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真・恋姫無双RPGリプレイ「馬超、里帰りするのこと」 後編

Y:というわけで、姜特は西山に、明日、出陣することに決定。
翠:すぐじゃないンだ。
Y:もう夜だからな。それに、事態を知ればヒマを持て余す武将連中が出たがるのは明らかだ。とりあえずは伏せておき、出陣直前になって布告するワケだ。
白蓮:すでに準備はできているので間にあわないよ、で済ませるワケか。じゃぁ宴かな。
Y:そうなる。なるべくその辺のオハナシは出さないように宴会してくれ、とのこと。中央のステージで凰会が(ころ)蒲公英をくるくると振り回しているが、他の面子どうする?
蒲公英:こらー!?
Y:文句ならサイコロの神様に云え。まぁ、NPCと友好ポイント稼げるかのアクション1回はできるが(ころころ)もうふたり、孫尚香と公孫賛は出席者に囲まれてしまい動ける状態にないな。
白蓮:公孫賛が囲まれるってどんな状態?
Y:なんなんだろう? 俺も判らん。
 たぶん、いままで同行者と思われていなかったけど、この場で紹介されての反動。
Y:とりあえず、動けるのは馬超と黄忠、それに夏侯淵になるな。どうするね?
翠:そーは云われてもなぁ……くるくるをやめさせるべきかな、錦馬的に考えて。また「収拾」?
Y:うむ、状況的に「話術」は通じないからな。
紫苑:中央に戻ったら解任を検討する余地がありそうねェ。
蒲公英:反対しないわ。
翠:じゃぁ「おいおい、主催者が踊りっぱなしじゃまずくないか?」と果敢にも口出し(ころころ、ころ)16だな。
Y:えーっと(ころころ)悪い、6ゾロで17だ。
翠:てことは……?
Y:「硬いこと云わずに、翠お嬢様も踊りましょう〜」とくるくるに文字通り巻き込まれた。
翠:ぐむむ……無念でござる。
蒲公英:藪に首突っ込んだら蛇に絡まれたわね。
紫苑:ワタシは……そうね、李新さんは来てるのかしら?
小蓮:……さりげなく馬超見捨てるし。
Y:いるにはいるが、アタマ抱えて酒かっくらってる。涼州の未来への不安よりは伯父としての苦悶だろう。
翠:気持ちと理屈は判る……。
紫苑:お酌するわね。「心中、お察ししますわ」と苦笑交じりで。
Y:「すみませんな……。弟は酒癖が悪かったのに、アレと来たら素面でこの有様……」とかなり本気で苦しんでいるな。
小蓮:……せめて酔っていてくれたら、と実感交じりの発言するのやめて。
Y:込めたつもりはないが本人には聞こえたか。ラスト、夏侯淵どうする?
秋蘭:リラちゃん、どうしてるっすかね?
Y:隅っこでいじましくお料理つついてる姜特を、苦笑交じりでお相手してる。
白蓮:あらあら?
紫苑:仲いいのかしら。
Y:そうでもないように見えるな。李羅が気を遣っているのに姜特は邪険にしている、みたいな。なお、李羅が年上。
秋蘭:微笑ましいっすねー。「李羅殿、ちょっとー」と声かけるっす。
白蓮:邪魔するモンじゃないと思うな。
秋蘭:でも、姜特クンが邪魔だと思ってるなら、解放してあげる必要もあるじゃないっすか。
Y:モノは云いようだな。李羅が「はぁーい」とお返事して夏侯淵の方に向かうと、姜特ふつうに見送る。
紫苑:手間のかかる子ねェ。
蒲公英:困ったモンだわ。
秋蘭:見えなかったことにして「例のお茶をもらえるかな」とお願いするっす。
Y:「あら、涼州の酒は口にあいませんでしたか?」
秋蘭:「いや、酔い冷ましさ。ちと私には強くてね」
Y:「あ、意外とだらしない。判りました、すぐに用意しますね」と歩いていく。
白蓮:動けるヒトはひと通り動いたけど、遅くまで宴会続くかな?
Y:馬超たちが来た当日だし、極秘事項とは云え出陣が控えている。武官連中はちょっと物足りなそうだが、少し早めにダンスが終わってお開きになるな。
蒲公英:今度こそフリー行動になるワケね。
白蓮:その前に……あー、これは。まずいか……?
Y:ということで、各自あてがわれた部屋に戻ったところから。何するか申告してくれ。
NPCへの友好ポイント
 翠  →凰会:―○○○××
 翠  →姜特:――××――
 蒲公英→凰会:―○○○××
 蒲公英→姜特:――××――
 紫苑 →李新:―○○○――
 紫苑 →姜特:――×○――
 小蓮 →李新:――○○――
 小蓮 →姜特:――××――
 秋蘭 →李羅:――○○○―
 秋蘭 →姜特:――××――
 白蓮 →姜特:――××――
紫苑:評価低いわねェ、姜特クン。無理もないけど。
小蓮:……熟女受けはいいみたい。
紫苑:誰のコトかしらねェ?
