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私釈三国志 171 孫綝誅殺

F「……ぐしゅんっ!」
A「悪化してないか?」
Y「おかしいな、営養のある物を喰わせてるのに」
F「むぐ……ティッシュ、ティッシュ。あー、感想とか質問とかは割ともらえるけど、その中には僕の説明不足に由来するものもあってな」
Y「また何か来たのか?」
F「来るのが悪いような云い方はしないように。前回さらっと孫権の庶子に言及して流したけど、そんなのいるのかとメールが来てな。ふと調べ直したら、全員庶子だったのが確認できた」
A「風邪で頭がボケてンのか?」
F「というか、庶子という概念そのものが嫡子に対するものなんだから、そもそも全ての妃を、生きているうちに皇后にはしなかった孫権には、実理的な意味での嫡子はいないように思えてな」
Y「云ってることはあながち否定できんな」
A「無茶ではないけどなんか違わね?」
F「とりあえず応えると、孫権の男児は7人、女児は2人。ただし、これは公式見解で、大トラと小トラの間に早死にした娘がいたし、孫権の子と明記されていない息子もひとりいる。それを僕は庶子と見ているワケだが」
A「劉備とは違って割と子沢山だねぃ」
Y「曹操も20人以上だったしなぁ。それで問題を起こすのが悪いのか、問題が起きるほど子がいないのがまずいのか」
F「どっちもどっちという気もするがな。では、今回のオハナシに入りまーす。孫亮を廃した孫綝が孫休を後任とした……経緯は前回のラストで見た通り。が、当然ながら、彼はすぐにその申し出を受けたワケではない」
A「曹丕でも何度もオコトワリしてから受けたからなぁ」
F「それ以前の問題だ。孫綝の罠だと疑ったンだよ」
A「……そりゃそうか」
F「というか、曹丕を敵視しないように。孫亮をいいように操って国政を私物化し、反発されたら廃立した孫綝から『アンタが皇帝!』とか云われても、危機感あるならおびき出して殺すつもりかと疑うだろう」
Y「何つったかな? 前回のラストで見た阿呆なら、ホイホイ応じそうだが」
F「泰永、つい昨日なんだから人名くらい覚えとけよ。まぁ、予定通りというか都合はいいな。ちょっと、170回の『ところで』以降を読み返してこい。さりげなく範囲指定はしてあるから。今のうちにりんごジュースください」
ヤスの妻「はぁーい。悪化するのも無理はないよね、風邪が伝染らないヒトが相手だもの」
Y「やかましいわ」
(確認中……確認中……確認中……おわり)
F「確認したかな? 諸葛格が『諸王(皇子)を軍事的要地から遠ざける』という政策を執ったのは。二宮の変はあくまで宮中での出来事で、諸皇子が軍を率いて要地にいたら、物理的な衝突もありえた。判断としては間違いではない」
A「それは孫奮だけでなく?」
F「孫亮を除く残り皇子に、だった。孫休も丹楊に異動している」
A「また懐かしい地名が来たな。劉備・曹操・孫策がそろって非道いめに遭ったってアレだろ?」
F「よく覚えてたな(17・20回参照)。もちろん、この時もトラブルが発生している。この頃の丹楊は、羊衜に取り立てられ呂壱騒動で名を馳せた李衡が太守を張っていた。呂壱騒動ののちに諸葛格の副官に取り立てられていたけど、諸葛格が殺されると自ら求めて丹楊に移ったンだ」
Y「孫綝……じゃないな、孫峻からにらまれないように避難したか」
