花梨08A |
眼が覚めた花梨は、自分が見慣れない部屋の中にいる事に気付いて戸惑った。 「えっと・・・ここはどこ?」 記憶を探るが。 「あれ?・・・・・・・・・。ちょっと待って。」焦りと恐怖の感情が湧き上がってくる。「落ち着け、花梨。最初から一つずつ考えれば大丈夫。うん、大丈夫。」 自分に言い聞かせてから、深呼吸する。 そして――――――。 次から次へと、女の人が挨拶に来てくれる。だけれど、やっぱり私には誰が誰だかさっぱり解らない。初対面のような気がするけれど、親しい人達らしい。寂しそうな、悲しそうな表情をされてしまう。涙ぐむ人もいるけれど、記憶が無い私の気持ちは想像出来ないらしい。身体が震えてしまうのを止めようと、手をぎゅっと握り締めた。 「神子。」 そう言って入って来たのはきれいな男の人。一見すると無表情だけれど、心配そうに見つめてくる優しい瞳が、信頼出来る人だと解る。 「『みこ』?私の名前は『花梨』だよ。『みこ』じゃないよ?」 その男の人は側に来ると、目を瞑ってしまう。何だか解らないけれど、その行動には何か意味があるのだろうと黙っていると。 「龍神、か・・・・・・。」 呟いた。 「りゅう、じん?」 この人は何を言っているのだろうと首を傾げていると、やっと説明をしてくれた。 「つまり・・・神様が私の記憶を閉じ込めてしまった、と言う事?」 「そうだ。」 「戻るの?」 「解らん。」 「解らんって、戻らないと困るんだけど。」 困惑してしまうけれど。 「龍神がお前の望みを叶えたのだろう。だが、記憶を取り戻したいと願って戻るかどうかは解らん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・。」 「―――皆に報告して来る。」 そう言うとさっさと室から出て行ってしまい、私は一人取り残された。 「・・・・・・・・・記憶は戻らないかもしれない?」 自分が何者であるかも解らない不安から解放されたい。 だけれど。 私に何があったのだろう?名前以外全て忘れてしまいたいと願った程の、辛い思い出があるのだろうか?誰かを傷付けた?誰かに傷付けられた?取り返しの出来ない過ちを犯した?思い出すのが怖い・・・・・・。 「花梨様。」 『みこ』と呼ばれるのがどうも落ち着かないから名前で呼んでと言ったら、『様』付け。『花梨様』と呼んで貰えるような偉い人間だとは思えないんだけど・・・。 「はい?何ですか?」 いくら呼ばれても違和感は消えないけれど、返事をする。みんなも私の記憶が無い事で十分戸惑っているのだから、これ以上無理強いは遠慮しよう。 「ご友人の方々がご挨拶に参りましたが、お会いになりますか?」 「・・・・・・・・・(ビクッ)。」 友人・・・・・・。私が忘れてしまった事は伝えてあるだろう。これ以上、悲しそうな寂しそうな顔を見るのは申し訳ないし、辛い。それに・・・・・・。 「ごめんなさい。疲れちゃったから、もう休みたいです。」 もしかしたら、記憶を無くした原因の人が居るかもしれない・・・・・・・・・。 「そうですか。では、そうお伝え致します。」 そう言って立ち去ってくれて、ホッとしてしまう。今は会いたくない。このまま逃げ隠れ出来る訳ではないけれど。誰にも会わないで済むとは思えないけれど。でも、今はまだ・・・・・・一人でいさせて。 その日以降。 友人だと言う男の人達が次々と挨拶に来てくれるけれど・・・・・・御簾から出る事は出来ない――――――。 注意・・・ゲーム終了後。 |
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