頼忠終章E



「あまりにも夢のようで、上手く気持ちの切り替えが出来ないようです。」


貴女に抱き締めて貰う度に。
貴女から「好きだよ」とのお言葉を頂く度に。
誘われ魅せられ惑わされる度に。
私は嘘をつく。

毎日伝えてくれるその言葉が信じられないのではありません。
貴女の心を疑っているのではありません。
あまりにも嬉しくて我を失ってしまいそうになるのです。
貴女の御心を手に入れられた事が。
貴女がずっと頼忠を想っていらしたという事実が。
貴女が苦しんでいらした原因が、この頼忠との別れだったと言う事が。


その言葉を素直に受け取ってしまえば。
貴女以外の全てを捨て去ってしまいたくなる。
源の名も。武士としても立場も。友人も仲間も。そして家族、一族の者も。
貴女だけを考えて。貴女だけを見つめて。貴女だけを抱き締めて。
貴女の為だけに、生きたい。

しかし、それはあまりにも危険だ。
織姫を愛し過ぎて織姫から引き離された彦星のように。
信用を失った挙句、
お慕いする貴女を失わない為に。
貴女をお独りにしない為に。

だから、貴女に抱き締めて貰う度に。
貴女から「好きだよ」とのお言葉を頂く度に。
貴女に溺れて己を見失う前に。
私は呪文を唱える。
「あまりにも夢のようで、上手く気持ちの切り替えが出来ないようです。」と。
一瞬でも、間を空ける為のその嘘を。
ひとかけらの理性を繋ぎ止める呪文。
ほんの僅かでも冷静さを取り戻す呪文。


頼忠の傍に居たいと貴女がおっしゃるから。
私は貴女の生命を愛しいと思うように、頼忠の生命を惜しむ。
この幸せな日々が何時までも続くようにと願う。
貴女と共に、歩き続けたいと祈り続ける――――――。






注意・・・本編08Cからの別バージョン。
     向こうが現代EDだったので、こちらは京EDで書いてみました。
     『織姫と彦星』のお話、花梨は頼忠にお子ちゃま用の絵本の内容で話しました。

他の終章とは違う雰囲気にしようとしたら、幸せすぎる頼忠になりました。
こういうのもアリかな、ってね。

創作過程

2005/08/27 22:09:37 BY銀竜草


ミーシェン様。
細かい所を手直ししたので、向こうよりは読み易く、解り易くはなったと思うのですが、いかがでしょうか?それでも、心理描写が甘いと言うか不自然と言うか、「まぁ、ちょっと・・・・・・、ねぇ?」な話には変わりありませんが。
万が一、「一応記念だから貰ってやろう」との考えが頭の片隅に浮かびましたならば、本編序章、01〜05、06〜07B&Cと共にお持ち帰り下さい。(スゲー迷惑・・・大汗)
※追伸※
今月末(2005・12・31)で向こうのは削除致します。読み比べたいなどとお思いでしたら、今の内にお持ち帰り下さいませ。


頼忠13E 花梨終章E

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