クローン病  ・私自身の病気であるクローン病は、患者さんの立場から手助けできる疾患です 本文へジャンプ
最終更新日 2018.7.17  1.010  

現代医学での概要と中医学での針灸治療
クローン病における生物学的製剤(レミケード他)治療について 
千秋針灸院で行う治療法について
針灸単独もしくは漢方・栄養療法などと併用した治療方針
当院での治療効果の実際
当院のクローン病の針灸治療についての統計症例報告
  2008.6.5 Web症例報告 Copyright © Chiaki. All Rights Reserved
よくある質問 
院長からひとこと 

現代医学での概要

・当院の治療は寬解期にあるクローン病が適応です。
 (入院中や腸閉塞により手術を伴う等の重症例は適応外と思われます。)

クローン病 CD
・原因不明に主に10~20代の若年者に発症する疾患で、特に回盲部に好発する慢性炎症性肉芽腫性疾患です。2008年現在で3万人に迫る患者数があり、病変は口腔から肛門までの腸管全域で発症し、全層性の潰瘍、炎症性ポリープ、肛門病変、口内炎など、様々な病変が見られます。進行すると狭窄や腸閉塞症状を生じます。吸収不良症候群であるため高カロリー、高蛋白食がとられ、入院安静が必要になります。一年内再発率70%、三年内再発率90%以上とされています。若年者に多いため心理的、社会的なサポートも重要です


・生涯に渡って症状を抑え炎症の再燃を防ぐために、栄養状態の管理と食事制限が必要になっています。
・現代医学では完治させる治療法は無く、進行を止めたり遅らせることが目標とされています。


・私のクローン病は外科的な手術歴はありませんが、入院5回と内視鏡下の処置、大量の下血による輸血を行っています。体重の減少(発症前より約15キロ減)、強い腹痛、頻繁な下痢や下血、微熱、疲れ易さが主な症状です。内視鏡による検査では縦走潰瘍は認めるものの狭窄は軽度ということです。薬剤は悪化時にプレドニン(ステロイド)、寛解時にサラゾピリン(最近ならペンタサ)、エンシュアリキッド(最近ならエレンタール)でした。当時の担当医師によると、重症ではないが下血の量や症状からは軽症ではないそうです。25年以上前の診断ですので、最近の診断法とは異なる部分もあるかもしれませんが、当院での針灸を併用した治療結果は、私と同程度までであれば比較的良好にコントロールが可能です。

・現在18年以上に渡り、全ての治療や食事制限は必要無くなっています。やや多い下痢と疲れ易さのみは残っていますが、体重は発症時より25キロ以上増加しているため、誰にもクローン病と信じて貰えないかもしれません。現在の私はクローン病に取り組む治療者でもあり、医療機関での治療に対しても、冷静に効果や結果を見つめて、患者さんの立場で本当に意味のある医療を、どうしたら提供できるのかということを考え続けています。


中医学での捉え方

・中医学では〔腸へき〕、〔赤沃〕などと呼ばれています。『素問・太陰陽明論』では、「食事が不節制で規則的に生活していない者は陰に影響を受ける。長引けば腸へきとなる。」と あります。腸へきは飲食の不節制により脾が運化しなくなり湿が体内に溜まったり、不規則な生活で外邪が虚に乗じて侵入し脾胃を損傷して起こるとされており、結果として湿熱や寒湿が結腸に溜まり腹痛や下痢が起こって便に粘液や血が混じるものです。
・治療は腎を温め脾を健全にする目的で温法と清法を併用します。

・中医学の「腸へき」は主に潰瘍性大腸炎やクローン病を連想させる症状ですが、分かりやすくいえば温法により腸の働きを高めて腹痛や下痢を抑え、清法により発熱や下血・炎症を抑えるということになります。
・中医学では矛盾する「温補と清熱を同時に行う必要がある」ことから、特にクローン病では大変難しい治療になります。この分野での経験の深い治療家でなければ対処できない疾患です。

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クローン病における生物学的製剤(レミケード等)治療について

・クローン病の治療薬として、生物学的製剤(レミケード等)が一般に使用されるようになり、10年以上が経過しました。生物学的製剤の登場により、従来の栄養(食事)療法やペンタサ(メサラジン)、ステロイド等に頼ることなく、腸管の炎症を抑え、下痢等の諸症状を軽快させる画期的な治療法となりました。しかし遺伝子組み換え技術により生まれた生物学的製剤は、その性質上、人間の基本的な防御反応である免疫反応によって抗体が作られやすく、投与を繰り返すと効果が弱まり、効果の持続期間が短縮される等の問題が生じてきます。そして効果の減弱を防ぐために免疫反応を抑制する薬剤が使われ、結果として免疫力が低下し、多くの患者さんで様々な免疫力低下に伴う副作用が生じている現状があります。

・私自身もクローン病の患者の一人であり、また全ての投薬や食事療法から離れ、実質的に治癒させている体験、また正常な免疫を高め病気を治療する自然療法の一つである鍼灸師という立場からすると、生物学的製剤が診断後早期から広く使用され、画期的とされている治療効果に比較して、免疫低下に伴う副作用が問題視されていないことが不思議でなりません。生物学的製剤は一回の注射で数ヶ月間症状を抑えますが、クローン病を完治させる薬ではありませんし、例えば結核の感染率は20倍にも高まるなど各種の感染症、過敏症をはじめ、悪性腫瘍等、体内で様々なトラブルを引き起こす可能性があります。副作用の発現確率は一説に25%とも説明されていますが、投与開始後から数ヶ月~数年して発症する遅発性過敏症等、当初は使用できても長期に渡り安心して使用できる薬剤では無いと考えられます。

・私はクローン病患者の一人として、また鍼灸師として、副作用の無い針灸によるクローン病治療を実用化してきました。重症例を含む全てのクローン病患者さんに適応できるわけではありませんが、外科的な手術を伴わない程度の比較的軽症例やクローン病の寬解期であれば生物学的製剤に頼らず、ある程度まで通常に近い食事が可能になり、下痢や腹痛等の症状は軽減し、体重の増加に伴い体力がつき、通常の社会生活が可能になることが分かってきています。針灸治療は一切の副作用の心配が無く、自然に健康な体を取り戻していける優れた治療法ですので、生物学的製剤治療に不安がある場合や、既に副作用が発現してしている場合等、クローン病治療の選択肢の一つとして検討していただけたら幸いです。

・生物学的製剤による治療と鍼灸治療の併用は、鍼灸治療により正常な免疫力が向上するため、生物学的製剤の治療効果を減弱させる恐れがありますので、当院ではお勧めできません。

主流のレミケードについて (当面の増悪期を乗り切るためには頼りになるものの、副作用のリスクも最大)

