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恋姫無双RPG リプレイ 6 「陶双央、謀略を看破するのこと」前編

Y:よーし、席につけ。
三妹:えーじろ抜きでこのテーブル囲む日が来るとはね……。
ヤスの妻:手術も無事に済んだワケだから、少しは息抜きしないと。ちーちゃん、このところ寝てないでしょ。
三妹:寝てたわよ!
A:ねーちゃんよりアイツを心配なんだからなぁ。
A2:(くすっ)……不思議な関係。
M:妻としてはどーかとしか思えないわねェ。
三妹:アタシがアイツ心配しちゃ悪いの!?
Y:悪くはないが、度が過ぎてる。まぁ、俺としては殺しても死にそうもないアイツより、庭の雪が心配だな。
A:アキラは雪かきしたくありませんからね!?
 ここ数日の新潟は、二十数年ぶりの大雪に見舞われていた。ここんちの野菜小屋が雪で潰れたりしていたが、幸市の手術日から雪が非道くなったのは、偶然だと信じたい。
A2:……遊ぶだけならつきあう。
Y:まぁ、その辺は罰ゲームとしておこう。ともあれ、アイツがいないところで講釈進めるわけにもいかんので、今日は俺がマスターでRPGを一席。
ヤスの妻:ヤスがマスターなのははじめてだな、わたし。
A2:(こくっ)……同じく。
Y:あぁ、安心しろ。幸市に組ませたシナリオだ。俺が考えたものじゃない。
三妹:なおさら不安よ、それ。
ヤスの妻:眼ェつぶっても勝てそうだけどな。
A2:いあ、いあ。
M:いや、あなたたち……えーっと、じゃぁどっち?
Y:いつものでいいぞ。
 録音だけして公開していないものがあり、そちらでは、いつもの「双央さんと愉快な仲間たち」ではないキャラクターを使っていた。双央たちを使うのかそっちをやるのか、という確認。
陶双央:よしきた。
楊花玉:前回はいいとこナシだったから、今度はしっかりしないと。
趙二英:そうね……。
盾親忠:……ん。
Y:時間軸としては、階上津でパルティアとドンパチ交えてしばらくしてから。太守を更迭がてら、小理をつけて陶謙に報告に行かせ、残る面子は階上津の復興に留まっていたある日のことだが……とりあえず、経験点の消化からだな。

 シナリオを達成した(かつ、生き残った)PCには、経験点が入ります。これを使ってPCを強化し、次なるシナリオに備えることになります。
 基本的には、シナリオごとに設定される数値が得られます。反面、シナリオに失敗した場合は、失敗の度合によって経験点も減少します。
(基本システム「5 幕間」より)

Y:すでに公開してある「サンプルシナリオ」のページを見れば判る通り、あのときのお前らはお世辞にもいいプレイをしたとは云えなかった。実際のところ、経験点はプラスの3どまりだからな。
趙二英:あのときは、えーじろにいいように弄ばれた感があるわ。
楊花玉:いつものことなんだけどねェ。
Y:だが、経験点のシステム変更があって、基本システムに書かれている経験点は原則100倍になる。つまり、各自に与えられる経験点は300点ずつだ。
陶双央:おや。
Y:で、前回のシナリオで戦死させた兵の数をそのままマイナス。
陶双央:ぶっ!?
趙二英:負け戦の場合は、得られる経験点が少なくなるのね?
Y:そゆこと。各自何人死なせたかは幸市がきちんと記録してあるから。
 双央隊(武勇3):総数100、戦死57
 二英隊(武勇6):総数100、戦死28
 花玉隊(武勇5):総数100、戦死30
 親忠隊(武勇5):総数100、戦死28
A:双央さんの「武勇」の低さが、はっきり響いてるンだねェ。
Y:いかに兵を損なうことなく功績をあげるか、が問われているワケだ。
陶双央:最初から「謀略」かましておけばよかったよ……。「武勇」で攻撃力と守備力を一元管理してるから、その辺り、智将タイプには厳しくなったね。
 攻撃力・守備力を「武勇」ではなく「智略」で計算できるスキル。「智略」が「武勇」の2倍ある陶双央の場合、これを使っているかどうかは戦況を左右する。
楊花玉:親忠さんを副将につけておけばよかったわね。ワタシは補給、二英は戦闘のために別行動しなきゃいけないけど、手の空いてる親忠さんと組んでいればかなり便利だったわよ。
Y:『PC同士で副将を組むのは好ましくない』と基本システムに書いてあるがな。そもそも、独自の戦闘システム組んだ理由が、原作『恋姫』および『真・恋姫』の戦闘システムが、複数人のプレイヤーをカバーできないからだっただろ?
陶双央:だったね……まぁ、仕方ないか。
Y:いちおう、殺した敵兵の数だけプラス査定にもなるから。そんなに気落ちしなくていいぞ。

