした症状はバセドウ病の炎症に伴うもの(結膜充血や眼瞼腫脹、眼窩部痛)と、炎症消退後の慢性期の症状(眼球突出や眼球運動障害)に分けられます。甲状腺眼症では血液検査として甲状腺機能だけではなく、甲状腺関連自己抗体(TBII、TSAb、抗TPO抗体など)が重要であり、甲状腺眼症の状態を表す指標とされています。

・眼球突出は甲状腺眼症の中でも特徴的な症状であり、19mm以上の突出または2mm以上の左右差は病的な眼球突出とされます。治療は外眼筋の炎症が遷延化し繊維化する前に、ステロイドパルス療法を行うことが中心となり、放射線照射なども行われることもあります。炎症が落ち着いた後に繊維化して起こる眼球運動制限や、眼窩内の炎症から肥厚した脂肪組織による眼球突出に対しては、手術が行われています。重症例では腫脹した外眼筋による視神経や血管への圧迫により、甲状腺性視神経症として視力や視野などに障害を起こす場合があります。

・一般にバセドウ病の治療は、治療薬(プロバジールやメルカゾール)が中心になりますが、千秋針灸院では主に甲状腺眼症への針治療に取り組んでいます。バセドウ病は通常、順調であれば数年で炎症は治まり、眼球突出をはじめとした後遺症を残すことが少なくありませんが、できる限り投薬による治療期間中に針治療を行うことで、甲状腺眼症によるトラブルや後遺症を最小限に抑えることを目標としています。治療を開始する時期も関係しますが、一般に視機能(視力や複視)は良好となり、眼窩部痛や目の周囲の痛み等の症状は改善します。眼球突出については大幅な改善は難しいですが、炎症期の治療であれば、一定度の改善は見られます。痛み等の症状は初回治療時から改善することが多いため、針治療の効果が分かりやすい疾患です。

・中国におけるバセドウ病への有効率は、症状消失、血清中甲状腺ホルモンの正常化が50-60%、加えて症状がはっきりと改善したのは30%前後〔総有効率80-90%〕ということです。ただし眼球突出の症例では、やや治療効果は下がり、はっきりと有効なものは40-50%ということです。この疾患については、中国では一般にかなり集中して〔隔日治療で3ヶ月程〕治療が行われます。千秋針灸院ではバセドウ病の本体、眼症の両面から針治療を行うことで炎症が治まりやすくなり、内服薬を早期に減少できることにより、結果的に症状の軽減や後遺症を少なくする可能性があります。眼窩部痛や眼球突出をはじめとした甲状腺眼症の症状が出始めたら、早めに針治療を始められることをお勧めします。

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眼球突出の評価方法

ヘルテル氏眼球突出計

・千秋針灸院では眼球(前眼部角膜)の突出を正しく測定・評価するために、眼科で広く使用されているヘルテル氏眼球突出計を導入しています。眼球突出の左右差や正常範囲を超えた突出の度合いを正確に測れると共に、眼科学に基づき客観的に、針治療による効果を正しく判断することができます。ヘルテル氏眼球突出計での測定が行われていない場合には、眼球突出への根拠のある針治療は難しいでしょう。その他、視力低下などを伴うこともあり、必要に応じて適切な方法で測定・評価を行います。

○リンク・・・千秋針灸院での測定・評価法

・当院ではヘルテル氏眼球突出計を導入してから、かなり症例数が増えてきたために、針治療による様々な変化が分かってきました。適切な針治療により眼球突出の数値は確かに変化する場合も多いのですが、治療結果としての数値の経過だけではなく、眼瞼部などの腫脹との兼ね合いも影響します。腫脹が特に強い場合には、腫れが引くことで両眼の眼窩外側縁間のサイズが数ミリ変化した症例もあります。このため眼球突出の状況以上に眼瞼部の腫脹が強い場合には、眼球突出の数値は変わらないのに目周囲の腫れが引くことで、写真上での顔つきが変わることもありました。ヘルテル氏眼球突出計に加えて、写真による適切な評価も大切です。

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患者さんからよくある質問

Q.眼球突出は治りますか? 改善する確率はどのくらいですか?

A.全般に眼球突出の大幅な改善は難しいのですが、特に非炎症期(投薬終了後)の回復は困難です。
・バセドウ眼症の治療は先に書いたとおり、投薬治療が行われる炎症期(一般に数年程)と、投薬治療(プロバジールやメルカゾールの服用)を完了した慢性期で異なり、特に眼球突出については炎症期であれば半数程度の症例で、完治ではないものの患者さん自身が自覚できる程度の改善は得られています。しかし慢性期の眼球突出は脂肪化・繊維化した組織による後遺症であり、基本的に針治療による改善は見込めませんので手術を考慮する必要があります。まだ投薬治療が続いている間に針治療を始めることをお勧めします。

・ヘルテル氏眼球突出計や三田式万能測定計で、客観的に眼球突出を測定すると、概ね半数以上の症例で1〜2ミリの改善が得られているようです。十分な症例数が集まりましたら報告したいと思います。また数値的な改善がみられなくても、目の周囲の腫れが引くことで自覚として改善されたと感じる患者さんもあります。甲状腺眼症の場合では、針治療を開始してから自覚的、あるいは客観的にも悪化した症例はありません。眼科学に基づいた測定・評価と共に行われる適切な鍼治療は、手術の前に試してみる価値はあると思います。ただし大幅な突出(22ミリ以上)を正常範囲内(18ミリ以内)まで大きく改善させることは、経験的には難しいと思われます。当院の実績で3ミリ以上(ヘルテル眼球突出計のみ)の改善を確認している症例は数十例中2例と少数です。

Q.目の周囲に針を打つのは心配です。目が傷ついたり、痛みや出血はありませんか?