・クローン病治療の主流となっているレミケード(インフリキシマブ)は、マウス由来の遺伝子組み換え技術により実用化された生物学的製剤です。レミケードの投与により、クローン病の患者さんは一回の注射毎に数ヶ月間、従来のような食事制限や投薬を必要とせず、普通の社会生活が可能なほどの一時的な回復を得られます。しかし高確率の副作用と共に、レミケードの主成分であるマウス等の遺伝子に由来する異種蛋白は、遅かれ早かれ人間の持つ正常な免疫機能により、抗体(抗ヒトキメラ抗体)が作られ、徐々に効果を失っていきます。具体的にはレミケードの効果期間(通常8週間とされる)が短縮したり、効果が弱まったりという形で表面化します。

・レミケードの効果が、人の正常な免疫による抗体反応により減弱されるのを防ぐために、免疫抑制剤が併用される場合があります。免疫抑制剤は、様々な感染症に罹りやすくなったり、悪性新生物(癌)などの合併症もみられ、私も実際に癌を発症された方を診ています。正常な免疫が感染や癌などの発生を抑えているのですから当然の話です。米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)が警告を出したり、国内でも消化器内科の専門医などからも指摘されています。レミケードなどの免疫抑制療法は、癌や感染症を抑え込む免疫が慢性的に低下することが理由です。加えてレミケードの効果持続期間の短縮は現在までの課題であり、かつては通常の8週間毎の期間を短縮して6週間や4週間で投与された時期もありました。最近は規定の2倍量を投与する傾向ですが、レミケード自体が多くの副作用を持つ医薬品ですので、大量の投与は一定期間の快適な生活と引き換えに、患者さんは大きなリスクを負わされることになります。

・また嫌な話ですが医療機関にとってはレミケードは大変大きな収入になります。レミケードの薬価は一回約16万円(2バイアル・2016年)で、これを年6回(8週間毎)行うと100万円以上にもなります。(診察料や検査料を含まず) また規定の2倍量で投与を続ければ、患者一人当たり年200万円以上の収入になるのです。注射だけで済み入院も必要としないクローン病の患者は、一部の医師や医療機関にとって非常に効率の良いお客さんかもしれません。幸い高額療養費や特定疾患治療研究事業の対象になり、患者さんの負担はそれほど大きくはありませんが、クローン病の患者さんの抗体反応が強まり、通常の8週間という効果期間が徐々に短くなる状況に対し、規定の2倍量投与や免疫抑制剤の併用という安易な手法は、私には危険と思われてなりません。

・レミケードの効果持続期間の短縮が顕著になった場合、既に抗体ができているため何をしても効果を延長することは不可能です。(生命が危険に曝される位、免疫力を引き下げれば別です) 効果が6週間を切ってきたら、レミケードには見切りをつける時期と考えられます。間違っても2倍量投与や免疫抑制剤を併用すべきではなく、レミケードの持つ副作用や合併症のリスクを、患者さんが無理に背負い込む必要は全くありません。そもそも免疫を引き下げての治療自体が生命の在り方に反しています。私はクローン病を患ってから30年になりますが、レミケードを長期間、積極的に使い続けていけば、病気が治癒するという話は聞いたことがありません。

・ではレミケードが使えなくなったら、どうしたら良いのでしょうか。その答えは「原点に戻ること」です。元々クローン病は消化管での吸収障害が顕著になり様々な症状が出てきたものですから、消化の良い食品を選んで摂り、調子の悪い時はエレンタール等を利用して腸を休ませ、ペンタサやプレドニン等の実績があり副作用も把握されている薬を必要に応じて使いながら、体調を整えるべきです。十分な休息や睡眠をとり、適度に体を動かし、仕事でストレスを溜めないことも大切です。調子の良い時は何でも食べて抵抗力を付け、体を丈夫にすることを心がけていると、いつの間にか体重は増え、腹痛や下痢は少なくなります。私のように病歴が30年にもなる方は、元々こうして体を健康に保つ方向でクローン病を乗り切ってきましたし、健康を省みるきっかけにもなりました。

・また、残念ながら十分な治療実績を持った鍼灸師は少ないので針灸治療は敢えて勧めませんが、漢方薬なども含め体を丈夫にし抵抗力を付けていく方向で、時間をかけた取り組みをしていきましょう。職場等を含めた環境まで変えることが可能ならば、なお良いです。一見地味で時間もかかり、時間をかけずにとりあえず楽になれるレミケード治療とは正反対の方向ですが、結局当院の患者さんも含めて、クローン病の患者さんで本当に治癒していく(完全寛解)方は、こういう方向でしか有り得ないと思っています。

ヒト由来のヒュミラについて (レミケードより効果も副作用も弱く、積極的には使われない微妙な立場)

・レミケードに続いて、2011年10月よりヒュミラ・アダリムバブ(アボット)が承認され、治療に使えるようになりました。マウス由来の蛋白配列であるレミケードに比較し、ヒュミラはヒト由来の蛋白配列を持つため、レミケードよりは過敏症等の問題を引き起こし難いとされています。既存治療で効果が不十分であり、中等症または重症の活動期が適応であることはレミケードと同様ですが、効果、副作用共に若干弱いためか、最初からレミケードを使う医療機関が目立ちます。ヒュミラの使われ方は、レミケードの効果が弱くなってしまった患者さんに対して、ヒュミラを使ってみようという消極的な使われ方が多いように感じます。ヒュミラに乗り換えれば、正常な免疫による抗体反応を当面は回避することが出来るからです。

・しかしヒュミラもいずれはレミケードと同じ抗体反応が起こってきます。その時はまた免疫抑制剤で抗体反応を抑え、次の新薬を待つのでしょうか。本当に重症な患者さんでは申し訳ありませんが、レミケードやヒュミラに続く薬を使い続ける必要があるでしょう。ですが、実際のところクローン病の疑いや軽症程度でレミケードを勧められ、慌てて当院に来院される患者さんがほとんどです。レミケードの適用基準は中等度以上のはずですが、はっきり言ってかなり多くの医療機関で濫用されているといって間違いありません。現在のクローン病治療には莫大な医療費が見え難いところでかかっています。私は多くの話を聞いてきましたが、クローン病の疑いや軽症程度ですぐにレミケード等を勧める医療機関は、個人病院から大学病院までも含めて医療費の確保もしくは研究のための診断・治療と思われます。本当に患者さんのために治療を勧めているのかを、よく見極められた方が良いでしょう。

・最近の当院では針治療だけでなく、医師の処方による漢方薬等を併用したり、状況により専門医療機関による免疫抑制を行わない治療法(保険適応)をご紹介している場合もあります。あまりに強い活動期や重症の患者さんまでは対応できませんが、以前に比較して軽症から中等症まで、幅広い状況に対応可能となってきました。多くの患者さんに言える事ですが、レミケードやヒュミラ等は、免疫抑制を行わない治療法を試してからでも遅くはありません。何をしても効果が得られなかった場合の切り札に取って置くべきと考えます。免疫抑制の治療は最終段階での必要最小限の使用とすることが、最も健全なあり方と私は思います。

第三の治療薬ステラーラ (長期間効果が持続し易いと期待されている新薬、実際の効果判定はこれから)

