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味覚について
目で楽しむ日本料理、香りのフランス料理、中華料理は舌(味)でといわれるように五感で味わうお料理も国民性があるようです。
『おいしさ』は、味覚・視覚・聴覚・臭覚・触覚の五感で味わうとされていますが、他に温・冷覚,痛・圧覚等局所的感覚の融合ともされていています。
私が勉強した美味しさを感じる要素の割合は、視覚が80%,味覚が1〜5%というもので、フランスの味覚研究所の講義によると視覚は10〜15%とかなり低い数字でした。風味を100%とすると鼻からが10%,口(舌)からが8〜12%,アローム(噛み砕く事によって口から鼻に昇ってくる臭い)が80%という内容です。

又、味について日本は、甘味・塩味・うま味・酸味・苦味の基本五味が一般的ですが、フランスは、うま味を抜いた基本四味が主流だったようで、最近になって基本五味説が認識されつつあるようです。

 フランスと日本では、味覚を議論するベースが違っていて、味覚を勉強中の当時、整理の必要性を感じていたのも事実でした。
ある方の補足により、私の頭の中はうまく整理され、理解したのでした。
<人が味をキャッチする構造>
○ 私達が牛乳を飲んで舌を鏡でみると赤くてぶつぶつしているのがわかります。
このぶつぶつが『味蕾』という味を感じるセンサーのようなものです。
味蕾の数は、7500〜8500と個人差があり、種類は、甘味、塩味、苦味等を別々に感じる味蕾が存在し、様々な位置に入り組んで分布しています。又、西洋人は味蕾の数が20%少ないといわれ、旨味成分を感じない人が多いといわれています。
○ 1つの味蕾の中に味細胞(レセプター)といわれる受容体が10個程度存在
していて、1人が持っている味細胞は35000〜64000と個人差が大きいそうです。

<基本味>
2000年以降の研究で、受容体が5種類発見されている事から味の基本は、甘味・塩味・酸味・苦味・旨味の5味とされています。この基本5味を栄養学的・生理学的に分類すると以下のようになります。
○ 甘味  エネルギー源の味
○ 塩味  生理的欲求の味
○ 旨味  体を構成し、蛋白質を構成するアミノ酸の味
○ 酸味  腐ったものの味
○ 苦味  毒物の味
甘味・塩味・旨味は、比較的好みの差が少なく、酸味・苦味の好みは、個人差があります。
又、辛味・渋みは、生理学的には味覚神経を通して感じるもので、味ではないとされています。

<嗜好>
 味にたいする好みは、個人差が大きく、一般的な年齢差による嗜好の決定は次のようになります。
○ 生後2〜3ヶ月   好みの差が出始める。
○ 1歳半〜7歳    食べ物と味のレッテルを経験し、情報として蓄積されていく。
○ 7歳〜12歳    味のレッテルにより意志が決定されていく。
 好みは、年齢効果、情報効果により美味しさの情報として蓄積されていくが、感じ方は個人差と歴史的背景により異なり、『食べず嫌い』という拒否反応もあります。この拒否反応は、まさに個人差と歴史的背景の産物で、例えば、幼児期に腐りかけている酸っぱいものを口にしてお腹をこわした経験があるとします。こうなると、経験的に酸っぱいものは嫌いになりがちです。これが情報効果であり、食べず嫌いの原因となる訳です。又、ふきのとうの苦味は、小さい頃に美味しく感じる人は少ないですが、成人に近い年齢になってくると美味しく感じるのは年齢効果という事です。又、知識として『ふきのとうは美味しい』を知っていると情報効果ともなります。
<うま味>
 昆布から発見されたグルタミン酸,かつお節のイノシン酸,椎茸のグアニル酸が代表的なうま味成分といわれ、日本で発見されました。一般的にアミノ酸と呼ばれ、トマトが完熟していく時や生ハムやチーズが熟成されていくとグルタミン酸が濃縮され、うま味成分が増していきます。又、肉や魚から抽出されるイノシン酸は、動物性のうま味成分で、お腹の中で育っている胎児が味わう羊水の味といわれているらしく、『涙の味』とも『汗の味』とも表現されていました。

<味の相乗効果>
 Y=U+1200UVという難しい数式は、同濃度の2種類の旨味成分を加えると非常に強い旨味として感じる効果の事で、味の相乗効果を示しています。
人が感じる旨味の極限が0.02%として、同濃度のグルタミン酸とイノシン酸を加えると計算上は、0.04%ですが、実際に感じる濃度は0.13%(6.5倍)だとか。一般的に昆布とかつお節の合わせ出汁が美味しいと感じるのはこれが理由のようです。
<乳児の味覚形成>
人が人として始めて味わう羊水は、妊娠しているお母さんが食べている食事が大きく影響しています。生後2〜3ヶ月で好みの味が出来るというのは、こういった影響によるもので、いわゆる胎児は、母親の羊水を通して味覚を形成していくようです。
もう1つ衝撃的だったのは、味覚を感じる味蕾の形成は、妊娠5ヶ月〜生後3ヶ月がピークで、10000を超えるといいます。成人の味らいの数が7500〜8500と比較して3割弱多い事になります。
離乳食以前に羊水や母乳により乳児の味覚が育てられている事になるのです。
これらを理解しようとすると、ちょっと難しい話しですが、『味覚は育つ感性』という私の持論が少しずつ科学的に解明されてきました。
個人差といわれている『おいしさ』ですが、個人差を生んでいる原因が少しずつ明らかになってきていて、面白くなってきませんか?

参項文献:株式会社建呈社発行―FBC(フードビジネスコーディネート)の基礎と実践―





乳幼児の味覚形成
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