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「それは、とてもトクベツな一日」   *  *  *  *  5
 〜蛮ちゃんお誕生日祝SS/「オイシイ生活」シリーズ〜 
      




「テメェ――。何しに来た」


「蛮ちゃん…!」
背後から聞こえた威圧感のある声音に、銀次がビクリと玄関からそれを振り返った。
そして、そこにある剣呑とした紫紺の瞳に、さらに狼狽する。
「ば、蛮ちゃん、待って! あ! これは、オレが頼んだことで、えっと、だからね…!」
「テメエは、黙ってろ!」
「で、でも、でも、あの…!」
いろいろ説明をしなければならない事があるというのに、蛮のあまりの剣幕に気圧され、ついつい言葉が空回りする。
そんな銀次の腕を掴んで強く引き寄せ、蛮が、まるで自分の背に庇うように下がらせた。
同時に、目前の男めがけて、噛み付くように怒鳴りつける。

「テメエ…! 今更、どの面下げて俺の前に――!」

その凄まじい形相に、ある程度覚悟はしていたものの、さしもの銀次さえ怯んでしまいそうになる。
それでも、今にも繰り出されそうな蛮の右腕に、それだけはさせちゃいけないと必死の思いでしがみついた。
「蛮ちゃん、駄目!!  ねえ、ちょっと! 落ち着いて!」
「うるせえ!!」
「蛮ちゃん!」
「とっとと失せろ、クソオヤジ…! それとも何か?! 二度とお互いその面拝まなくて済むように、今此処で俺にブッ殺して欲しいかよ!?」
「ちょ、ちょっと蛮ちゃん、待って! ち、違うんだ、オレの話を聞いてってば!」
「どけ、銀次!!」

目前でがなり立てる蛮を、まるでタダの猛獣でも見るような目で見下ろし、"クソオヤジ”と呼ばれた男が腕を組み、口元に薄い笑みさえ浮かべて余裕で返す。
「なかなかに、威勢が良い」
「あぁ!?」
「望むところだ。やってみるがいい」
「――へぇー、そうかよ」
「蛮ちゃんっ!!」
「じゃあよ、お言葉に甘えて早速…」
にやりとして挑発に乗ろうとする蛮に、銀次が血相を変えて、さらに強く蛮の腕にしがみつく。
それを顔色ひとつ変えずに見る男を横目に、やれやれと肩を竦めて波児が言った。
「おいおい。ったく、やめようぜ、大人気ねぇ。喧嘩はしねぇって約束だろうが、相棒?」
「別に相手をする気はなかったが。目の前で、こううるさく吠えられてはな」
「テメエ…! 人を犬みてぇに抜かすんじゃねえ!」
「同じようなものだ」
「んだと…!」
「ば、蛮ちゃんっ!」
「まあまあ。蛮も、そうカッカするなって」
「うるせえ! どいてろ、波児!! 年寄りはすっこんでねぇと怪我すんぜ!」
「…年寄りか」
蛮の言い草に、男が笑いを堪えるように隣に立つ波児をちらりと見る。
波児が思わず、顰めっ面になった。
「笑うな。オマエも変わんねぇだろーが。一人だけ、若作りしやがって」
「失敬だな。誰が若作りだ。お前が老け過ぎたんだ、波児」
「俺のどこがだ! これでも年相応だぞー。だいたいお前の方が、だなぁ」
「つーか、テメェら! んなとこまで来て、くだらねぇトシの話なんぞしやがるんじゃねえ! 殺されたくなかったら、とっとと帰りやがれ!!」
「ば、蛮ちゃんてば…!」