・ヒュミラに続いて、2017年3月にステラーラ・ウステキヌバブ(ヤンセン)がクローン病治療薬として追加承認され、徐々に使われ始めているようです。ヒュミラと同じくヒト由来の蛋白配列を持ち、感染症の重篤化や発癌など免疫低下をはじめとした副作用がレミケードに比較して少ない等、ヒュミラの優位性を残しながら、既存のTNA-α阻害薬とは異なるアプローチにより、比較的抗体産生が生じ難く長期間効果が持続し易いことが改良点です。しかし治療効果はレミケードには及ばず、抗体産生も少ないながらも生じるため、実際的にはヒュミラの改良型という感は否めません。また効果判定には最大28週間と時間が掛かることも微妙ですので、急激な増悪期には向かないでしょう。しかし必発する抗体産生に対して三番目の選択肢ができたことや、12週に1回で済む投与期間の延長は、私たちクローン病の患者にとって朗報です。新薬ですので、実際の臨床での問題点は今後明らかになると思われます。

クローン病治療のこれから

・最近報告が始まっている腸内環境の改善(腸内微生物群の構成を操作し、炎症性腸疾患を改善)という方向性は、これまでの免疫を抑えて炎症を静めるという、従来のクローン病治療を根本から変えてしまうかもしれません。そして正しく治療に用いられた場合には、患者さんの健康に免疫低下のような過大な負担がなく、クローン病を根絶できる可能性さえ感じます。かつて私自身も上海に留学したことで食生活を含む生活環境が一変し、クローン病の症状の多くが落ち着いてしまったことは、腸内環境の変化と言い換えることができるからです。腸内環境を改善する方向での新しい医療が、生物学的製剤のような過度の医療費負担や副作用のリスクがなく、患者さんのために使われる事を願ってやみません。

・千秋針灸院には多くのクローン病の患者さんが来院されますが、じっくりと治療に取り組まれた比較的軽症の方では、治癒(完全寛解)するケースが半数程度にもなります。特に就職や転居、結婚など生活環境が大きく変わる場合では、症状が良くも悪くも変化することを度々経験します。先の腸内環境の変化に当てはめると生活環境が変わり、各種食材や油、水、調理法などにより体が摂取する成分が大きく変わることで、腸内細菌の構成が変わり、クローン病などの症状に影響してくるものと考えられます。私がいつも説明している患者さんのメンタル部分でのクローン病との関わり方に加えて、腸内環境を良い方向に変えることができれば、これまで以上に完全寛解は容易になるのではないかと期待しています。


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千秋針灸院で行う治療法について

・可能な限り「食べて治す」治療法です。体重を増加させて体力や正常な免疫力の強化を目指します。
 (現代医学での常識的な治療とは方向性が異なります。賛同いただける患者さんにお勧めします。)
 (基本的に寛解期が適応です。活動期は現代医学的な治療が必要です。)

・現代医学の治療薬とは併用可能ですが、特に免疫抑制剤等で治療を行う場合は注意が必要です。
 (レミケード、イムラン等の免疫抑制剤を使用する場合は、治療効果が相殺される恐れがあります。)

・病状にもよりますが比較的長期間に渡り、週に2回程度の治療が必要になります。
(体重・体力増加期=寛解初期は週に2回程度、もしくは漢方薬の服用と週1回程度の治療が必要です。)

・針灸により、主に腸での栄養吸収力を高めることや、下痢を起こし難くなることに重点を置いた治療を行っていきます。ようやく臨床例も集まり、当院は独自の治療法を一通り完成することができました。この結果として体重増加や正常な抵抗力(免疫力)を高めることにつながります。私自身の例でもあるのですが、十分な体重があれば、少々下痢等を起こしても容易に回復します。体重=余力と考えていただいても結構です。針灸治療を行うことで、下痢で大崩させないようにしつつ内科での薬物治療も併用して、十分な食事を摂り可能な限り体重を増やすことが第一段階です。

・遠方から来院される患者さんも多くなってきたため、鍼灸治療としては眼科鍼灸ネットワークを活用して、全国の提携治療院で治療が受けられる連携治療を取り入れ始めています。提携治療院で鍼灸治療を受けられる場合は、基本的に最初の1回のみの当院への来院で、以降は提携治療院での治療となります。また当院への来院回数を減らし、来院の負担を減らすために、有効な漢方薬を処方していただける医療機関をご紹介しています。当院の鍼灸治療と有効な漢方薬の服用を併用することにより、週1回の鍼灸治療でも週2回治療に劣らない治療成績が得られることが分かってきました。このことにより、比較的病歴の短い初期の患者さんでは、多くの場合に完全寛解に近い状態まで回復することが可能になりました。

完全寛解とは・・・食事制限無し、注射や服薬無し、漢方・鍼灸の治療無し、体重回復、腹痛や下痢等のクローン病特有の症状が無く、通常の日常生活が安定して続けられる状態です。千秋針灸院では患者さんの状況に合わせて様々な治療法を組み合わせ、可能な限り完全寛解に近付けていくことを目指しています。

・また軽症ではなく、中等症以上の患者さんに対しては、Gキャップ(顆粒球除去療法)を鍼灸治療と併用する試みを勧めています。Gキャップは血液透析の一種で、免疫低下を起こさない健康保険適応の治療法です。設備のある医療機関は限られますが、全国で受けていただくことが可能です。大腸型のクローン病には有効な場合があり、レミケード等を使用する前に試してみる価値はあります。Gキャップは免疫低下を起こさない治療法のため、鍼灸・漢方治療と併用することができ、中等症以上の状況を少しでも改善させることを目標とした場合、有力な選択肢に成り得ると考えられます。

・順調に一定まで体重を増やした後(5~10キロ程度を目安)、体調が安定していることを確認して、薬物(例えばペンタサ)から徐々に離脱することを目標になります。薬物治療からの離脱には良好な検査結果等を基にした医師の理解も必要になります。この段階は病気の状態に大きく左右されますので、全ての方に可能ではありません。その後は可能であれば、薬物治療からの完全な離脱と食事制限を無くす方向で治療を進めていきます。最終的には針灸治療も治療間隔を空けて、離脱=治癒を目標に、少しでも近づくことを目指していきます。

・レミケードをはじめとする免疫抑制を目的とした現代医学の治療は、正常な免疫力を高める針灸治療と作用を相殺してしまいます。針灸治療は免疫抑制剤等の副作用を抑える治療としても優れる可能性はありますが、本来治療の方向が異なりますので、十分な治療効果が得られない可能性があります。私としては例え現代医学の常識であるとしても、免疫抑制の治療は本来の姿ではないと考えています。当院のクローン病治療については、こうした方向性に賛同いただける患者さんにお勧めします。

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針灸単独もしくは漢方・栄養療法と併用する治療方針

・千秋針灸院では、主に以下に挙げる3通りの治療方法を提案しています。治療の途中から変更することも可能ですので、最良の結果を目指して下さい。なお全ての治療方法は、正常な免疫力を高めて効果を相殺してしまいますので、レミケードや免疫抑制剤など、病院での免疫抑制治療とは併用できません。また基本的に寛解期のクローン病が対象であり、入院中の場合や高熱・下血が続くような場合は、まずは病院での寛解期へ向けた治療が必要です。