・ルール変更
 経験点の計算式:シナリオごとのボーナス×100 +(殺した敵兵数−戦死者数)
 スキル修得に必要な経験点も、基本的に100倍(そうでない場合もある:別リスト参照)。

陶双央
 武勇3智略6運営6魅力4 歩3騎3弓2
 政務3、包囲3、地理2、情勢1、謀略、智嚢、能吏、陣形3(鶴翼、偃月、衡軛)
経験点:282

陶双央:んー……とりあえず「話術」かな。
Y:あいよ、ゼロから1レベルにするには経験点が100点いるぞ。
陶双央:で、「挑発」も1レベル。前回、イニシアチブをとったはいいけど、接敵してない状態で使えるスキルが何もなかったから、結局先手を許したもん。何かできるようにしておくよ。
Y:そっちをゼロから1にするには150点いるな。
陶双央:残り32点、まぁちょうどいいくらいかな。

趙二英
 武勇6智略5運営3魅力6 歩2騎2弓2
 突破3、包囲3、斉射3、訓練3、治安3、混乱2、偵察1、鼓舞1、威圧1、陣形4(鶴翼、偃月、衡軛、魚鱗)
経験点:305

楊花玉
 武勇5智略3運営5魅力4 歩1騎1弓4
 補給4、話術4、経理3、地理3、情勢3、威圧1、陣形2(鶴翼、魚鱗)
経験点:280

趙二英:(手持ちのルールブックを確認中)常駐スキルの「猛者」って、経験点が5点必要になってるわね。
Y:修正リストによれば500点だ。
趙二英:ぜんぜん足りないか。……よし、アタシ今回パス。
Y:原則として、スキルの習得は幕間でしか行えないぞ? シナリオ中には時間的余裕がないことになってる。
趙二英:何とかするわよ。
Y:そう云うなら構わんが。じゃぁ、次。
楊花玉:ワタシもパスね。「能吏」には足りないから。
 「猛者」は「武勇」、「能吏」は「運営」に関連した判定で、ダイス1個のボーナスがつくスキル。かなり便利なので修得には多額の経験点が必要。
Y:そうかい。

盾親忠
 武勇5智略5運営5魅力3 歩2騎4弓2
 偵察4、突破4、外国知識(東夷)4、伏兵3、訓練2、治安1、混乱1、未来知識1、賭身、陣形2(雁行、衡軛)
経験点:290

盾親忠:……「補修」かな。

補修(内政系スキル)
 建物や陣地を修理・整備する。
 武将「陸抗」がこのスキルを使用する場合、1レベルにつき1点のボーナスがつく。

Y:1レベルにするには100点だが、2レベルまで上げるにはもう200点いるぞ。
盾親忠:……んー
陶双央:経験点まわそうか? もう10点あれば2レベルにできるでしょ。
趙二英:その辺はどうなってるの?
Y:コスト面は同じ。もともと『経験点を2点消費すれば、他PCに1点渡せる』ことになっていたが、現行システムでも『渡したい経験点の2倍を消費すれば、他PCに経験点を渡せる』となっている。
陶双央:じゃぁ20点減らして、親忠さんに10点譲渡。(陶双央、経験点32→12)
盾親忠:借りておく。(盾親忠、経験点290→300)……これで「補修」を2レベルに。
Y:あいよ。では、各自、幕間内政フェイズで何をするのか申告してくれ。

内政フェイズ
陶双央:政務 出目30(大成功)
趙二英:治安 出目21(成功)
楊花玉:経理 出目29(成功)
盾親忠:補修 出目24(成功)