A「呂壱は非難したのに、孫峻相手だと避難するの?」
F「本人の状況が変わったンだ。もともと平民の出だったのに羊衜に認められ孫権に取り立てられたンだけど、あれから20年経ってるからな。できたカミさん迎えたみたいで、明記はないがそのカミさんの勧めに従って建業から離れたようだ。だが、丹楊では持ち前の正義感を発揮して、相手が孫休でも法に反する行いはきっちり糾問している」
A「孫峻には逆らわんのに、部屋住みとはいえ皇子に強気とは……」
F「そんなことがあったモンだから、孫休は『別の地に異動させてくれ』と上奏して、孫亮はそれを受け入れ会稽に流した。廃立後の孫亮が会稽に流されることになったのは、コレが影響しているように思える」
A「因果は巡るな」
F「さて、孫綝が孫休を選んだのには、他に継承権の持ち主がいなかったのに加えて、孫休は派閥としては孫静系皇室派に近かったからというのが挙げられる。正確には敵の敵は味方という奴で、反孫亮派なんだが」
A「あ、そーなん?」
F「より正確に云うなら反大トラ派。孫休の妃は朱夫人と云ってな、孫魯育の娘なんだ」
A「また来たよ!?」
F「来たねー……あっはは。孫魯班にそそのかされるまま孫亮が殺した朱熊・朱損の姉か妹(明記はない)にあたり、孫魯育が殺された孫儀の件では連座させられそうになっている。そこで孫休は、朱夫人を泣く泣く(夫婦仲はよい)建業に送り裁きを受けさせようとしたが、孫峻は朱夫人を孫休のもとに帰したンだ」
Y「裁きも何も、無実だろ?」
F「無実だとも。それが判っているだけに、孫峻は孫魯班の妹憎さに追従しなかった。まぁ、小トラを殺すのに合意しなかったら、その時点で孫峻は殺されていただろうし、朱夫人を帰したから魯班は孫峻を見限ったのかもしれんな」
Y「大トラの行動原理は好き嫌いに左右されるからなぁ」
F「それも、衝動的かつ徹底的にな。この件に恩義を感じたり、朱損と孫峻の妹が夫婦だったりで、孫休は派閥で云うなら完全に孫魯育派かつ孫峻派に与することになった。しかも、孫休に学問を仕込んだのは、ひともあろうか謝慈だ」
A「……孫奮に殺された?」
Y「孫奮や孫亮と手を組む恐れがない、孫権の息子……か。よくもまぁ、こんなにまで孫綝に都合のいい帝位継承権所有者がいたモンだな」
F「歴史の神サマはときどき、こーいう凄まじい気まぐれを見せるンだよ。だが、孫綝から皇帝に、との打診の使者が来たときには、孫休でも警戒している。この使者が孫楷と云って、えーっと……何と云えばいいのかなぁ。孫桓のいとこの子、で通るかな? 血筋としていちばん近い『私釈』で出した人名では」
A「そこまで離れると、孫家一門に数えていいのかよく判らんレベルだね」
Y「そもそも孫桓の立ち位置が微妙なモンだったしな」
F「孫綝のよからぬ企てではないか……と疑っていた孫休だけど、孫楷や他の使者から説得されて、悩んだものの建業に出発した。宮殿に入ったもののすぐには両者面談とならず、とりあえず孫楷と孫恩が話しあってから、孫休は大臣百官を、孫綝は兵士千人を引き連れて面会している。258年10月18日のことだ」
A「物々しいなぁ……」
F「かくて孫呉三代皇帝・孫休が即位したが、彼がどんな業績をしたのか……は今回では見ない。この皇帝が、いかにして孫綝を追い詰め除いたのかを見ていくことにする。帝位についた孫休は、孫綝にこう云った」