目の前でのんびり旧交を温める初代GBに、さらにキレかかった蛮が思いきりがなりたてる。
と、それを聞きつけたように、廊下の一番端の部屋のドアが開かれた。





「みどーさーん。どしたのー?」





「………」
おっとりとした声にそちらを見れば、同じ階の、階段を挟んだ向こう端の部屋から、年配の女がひょっこりと顔を覗かせている。
あまりな蛮の剣幕に、いったい何事かと様子を見に出てきたらしい。
「なぁんか大きな声が聞こえたけどー。いったい、どしたの?」
そのタイミングの悪さに、拳を握りしめたまま、蛮がぴたりと一時停止状態になる。眉間には、当然のように深い皺が刻まれた。
そんな蛮の隣からひょこっと廊下に顔を出すと、銀次がややひきつりながらも、にっこりと愛想笑いを浮かべ、それに返す。
「あー、すみません、ソリマチさんっ! だ、大丈夫ですからっ! 」
「そうなのー? でもねえ。なんかすごい怒鳴り声がしたからさー。心配になっちゃって」
その言葉に反応したかのように、さらに手前の扉も2つ、ほぼ同時に開かれる。
「何なにっ! どうしたの? 痴話喧嘩っ!? だめよー、二人とも。仲良くしなきゃー」
「なかよく、ちなきゃー」
「あぁ、ノナカさん! メイコちゃん! 何でもないでーす! ちょっと蛮ちゃん、酔っぱらっちゃってて!」
「ああ!? 銀次、テメェな…!」
「いいから、蛮ちゃんっ」
「あら、そうなのー。ならいいんだけど! "コロス"とか聞こえたから、びっくりしちゃったわよ」
「うわ。す、すみませーん、イソノさんまで! ほ、ほんと、蛮ちゃん、酔っぱらうと、普段よりさらに口悪くてっ」
「ぎ、銀次!」
「あ、銀ちゃん。ひじきの煮物作りすぎちゃったんだけど。よかったら、食べてもらえる?」 
「わー、ノナカさん、いつもスミマセンー! じゃあ、遠慮なくいただいちゃいますっ」
「そう助かるわあ。じゃあ、あとでメイコに持っていかせるね」
「はーい。ありがとうございまーす」
「あらぁ、お客さん? めずらしいわねぇ」
「あ! あははは、はい、そうなんです! で、では、みなさん。お騒がせしてすみませーん! というわけで! と、とにかく二人とも、中へどうぞ…! 蛮ちゃんも! ねっねっ?」
「銀次! おい、テメエっ!!」
「だって、蛮ちゃん! ご近所さんの手前があるしっ! こんなとこでバトっちゃって、もう差し入れ貰えなくなったらどーすんの! 出ていかなくちゃなんなくなったら、もっとどーすんのっ!」
「――だからってな…! 」
小声で怒鳴り合うという器用なことをしながらも、銀次がここぞとばかりに強引に3人を部屋に招き入れ、バタン!と後ろ手に扉を閉める。
「銀次!!」
扉が閉じられるなり、蛮がその目前まで 顔を近づけ、勢いにまかせて銀次を怒鳴りつける。
が、それに負けまいと、きっ!と睨み返して銀次が言った。
「ダメ、蛮ちゃん! ここで喧嘩したら、みなさんに迷惑がかかるんだから! オレ、本気で怒るから!!」
きっぱりと言い放つその顔を、憤怒に満ちて蛮が思い切り睨みつけるが、いつもならここで折れるはずの銀次が、それにもめげずに口を真一文字に結んで睨み返してくる。

こうなると、銀次は絶対に引かない。
それを、一番よく知っているのは、他ならぬ蛮だ。

しばし睨み合った挙げ句。
結局、蛮が折れてフイッと銀次から顔を背けると、忌々しげに舌打ち、大股で部屋を横切って窓際へ行く。
苛立つ指先が、ポケットから煙草を取り出した。
銀次がそれを見、ひとまず、ほっと溜息をつく。

「まあ、今日のとこは休戦といこうじゃないか。なぁ、オマエら」
「そ、そうだよ。ご近所さん、オレたちが裏家業で食べてるって知ってても、みんな仲良くしてくれるんだし、迷惑かけられないし!」 
「迷惑かけられねぇとそう思うんだったら、尚更だろうが! これ以上、やべぇ事にならねぇうちに、そいつを連れてとっとと帰りやがれ、波児!」
「蛮ちゃん!」
「おいおい、じゃあ肉はどうするんだ」
「んなもん、誰が食うか。だいたい、わざわざ人ンちまで持ってこねぇで、テメエら初代だけで勝手に鍋でも何でもつついて、旧交温めりゃいいだろうが! 俺らにゃ関係ねえ」
「でも、だって、蛮ちゃんのお誕生日なのに!」
「このヤロウに、祝って貰うような義理ゃねえよ」
「だから、義理とか、そんなんじゃなくて!」
「うるせえ! テメエは黙ってろっつってんだろうが!」
「だって、だってね!」
「だって、何だ!」
「で、でもさ。だって、あの」
「銀次! 言いてぇ事があんだったら、はっきり言え!」
「だ、だって、だって!!」
「あぁ!?」