○当院での針灸単独による治療
・ある程度状態が落ち着くまでの間は、概ね週2回程度の針灸治療を行い、体重増加などの症状が改善することを確認しながら週1回以下の治療へと移行していきます。診断が付いたばかりの初期や軽症な場合が主に対象となり、治癒(完全寛解)が得られた症例も少なくありませんが、病歴が長い、開腹手術歴があるなどの場合には、長期間に渡り週1回程度の治療が必要なケースが多くなります。また腸管に強い狭窄がある場合には、そもそも食事が摂れないため、十分な効果が発揮され難い傾向です。遠方などの事情のため、当初から週に1回以下の治療しかできない場合にも、効果が不十分になるケースがあるため、他の治療法との併用をお勧めします。

○当院の針灸治療と漢方薬を併用した治療(煎じ薬もしくは漢方製剤)
・クローン病に対して有効と考えられる漢方薬(多くは煎じ薬)を医師に処方していただき、針灸治療と併用します。この場合、針灸治療は当初から週1回のペースでよく、針灸単独による治療に比較して、やや症状が重く病歴の長い患者さんに対しても対応できます。ただし漢方薬が比較的高価な点や、ご紹介する医院まで通院する必要があること、処方される漢方薬が有効な症例は少なくないものの、誰にでも通用するものではなく、ストライクゾーンはそれほど広くないのが実際です。また腸管の強い狭窄に対しては、針灸単独の治療と同じく、あまり効果的ではありません。ある程度行ってみて難しい場合には、他の方法も検討すべきと思われます。針灸単独よりも、やや重症な患者さんが多いのですが、治癒(完全寛解)されている患者さんもあります。遠方のため当院で針灸治療を受けられない場合には、提携治療院での針灸治療と、漢方薬を併用していただくことをお勧めします。
※当院と、ご紹介する医院との間には、中立を保つため何ら利害関係はありませんし、直接コンタクトをすることはありません。また問い合わせの電話に対しては、先方に迷惑がかかるためご紹介できません。当院に来院された患者さんのみにご紹介いたします。

・効果は煎じ薬には及びませんが、入手性、取り扱いの簡便さ、服用のし易さ、価格などから、近年では漢方製剤を併せて服用する治療を選択される方が増えています。漢方製剤は医師による処方や薬局、インターネットでの通信販売で入手します。当院で推奨する漢方薬は種類は限られますが、患者である私自身が特徴を知るために数ヶ月以上の試験服用を続けてきた薬です。主治医に処方していただけるのが最良ですが、価格は保険適用にならない場合でも煎じ薬の3分の1程度です。漢方併用の場合、針灸治療は週1回からのスタートですので、時間も費用も最小で済みます。推奨している漢方製剤は患者さんの実際の症状や状況で変わりますので、遠方の方であっても電話での問い合わせ等でお答えはできないことをご了承下さい。

○当院の針灸治療と栄養療法を併用した治療
・腸管での吸収障害であるクローン病の本質に対して、針灸治療により栄養の消化・吸収を高めて、かつ良質で十分な栄養素の摂取により、医学だけでなく栄養学の観点から「食べて治す」を具体化した、当院独自の治療方法です。治療回数については、治療開始初期では週1~2回から始まり、徐々に治療間隔を空けていきます。長期間の病歴や比較的重症の症例、漢方薬でも対応できなかった腸管の強い狭窄を持つ患者さんでも2ヶ月で3キロもの体重増が得られ、日常生活における課題の多くは解決したケースがあります。

・現在のところ当院での針灸治療と共に、ご自身で当院の推奨する栄養素をインターネット上で購入していただくことになります。内容は来院された際に詳しくご説明いたしますが、この治療法に納得される患者さんだけにお勧めします。病院で行われている免疫抑制の治療とは、方向が異なるばかりでなく、従来の針灸や漢方といった東洋医学的な手法とも異なる試行錯誤の段階です。栄養素の内容や適切な摂取ペースなど不明な部分もあるため、当院に来院される患者さんのみへの説明とさせていただきます。
※当院と、ご紹介するフードメーカーとの間には、中立を保つため何ら利害関係はありませんし、直接コンタクトをとることもありません。また現在のところ、十分な検証に足る症例数が無いため、問い合わせの電話に対しても非公開です。当院に来院された患者さんで必要な場合のみにご紹介し、納得された方だけにお勧めします。

・病院での治療との併用が可能な例として、ペンタサ、サラゾピリン、エレンタール、プレドニン(但し暫減が前提)、Gキャップ(顆粒球除去療法)、切開を伴わない腸管へのバルーンやポリープ切除については、各治療法との併用が可能です。ただし状況によっては本来の回復が遅れる傾向もあるようです。病院での検査や適切な治療も受けながら、無理なく良好な状況に持ち込むことを目指すのが、当院の治療の特徴です。可能であれば治癒(完全寛解)を目標に、たとえ難しかったとしても免疫抑制治療などの副作用の心配をせずに、長期間の寛解期を目指して治療を進めていきましょう。

・クローン病は患者として30年以上、臨床家として20年以上関わってきた私自身と切り離すことができない病気です。この病気の患者さんの誰もが、クローン病に関わる症状や悩みから開放されることを、心から願います。


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当院での治療効果の実際

・クローン病では、1ヶ月あたり1~2キロ、半年で5~10キロの体重増加・体力増強を目指していきます。
 (体重は毎回申請していただきます。女性は秘密にして当初値プラス○キロでも構いません。)

・軟便や発熱、下痢、腹痛の傾向は治療を続ける間に緩和していくケースが多いです。
 (針灸治療を取り入れる前に比べて、疾患特有の症状は少なくなる傾向です。)
 (服薬をしていない等の初期、軽症例では治癒=完全寛解に近い患者さんが増えてきました。)


・レミケードなどの免疫抑制療法から鍼灸・漢方薬などの治療に切り替える際には注意が必要です。
 (長期間の免疫抑制療法を止める際は、高熱などの非常に強い反応を生じることがあります)

・寛解期でペンタサ、エレンタール等でコントロールされている方の多くは、針灸治療を取り入れることで、発熱や腹痛の症状緩和や下痢を起こし難くなり、排便回数も減少しています。また食欲は増し、体重は増加する傾向があります。当院では症状の変化とともに体重の推移に着目しており、特にクローン病では総合的な回復の目安としています。

・長期間に渡ってレミケード、ヒュミラ、イムランなどの免疫抑制療法を続けられてきた場合、レミケードなどの薬が効き難くなる抗体反応とは別に、免疫の自然な回復と共に強い発熱などの反応が起こることがあります。類似例として免疫不全状態であるAIDSの患者さんが、抗HIV療法により免疫能が回復する際に強い炎症反応を起こすもので、免疫再構築症候群(IRS)と呼ばれています。臓器移植後や抗癌剤治療でも起こる症状です。現在クローン病への免疫抑制療法ではIRSは問題にされていませんが、千秋針灸院に来院される患者さんからは、長期間に渡りレミケードなどを使用されてきた場合には、免疫抑制療法を中止することで発熱などの強い反応が生じることが分かっています。