楊花玉:マスターがヤスでなかったら、ワタシも大成功扱いだったのにねェ。
Y:その辺、俺は厳しいだけだ。では、シナリオに入るぞ。そんな具合に、お前たちは階上津の復興に尽力していた。
趙二英:小理がいれば、もうすこし楽になったはずよね。
Y:動ける、というか指揮の執れる人数が多ければ、その分手間は減らせるだろうな。
陶双央:でも、徐州の全権を預かる身としては、わたしたち全員が階上津にはりついている間に、袁術がまた何かしでかさないか不安だから。小理ちゃんがいれば長期間の籠城戦でも戦えるから、手放す人員としては最適だよ。
趙二英:何かあったらアタシたちが急行する、と。まぁ、理屈では判るけど、怪我人の治療とかは大丈夫なの?
楊花玉:あぁ、負傷兵とかも。
Y:お前らが門前でガンバったから、住民レベルでの怪我人は出なかったことになってるな。負傷兵は、お前らの部隊はもちろん階上津守備隊にも多数。加えて、カルディール隊の負傷兵も捕虜として保護している。
趙二英:……早めに小理を呼び戻した方がよさそうね。あと、募兵。
Y:そうなるな。で、そんなある日、西から早船が到着し、双央に面会を求めていると報告があった。
陶双央:わたしに? 誰?
Y:政庁に案内されてきたのは、白髪に近い銀髪を三つ編みにまとめた、病人然とした女だ。だが、いかにも上質な装束に身を包み、やり手の商人といった風情がある。
陶双央:「戦闘準備!」
趙二英:「ここで会ったが100年目よ!」……って、アタシいちゃまずくない?
盾親忠:……アキラくん?
A:えーっと、どこから説明したものか。とりあえず、現れたのは魯粛さんなんだけどね。
 「基本システム」同梱のリプレイで、双央たちは徐州を狙う呉の謀略をからくも防ぎきった。が、実行犯・魯粛の思わぬ鬼謀の前に、二英が戦死している。
Y:今のリプレイシリーズ始めるときに、その辺りの設定はクリアされたと幸市が云ってただろーが。お前らと魯粛の間に面識はない。無論、恨みつらみもな。
趙二英:まぁ、そうだったわね。
陶双央:あのときは、正直不覚をとったからなぁ……。
盾親忠:……意外とうっかりさん?
楊花玉:そんな面はあるわね。それはいいけどヤス、ワタシ、商人同士ということで面識あったことにできない?
Y:いや、商人というか富豪なんだが。えーっと……(ころっ)2か。じゃぁ、友好ポイントふたつ。コイン2枚。
楊花玉:ん(ちりーんっ)……裏と表ね。
Y:○と×ひとつずつつけとけ。
A:では「陶書記にはお初にお目にかかります。孫伯符にお仕えする、魯粛です」
陶双央:「陶双央です」……あ、アキラが魯粛さんやるんだ。
楊花玉:だから小理ちゃんいなかったのねェ。
Y:俺に女声で女キャラを演じろと?
趙二英:えーじろみたいに声までやる必要はないけど……確かに、避けるべきね。
A:だね。ちなみに、魯粛は『恋姫』『真・恋姫』のいずれにも出演しないので、オフィシャルの外伝『紫電一閃!!華蝶仮面』に登場する魯粛さんがベースだから。あーさんは、知らない?
盾親忠:(ふるふる)……読んでない。けど、ゲーム的にはこの時代の孫策って、袁術の配下では?
趙二英:あ、そーいえば西からか。「袁術の配下のそのまた配下が、徐州に何の用?」
A:「あはは、ご挨拶だね。私の来訪の目的はともかく、水でももらえるとありがたいな。薬の手放せない身体なんだけど、少し船酔いしていてね」
陶双央:場所を移して内密の話をしたい、と云ってるワケだ。
楊花玉:「袁術はともかく、魯粛さんの人柄は保証するわよ」と口添えしておくわね。
趙二英:……黙ってるわ。
盾親忠:(こくっ)
陶双央:「……判りました、ではこちらへ」と、政庁の応接間にご案内するところかな。
Y:では、魯粛と随員ひとりがついていき、あとは船に残る。
趙二英:いちおう、見張りに残った方がよさそうね。随員ってどんな奴?
Y:少しトシのいった女だな。魯粛の護衛といった感のある、だが温和そうな。
趙二英:「……じゃぁ、こっちはアタシが見張ってるから、何かあったらお願い」
盾親忠:(こくっ)
陶双央:喋ろうよ、あーちゃん。「火矢の手配しておくよー」と、聞こえる声で。
趙二英:アンタは黙りなさいよ!
A:えーっと、魯粛は平然と苦笑しているけど、随員さんは露骨に眉を吊り上げた。でも、口に出しては何も云わない。
陶双央:挑発には乗らないタイプか……誰だろ。