「………お、お肉……」



銀次がそれだけぽつりと落とすと、蛮を見つめて涙目になる。



「……はあ?」





実は、本当に言いたいことは、そんなことではないのだが。
これを機会に、少しでも父子の気持ちが近づけたらいいなあとか。
できたら、仲良くしてほしいなぁとか。


だって、せっかく再会出来たんだし。
きっとお父さんは、今でも蛮ちゃんのこと大事に思ってるって、オレわかるから。
そして。
手を伸ばせばすぐ届くところにある愛情に、臆病になっている蛮ちゃんのことも、オレはわかるから。
だから、少しでも近づけたらいいなって思う。

今すぐじゃなくてもいいから。
少しだけでもいいから。




「………銀次?」



俯いて涙目になり、黙ってしまった銀次に、蛮が少々困惑気味に近づく。
"肉"はわかったが、それだけでこんな泣き出しそうな顔になるわけはない。
真意を問い正そうとして、蛮は、瞬間的にそこにギャラリーがいることさえ忘れた。
傍らに行き、金色の髪をくしゃくしゃと撫で、その顔を覗き込むようにする。

「…どうした?」
「蛮、ちゃん…」
「何だってぇの?」
「…オレ、お肉食べたい」
「いや、肉はわかったがよ」
「ねえ蛮ちゃん、お肉ー…」
頭の中でうまく言いたい事がまとまらず、結局こんな言葉に置き換えてしまう自分が、さすがに情けないと銀次が思う。
呆れたように蛮が返した。
「……だーから、テメエなぁ。肉ぐれぇ、またがっぽり稼いで、たんまり食わしてやるだろうが!」
「でもでも! そんなこと言って、蛮ちゃん、またお金入ったら、どうせお馬さんとかに使っちゃうし!」
「いや、だから、それはよ」
「俺、だまされないからっ」
「騙され…って、人聞きの悪いこと言うんじゃねえ!」
「だって、そうだもん! だいたい、この間だってさ…! 今度お金入ったら、おすしと焼き肉って言ってたのに」
「ありゃあ、仕方がねぇだろうが! 入ってきた金から生活費抜いたら、スバルの修理代にちっとばかし足りねぇから、何とか増やそうとしてだな…!」
「でも結果的には、ぜんぜんぜんぜん足りなくなっちゃったじゃんか…!」
「うるせえ、済んだ事をグチグチ抜かすな! つーか、今はそういう話じゃなくてだな…!」



「ぎんたーん。ちじき、もてきたー」



「…………」
やっと話を戻し掛けた所で、またしてもグッドタイミングに、玄関のチャイムがピンポーンと間延びして、のんびりと鳴った。
銀次が、ばたばたと玄関に走る。
「うわあ、ありがとうメイコちゃん…! わあ、美味しそうなひじきだねー。お母さんに、よろしく言っておいてねー」
「あーい。ばんたん、ばいばいー」
「お、おう…」

大きな瞳の二歳くらいの女の子に、笑顔でばいばいと手を振られ、とことこと歩いていく小さな姿に、何やら完全に毒気を抜かれ、蛮が思い切り脱力する。

――まったく。
どうしてここの住人は、銀次と同じ天然系の人間ばかりなのだろう。


「笑ってんじゃねえ、波児―」

蛮の背後で、くっくっと肩を震わせて笑っている波児に、やっとそこにいた事を思い出した蛮が、振り向きもせず威嚇のように低く言う。
「いやぁ。近所付き合いも大変だな、旦那」
「誰が旦那だ!」
波児の揶揄するような一言に、ギロリと鋭い一瞥をくれ、蛮が再び窓際に行き、指の間に持ったままになっていた煙草に忌々しげに火を点けた。