・レミケードなどの免疫抑制療法から離脱する場合、投与開始から数ヶ月程度までであれば強い発熱などの反応は無いか、一時的な微熱程度で済むようです。しかし数年以上に渡って免疫抑制療法を続けられた場合には、中止してから本来の免疫が回復に向かう際に軽くて微熱、場合によっては39℃以上になる高熱が数ヶ月以上の間頻繁に起こるようです。夕方から熱が高くなる傾向があり、当院で熱を下げる針治療を行うことで一定度抑え込むことはできるのですが、患者さんによっては38℃以上の発熱が長期間続くことから針治療を断念して、免疫抑制療法に戻られるケースも出ています。

・最近ではレミケードをはじめとする免疫抑制療法自体への不安や合併症による狭窄の進行、効果の現弱から、鍼灸や漢方薬などの治療に切り替えたいとの相談が多くなっていますが、①免疫抑制療法をまだ行っていないか、開始から数ヶ月程度。②開始から数年までの期間で比較的状態は良好。③開始から数年以上で合併症や効果の減弱が目立つなどに分けられます。①では特に病歴が短い場合には免疫抑制療法は最後の手段であることから、できる限り開始時期を遅らせるべきであること。②では現在順調であるのなら、敢えて免疫抑制療法を中止する必要は薄いため、問題が生じるまで続けることも選択枝であること。③ではIRSに類似した強い反応を想定して、免疫抑制療法の中止を目指すことになります。どの場合にも想定を上回る問題が生じることがありますので、強い反応が出た場合には入院をはじめ柔軟に対応する必要があります。当院への来院時には詳しく説明させていただきます。


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当院のクローン病の針灸治療についての統計症例報告

・中医学によるクローン病への針灸治療      2008.6.5
・当院の取り組んでいるクローン病への針灸治療について、症例は寡少ですが統計報告が可能となりましたので報告させていただきます。クローン病への針灸治療の効果についての複数症例での報告は国内初になるものと思われます。
・なお評価方法として体重の推移を取り上げましたが、クローン病において体重の推移は病勢を判断するための最も重要な客観的数値の一つとなり、患者さんのQOLに大きく関わる指標です。


・患者数 男性5名 (クローン病と診断された方で、半年以上継続して鍼灸治療を受けられ、体重を報告された方)
・年齢層 17才~38才(初診時)
・罹患期間 診断後4ヶ月~4年 平均15.2ヶ月 
・期間 2006年11月29日~2008年4月22日 治療開始時点で概ね寬解期と思われる患者を対象とした。

※対象とした患者さんは基本的に投薬(ペンタサ・エレンタール)治療を中心とした方で、比較的軽度(寛解期)です。レミケードは使用していません。

・治療方法 中医学に基づき針灸治療(主に脾気虚)を、半年間を目安に週2回行った。
※詳細な治療方法等は、今後症例報告として学術大会などで公式に発表した際には、報告させていただきます。

・評価方法 起床時に体重を自宅の体重計で測定し、治療日朝の体重を報告していただいた。
※クローン病は体重減少を特徴のひとつとしており、総合的な状態の目安となります。現代医学の治療において通常体重を増加させることは困難であり、患者さんのQOL向上に大きく関わる課題となっています。

・平均体重の推移(5名)


当初59.4㎏、1ヶ月後61.2㎏(+1.8㎏)、2ヶ月後63.3㎏(+3.9㎏)、3ヶ月後64.5㎏(+5.1㎏)、4ヶ月後65.2㎏(+5.8㎏)、5ヶ月後65.5㎏(+6.1㎏)、6ヶ月後66.6㎏(+7.2㎏)鍼灸治療開始から半年間で、5名の平均体重は7.2㎏増加。全員の体重が増加しました。

※5名中1名は遠方のため治療開始当初から週1回の治療であり、体重の増加は2㎏未満と少なくなりました。 他4名の平均は8.5㎏の増加となり、内3名は発症以前の最高体重へと回復しています。


・体重以外の変化について
排便回数の減少、大便の性状変化(下痢→軟便など)、腹痛や腹部不快感の緩和、食欲改善、倦怠感の軽減、自覚として体調が良好に変化した等
※クローン病として病状に多少の変動はあるものの、上記期間内に特に悪化したとの診断はありませんでした。


・考察 針灸治療により、クローン病患者への体重増および諸症状が改善されたことが確認された。
※週2回・半年程度の針灸治療により、クローン病患者は平均5~10㎏程度の体重増加が見込まれ、下痢をはじめ特徴的な症状の改善と共に、患者QOLの向上に繋がることが明らかになりました。
※また週1回の治療では体重の大幅な増加は望み辛いものの、比較的軽度な症例(寛解期)であれば、様々な症状に対して有効であり、やはり患者QOLの向上に繋がることが明らかになりました。

※全ての患者さんでエレンタールが不要もしくは少なくなり、通常かそれに近い食事が摂取できるようになりました。

・課題 現代医学の治療方針との不一致(免疫抑制剤を中心とした治療法に対して相殺される傾向)
※現代医学では重篤な副作用リスクもある、レミケードをはじめとした免疫抑制剤を使用する傾向がありますが、針灸治療は免疫力向上や正常化を目標とするため、当院でも治療方針の不一致に突き当たることがあります。
針灸治療は寬解期であれば現代医学のみでの治療に比較して、良好な結果が得られると考えられますので、担当医師にも当院の報告から、状況に応じた選択肢を患者さんへ提示していただければ幸いに思います。
数十名の患者さんを診てきましたが、現代医学の治療方針との不一致による治療中止も過去にはありました。

・治療者である私自身がクローン病患者でもあることから、当院では患者さんの立場で治療や指導が可能であり、当院でのクローン病をはじめとした下部消化管疾患・症状への改善に大きく寄与しているものと思われます。
・当院はIBD、IBS(クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群など)について、数十名の治療実績を持ちます。今回クローン病では寡少とはいえ、国内初となる針灸治療による複数症例での報告に至り、これまで当院に来院いただけた患者の皆様に感謝いたします。 
2008.6.5 Web症例報告 Copyright © Chiaki. All Rights Reserved

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患者さんからのよくある質問


Q.針灸治療はどのくらいの期間で効果がみられますか?