翠:笑顔で凄むな! えーっと……どうしよう?
白蓮:さすがえーじろというところでね。ヤスでもわたしに勝てるという小細工が、ここに来て響いてるンだよ。
翠:へ? ……何かされた?
紫苑:まさか、スカ引いたのがホントに何かの小細工だったの?
白蓮:間接的にはそうかな。今回のシナリオ、馬超の里帰りという趣旨だから、基本的には馬超がリーダーでしょ。いつもみたいに「わたし」が指揮を執れる状況じゃないンだよ。
翠:……そりゃそうか。
白蓮:双央さんや士季ちゃんならリーダー格としてひっぱれるけど、今回のPCはそういう立場にないから。よりによって公孫賛、助言もできないし聞き入れられない状態。立場的に出しゃばれないンだな、これが。
蒲公英:あー……原作ものならではのキャラ制限ね。
白蓮:最初でわたしに馬超をやらせなかっただけで、わたしの指揮権を封じるンだからたいしたタマだよ。あのとき、わたしの出目がいちばん小さかったら、カード引く順番逆にして馬岱にもさせなかったと思うけど。
Y:相変わらず読みが正確で泣けてくるな。
翠:いや、でも、劉備辺り引いていたら? 劉備とか曹操だと、馬超でも指示には従わないといかんだろ。
白蓮:だから、間接的に公孫賛引かされたンだよ。劉備や曹操と、あと何人か、立場的に馬超より上になるひとは山札に入ってなかったンじゃない? そのせいで、わたしの引いたのは公孫賛だった。
小蓮:……その余波を被った私。
紫苑:そうねェ。
Y:いや、お前は問題なかっただろうが。
白蓮:というわけで、今回はわたしの策は頼りにしないでくださいね。えーじろのせいで口出しできないから。
翠:単純な割に……というか、単純だからこそ対策の立てようもないのか?
蒲公英:さすがはえーじろというところね。
Y:まぁ、そういう次第だ。今回は、自分で考えて何するか申告してくれや。くっくっく。
白蓮:うん、頑張れ。わたしが馬超なら凰会さんのところに行って状況の確認と姜特をどう思っているか聞いてくるけど、そんなモン公孫賛がやってもまっとうな返事は得られないだろうねっ!
Y:こらー!?
白蓮:ただの独り言だよ! それが悪いなんてルールブックのどこにも書いてないよ!
Y:それが好ましくないことくらい常識で判断しろよ!
白蓮:わたしとえーじろと母さんに常識が通じると思う?
Y:通じないなぁ……。
翠:では、馬超は凰会のところに顔を出します! 「葉、ちょっといいかー?」
Y:こん畜生! 「あら、翠お嬢様。同衾なさいますか? 仕方ないなぁ」と嬉しそうだ。
翠:「いや、しねーから。西山の連中について、詳細に聞きたいンだがな」
Y:「あ、はい」と居住まいを正す。えーっと、西山にこもっているのは、賊とは云いきれない連中でな。太守としての凰会に不満を抱いた若手の武官連中が徒党を組んで涼州を出て、そのまま西山に住みついているンだ。自分たちで農耕して食糧を確保しつつ、五胡とも積極的に交戦している。
翠:バックに李新でも……? 山中だけで生産活動が成立するほど涼州は豊かじゃないぞ。いや、でも、あのじいさんは五胡との戦闘に消極的だったか。
Y:まぁな。バックにいるのは、李新とは別系統の商人で、五胡との対決姿勢を取っている奴なんだ。その辺りの事情は凰会も把握しているものの、やっていることそのものは、太守への抗議活動が根底にあることを除けば問題はない。ただし、ときどき李新系統の商人が襲われることもある。
蒲公英:問題あるじゃない。
Y:それが五胡にやられたのかこいつらにやられたのか、判別しにくいンだ。ために、李新の発言力が強い涼州城内では賊呼ばわりされている。
蒲公英:でも、いままでは涼州に対して、積極的な敵対姿勢は取ってなかったのよね?