苛立ちはどうやら最高潮のようだが。
それでも、さすがに悟ったらしい。
と、そう波児が思う。

言葉に出来ないでいる、銀次の想いも、願いも。


そして、こうなってしまえば、むしろ、蛮は銀次に逆らえない。
何ひとつの駆け引きも計算もない銀次の純粋な想いを、万が一にも土足で踏みにじるような真似が、どうしたって蛮に出来るわけがない。












「あ、お肉、そろそろいいかな!」
「あぁ、そうだなー。もう食えるぞ、銀次」
「うわー、波児さん。美味しそうだねv」
狭いテーブルに鍋を囲んで男四人が坐っている図は、なんとも窮屈でしようがなかった。
しかも目前で箸を持っているのは、蛮にとって、この世でもっとも気にくわない男だ。
赤屍や不動を筆頭に、蛮が(互いに)気にくわないとする男は、星の数以上に存在するが。
この男だけは、別格だ。
しかも、気に喰わなさの種が、他とは全く異なっている。

それでも銀次が隣に坐るなり、不思議な事に(いや、いつものことか)幾分か、ざわめきたっていた心が落ち着いた。

「蛮ちゃん、お肉!!」
「あぁ、好きなだけ食え」
「わーい」

しかも、間近で向けられるこの笑顔。
怖ろしいことに、たったそれだけで、怒りや苛立ちさえ、どこかに吹っ飛ぶ。

つい先程まで、自分の横柄な態度にびくびくしていたくせに。
そんなことなど、いとも簡単に忘れ去って、また屈託のない笑みを向けてくる。

(まったく。調子のいいヤローだぜ)

しかし。よくよく考えてみれば。
どうせ、自分の誕生日祝いの肉なのだから。
賑やかしのゲストなど必要ないから、肉と鍋だけとっとと置いて帰れ―と言えばよかったと、蛮が内心でつくづく後悔する。


まあ、もっとも。
銀次の本心が肉狙いじゃないことなど、明白だが。



「おら、相棒。オメェも、仏頂面してねぇで食えって」
「あ! "お父さん"もお肉、どうぞー」
銀次の笑顔と"お父さん"という言葉に、父と息子で同時にピクリと顔をひきつらせる。
父の方はささやかだが、息子の方は盛大だ。
それでも、そんな顔色などまったく気にもとめない様子で、満面の笑みで肉をほおばる銀次に、蛮が"もしかしてコイツ、マジで肉のためだったのか…?"と内心で疑ぐりたくなってしまう。
「んあー! お肉おいしい〜〜! あ、ほら蛮ちゃんも食べようよ! オレ、入れたげるねv」
「ぁあ…? いや、んなことぐれぇ自分で…」
「何と言っても、今日の主役だからね! いっぱいね!」
「って、あほう! そこまで、てんこ盛りにしてどうすんだ!」
「いいじゃん! お誕生日だもんv」
「テメエ、さっきからそればっかじゃねえか」
「だって、そうだもーんv あ、お野菜も食べようねー、蛮ちゃん」
「…既に酔っぱらってやがるな、オメー?」
ビールをコップに二杯程度で、すでにほろ酔いでご機嫌の銀次を横目で見、蛮がやれやれといった顔で眉尻を下げる。
が、それは瞬く間に極端に持ち上がった。
正面の、自分とよく似た色の眼と視線が合い、ぎろりと睨む。
しかし、その視線は、今度はあっさりと何事もなかったようにかわされた。


チ…! 今度はシカトかよ。クソオヤジ――。


波児がそれに気付いて、わざとらしく肩を竦めてみせるのをじろりと睨み、蛮がビールの空瓶を銀次に差し出す。
「銀次、ビール」
「あ、はいはいっ。取ってくるね」
「あぁ、銀次。コイツにも、もう一本くれるか」
「うん! はい、蛮ちゃん! …と、お父さん!」
蛮に手渡した後、父の後ろから銀次が瓶を手渡し、にっこりとする。