A.3年程の寛解維持を目標に、まずは3ヶ月後に少しでも症状の改善を目指したいところです。

・クローン病は1年以内の再燃率が70%、3年以内では90%にもなり、数年に一度は入院が必要になるほど症状が悪化する確率が高い病気です。逆に言えばレミケード等に頼らず3年程を過ごすことができれば、多くの場合に治癒(完全寛解)もしくは良好な寛解状態で落ち着いていることになります。このため焦らず長期的に針灸治療や生活環境の改善に取り組むことが大切です。実際に治癒(完全寛解)に向かう患者さんは、数年単位で取り組まれた方がほとんどです。患者さん毎に異なりますが、元気だった頃のように体重が増えたり、症状が落ち着いたり、好きな食事が摂れたり、医薬品が不要になる等の変化がいつの間にか起こってきます。

・病歴や病状、服用している薬品も関わりますが、治療開始から3ヶ月程度で体重や便の状態、腹痛等の症状の一部が変化し始める症例が多いです。その後は治療を継続することで更に改善する傾向です。クローン病といっても症状の出方や病気の状態は様々です。やはり病歴が短く、体重の減少が少なく、手術歴が無い、服薬が無い、レミケード未使用、腹痛・腹張や便の状態に問題が少ない等、軽症な方ほど回復が良好です。特に漢方薬を除く医薬品の服薬が無くなれば、治癒=完全寛解となり、症状の大部分が消失し、治療や制限が不要となった方が15名以上もあります。完全寛解に到達した患者さんは、予防的に数週間に一度来院されたり、時々少し調子が落ちると、一時的に来院されています。

Q.クローン病の診断で入院しました。退院直後から針灸治療を始められますか?

A.退院後直ぐに針灸治療は始められますが、注意点もあります。
・クローン病は入院すると絶食などにより、必ず症状の大部分は回復しています。しかし症状が落ち着いた状態で退院され自宅での食事を含めた療養が始まると、レミケード等を行っていないければ多くの場合に入院前の状態へと悪化してきます。特に退院後の数ヶ月は再入院の確率が高く、自宅療養がしっかり行われないと針灸治療を開始したとしても、ズルズルと悪化して入院が必要になる可能性があります。針灸治療を選択される場合には、レミケード等は避ける必要がありますが、当面の食事制限などには十分に気をつけて下さい。

Q.積極的に食べることで体重を増やすということですが、本当に何でも食べてもよいのでしょうか。

A.どうしたら食べられるようになるかを話し合いながら、患者さんに合った方法を見つけていきます。
・当院ではマーガリンやショートニング等の一部のトランス型合成脂肪酸などを除いて、基本的に全ての食事制限を行わないことを目指しています。ただし様々な食事制限をされていた患者さんが、急に何でも最初から摂取することは、胃腸への負担も大きなものになります。当院では患者さんの状況に合わせて、少しずつ多様な食事を摂取して慣れさせ、食事への自信を無理なく取り戻していけるようアドバイスをしていきます。

・食事制限を解除する作業にはあせりは禁物で、本当に少しずつ、時にはエレンタール等に戻りながらも、前向きに取り組んでいく必要があります。クローン病では避けるべきとされる食品が多く挙げられていますが、根拠となる報告は大量の摂取時などの特殊な状況下の場合もあり、本当に避けるべき食品はそれほどシビアに考える必要はありません。私自身もそうでしたが、クローン病の患者さんにとって、食事制限の解除はあたりまえの願いです。

Q.狭窄が酷く腹痛が強いため、固形物が食べられません。針灸治療は有効ですか。

A.ある程度までの狭窄には対応できますが、物理的な強い狭窄には治療効果に限界があります。
・炎症による多少の狭窄があっても、針灸治療を行うことで基本的に炎症は抑えられ狭窄は軽快することから、腹張や腹痛は起こしづらくなります。しかし物理的な強い狭窄がある場合には固形物を多く摂取すると、どうしても腹張や腹痛が起きてしまいます。こうした場合には狭窄部位をバルーン(内視鏡的狭窄拡張術)で広げることで、狭窄が改善され、その後良好に回復した症例があります。手術でメスを入れることは、できるなら避けたいですが、バルーンが適応であれば内側から広げるだけですので、安全かつ回復も良好です。(内視鏡的狭窄拡張術は状況により、適さない場合があります)

・ある程度まで針灸治療を行ってみて、固形物を摂取した際に腹張や腹痛が改善しない場合には、針灸治療では解決しない強い狭窄が考えられますので、何らかの形で狭窄を解決ことも検討する必要があります。当面は体重減にならないよう多めにエレンタール等を摂取していただき、場合によっては物理的な狭窄を改善する外科的な治療も検討すべきです。一旦狭窄が改善されれば、当院の針治療も行うことで充分な食事ができるようになり、体重増をはじめ様々な症状の改善が期待できます。また外科的な治療を避けたい場合には、当面は針灸治療で消化・吸収力を高めて体重を増やし、状況が変わるのを待つ場合もあります。

Q.他の治療院で針灸治療を受けていますが、状態が不安定です。

A.クローン病の治療に必要なものは、治療方法や技術だけではありません。本物の治療院を見つけてください。
・クローン病の治療は決して容易ではありません。多くの患者さんで比較的良好な結果が得られている当院でも、通院状況や病気の状態によっては順調に改善しているとはいえないケースがあります。クローン病の病状には必ず波があり、単に治療の上手・下手だけでなく、状態の良くない時に、どのように心理面を含めたサポートができるかが、病状を左右する傾向が強いです。様々な状況へのサポートは私も勉強中ですが、実際にクローン病からの回復を経験している者にしか、どうしても分からない部分が確かにあります。私見ですがクローン病の症状の半分は、強く前向きな気持ちや目標、自分の健康や生活への自信を取り戻すことで改善します。これまでの医療の枠だけでなく、日常生活から患者さんの意識までサポートできる幅広い内容が必要と思います。

・最近はインターネットの普及で、クローン病に取り組まれている鍼灸治療院も増えているようですが、病気自体への理解や治療結果を検証せずに「治る・良くなる」などと宣伝している場合も少なくありません。まず先生と病気や症状について、納得のいく話ができたでしょうか。レミケードやヒュミラなど主な治療ですら、よく知らない先生が少なくありません。また鍼灸治療を始めるにあたり、患者さん毎の課題や評価点は明確でしょうか。鍼灸治療の効果が正しくある場合には、体調全般の改善、体重増や排便回数の減少、腹痛や発熱の軽減、便の性状の変化など、当初の課題のいくつかは変化が見られます。カルテに経過が記載され、課題や評価点を明確にして治療を進めている治療院は、残念ながら多くはありません。症状や状況によっては充分な結果を伴うことが難しい場合も少なくないのですが、病気に真剣に向き合っていただける、本物の治療院に出会えることを願っています。


Q.レミケードの効果が薄れてきたので、針灸治療も考えたいのですが、担当医師に理解していただけますか?

