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真・恋姫無双RPGリプレイ「馬超、里帰りするのこと」 中編

Y:では改めて、太守のお屋敷に案内されるが……
蒲公英:きょろきょろしておくわ。
紫苑:ああ、そろそろかしらね。
秋蘭:なにがっすか?
蒲公英:とんがり帽子の占い師。パターンだと出てくる頃合でしょ。
白蓮:あのヒト、わたしがいると出てこないンじゃなかったかな。
 過去のキャンペーンにおいて、陶双央および鍾士季は管輅と面識がありません。
 管輅は「占いの結果は嘘をつかずに伝えなければならない」という職業上の制約を抱えており、双央に利用させてはトンでもない状況に陥るのが目に見えていたためそーいう仕儀となっています。
Y:……ま、どっちにせよ俺がマスターじゃアレは演じられん。あえてばらせば、今回は出てこないぞ。
蒲公英:そりゃ残念。
Y:ともあれ、全員太守のお屋敷に案内された。夜には歓迎の宴会が開かれるが、それまではごゆっくりと……
蒲公英:おう、やっとフリー行動ね。
紫苑:それはいいけど、今回ナニすればいいのかいまひとつ判らないのよねェ。
白蓮:とりあえず、出歩いてみようか。城下の様子を見ておきたいから。
Y:あー、お前ら、ヒトの話は聞くようにな。ごゆっくりとは云われるが、そうもいかないのが何人か。
蒲公英:えっと?
Y:まず馬超と馬岱には、馬騰に仕えていた古参の連中が来ている。立場上無碍には扱えんぞ。
翠:あー……そりゃそうね。しばらくぶりに帰ってきたお嬢様ではなぁ。
蒲公英:そういうの、馬超ひとりでよくない?
翠:むしろ口達者な岱ちゃんに押しつけたい。
Y:その辺の調整はさておいて。一方で、中央への誼や交易路を得たい商人や在郷名士も、黄忠や孫尚香に面会を求めている。北郷の名代で来ているからには、黄忠はある程度時間を割く必要があるな。
紫苑:まぁ、必要かしらね。
小蓮:……その辺り、誰だとどうってリストができてる?
Y:シナリオ組んだの幸市だからな、誰が来ても対応できるようになってる。反面、夏侯淵には積極的に会おうとする者はいない。天下統一前は魏領だったから、交易路にせよ人的交流にせよあったワケだ。
秋蘭:ただし、肝心の馬騰を討ったひとりとして、あまり出歩くのは好まれないっすか。
Y:話が早いな。残る公孫賛は……まぁ、好きにしてくれ。
白蓮:愛されてないなぁ!?
Y:仕方ないだろう。そいつに関しては『普段通り影が薄く、面会は求められないが積極的には相手にされない』となってるンだから。文句なら俺でも幸市でもなく原作に云え。
白蓮:云えないって。んー……ほかのヒトの様子見てから、ナニするか決めていい?
Y:どうぞ。では馬超・馬岱だが、馬騰の代からの涼州の武官たちがやってくる。「お嬢様も大きくなられた!」「いやまったく、馬に乗れずベソかいてた頃とは見違えましたぞ!」と君の人生の黒歴史な会話で盛り上がるが。
翠:「そういうのやめようなー!?」
蒲公英:「えー? 恥ずかしい過去にはしっかり向き合わないと、お姉様♪」とからかっておくわ。
翠:「こらー!?」原作通りとはいえ、アンタ、どっちの味方だ。
蒲公英:えーじろの。「ところで、姜特ってどんな子? こっちにいた頃には見なかったけど」
Y:「姜慕の息子ですかな?」と、おっさんたちは少し考えて「そーですなぁ。姜慕もお堅い男でしたが、息子はなおさら口うるさいようで」「ワシらの中に混ざってもナメられないようにと肩肘張っているのでしょうな。若い若い」と、温かく見下している発言が相次ぐ。
翠:温かく、でも見下している、か……まぁ、トシがトシで仕方ないってところかな。
蒲公英:そうね。……本人いないわよね?
Y:先に確認しろよ。来てないな。他に聞きたいことは?