258年10月21日
孫休「大将軍に、丞相と荊州牧の役職をあげましょう。弟の孫恩殿には衛将軍、アナタの一族の皆さんも侯に叙任です!」
孫綝たち『ありがたき幸せ!』(×5)

A「おいっ!?」
F「大将軍・丞相・荊州牧と、陸遜か孔明かと思える役職を並べたのみならず、本人を含む一族5人を要職につけて侯に封じるという大盤振る舞いだ」
Y「つーか、またしても権力者の親族が衛将軍か」
F「いちおう確認して喋ってるからねェ。ンで、それから先が割と凄い。喋るの辛いから列挙行くよー」

258年11月5日
孫休「亮を廃立した功は霍光(前漢の功臣)にも勝ります。大将軍、アナタに協力した者にはきちんと褒章を」
孫綝「心得ました!」

日付不明
孫綝「陛下、日頃のご恩に報いるべく肉と酒をお持ちしました」
孫休「いえいえ、お気づかいなく。持って帰ってくれていいですよ」
孫綝「はぁ……然様で」
(退出)
張布「おや、大将軍。どーされました、その酒は?」
孫綝「陛下に献上したンだが、突っ返されてな。オレのことが気に入らんならそう云えばよかろうに……あーあ、また廃立を考えるか。でも、他に継承者なんて……」
張布「はやまっちゃダメ! 陛下に執り成してきますから!」
それから数日後の、258年11月7日
孫休「大将軍、アナタもずいぶんお忙しい身でしょう。孫恩殿を侍中に任じるので、分担して天下を治めてください」
孫綝「それはそれは、ありがたい仰せにございます」

また後日
孫休「大将軍! アナタがワタシをないがしろにしていると誣告している者がおりました!」
孫綝「そんな、滅相もございません。オレは陛下に忠節を尽くして……」
孫休「ええ、それはワタシが誰よりいちばん判っております! というわけでそいつを捕まえておいたので、好きに処分なさい! ぷんぷん!」
孫綝「……じゃぁ、殺しますね?」

またまた後日
孫綝「えーっと……陛下。オレ、中書として荊州に赴任して、軍を率いようかと思いますが」
張布「大将軍、中書というのは陛下の秘書官ですよ? それが地方に出るなどは異例で……」
孫休「いいえ、かまいませんよ。アナタの兵たちも連れていくンですよね? じゃぁ、宮中の武器を出しましょう。完全武装していってくださいね。他に何を用意しましょうか」
孫綝「いえもうホントお気遣いなく!? そんなにされたらかえって恐縮ですから!」

A「……どゆこと?」
F「人臣として望みうる限りの厚遇をされた孫綝は、かえって居心地が悪くなってきたンだ。ために、宮中を出て荊州に逃げようとしたら、ことさらに厚遇されそうになった。いち時期、孫休を帝位につけたのを後悔したような記述があるが、孫綝が孫休を持て余していたのは事実っぽい」
Y「孫休は、何がしたかったンだ?」
F「どうも、何もしたくなかったみたいだ。孫綝に全てをマル投げして、自分は学術研究に没頭していたかったようでな。それがポーズなのか本心なのかは微妙なモンだが、孫綝が受け入れ丞相として天下を差配していれば、問題は起こらなかったと考えていいが、当然そうはいかなかった。下にも置かぬ扱いに居心地が悪くなった孫綝は荊州に逃げると云いだして、だが盛大に送り出すと云われて困り果てた」
A「……まぁ、困るか」
F「困るだろうな。物欲我欲というものが孫休からは感じられない。孫綝は欲が強い方だから、欲の薄い孫休のことを理解できず、対応に苦慮したみたいだ」
Y「物をもらえば喜ぶだろうと考えて、持って行ったら突っ返された……か。皇帝をどうおだてればいいか判らなくては、侫臣としては自分の立ち位置を見失いかねんな」
