頼忠終章C |
視線を感じる。 貴女は何時も訝しげに私を見つめている。 私が貴女に疑問をぶつけない事が、 そんなに不思議ですか? 私が失った記憶――――――。 貴女と契りを結ぶきっかけは何だったのか? どのような夜を過ごしていたのか? そして、貴女が悩んでいらした事。 貴女は何を不安に感じ、頼忠の何処に不満に思っていらしたのか? 貴女が私に相談出来なかった理由は何だったのか? お独りでお帰りになられる決意をされた決定的な原因は何だったのか? 私の記憶を封じる事を願ったのは、どのような理由か? 気にならない訳は無い。 むしろ、知りたいと思っている。 しかし。 話したくないのなら。話せない事ならば。 無理にお訊きするほどの事ではない。 貴女を追い詰めて苦しめる事など、出来はしない。 今宵も貴女を抱き締めて眠る。 トクントクントクン・・・。 貴女の胸に頭を乗せて、心臓の鼓動を聴いている。 トクントクントクン・・・。 温かくて優しいその音を。 トクントクントクン・・・。 貴女は此処に居る。頼忠の腕の中に。 トクントクントクン・・・。 この頼忠の頭を抱き締め、優しく髪を撫でる貴女が。 トクントクントクン・・・。 これ以上、何を望むというのか? あの日々、不安で苦しんでいたと言うのなら。 頼忠を信じる事が出来なかったのなら。 お独りで涙に濡れていたのなら。 過去に拘っている暇は無い。 そんな時間があるのだったら。 今の貴女を幸せにする事を考えよう。 貴女は、何を好むのか? 貴女は、この頼忠に何を望んでおられるのか? どうしたら笑って下さるのか? その美しい瞳を、一瞬たりとも曇らせない為に。 その清らかなお心を、二度と傷付けない為に。 ずっと頼忠の傍にいたいと思って下さるよう、 今を大切にし、明日を見つめよう。 それが私の生きる理由、目的――――――幸せなのだから。 |
頼忠C編終了。 補足・・・古典の物語を読むと、嫉妬心ははしたない、醜いとかで押し殺しています。秘密を知りたくても、無粋とかで無理に追及しません。なので、ここでは頼忠は花梨に無理に訊こうとはしません。話させる事で心に傷を負わせるぐらいなら、二度と離れられないように自分が愛される努力をしようと思っています。 花梨の意思を確かめずに強引に追い掛ける頼忠が書きたかった。その後は大人しくなりすぎてしまいましたが。 何だかんだ悩んでも、私の書く頼忠は前向きですね。グルグル悩んで苦しんだ後は、花梨ちゃんと二人で幸せになって欲しいと言う、私の願望が入り込んでしまうようです。 もっと二人の感情を書きたかったのだけれど、どうも不自然な文章の繋がりになってしまって断念。 長らくお付き合い下さいまして、ありがとう御座いました。 |
共通の後書き |
2005/02/27 03:05:17 BY銀竜草 2005/07/14 00:46:22 BY銀竜草(終章追加) |
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