翠:「凰会はどうなんだ? 太守として」
Y:「太守殿は……どうでしょうなぁ」と、おっさんたち返事に困る。
蒲公英:「どうって?」
Y:「いや、まぁ、先代に比べれば劣りますが、太守としては軍事においても政治においても過不足なく務めておいでです。最近は情勢が落ちついておるので、ワシらとしてはちと物足りませんが」
翠:「それは凰会のせいじゃないしなぁ」
Y:「ですな。軍がやや持てあまされているのと、子供たちがちょっと迷惑しているのを除けば、よい太守かと」
翠:子供の評判は悪いか。
蒲公英:当然じゃないかしらね。……さて、あとは聞くことがないのよね。そもそも聞きだす項目がなくなったわ。
翠:手持ちの情報が少なすぎるからなぁ。ここは以上で。
Y:ではシーン変更、商人たちと面談している黄忠と孫尚香に移る。この城でいちばん羽振りがいいのは李新という豪商で、トシの頃は八十を回っているくらい。
紫苑:NPCの平均年齢が高くない?
小蓮:……龐徳の妻が李氏、だったと思う。
Y:ん、知ってたか。この場合では凰徳の夫、つまり凰会の父の、兄にあたる。だが、太守の伯父ということではなく、自身の才覚で財を成した人物だ。
紫苑:まぁ、凰会さんが太守になったのは、天下統一のどさくさによるものだものねェ。
Y:だな。李新に連れられた商人たちは、西域との交易で得た物品を持ってきた。「こちらが、パルティアで話題となっている靴でございまして。かかとに棒を立てることで身長を高く見せると同時に姿勢を矯正する効果が得られます。名づけて『カルディール様に踏まれたい』という逸品!」
小蓮:……よく燃えそう。
紫苑:いるの、あのヒト?
Y:台本がこうなってるンだよ。「ワタクシめは『わたしはこうやって逃げおおせた――放浪の聖者マニ』や『よい子のためのクリスマス読本』などなど、遠くエジプトから取り寄せたパピルスなども取りそろえておりますぞ」と微妙な商品を出してくる商人もいる、うんぬんと。
紫苑:いや、アラビア語の書かれたパピルス持ってこられても本気で困るわよ。
Y:だよなぁ。ともあれ、李新は苦笑交じりで「では、こちらはお近づきのしるしにお納めを」と、黄忠にはペルシャの織物、孫尚香には宝石飾りを差し出してくる。
紫苑:「あらあら、これはよい物を」と如才なく受け取るわね。
小蓮:……「うむうむ、くるしゅうないぞよ♪」とご機嫌に。
紫苑:受け取っておいて「西方と交流するには、やはり五胡がネックとなっているのでしょうね?」ときらり。
Y:歴戦の豪商は「いやいや、五胡の中にもソロバンの判る者がおりますでな。いくばくかの賄賂を渡せば襲っては来ぬのですよ」とあっさり応じる。
紫苑:それをとがめては、中央はソロバンが判らないことになる、と。
Y:「ワシら商人には天下のことなど判りません。ただ、売りたいという物を買いたいというところに運んで、利ざやを稼いでおるだけ。そんなワシらにしてみれば、ただ五胡がおるというだけで国外への興味と関心をお捨てになられるのは、態度としていかがなものかと思いますな」と、老いた目で真摯に見つめてくる。
紫苑:厄介な相手ねェ。
小蓮:……「シャオ、難しいことは判んないけど、こんな綺麗な織物や宝石なら、みんな欲しがるし喜ぶと思うよ」と、フォローしておく。
紫苑:「……そうですわね」小蓮ちゃんの頭をなでて「これまでは天下統一に尽力したけれど、これからはその先を考えるべきなのでしょうね」と、にこやかに微笑んでおくわ。
Y:「ご理解頂けて何よりです」と老人も笑った。
 「馬上で天下は盗れても、馬上から天下を治めることはできません」との発言は、だいたい千年後のオハナシになる。
秋蘭:オトナのやりとりしてるっすねー。
Y:ああ、待たせて済まん。では夏侯淵だが、あてがわれた部屋に「失礼いたします。お客様のお世話を仰せつかりました」と侍女がお茶セットを運んできた。
秋蘭:「ああ、済まないな」と受け取るっす。……警戒されてるっすかね?
Y:相手が夏侯淵だが、特に気にしている様子はないな。中央からのお客様ということで、むしろ興味アリアリに見受けられるくらいで。
秋蘭:気さくな子なんすかね?
Y:試してみればいい。とりあえず、本人は話しかけられるのをうずうずして待っているようだが。ちなみに、出されたのは濃い味のミルクティだ。
秋蘭:この時代にそんなモンがあったっすかねー? 「実にうまいお茶だが、私でも煎れられるかな」
Y:「あ、はいっ。お茶に入れます牛乳と蜂蜜の分量を間違えなければ大丈夫かと」
秋蘭:「その分量とは?」
Y:「半々でございます。牛一頭に対して蜂一匹で」
秋蘭:それじゃハチミツ入ってないっすよ!