F「孫亮は孫綝の奏上を突っぱねて対決姿勢を剥きだしたが、孫休は孫綝を受け入れていた。意外に思うかもしれんが、この対策は侫臣を抑え込むのにはベターだ。帝位を除く何もかも与え続けても帝位だけ確保していれば、上下の別だけは明らか。どれだけ権勢を誇ろうが、それはワタシの掌の上なんだぞ……と陰で笑える」
A「帝位まで要求して来たら?」
F「そうなったら完全に叛臣だろうが。皇帝が動く前に周りが放っておかんし、排除しても問題ない。まぁ、武力衝突して勝てるかは別問題で、実際に孫亮は失敗している(そこまで事態が発展したワケではないが)」
Y「陰で何を企んでいるか判らん孫休相手に、孫綝は委縮した……というところか」
F「というわけで、孫綝を心理的に追い詰めた孫休は、ようやっと物理的に排除する策を講じる。さっきからちょろちょろしている張布は、孫休がドサまわりしていた頃からの側近で、帝位に就くと重用された文官でな。実行犯とするには武力的に心許なかったので『文官にはなれませんが、計略に長け大事を成し遂げられる』丁奉を巻き込んだ」
A「そんなにいい評価なのか?」
F「張布はそう勧めている。呼ばれた丁奉は、孫綝誅殺を持ちかけられて策を弄した。孫綝の兄弟部下は数多く、大臣たちも味方するとは限らない。慌ててことを起こしても孫亮の二の舞になりかねない、と。そこで、冬至のあとで行う祖先慰霊祭で斬ってしまおう、ということになった」
Y「そういう場には多数の兵は連れていけんだろうな、確かに」
F「ここからが孫休の真骨頂でな。本人の耳に入るよう『慰霊祭で孫綝を殺す』との噂を流したンだ。明記はないが、丁奉や張布から漏れるとは思えん。意図的に流したと考えるべきだろう」
Y「何でコイツらは、そういう真似をしでかすかね」
A「ヒトをだますために本当のことを云うの、やめない?」
F「効果的なんだよ。行けば、場所柄多数の兵は連れ込めないから自衛策はとれず、そのまま殺される。行かなかったら日頃の厚遇に背くことになり、公然と排除する口実ができる。それでなくても前夜、強風で木が倒れたりしたモンだから、孫綝はますます不安になった……とある」
A「露骨な死亡フラグで」
F「かくて258年12月8日。慰霊祭が始まったが、孫綝は『おなか痛いから休みます』と子供みたいなことを云ってごまかそうとする。でも孫休から出席するよう使者が十数人送り込まれて、ついに行くことにした」
A「誰か止めてやれよ……」
F「止めた部下もいたンだよ。ただ、本人曰く『陛下から出席せよと何度も何度もお言葉をいただいては、お断りするワケにはいくまい』と、日頃の厚遇に応えないのはまずいと考えたのが判ることを云っている。孫亮の孫綝抹殺計画は完全にねじ伏せた孫綝だけど、たった2ヶ月少しで完全にふぬけてしまっていたのか、それとも今度は注進する輩がいなかったからか、信じられないくらいあっさり対応を誤っているンだ」
Y「まいていた種が芽を出したか」
F「孫綝は、自分の役所で火を出すよう兵に命じている。火事を理由にすぐ退出しようと考えたワケだが、孫休が打ち続けた布石がきっちり生きているのが判る。慰霊祭に出れば殺されるという噂なのに、孫休ではなく他の誰かの謀略だろうと考えていた。日頃の厚遇から、孫休は退出を引き留めまい……と甘く見ていたのが伝わってくるな」
A「孫休は孫綝に悪意を抱いていない……と本人に思わせるためのトラップか」
F「それと知らない孫綝は、ノコノコ慰霊祭会場に現れた。まもなく火事が起こったと知らせが入り、孫綝は退席を申し出るが、孫休は『外にも兵がいるのだから、わざわざ丞相が赴くことでもありませんよ』と逃がさない。さすがに不審に思ったようで、孫綝が逃げようとすると、丁奉・張布の兵が孫綝を縛り上げた」