A.クローン病への針灸治療は、日本の医療においては一般的ではありません。
・特定の大学病院等、一部の医療機関で取り入れている場合もありますが、健康保険制度の関係(保険医療機関内での混合診療の禁止)から一般的に行われているものではありません。また医学部での教育としても、ほとんど行われていませんので、一般に医師は針灸について理解されていません。このため当院に来院されている患者さんも、最初はレミケードからの離脱に苦労される方があります。

・レミケードを受けられていた患者さんの多くは、効果の薄れたレミケードは中止して、ペンタサやエレンタールは続けつつ、必要な検査は受けながら針灸治療を受けられています。医師もCRP等の血液検査や内視鏡検査、患者さんの状態といった実際が良好であれば、無理にレミケードを勧めることは無くなります。このため治療者である私は、常に結果と向き合いながら治療に取り組んでいます。


・レミケードをはじめとする免疫抑制治療は特に長期間続けたものを中止することで、AIDSなどで見られる免疫再構築症候群(IRS)に類似した高熱などの強い反応を生じることが多く、こうした反応をできる限り抑えるための針治療や詳しい説明は十分にさせていただきますが、想定を上回る強い高熱などを生じることがあります。IRSに類似した症状の出方によっては入院なども柔軟に考えていただくと共に、ある程度の期間は強い反応が続くことを念頭において免疫抑制療法の中止を検討して下さい。

・強い反応として多いのは高熱が最も多く、午前中は概ね平熱に近い傾向ですが毎日夕方をピークに38℃を超える高熱が連日続きます。レミケードの効果が切れてから1~2ヶ月後が最も高熱が出る時期で、その後は徐々に38℃を超える発熱は少なくなりますが、微熱が続いたり時々高熱が出ることもあります。また痔などが悪化している患者さんでは高熱が出やすい傾向もあります。当院での針治療により、ある程度発熱への対応は可能ですが、患者さんによっては強い反応が生じることをご理解下さい。なおこのIRSに類似した反応は鍼灸治療を行っていなくても、レミケードの効果が切れてくると自然に生じる症状で、レミケード等への依存が強い(長期間・倍量投与など)ほど激しくなるようです。

Q.クローン病の治療でお勧めする医療機関はどこですか?

A.意外と思われるかもしれませんが、先進・専門の医療機関はお勧めしません。
・最近のクローン病治療の流れは、極端なレミケード・ヒュミラ等の免疫抑制を主とした治療に偏重しています。したがって専門的にクローン病治療に取り組んでいる医療機関ほど、クローン病の疑いや初期の頃から免疫抑制治療を強く勧める傾向があります。もしも免疫抑制を中心とした治療に疑問を持たれたなら、普通の公立病院(市民病院など)を選ばれた方が、必要以上に無理な治療は勧めない傾向です。当院で漢方薬を併用していただくためにお勧めしている医療機関は、先方にご迷惑をかけないよう公開はしませんが、免疫抑制治療は行っていません。またGキャップ(顆粒球除去療法)がおこなえる医療機関は、検索すれば全国にあることが分かります。

Q.先生自身のクローン病は、本当に治癒(完全寛解)しているのですか?

A.私自身のクローン病は、医師から治癒(完全寛解)の診断をいただいています。
・私自身のクローン病については、クローン病から針灸へ にも書いたように、現在は通院をしておらず、一切の服薬や食事制限も行っていません。ただし健康状態については腹痛等はありませんが、体力的に乏しく、便通は良好とは言えません。18年以上に渡って通院や検査はしていませんが、最後に行った大腸ファイバーの際に、担当医から「治癒しています」と言っていただけました。このため全ての食事制限や服薬等の治療から離れることが可能になっていますので、完全寛解といって差し支えないものです。

Q.どれだけの患者さんが治癒(完全寛解)されているのでしょうか? 治る患者さんの共通点は?

A.治癒(完全寛解)された患者さんは15名以上、病歴が短く手術や免疫抑制を行っていないことが共通点です。
・当院では針灸治療法や療養指導が共通しているクローン病や潰瘍性大腸炎について、医師による確定診断や強く疑われる診断が出ている場合に、IBD(炎症性腸疾患)として治療を開始します。針灸治療を開始してから医師の診断が変わり、最終的に病院での全て投薬治療などが不要になり、ほとんどの症状が解消するなどして日常生活の制限が無い場合には、治癒=完全寛解として差し支えないものです。この場合、患者さんは針灸治療も終了していたり、体調管理のために月に一度程度来院される程度です。当院で半年程度以上、治療を続けられたIBD患者さんの2~3割の方が数年後には完全寛解に向かいます。病歴が短く、症状が比較的軽い場合には、半数以上で完全寛解が得られています。

・当院で針灸治療を始められ、治癒された患者さんの共通点は、発病から数年以内と病歴が短く、開腹手術や免疫抑制の治療(レミケードなど)を行っていないことが挙げられます。入院歴の有無やステロイド、ペンタサ、エレンタールまでの服用は、回復は遅れる傾向はあるようですが、結果的に問題は無いようです。40代・50代で診断の付いた患者さんも治癒したケースもあり、年齢は関係有りません。病歴が長くなったり、開腹手術やレミケード等を続けてきた患者さんでは、やはり治癒は無いものの、体重増や症状、食事制限の軽減、入院や手術の回避など、比較的良好な経過を長期間続けることができるケースが多く、概ね当院で半年程度以上、治療を続けられたIBD患者さんの半数の方が相当します。

・逆に過去に順調に回復されなかったケースに共通する内容として、エレンタールなどに頼り過ぎて頑なに食事制限を続けるため、いつまでも体に力がつかないケースが挙げられます。生命維持のための最小限度の栄養しかないエレンタールと、過剰に制限された僅かな食事のみでは、そもそもが腸管の吸収障害であるクローン病に対抗することはできません。過剰に制限された食事という点では、インターネット上に溢れる情報も裏目に出ている場合が少なくありません。クローン病が栄養の吸収障害という点を理解すれば、どんなに優れた治療法を受けられても、乏しい栄養素では決して回復しないことは当然の結果です。上海に留学していたころの「クローン病は食べなければ治らない」という話は、当院の治療では「十分な栄養を摂る」に変わりましたが、やはり本物と言えるでしょう。

・また最近まで腸管に強い狭窄があり、十分に栄養を摂取することができない場合には、エレンタール以外を受け付けず難しいケースがありましたが、当院の鍼灸治療に栄養療法を加えることにより、体重が増え体力が付くことで、狭窄に伴う痛みも軽減したケースがあります。他では痔の手術後に高熱が続くなどして、針灸治療を続けられなくなったり、レミケードなどの新薬が登場すると医師の勧めもあり、そうした治療を選択されるケースの場合には、針灸治療と両立は難しいため治療の終了をお勧めすることがあります。狭窄に対して十分に対応できなかった過去の症例を含めて、当院で半年程度以上、治療を続けられたIBD患者さんの2~3割の方は、残念ながら治療が成功したとは言えない結果でした。

・多くの患者さんを診せていただている私は、治癒したり格段に調子が良くなるケースとして、環境の変化が非常に重要であることに気がついています。特に高校生や大学生の場合には、その後の進学や就職などで生活環境が大きく変わることで、同じ針灸治療を続けていても格段に回復されることが少なくありません。大抵の場合に病歴が短いことも手伝って、半数以上の患者さんで劇的に回復するようです。そういえば私自身も当てはまっていました。また職場の変化も同様です。最近研究が進んでいる腸内環境の変化が生じていると言い換えることができるかもしれません。