Y:「ふえええ!? あたし、なんか間違えましたか!?」と本気で判っていない様子だ。
白蓮:えーじろならまだしも、ヤスがこーいう親の顔が見たい子演じるのはどうかなぁ。
Y:ほっとけ。
紫苑:……ちょっと待ってくれるかしら。ワタシ、なんか嫌な予感がしたわ。
秋蘭:あたしもっす。ストレートに「君、名は何と云う?」
Y:「はい、李羅と申します。太守様の姪のようなものでして、その伝手でお仕えしている次第です」と笑顔で。
紫苑:娘か孫の育て方には難があったのね、あのおじいちゃん……
Y:孫娘だな。凰会のいとこの子。
翠:凰会のポケポケぶりはそっちの血か?
秋蘭:李新さんの商会、孫の代には潰れるっすかねェ。
Y:云いたい放題だな、お前ら。……そこ、何を悩んでいる。
白蓮:(エアそろばん中)……ん? んー、なんか聞き覚えがあるようなないようなで、どうにも気になって。ね、姜維の父親って何て云ったっけ?
 姜冏。
Y:俺は知らん。……ともあれ、どうする?
秋蘭:んー、少し友好ポイント稼いでおくっすかね。「まぁ、真面目に頼もう。このお茶の煎れ方を御指南願おうか」
Y:李羅は「あ、はいっ。かしこまりました。その代わり、都のことをお聞かせ願えますか? あたし、行ったことないので」と嬉しそうに応じる。ために、これ以上のアクションはできないから、シーン変更で公孫賛のターンだが。
白蓮:あ、はいはい。じゃぁ当初の予定通り城下に出るよ。
Y:おぅ。他シーンとの兼ね合いで、回れるのはせいぜい1ヶ所というところだな。
白蓮:他はそんなに時間かかってないから、仕方ないかな。そうだね……じゃぁ近くの茶店にでも。
 本人が下戸なのと、あとで宴会ということなので酒場には行かなかったらしい。
Y:えーっと、茶店のおばちゃんはお茶を持ってきて「お客さん、見ない顔だねェ?」と話しかけてくる。
紫苑:また中高年のNPCなのねェ。
秋蘭:シナリオ組んだのがおとーさんっすからねー……
白蓮:それにしても、馬超様御一行の一員とは思われてないワケだ。「ああ、中央からね」とあっさり応えておくよ。
Y:「へー、中央かい。おばちゃんは涼州から出たことがないけど、馬超様が住んでるならいいところなんだろうねェ」
白蓮:「ひとは多いしにぎやかだけど、住みやすいかどうかはなぁ。私なんか住んで長いのに、いまだに扱い悪くて……うん、泣かない」
Y:「……悩みごとがあるならおっしゃい。おばちゃん頼りないけど、愚痴くらい聞くよ」
白蓮:NPCにまで同情される公孫賛を、どーしてわたしは演じているのでしょう。「ところで、ここの太守様ってどんなひとなんだ? さっき、子供抱いてくるくる回ってるのは見たけど」
Y:「アレがなければ穏やかでいい人なんだけどねェ。天然っていうのかい? アタマの配線がちょっとずれてるのさ」
白蓮:「欠点は素行だけ?」
Y:「そうだね。国境の割に五胡との紛争も起こらないし、野盗だってしばらく出てこない。あたしらみたいな下々にとっては、平穏な生活がいちばんなのさ」
白蓮:だから、凰会はいい太守か……ふむ。「太守様には子供とかいないのかい?」
Y:「浮いた話はないねェ。トシはトシでもお綺麗なんだから、引く手あまただろうに」
白蓮:「ああ、ありがと。いい話聞けたよ」と茶店を後にするね。
Y:ひと通り終わったな。では……そうだな、公孫賛が太守のお屋敷に戻ってきたところへ、ばたばたばたーっと血相変えて姜特が駆け込んでくる。
蒲公英:そういえばいなかったわね、そいつ。
白蓮:無視もできないかな。「おい、どうした?」と声をかける。
Y:「ああ、中央の……太守殿に伝令だ!」と慌ただしく走っていくな。相手をしている暇はない、とばかりに。
白蓮:おっかけよう。
Y:うむ。凰会は宴会場の真ン中でダンスのリハーサルをしていたが
全員:するな
Y:文句ならこーいうキャラにした幸市に云え。駆け込んできた姜特は心底嫌そうに「太守殿に伝令! 西山の賊どもに不穏な気配があると報告がありまいた!」と噛んだ。
白蓮:「賊がいるのか?」と素で聞くけど。
Y:「賊と云いますか、ワタシが太守なのが気に入らないと涼州を出た者たちが、山中にこもっておりまして」と、ナニが悪いのか判っていない表情で姜特をくるくるしながら凰会は応じる。「これが、これが悪いのー!」と姜特涙目。
秋蘭:このヒトの率いる軍隊、楽しそうっすね。
蒲公英:アタシは加わりたくないわ。
白蓮:「あぁ……ひょっとして私たちが来たことで、いらん刺激を与えたかな」
Y:「否定は致しかねますね」ときっぱり。姜特を離して「というわけで、武将たちを呼んできてくれるかしら。翠お嬢様と一緒にいるはずだから」とお願いする。
白蓮:「いや、私が行こう。紫苑たちも呼んでくるから」と出て行くよ。
Y:それを聞いた姜特、いきり立って「いいえ、それには及びません!」と。
白蓮:おー?