Y:いちおう云っておくが、お前この場にいないからな。そうだな、これまでは宥和政策という名目での放置姿勢を取っていたため、西山の連中も過激なことはしてこなかった。だが、今回は何がどうしたのか、動いてしまったワケだ。
翠:んー……? 「なぁ、具体的にどんな真似をしでかしたンだ?」
Y:「さぁ?」
翠:「さぁって」
Y:「ワタシも姜くんからそれ以上のことは聞いていないので、何とも」と歯切れが悪い。
翠:「……姜特をどう思う?」
Y:「……成長すれば立派な武将となれるでしょうね、父親のように」と寂しそうに笑って「ただ、まだ若い。もう十年を待つことができないのが、あの子が父親に及ばないところでしょうけど」
白蓮:……そういうこと、か。
紫苑:父親に遠慮があって、姜特クンを好き放題させているのね。それがあの子のためにならないことを知ったうえで。
白蓮:ホントに遠慮かは微妙なラインでしょうけどねー。わたしが馬岱なら姜特を、状況を説明させるため呼びだすけど、公孫賛がそんなことしても応じるはずないよね。
蒲公英:よしよし、呼ぶわ。
Y:あああ、やっぱり小細工じゃダメだった……。えーっと、どこに呼ぶ?
蒲公英:そりゃ凰会の部屋よ。
Y:だよなぁ。夜に女の部屋に入るのを躊躇ったものの、呼び出しには応じる。「お召しによりまかりこしまひた」
翠:立場上、馬超が喋るか。「事態をお前に任せるとは云ったが、状況の確認はしておきたい。西山の連中は何をした?」
Y:えーっと「はっ。中央から馬超様が来られたのが西山にも届いたようで『太守の更迭を求める、応じなければ武力行使も辞さず』と息巻いております」
紫苑:まっとうな要求ねェ。
蒲公英:替えた方がいいという要求は認める。「じゃぁ、それをどう退けるつもりなの?」
Y:「ねじふせます」びしっ。横から凰会が「交渉の余地はないのでしょうか……」と、さすがに踊らずに、云う。
白蓮:人事権は君主の権力のなかでもっとも顕著なものだからね。誰をどこの太守にするのか、生死を含めて左右できる権限に、下から異を唱えたことそのものが罪に問えるよ。
蒲公英:殺されても文句は云えない、と。「同情の余地はあるけど、交渉の必要はなさそうだね」
翠:まぁ、降伏勧告はしてもいいだろうな。死にたくなければ降れとひと言。
Y:「承知しました」と姜特。凰会は残念そうだが?
蒲公英:攻めるのは決定事項だから、フォローはしかねるわね。
翠:同じく。では、姜特を返してからこっちの全員を集めて対策を協議しようか。(ちら)
白蓮:集まるのに異存はないけど、協議するほど困ってはいないと思うよ。
紫苑:ふたつにひとつ、ということでいいのかしら。
蒲公英:とは思うわね。
翠:ふたつ?
小蓮:……姜特が馬超にいいとこ見せようと先制攻撃を企んでいる、のと?
白蓮:姜特が西山の連中と結託している、のどちらか。
翠:あー……えーっと?
蒲公英:西山の不平分子に関する情報は、事前になかったでしょーが。城下でも話題になっていない連中がこのタイミングで動いたという情報を得ているからには、姜特は以前から結託していたか、姜特のでっち上げなのよ。
小蓮:……結託はないように思える。
翠:だよね。二枚舌使えそうな子じゃないし。
紫苑:でも、凰会さんに否定的な若手が、出奔してお山にこもっているのよ。となれば、いちばん否定的な若手とつながりがない方が不自然に思えるのよねェ。
翠:西山の連中にしてみれば、姜特を堤防の一穴にするのが常道ってコトか。
白蓮:有事における太守の頼りなさは誰もが認めている。それでいて、姜特は姜特であまり認められていない。それを踏まえて考えれば、答えは出ると思うよ。
紫苑:……あぁ、姜特クンもそんなに期待されていないのね?
蒲公英:傍目には太守のお気に入りに見えていたしね。なるほど、それなら出るわ。
翠:えーっと、姜特は西山を攻略して手柄をあげるのとともに、凰会が太守の座にあることへ根強い反対があると、馬超と中央に知らしめようとしている、という認識でいいのかな? そのために、先制攻撃をしかけようと。
小蓮:……次の太守を狙ってる?
紫苑:李新さんとは別系統の商人と結託している西山を討てば貸しを作れる。凰会さんへの反対の声が大きいのを知らしめた上で李新さんの支持を得ていれば、難しくはないでしょうねェ。
白蓮:ただ、ひとつ気になるンだよ。えーじろの組んだシナリオにしては、悪役の欲望表現がストレートすぎるの。
秋蘭:裏の裏の裏の裏があるように思えるっすね?
F:黒幕が子供なんだから単純にもなるよ。
全員:………………あー
 泰永の横で、アドリブの台本をタイピングしていました。
秋蘭:裏の裏の裏の裏は表っすからねェ……。いやお見事。
蒲公英:となると、無用の混乱を起こさないために、姜特を出さないのがベターなんでしょうけど、問題は……
紫苑:涼州における将来的な不安を取り除くにはどうすればいいのか、ね。果たして、オトナの都合と権力で姜特クンをねじ伏せればそれでいいのかどうか。
翠:また、拗ねて泣いちゃ困るなぁ。
全員:うーん……
白蓮:単純な解決策ならふたつあるけど……
小蓮:……ふたつ?