Y:……スキル使うなら、先に宣言してくれんか?
陶双央:いや、そういうことじゃないけど、使っていいなら使ったよ?
Y:ないなら、ない。で、政庁だな。侍女が水ひとつと残りにはお茶を運んできた。
陶双央:出ていくのを待ってから「はっきりお伺いしましょう、魯粛さんは袁術の使いですか? それとも孫策の?」
A:お水で薬を流し込みながら「はっきりお応えしましょう、孫策の使いです」
陶双央:「話術」で判定だっけ?
A:魯粛の「話術」は6レベルだけど、やる?
陶双央:花玉がね。
楊花玉:ワタシなんだ。「我が徐州と袁術との関係は、ご存知と思うけど」と(ころころ、ころころころころ)……26。
A:こっちは(ころころ、ころころころころころころころ)……37だね。
陶双央:「話術」6レベルに「能吏」持ちで、しかも「運営」6か。交渉で勝てる相手じゃないな……よし、そこは信じる。「それなら、こちらから間口を狭める理由はありませんね。ご用件をお伺いしましょう」
A:では、随員が背筋をただし「あたしは伯符殿に仕える、祖茂と申す武骨者。伯符殿から書状を預かってきた」と、懐から書状を差し出す。
楊花玉:そっちが正使?
陶双央:祖茂……孫堅四天王のひとりか。「武名高き江東の虎の、四爪に数えられた祖茂将軍ですか? これはこれは、思わぬ方が……」と、素で驚きながら受け取る。
楊花玉:……ごめん、誰?
陶双央:あぁ。えーっと、孫堅云うのは孫策の親で、祖茂は、演義では程普・韓当・黄蓋と並んで孫堅四天王に数えられた武将だね。『真・恋姫』に黄蓋は出るけど、他3人は通じて出てこないよ。
楊花玉:先代から仕えていた武将を送り込んできた、と。何事なの?
Y:書状の内容には、カルディールとの戦闘が小さからず影響している。揚州北部海岸域から、巣津を中心とした勢力が消失したことで、揚州北部では勢力争いが起こっているンだ。
楊花玉:そうねェ。こっちが階上津の復興に苦労しているンだから、巣津の復興だって手間がかかるわよね。
陶双央:それも、まとめ役がいないからには、もめるに任せている状態か。おばあさまが存命でなかったら、二英に花玉付けて兵を入れさせたところだな。
Y:だが、お前らが階上津にかまけている間に、孫策がその「まとめ役」になろうとしている。揚州に兵を出して自前の勢力を築き、そのうえで袁術を討ちたいと考えているンだ。そこに徐州勢が介入してきたらいろいろとまずい。
陶双央:だから、わたしたちが揚州に手を出さないようお願いしに来た、と。
A:祖茂さんはうなずいて「堅殿亡きあと、伯符殿は袁術にいいように扱われ、我ら孫家の者は不遇をかこっておった。同情してくれとは云わぬが、袁術めの勢力が衰えれば徐州にもメリットはあろう? 手を組んでくれとも云わぬ。伯符殿が揚州を得るのを、黙認してもらいたい」
陶双央:……わたしの判断で対応していいことかな、これって。
A:待ってましたとばかりに、魯粛さんが「あぁ、こちらを。徐州刺史陶謙殿と陳小理殿の連名で、この一件は陶書記の判断に委ねると委任状をいただいています」と、書状を差し出してくる。
陶双央:それで、西から来たの?
Y:そういうことだ。確かに陶謙の筆跡で「徐州を守るのにもっともよい方策を選びな」と書かれている。
陶双央:ふむ……(エアそろばん開始)
楊花玉:じゃぁ「すぐにお応えのできることではなさそうだから、別室でくつろいでもらった方がよさそうね」
A:魯粛はうなずいて「そうさせてもらえるかな」と、でも祖茂は「早くに返事をいただければと思う」と、対照的な表情でのたまった。
陶双央:(ちょいちょい、ちょい)「えぇ……そうですね。まぁ、そんなにお待たせしませんよ」と安請けあい。
Y:そこへ、侍女が入ってきた。「申し上げます、曹操軍の郭嘉というお方がお見えですが……」
陶双央:(手が止まる)「……は?」
盾親忠:(きょとん)……今度は、魏から?
A:魯粛も戸惑って「おやおや……私たちは、席を外した方がよさそうだね」
楊花玉:「ええ、そうしていただければ助かります。じゃぁ、おふたりをお部屋にご案内して、お茶の替えを。あと、二英さんを呼んで」
Y:「かしこまりましたっ」と侍女は出ていった。えーっと……二英。
趙二英:ほい来た。船着き場を見張っていたら……ってところね。