孫綝「命だけはお助けを! 交州への流罪で勘弁してください!」
孫休「アナタはどうして滕胤や呂拠を流罪にせず殺したのです」
孫綝「では、宮廷の奴隷としてください! どうか命だけは!」
孫休「アナタはどうして滕胤や呂拠を奴隷とせず殺したのです」

A「……因果は巡るな」
F「そんなワケで孫綝は処刑され、外の兵士たちに首級が示された。孫綝は殺したが兵は許すので、武器を捨てて投降するように、と。五千からの兵は投降したが、しなかった者もいたようで、特に孫綝の一族には、船で魏に逃げ込もうとした者もいた。追っ手がかかって討ち取られたが」
Y「何年か前の諸葛格殺害、そのままの事態だな」
F「事後処理はもっと非道いぞ。孫峻でも瑾兄ちゃんの墓には手を出さなかったのに、孫休は出しているンだ。孫綝の一族、つまり孫静の子孫は、諸葛格のとき同様皆殺しになったが、それだけでは収まらず、孫峻の墓を暴いて副葬されていた官位の印璽を没収し、棺の表書きも削って無位無官にして埋め直している」
A「死者に鞭打ったのかよ」
F「実は、それくらい腹に据えかねるモノがあったようでな。正史にも『孫魯育を殺したことへの報復である』とはっきり書かれている。ただし、先に云った通り孫魯育殺害は孫峻の責任ではない。それが何を意味するのか……は、何回か先で触れる。ともあれ、孫綝は殺され、孫静系皇室派は皆殺しになり、この一件は幕を閉じた。享年28」
A「あっけない……」
F「ところで、メールで聞かれたときにそのヒトには応えたンだけど、魏の『王毌丘諸葛ケ鍾伝』、蜀の『劉彭廖李劉魏楊伝』(※)に相当する、叛臣列伝は呉書にも用意されている。第十九巻『諸葛滕二孫濮陽伝』がそれでな」
A「諸葛格、滕胤、孫峻、孫綝……?」
F「ラストの濮陽興は出してないから、記憶にないのも無理はないな。……まぁ、そいつと滕胤はここに伝が立っているのがちょっとずれている感もあるンだが。それはともかく、孫綝誅殺に対する直接の容疑は、孫休の帝位を簒奪せんと目論んだため……となっている」
Y「よくある口実だな」
F「はっきり云えば、容疑でなく事実だ。孫綝は……孫峻もだが、二代前が簒奪を目論んでな」
Y「二代……あぁ、孫ロか」
A「なにしたひと?」
Y「正史には、孫静の長男としか記述がなく、いつ生まれいつ死んだか、何をしてどう生きたのか、完全に不明。附伝もない」
A「……なに?」
F「正史の注には少しだけ記述がある。孫策が死んだ折、配下の兵や山越を引き連れ、会稽を攻略しようと乗り込んだが、それを事前に察知していた虞翻が守りを固めて『孫権様に逆らうならかかって来い、殺してやるぞ!』と豪語すると、戦わずに引き揚げた。その後の本人について……は、泰永の云う通り。正史・注を問わず、完全に沈黙している」
A「孫策が死んだ途端に、孫権に叛逆したのか!? 孫静の長男……ってことは、孫策や孫権のいとこで……」
F「孫堅からみれば甥に当たるか。孫静は孫権が呉を率いる立場になると、官職を退いて(虞翻治める地に)隠居しているンだが、これに連座してのことだと見ていいだろうな」
A「……となると、孫ロは殺されたか」
F「そうとしか思えん。さすがに存在を史書から抹消することはできなかったようだが、孫ロは十中十まで殺されたとしか考えられず、次男孫瑜・三男孫皎・四男孫奐は対魏最前線に駆り出され、いずれも孫権に排除されたと考えていい最期を遂げている。以前云ったときにはスルーされたが、割と重要なことを確認しよう。孫静系皇室派が呉の宮中に現れるのは、孫権が老いの床に伏せってからだ」
A「孫ロ以来弾圧され使い捨てられていた孫静系の怒りが、孫峻・孫綝の代で爆発した……?」
Y「割と逆ギレにも思える」
F「フォローはしかねるな。実は、孫休が建業に到着する前に、孫綝は自分で帝位に就こうと目論んで百官に意見を求めているンだ。孫綝の権勢を恐れて誰もが賛成する中、誰あろう、虞翻の息子がたったひとり反対の声を挙げている」
A「ちゃんと見張りが立っていたワケね」
F「注だが正史に『不愉快ではあったが孫休を即位させた』とさえ書かれている通り、孫綝はその意見を容れている。味方が少ないうちは野心を控えることにしたようでな。だが客観的には、孫権の死後に幼い皇帝が立ち、それが廃されて……と、皇帝権力の衰えは明らかだった」
Y「本人による人為的なものではあるが、その機を逃す策はないな」
F「だからこそ、と云うべきだろうな。祖父以来となる悲願を達成すべく孫綝が動いていたからには、孫休としても放ってはおけず、一族もろとも滅ぼすことで禍根を断っている。その意味では、孫休の背負った役割は、呉の歴史に小さくないものと云える。孫ロの代からひっそり続いていた、孫家主導権争いに終止符を打ったワケだから。60年近くかかったが」
Y「しっかりした後継者が立てられ、その役割を果たした、か。費禕はともかく姜維に聞かせてやりたい話だな」
A「やかましいわ!」
F「割と『しっかり』とはしていないンだが、それはさておいて。かくて孫休のもと、呉は新たな一歩を踏み出し始める。……このところ長くなってかなわんな」
Y「あいよ、じゃぁ終わって」
F「続きは次回の講釈で」
A「フォローしろよ!」


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