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私釈三国志 20 反客為主

F「さて、どやされたので今回のタイトルを例のアレにするのは控えることにして」
A「どうして出ないんだろうな」
F「出られても困る気はするがな。だが、曹豹という男は、三国志の序盤において欠かせぬ役回りを演じた。それに敬意を表する意味で、やはり曹ケツ……もとい、曹血を!」
2人『するな』
F「ぶーぶー。まぁ、本音はさておき。曹豹(字を昇端)は、後世において『曹豹血盟軍』を結成されるほど、コアな人気を誇っている。つーか、創始者たる練り児山尊師の投稿記事は、冗談なのかマジでキレてるのか判断できないほどのモノだったが」
Y「だから、血盟軍から離れろ!」
F「お見せできないのが残念です。本音はここまでにしておくが、曹豹は徐州の政変において、極めて重要な役割を果たした。つまり、酔っ払った張飛に殺されるという役割だが」
A「いかにもあいつらしいな」
F「簡単に説明すると、劉備の留守を預かった張飛は、酔っ払って曹豹に絡んだ。曹豹は娘を呂布の妾にしていたんだけど、それを口実に張飛から逃れようとしたところ、呂布が気に入らなかった張飛はかえってキレて、曹豹をぼこぼこにしてしまう。それを根に持った曹豹は、呂布を徐州に呼び込んで城を奪わせ、でも慌てた張飛に殺された」
A「酔わなきゃ張飛もいい奴なんだけどなぁ」
F「人生を酒と戦と劉備に捧げた、三国時代を生きた好漢だからね。ただし、この一件を少し分析すると、いくらか笑えないものが見えてくる」
A「ん?」
F「以前さらっと云った通り、陶謙は丹楊の出自だ。曹豹もそこの出身ではないかと思われる。要するに同郷で、察するに曹豹は陶謙軍の生え抜きだったと見ていい」
A「なぁ、丹楊兵ってホントに強いのか? 曹豹がそうだったと聞くと、どうしても強いとは思えんが」
F「それについてはちょっとだけ待て。ここでの問題点は、その曹豹が呂布と姻戚にあったということだ」
A「ふむ……?」
F「陶謙軍、というか徐州軍を事実上率いていたのが曹豹なんだ。曹操に人民を虐殺され、慟哭する陶謙を叱りつけて出陣を促したのが曹豹だし。それが、張飛と仲違いして呂布に娘をやった、ということは……」
A「……つまり、徐州軍は劉備一党を排除しようとしていた、と?」
F「そう考えていいだろうな。正史における張飛は、配下の兵に厳しく士大夫にへいこらする小悪党だ。確かに武勇は長けていただろうが、その人格から名士に『相手にしてやる価値もない』と突っぱねられている。曹豹本人が『配下の兵』なのかはいくらか疑問の余地があるが、少なくとも士大夫ではなかっただろうから、張飛は態度でかく接していた……というのは想像に難くない」
Y「……ちょっと待て。確か、呂布が劉備を弟呼ばわりしたモンだから、劉備は苦々しく思った、みたいな記述が正史にあったはずだが」
F「ないすツッコミ。つまり、こういう関係なんだ」

劉備一党:徐州軍をほぼ統括。徐州政権をほぼ把握。呂布一党には弱い。
徐州軍:劉備一党を排除したい。呂布一党と組んでいる。
呂布一党:劉備一党より上位にいる(つもり)。徐州軍と組んでいる。
徐州政権:静観。

A「あれ? 政権って……陳親子だよな。劉備寄りじゃないのか?」
F「難しいところなんだ。陳珪は呂布の統治も、呂布による劉備追討も、黙って受け入れていた節がある。おそらく陳珪は、劉備本人を高くは評価していても、きちんと徐州を統治してくれるなら、誰が刺史でもかまわないと考えていたんじゃないかと思う」
A「……つまり、この時点では呂布でもよかった、と?」
F「そういうこと。その辺りを、果たして陳宮はどう見ていたのか……。ともあれ、袁術の北上を防ぐべく、劉備は出兵。徐州には張飛を留守居に残したものの、張飛が曹豹と仲違いして、曹豹が死亡」
A「あ、正史では死ぬのが先か」
F「うん。で、統率者を失った丹楊兵は、曹豹の娘婿だった呂布一党を頼り、呂布は(というか、陳宮は)この機を逃さず張飛を攻撃。一時は曹操をも追い詰めた呂軍の精鋭を防ぎえず、張飛は逃亡した」
A「劉備のところ、だな。でも、劉備は袁術と戦闘中で?」
F「遠征中に留守居が負けて、本拠地を失ったモンだから、マトモな戦闘ができるはずはないな。兵はどんどん逃げ出すものの、劉備はさすがに逃げるわけにはいかない。そこで劉備は、かなりぶっ飛んだ選択をした。眼の前の袁術軍に降伏するのではなく、徐州に帰って呂布に降伏したんだね」
A「ぅわ……どういう決断だよ」
F「劉備の人格を察するに、袁術より呂布の方が気があうと判断したんじゃないかな? 呂布(つーか、陳宮)としても、劉備を殺すつもりは(この時点では)なかったようで、その降伏を受け入れ、劉備を小沛に配した」
A「主客が入れ替わったワケだな……」
F「大部分の兵とせっかくの拠点を失った劉備は、兵力の増強をこっそり目論む。そこで犠牲になったのが、楊奉そのひと。袁術のもとに逃げていたのは以前さらっと触れた通りだけど、北上してきたこの男に劉備は眼をつけた。謀略もて袁術軍に叛かせ、ついには殺して、その兵を奪ったんだね」
A「楊奉の人生って、悲惨のひと言だな……」
F「そーねー。ところが、この動きが呂布にバレた。劉備の兵力増強を(もちろん)快く思わなかった呂布は、小沛へと出陣。さすがに呂布には敵し得ず、劉備軍は敗れ、壊走した」
A「しかし、ここでくじける劉備ではなかった、と」
F「うむ。関羽・張飛とは離れ離れになったものの、孫乾を回収して逃亡した。もともとの主たる公孫瓚が勢力を張る幽州はさすがに遠すぎるので、今度は手近なところにいる勢力……曹操に降伏しようと、一路許昌へと向かう」
A「敗れても、くじけても、決して諦めないのが劉備の強みだからな♪」
F「位置的にはもーちょっと南かな」
A「何が?」
F「劉備ひいきの連中は、あまり直視しないエピソードがあるんだ。その前に、例のアレをもう一度」

官軍:曹操・馬騰(韓遂と仲違いして、朝廷に出仕した):袁紹と冷戦、袁術と敵対
袁紹派:袁紹・劉表・張繍(劉表と手を組んだ):曹操と冷戦、袁術・公孫瓚と敵対
袁術派:袁術・孫策・呂布(半ば以上独立勢力):曹操・袁紹と敵対、公孫瓚とは友好
公孫瓚派:公孫瓚:袁紹と敵対、袁術と友好(袁紹と戦い、弱体化している)
独立勢力:劉璋(劉焉は194年に死去)・張魯・韓遂・公孫度
放浪勢力:劉備

A「時代は動いてるなぁ」
F「さて、以前、さらっと流したことを覚えているか?」
A「流したイベントはいくらでもあるからなぁ。どれだ?」
F「……否定できんな。えーっと、許昌へと落ち延びようとする劉備の前に、その男が姿を見せる。豫州に居を構えるその男、名を劉安と云った」
A「……誰?」
F「続きは次回の講釈で」

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