Y:だ。前回云った通り、階上津の入り口は船着き場か南門だけ。そこに、曹の牙門旗を掲げた小船が近づいてきた。魯粛たちの乗ってきた船は、一見民間船だが、そっちは堂々と軍船だと誇示している。
趙二英:見張りどころじゃなさそうね。停船を指示する旗を振るわ。「階上津で守備兵を率いる趙二英である! そこな軍船は所属を明らかにせよ!」
A:舟辺に、めがねのきつそうな女が立つよ。「これなるは曹孟徳が第一の軍師、郭奉孝! 階上津の太守にお目通りしたい!」と、やや問題のある発言が返ってくる。
陶双央:船に荀ケが乗ってたら蹴落とされてるね。
趙二英:つまり、乗ってないワケね。魯粛たちの船に「知らん顔しておきなさい」と指示して、少し離れたところに誘導するわ。
陶双央:判断としては正しいけど……郭嘉と面識のあるヒト、うちにはいないよね。
Y:いないな。
楊花玉:……それなら、侍女じゃなくてワタシが直接行った方がよさそうね。いい?
陶双央:んー……お願い。
Y:じゃぁ、政庁を出ようとしていた侍女の背中が見える。
楊花玉:「ああ、いいわ。ワタシが二英さん呼んでくるから」と声をかける。
Y:「あ、はい」と素直に引き下がるが、「これどうしましょう?」と、持っていた、油を含ませた布と矢を出してくる。
楊花玉:ホントに用意したの? 「片づけておいて」
Y:「判りましたー」と倉庫の方に走っていった。
趙二英:花玉が駆けつけたところに、郭嘉が降りてくるワケね?
A:だね。見ため文官っぽい花玉さんが来たのを見計らって「郭奉孝です。太守殿ですか?」と船から出てくるよ。
楊花玉:「いえ、陶書記の命でお迎えに伺いました、楊花玉です」誤解はといておかないとね。
A:めがねの奥のきっつい目で一瞥して「我が主曹孟徳の命で、こちらの太守殿にお目通りしたいのですが、お忙しいようですね」
楊花玉:……ふむ。「申し訳ありません。実は、太守の陶書記は、ただいま孫家の使者と面談しておりまして」と、本当のことを云うわね。
趙二英:ちょっ……ナニ云いだすのよ!?
A:おいおい!? えーっと、郭嘉も驚いて「孫策の? しかし、徐州と袁術とは因縁浅からぬ仲と伺っていますが」
楊花玉:「ええ。ですので、陶書記はいま手を離せないのです」と、本当のことを重ねるわね。
Y:……「話術」で判定。
A:「話術」かよ……(ころころ、ころころころ)ぅわ、21だ。
楊花玉:こっちは(ころころ、ころころころころ)……はい、26ね。
Y:郭嘉は信じた。
A:「……そういう次第でしたら、やむをえませんね」
楊花玉:「お判りいただけて何よりです。お部屋を用意してありますので、こちらへどうぞ」と、ご案内。
趙二英:……いいの?
陶双央:うん、隠しておくことにメリットはないよ。曹操が徐州に使者を送ってきた目的は十中八九ほぼ同じで、北の袁紹との対決を前に、こちらを懐柔しておきたいからだろうから。それなら、徐州の戦略的価値を高く見せるために、孫家とつながりがあると思わせるのは、交渉術としては問題ない。
Y:ホントにシナリオが読まれるンだな、ったく……。
陶双央:となると、わたしとしてはどうするべきか……郭嘉に会うまでに、徐州はどうするべきか考えなきゃいけないのか。んー……(エアそろばん再開)
Y:えーっと、政庁での出迎えは?
陶双央:(ちょいちょい、ちょい)任せる。
盾親忠:(こくっ)……任される。
楊花玉:あ、もちろん、お部屋は魯粛さんたちとは離れたところにね?
Y:だろうな。
盾親忠:「ご案内します」と、遠くのお部屋に連れていく。
A:ところが、廊下を歩いていた魯粛さんとばったり。「おや?」
楊花玉:ちょっとちょっと!
趙二英:勝手に出歩くンじゃないわよ!
A:「いや、そうは云われても……」と魯粛が応じたときだった。どこかで、絹を裂くような女の悲鳴が。
一同:え?
陶双央:(中断)……おちおち考えごともさせてくれないのかな、このマスターは。
趙二英:とりあえず、悲鳴の聞こえた方に走る。
楊花玉:でしょうね。
盾親忠:(こくっ)
Y:すると、そこは魯粛と祖茂にあてがわれた部屋だった。戸口では、悲鳴を上げたと思われる侍女が、お茶の盆をひっくり返して座り込んでいて、室内では祖茂が、頭を矢に射抜かれている。
楊花玉:……あら?
趙二英:おいおい……。
陶双央:うーん……そう来たかぁ。

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