A.目の周囲へ使用する針は直径0.12〜0.14ミリの大変細く、かつ1〜2ミリの深さです。目は傷付きません。
・当院が目の周囲へ治療に使用している針は、医療用として認められている針の中でも細いタイプです。他の治療院では美容鍼として使用されることがあり、眼科領域を専門としている当院では概ね8歳以上から安全に行える治療ですので、痛みや出血は僅かです。

・針の深さと効果については、一部の治療院(中医学系など)では眼窩内に数センチまで深く針を入れるため、強い内出血や感染などのリスクを伴いますが、眼科学としての各種測定・評価法を取り入れている当院では、数ミリ程度の安全な針の深さで効果が得られることが分かっています。初回の治療直後に目の腫れが軽減するなどして、目の周囲がスッキリした感覚が得られる患者さんが多いです。


Q.目の疲れや周囲の痛み、複視が強いのですが、針治療で良くなりますか?

A.甲状腺眼症は、物理的な変化である眼球突出を除けば、針治療による症状の改善は比較的容易です。
・甲状腺眼症に伴う眼窩部痛などの痛みは初回治療時から効果的で、針治療を続けることで徐々に問題ではなくなる症例がほとんどです。また眼精疲労や視力は良好となり、程度にもよりますが眼の動きや複視についても改善が見られる症例があります。

Q.甲状腺眼症についての日常生活での注意点は?

A.バセドウ病の一般的な注意点に加えて、甲状腺眼症ではコンタクトレンズの使用を避けた方が良いです。
・コンタクトレンズは前眼部での炎症を誘発、増幅させる可能性があり、眼瞼腫脹や外眼筋の炎症を助長することに関与します。バセドウ眼症では特に炎症期の期間や程度を短く軽くすることが、眼球突出をはじめとした後遺症を軽減することに繋がりますので、炎症を助長する可能性のあるコンタクトレンズの使用は、必要最小限として下さい。

・眼球突出や眼瞼腫脹(目の周囲の腫れ)の程度は、時間や季節(朝や春は悪化)にも左右されますが、やはり疲労やストレスの蓄積が関係します。十分な休息を取ることやストレスの発散を意識して実行して下さい。

Q.甲状腺治療薬(プロバジールやメルカゾール)の副作用があり、薬もあまり効きません。

A.一般の投薬治療に針治療を加えることで、内服薬の効きは良くなり、副作用は軽減される傾向です。
・千秋針灸院では脈拍を測ることで、概ねバセドウ病へのコントロールができているかを把握しています。内服薬が充分に効かず、安静時で100/分以上の方も、針治療を加えることで徐々に80/分以下で安定してきます。また咳などの副作用を抑える治療が行えることや、血液循環などが改善し内服薬の効きが良くなりますので、早期に薬の量を減らすことができ、投薬の必要な炎症期が短くなることで、目への様々な後遺症も最小限で済むことが期待できます。


Q.必要な期間や治療間隔はどのくらいでしょうか?

A.症状の重さや炎症期かどうかで変わってきますが、当初は週1回もしくは2回程度の治療間隔です。
・炎症期(投薬治療中)であれば、眼球突出をはじめ症状が多く比較的重い場合には、週に2回の治療から始めます。比較的治療上の課題が少ない場合には、週に1回から始めることになります。3ヶ月程度の期間毎に治療方針を見直し、徐々に治療間隔を空けていき、2週間に1回程度の治療で投薬終了まで続けて、内科での治療が完了すると針治療も終了します。投薬治療完了後の慢性期では痛みなどの症状の緩和が目標となり、悪化してきたら数回行うという状況です。


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院長からひとこと


・中国における甲状腺機能亢進症の針灸治療は症例数も多く、かなりメジャーな部類に入るかと思います。私の留学していた上海中医薬大学のすぐ傍にも、「難病研究所」〔正確な名称は忘れてしまいました。〕があり、この疾患の専門科が存在していました。十分な栄養摂取〔糖質、脂質、ビタミン類等〕と共に過労を避けることです。現代医学からの管理と針灸治療の併用により、症状が改善しやすい〔約80%〕疾患といえます。


・眼科領域の針治療を専門とするようになった2007年頃からは、甲状腺眼症の治療が多くなり、痛みをはじめ様々な症状から視力低下、複視、炎症期の眼球突出まで、多くの針治療の効果が得られるようになり、当院の眼科分野の専門性が充分に発揮できる状況となりました。また眼科で広く使用されているヘルテル氏眼球突出計や三田式万能測定計の導入によって、客観的にも鍼治療の効果を把握・評価して、適切な治療法を行えるようになりました。

・甲状腺眼症では甲状腺関連自己抗体(TBII、TSAb、抗TPO抗体)との関係が注目されていますが、当院で針治療を行っている患者さんについては、自己抗体の数値が高くても甲状腺眼症が軽く済んでいるということで、眼科から針治療を勧められるケースもあります。薬のような副作用の心配の無い適切な針治療は、活動期の甲状腺眼症の様々な症状を落ち着かせる効果を持つため、治療の有力な選択肢の一つになると考えています。

・千秋針灸院でのバセドウ病および甲状腺眼症に対しての針治療は、開業当初から行っており、実績や治療法自体の完成度も高く、慢性期(メルカゾールやプロバジールの服用終了後)の眼球突出や眼球運動障害を除けば、お勧めできるものです。遠方の患者さんには当院で初診を受けられた上で、全国規模での眼科鍼灸ネットワークを活用した、提携治療院での治療もお勧めします。


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関連リンク・参考文献


関連リンク


眼科領域の難病治療を提携治療院で (当院ページ)
●千秋針灸院での測定・評価法 (当院ページ)

参考文献

●参考文献・蔵書一覧 (当院ページ)
        


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