・クローン病の診断が付くと、本人もご家族の方も必死で回復を目指されるのですが、多くの病気は発症までの環境から生じるものです。環境を変えるということは簡単ではありませんが、発症初期に上手く環境を変えることができれば、容易に治癒してしまう可能性が少なくないことは、長年この病気を患い、また臨床家として多くの患者さんを治療させていただいてきた経験から、間違い無い内容です。必ずしも鍼灸治療を選ばれなかったとしても、できるところから始めてみてください。


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院長からひとこと


○診断がついた直後など病歴が短い時期は、比較的高い確率で完全寛解(実質的な治癒)を達成可能です。

・初めてクローン病の診断が付く時期は、軽症から重症まで様々な状況がありますが、例え重症の場合でも入院して絶食などを行いながら少し時間が経つと症状は落ち着いてきます。退院後は急に以前の食生活に戻さないよう注意が必要ですが、病歴が短く手術歴がまだ無い状況であれば、比較的高い確率で完全寛解を目指すことができます。また入院中に数回までのレミケードを行ったとしても、その後に完全寛解が得られた症例もあります。特定疾患ということに名前負けせず、「完全寛解」を目指し前向きに治療に取り組みましょう。

・私自身がクローン病の患者でもあることから、当院へは非常に多くの問い合わせや来院があります。医師からの話としてもよく耳にすることですが、「この病気は病名を告げられると一層悪化していく傾向がある。」といいます。最近ではインターネット等にも数多くの情報があり、深く調べるほど不安になり、日常生活への自信を失い、精神的なストレスからも症状を悪化させてしまう方が増えているようです。薬物を用いない適切な心理的なサポートも必要かもしれません。

・またクローン病と診断されると、比較的軽症にも関わらずレミケード等の治療を勧められる場合があります。この治療は高確率での副作用、長期観察例が無い事、更に悪性腫瘍や致命的な経過を辿るケースさえあるものです。この治療さえも疾病を完治させるものではありませんので、安易に使われるべきではなく、病勢が強く他の有効な治療手段が無い場合の最後の手段の一つとされています。やむをえない場合もあるのですが、私自身クローン病を持つ一患者として、治療方針を決定する際には熟考されることを願うばかりです。


○レミケードを行う前に適切な鍼治療や漢方など、副作用の少ない安全な治療法を試してみて下さい。

・私自身の病気のことはクローン病から針灸へに紹介させていただいています。おかげさまで私自身のクローン病は、中医学の診断・治療から以前に比べはるかにコントロールが可能になりました。一般にクローン病発症後、10~15年も経つと腸の狭窄の進行など、大きな問題が生じてくるのですが、発症後30年以上の私が完全に服薬無し・食事制限無しで済んでいる事例から、現代医学的な治療が必ずしも正しい選択とは限らないということを知っていただけたらと思います。

・慢性化し、何度も入退院を繰り返し、腸の状態を悪化させてしまうと一筋縄ではいきませんが、そもそも全ての病気はある日突然発症するわけではありません。元々の素地(体質)に加え、発症するまでの長い過程が必ずあるものです。そしてクローン病も含めた多くの病気は「ある」と「なし」の二択ではなく、多くは
「健康」-「やや健康」-「不健康」-「病気・初期」-「病気・中期」-「病気・末期」と連続しているものです。「健康」-「胃腸虚弱」-「IBS=過敏性腸症候群など」-「IBD=炎症性腸疾患」と言い換えることもできます。つまり治療方法の選択によってはクローン病も「健康」な状態に近づけていける可能性があり、針灸や中薬(漢方薬)をはじめとした中医学の治療は、容易ではありませんが治癒へ向かう道筋を持っています。

私もクローン病と診断され、国の指定する特定疾患ということで精神的に落ち込んだ時期もありました。しかし病気を調べ、攻略法を見つけ、ついには治癒(完全寛解)を実現できました。自分で調べた漢方薬も合っていたのでしょうが、重要なポイントは病気と向き合う中で私自身の価値観が変わったことだと思います。
「体を壊すほど仕事をして稼ぐ必要は無い=高収入より面白い生き方を選ぶ→好きなことを仕事にする」「現代医学では回復不可能=他に病気を攻略する方法を考える→自分で治療法を編み出して治す」
という図式の答えが中医学による針灸治療でした。なにせ自分自身が治療家であることは何よりも心強いです。クローン病は半分くらいは「気持ちの持ち方」で状態が変わってきます。誤解を恐れずに言えば「病気を過大に評価しない」こと、「こうでなくてはいけない」という固定観念を変えることと思います。

○栄養の吸収障害であるクローン病は、健康な方以上に十分な栄養摂取が必要になります。

・当院に来院されるクローン病の患者さんには、皮膚炎等の様々なクローン病以外の症状がある場合があります。これは薬物による副作用や、栄養状態が関係している場合が多く、特に「○○を食べてはいけない」と頑なに思い込んでいる患者さんに見られます。様々な避けるべきとされる食品を摂らないことで、結果的に偏った栄養バランスになることから生じる症状は少なくありません。当院では可能な限り普通の食事を摂ることを目指していますが、難しい場合にはマルチビタミン・ミネラル等のサプリメントなども必要になる場合があります。クローン病は「○○を避けること」が本当に必要なことか、栄養学の観点からも検討されるべきと思います。

・例えば菜食主義の方が、間違って肉などを食べてしまうと発疹が出たり、体調が悪くなったりします。普段食べることを避けているから当然の結果です。クローン病の患者さんも普段避けていたものを急に食べたりすれば、当然同じように体への影響が出てきます。これを病気に悪いとマイナスに考えて、ますます避けることで食べられないものが増えていき、結果として栄養が偏り体力や回復力の無い体になってしまいます。食事は病気からの回復の基本です。良質で様々な食事をしっかり摂り、できるだけ薬剤に頼らず本物の回復を目指して下さい。

・クローン病は自分自身の病気ということで、やっぱり深い思い入れがあります。現在のところ当院は眼科領域を専門としていますが、私自身の病気であり、この難病を完全に克服できた体験からクローン病(消化器系疾患全般を含む)への針灸治療こそが、本当に「私にしかできない役割がある分野」と思います。最近では、特に発症からの期間が短かったり比較的軽症であれば、鍼灸治療をはじめとした様々な治療法で多くの患者さんが、完全寛解やそれに近い状態まで回復することが分かりました。最初からレミケードやヒュミラに頼る必要は全くありません。順調に回復された患者さんでは医師の診断が変わってしまう(最初からクローン病ではなかった・・・)ことも度々です。治らない病気と決めてかかっているから、最初の診断を変える必要が出てくるのでしょう。

・この病気を持つ全ての方が、少なくとも私と同程度までに回復されることを願ってやみません。中医学や針灸治療が少しでも手助けになれば幸いです。
 


参考文献 


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   本ページの内容は現代医学及び中医学、千秋針灸院の治療実績に基づいて書いているものです。
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