花梨07A |
ズキっ! 「痛いっ!」 ズキっ!ズキっ! この痛みは・・・・・・アクラム? ズキっ! シャ、ン。シャ・・・・・・ン。 「龍神様・・・、ごめんなさい。アクラムに会いに行きます。」 鈴の音を頼りに一条戻り橋まで来てしまう。 でもアクラムの姿は見えなくて、諦めて帰ろうかと考え始めた時。 「・・・来たか、神子。」 居た。会えた。 「アクラム・・・・・・。私、あなたを敵だなんて思いたくない。争いたくない。」 どうしたらこの思いが通じるのか。 「争っているつもりは無い。力の満ちたお前を欲しているだけだ。」 確かにアクラムの助言は、何時も正しくて助けて貰っているけれど。でも、それだけじゃないでしょう? 「私の力をどうしたいの?」 「―――死は、滅びは、全てに等しく訪れなければならぬ。この京に、私の理想とするまったき世界も作れよう。」 「この京を滅ぼしても、あなたは幸せになれないよ?」 「くだらない事を言うな。」 「一人が寂しいからって、京の人々を道連れにするなんておかしい。」 「お前の戯言に付き合えというのか?」 「どうしてシリンの手を掴まなかったの?シリンはあなただけを見つめていたのに。」 彼女はあなたを抱き締めたでしょうに。心の傷が癒えるまで、支えていてくれたでしょうに。 「私が欲しているのはお前だ。力のある神子。愚か者には用は無い。」 「そんな言い方って・・・・・・っ!」 「ふん。」心の奥を見透かすような鋭い眼つき。「私がお前の望みを叶えるのでは無い。お前が私の望みを叶えるのだ。」 やっぱり、私の自分勝手な思いは通じないか・・・・・・。 「お前には解らぬ。自分達の存在が在るべき場所を持たない恐怖を。」無表情なのに、どことなく寂しそうだ。「どんなに切望するも、けっして得られぬ苦悩を。目の前で失われる恐怖を、―――滅びるという事を。」 この人の絶望感は、そう簡単には拭えない。それは解っていたけれど・・・・・・。 「滅びたくないと願った者は滅び、滅ぼした者は今浄土という滅びを望んでいる。ならば、私が願いを叶えよう。」 「滅びを願ってなどいないっ!」叫んでしまう。「苦しみから逃れたいだけ。滅びたいとは願ってなんかいない!」 「神子の願い―――。」冷笑?「くい止められるものなら、見事くい止めてみせよ。だが、私はお前の敵になろう。」 そう言うと、静かに消えていった。 私は何を言えば良かったのだろう?どんな言葉なら、あの人を救えたのだろう?―――それとも、私では救えなかったのかな?どんな事をしようとも。何と言おうとも。 ついさっきまでアクラムが居た空間を見つめる。 どんなに切望するも、けっして得られぬ苦悩を。―――アクラムの声が頭の中で繰り返す。 アクラムの願いとは比べ物にならないほど小さな事だけど。でも、私だってどんなに願っても手に入れる事の出来ない望みを持っている。 「頼忠さん。私、貴方の事が好きだよ・・・・・・・・・。」 この京で出会った最初の人が貴方じゃなかったら。翡翠さんだったら。 一人で悲劇のヒロインを気取って、死にたいなんて思わなかった。 傍に居た男(たまたま私にとって運が良い事に貴方だったけれど。)に身を任せるなんてしなかった。 肩書きを利用して、貴方を縛り付けるなんて卑怯な真似はしなかった。 こんなにも自分の事を、嫌いになんてならなかった。 ―――もしも、最初に出会えたのが翡翠さんだったら―――虚しい想像をする。 龍神の神子の役目を、それ程負担には思わなかっただろう。もしかしたら、大変だと思いながらもそれなりに楽しめたかもしれない。 素敵な貴方に出会えて片想いに苦しんでも、素直で可愛い一人の女の子で居られたかもしれない。 想いが届かなくても、一生懸命に生きた自分を蔑む事も無く、後悔する事も無く。 失恋して心が切り裂かれるほどに泣いても、貴方に恋した自分が誇らしくて。次の恋に向かって歩き出す事が出来ただろう。 結局、私がアクラムに会いたかった理由は。 シリンの手を取る事によって、アクラムに幸せになって欲しかったのかもしれない。私と同じようにけっして得られない願いを抱いているアクラムに、私の代わりに私の分まで幸せになって欲しいと。―――それが自分勝手な、押し付けた幸せだけれど。 降り出した雪にも気にせず、立ったまま考え続ける。 もうすぐ全てが終わる。終われば、私は自分の世界へ帰れるだろう。 貴方を傷付けるだけ傷付けて逃げる私を・・・・・・貴方は許してくれるだろうか? そんな自分を・・・・・・私は許せるのだろうか? 注意・・・『06』の数日後。アクラムとの恋愛イベント第3・・・捏造しまくり。 次は、最後の戦いが終了した後。 |
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