「……あぁ、すまない」

咄嗟に出た父の言葉に、銀次の顔が一瞬驚いたようなそれになり、それから、見る見る嬉しげな笑みを浮かべる。
「あ…! オレ、注ぎますっ」
「え、あぁ――」
銀次の笑顔につられるようにして差し出されたグラスに、銀次が今度はこぼさないようにと、緊張気味に瓶を傾ける。
つい力が入りすぎて、なぜか琥珀がぐぐっと寄り目がちになり、口元もきゅっと結ばれる。
そのあまりに真剣で必死な形相に気づくと、父の眼差しがやや綻び、すうっと細められた。
そして、どうにか注ぎ終わるなり、むんっと力んでいた顔が、ほっとしたように"にぱ〜v"と破願する。
まさしく子供のようにくるくる変わる表情に、蛮に酷似したその顔が、銀次からフッと突然逸らされると、顔を隠すようにして俯いた。

「…はい?」

「ハハハ、銀次。ウチの相棒はよー。顔に似ず、笑い上戸なんだ」
「へ?」
「…煩いぞ、波児」
その声が微かに震えていることに、銀次がへ?と言った顔で波児を見る。
波児がそれにウケて、盛大に笑った。
いまいち何がおかしかったのかわからず、それでも蛮の父が少しでも笑ってくれたことが嬉しくて、銀次が瞳を細め、頬を染める。
そして、その顔のまま、嬉しげに蛮の隣にすとんと坐ると、反してかーなり不機嫌な声が銀次に言った。
「おい、テメエ」
「えっ?」
「なんで、クソオヤジのグラスにゃ注いで、俺様にゃ注がねぇ?」
「へ!? あぁ、ゴメン…! でも、だって、蛮ちゃん。いつもは、自分のペースでやるからいいって」
「うるせえ。つべこべ抜かすな!」
「おいおい、何だ、蛮。それじゃあ、まるで、嫁を父親に取られてヤキモチ妬いてる亭主みてぇじゃねえか」
「な…! 波児、何言ってんだ、テメエ…っ! つーか、言うに事かいて嫁だ、亭主だぁ…!」
「けーどな。噂だぜ?」
どうやら、こちらもすっかり出来上がりつつある波児が、上機嫌で言う。
「それって。どんな噂?」
気になるーと言わんばかりに、銀次が身を乗り出すようにして訊ねる。
波児がにやりとして返した。

「GBの三代目は、夫婦みてーに仲が良いってよ」

「な…! 何だよ、そりゃあ」
「同業者から流れてくる噂。まー、本当のことだからよ。俺も特に否定はしてねぇけどな」
「はあ…!?」
「へえ、そうなんだ! うわー、なんか照れちゃうねぇ、蛮ちゃん!」
「アホか、テメエはっ! 何喜んでやがる!」
「いたっ! だってさぁ〜。何かいいよねえ、夫婦かぁv」
「バカじゃねえのか、テメエ! 何がいいんだ、何がっ」
「んあっ、痛いっ! もう、蛮ちゃんったら、照れ屋さんなんだからv」
「照れてねぇわ!!」








そんな調子で数時間が経ち――。
鍋はすっかり空になり、ビールもすべて空けつくし、波児持参の日本酒が半分を空けられる頃には…。
すっかり出来上がった波児と銀次は、ほぼ完全に潰れていた。



最初の険悪なムードはどこへやら、思いの外賑やかな宴となったのは、まぁ結果として良かったが。

だが、取り残されたのは、酒には滅法強い、同じ血筋が二人…。



蛮は、自分の肩に凭れるようにして、くーかくーかと気持ちよくいびきをかいている銀次を見下ろし、”いい気なもんだ”とばかりに、心中深くで特大の溜息を落とした。








つづく(涙)
なんか、原作の動向次第でどうなるのやら、このお話ってカンジですが…。
パパ、本当に消えていなくなったりしないでねー(涙)

↑これ書いた時は、まだ消えてなかったようですパパン。ううう(涙)9/20