紫苑:……あぁ(くすっ)2番めは却下で。
白蓮:では、どうぞ。
紫苑:「翠ちゃん、わたくしに考えがあるのだけれど聞いてもらえるかしら?」
翠:「おぅ、云ってくれ」
(小細工中……小細工中……小細工中……)
翠:では改めて、姜特を凰会の部屋に呼び出そう。
Y:不審そうな表情を隠さずに、呼び出しに応じる。「お召しによりまかりこしました」
翠:今度は噛まなかったね。「騎兵隊長姜特、西山への出兵を中止する」
Y:「えー!?」と子供な声をあげるが、すぐに表情を改めて「それは、いったいいかなる仕儀にござれますか!?」と詰問してくる。ただし、やや顔色が悪い。
翠:「単純な話だよ。西山に偵察を出したら、不穏な気配どころかあたしたちが来たことも知られてなかったンだから」
小蓮:「うん、まーったく知られてなかったよ」
 手が空いていた孫尚香が行ってきた。
Y:子供、うつむいて声もない。
翠:「西山にあらぬ疑いをかけてそれを討ち、自らの功績にせんと企み、併せて太守への不信を涼州に広げようとしたお前のくわだて、この馬超しかと見届けたぞ。申し開きはあるか」
Y:頭を下げたままで「……いえ、ございません」
蒲公英:そこは、子供でも男の子ね。
Y:「発覚したからには云い逃れはいたしません。いかようにも処分を」といじましいことを云うので、凰会はすでに涙目。すがるような形相で馬超を見ている。
翠:笑って「……とまぁ、堅苦しいことはここまで。顔上げろ」と軽く。
Y:上げられンだろうね。
翠:「あたしたちは今回、墓参りに来たンだ。不要な騒ぎを起こして凰徳や母上の眠りを妨げたくはないンだよ」
紫苑:「とはいえ、完全に放免というわけにもいきませんわ。姜特クンの、騎兵隊長の任を解きます」
Y:深々と平伏する。
紫苑:「そのうえで、話はつけてありますので、李新さんに使ってもらいなさいな」
Y:戸惑っている様子で顔を上げた。「手前に……商人になれと?」
翠:「天下はようやく収まった。これからは、その天下をどうやって富ませ発展させていくかという時代になる」
紫苑:「槍が不要とは云わないけれど、次の時代に必要な人材になってほしいのですわ。お若いあなたには、もっと様々な経験を積んで、広い視野を持ってほしいのです」
Y:姜特の戸惑いはいままでと違う雰囲気になるな。「手前に……務まりましょうか」
秋蘭:戸口から心配そうに見ているリラちゃんを指差して「大丈夫だろう。彼女もついているからな」
 李新は黄忠、李羅は夏侯淵が説得した。
Y:いやに頼もしい感じの李羅を見て、姜特ちょっとだけ不安そうに苦笑する。「……格別の温情をいただき、感謝の言葉もありません。その御厚意にすがらせていただきます」
翠:「うむ、しっかり励めよ」
蒲公英:一件落着、かしらね。
白蓮:いちおう、西山には予定通り帰順を求めておくべきかな。馬超の帰還により大赦を行う、まつろわなくてもかまわないが戻るなら今のうち、とか何とか。次期太守の人事も定まった、みたいな噂も流せば効果的だろうけど。
Y:まぁ、エピローグだから公孫賛でも指揮っていいことにしよう。誰がどう説得する?
紫苑:ワタシの書いた文書を次の太守の名義で送る、というかたちにしましょうか。
白蓮:ん、問題ないね。
Y:それじゃ最後の判定だ。失敗したら笑ってやる。
紫苑:どー、れ(ころころ、ころころころころ)……

 馬超の墓参りに関して、史書はひと言「馬超の帰還により不服従民が帰順した」と記すのみ。歴史の裏に葬られた小さな子供の悪だくみは残らなかった。
 こののち凰会はのほほんと、可もなく不可もなく十年ほど太守を務め、養女の李羅にその座を譲って隠遁。母を凌ぐ八十六での大往生を遂げている。
 太守となった李羅は五胡との戦闘を続けつつ、西方との交易を促進させた。やや頼りない面はあったものの、祖父から受け継いだ商才は確かなものだったようで、涼州を富ませ、それなりの名君として名を残している。
 のちに、彼女と姜特の間に生まれた李雄が、益州に入って蜀を発展させるが、それはまた別の外史となる。

真・恋姫無双RPGリプレイ「馬超、里帰りするのこと」 了

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