Y:「馬超様がたのお帰りに水を差す不届き者どもなど、太守殿や馬超様のお手を煩わせるまでもありません! 日頃の不遜な態度も含めて、手前が目にモノ見せてまいります!」と男の子は燃えております。
白蓮:「いちばん不遜なのが誰かはさておいてぇー」
Y:「……目にモノ見せてまいります!」と目を逸らすので「姜くんはそんなにおばさんが嫌い?」と今度は凰会が泣きそう。
翠:その場に行くよ……。「おい、敵襲だって? 仕方ないなぁ、あたしが出るとしよう」
Y:「いえ、翠お嬢様の手を煩わせるなど。ここはワタシたちにお任せください」と凰会はやんわりオコトワリする。姜特も「その通りです。この程度の瑣事に出られることはありませんのだ……です」と噛んだ。
翠:「そうは云うが、太守が気に入らないってならあたしが行けばあっさり収まるかもしれないだろ?」
Y:「そりゃまぁ、翠お嬢様でしたら納得する……かな?」と姜特に目をやる凰会だが、姜特はむきになって「手前が行きますー! 馬超様のお手を煩わせたりしませんー!」とほとんど子供状態できーきー泣き叫ぶ。
白蓮:いや、もともと子供だし。そんなに手柄がほしいのかな、この子?
翠:気持ちと理屈は判らんでもないけどなぁ。
紫苑:そろそろ登場するわ。「地の利としても翠ちゃんは大丈夫よねェ。この辺り出身だし」
秋蘭:同上っす。「不安なら私がつきあおう。誰とは云わぬが、猪武者の手綱取りなら慣れているのでな」
小蓮:「面白そうだからシャオも行くー♪」……やっぱりこのキャラ慣れない。
蒲公英:誰か馬岱の登場フラグも立ててー?
Y:「うううう〜……手前がいくのー! 行くったら行くのー!」と、おこさまついに泣きだしたが。
蒲公英:小声でぼそぼそと「泣けわめけ叫べ苦しめふははのは……」
Y:「手前がなんか悪いことしましたかー!?」とマジ泣き。
蒲公英:ここで「あーあ、お姉様、子供泣かせた〜」とひょっこり顔出すわ。
小蓮:……「翠、鬼畜〜」とドン引く。
翠:「あたしが悪いンじゃないだろー!?」
Y:さすがに見かねたおばさんが「あー、よしよーし。泣かない泣かないねー?」とあやすけど、お子様「行くったら行くの〜……」と泣きじゃくっている。
紫苑:これじゃ手出し口出しできないわねェ。
翠:泣く子にゃ勝てんわ……「判った、判ったから……任せるから、泣くな? な?」
Y:じゃぁ「話術」か「収拾」で判定。どっちでもいいぞ。
 「話術」は運営系、「収拾」は智略系。ただし、馬超の智略・運営はいずれも2なので、どっちで判定しても大差はない。
翠:今回のシナリオで判定するのって初めてじゃないか?
白蓮:いちおう2回めだね。
翠:じゃったか。じゃぁ「収拾」で(ころころ、ころ)……ん、15。
Y:(ころころ)……まぁ成功だ。凰会の腕の中で姜特は必死で涙をこらえている。
紫苑:なんだか、気の毒になってくるわ。
秋蘭:子供に罪はないっすからねー。
紫苑:マジで云うけど、その台詞やめなさい。
蒲公英:そうよ。世の中には生まれながらに罪を背負う子供もいるンだから。
Y:幸市の話はさておいて、この件は姜特に任せることになりました。シナリオ通りとはいえ、それでいいのかお前ら。
蒲公英:この世はすべて絵空事よ。
 オレの台詞な、それ。

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