恋姫無双RPG リプレイ 7 「陶双央、謀略を看破するのこと」後編
陶双央:「魯粛さん、犯人はあなたです!」
他全員:コラ。
Y:分量的にこの辺で切るから、読者が「あれ? 中編が抜けた?」と誤解しかねない発言はやめろ。
陶双央:そうは云われてもなぁ。前のシナリオの経験点が少なかったので判る通り、わたしは、正解は判るけどそこに至る式はほとんど無視してるから。推理ものとはすこぶる相性が悪いンだよ。
趙二英:ことの経緯は完全に無視して正解だけを導き出せる軍師だからねェ……。
Y:敵に回すと凄まじく厄介な存在だということは、短くない夫婦生活で判っちゃいるが、確かにこのシナリオなら陶双央といえども一筋縄ではいかんようだな。
趙二英:とりあえず、敵は誰でどう戦えばいいのか、誰かアタシに指示して。
陶双央:智略を尽くして犯人と戦うのが今回かな。祖茂殺害の犯人を暴け、みたいな?
趙二英:『Q』のキンタみたいな立場なんだけど、アタシ。
講談社の『探偵学園Q』に登場するカレー役。頭は悪いが勘と行動力でカバーしていた。
楊花玉:それはいいけど、ちょっといい? この時代の殺人ってどれくらいの罪なの?
陶双央:『恋姫』世界ではともかく、実史では罪に問われない場合もあるくらいだね。
Y:殺人と殺人未遂で4度の裁判にかけられて、4度とも無実が認定された奴もいるくらいだから、現代でもそんなに重くないだろうがな。
ぐしゅんっ
楊花玉:当時の人命はそれほど重くなかった、と。
陶双央:ただし、と云おうか。今回の件に関しては、必ず、犯人を見つけ出して魯粛さんに引き渡さないと、今後の徐州の外交政策が悪影響一色になるンだよ。
盾親忠:……というと?
陶双央:修好を求めてきた使者さんが死者さんになったワケだから。徐州は使者を殺した、なんて噂が流れたらとことんまずいの。むしろ魯粛さんまで殺してなかったことにするのは、郭嘉さんがいるから無理だし。
趙二英:そのために、魏を絡ませたワケか。
陶双央:えーじろの組んだシナリオだから、誰かが死ぬのは仕方ないにしても、無用に殺さない方が評価は高くなるンだよ。
楊花玉:普段のことを考えると、よほどのトリック組んでそうで怖いわ。
陶双央:心配いらないよ。シナリオを組んだのがえーじろである、という前提で考えると、最初に云ったけど目をつぶっても勝てるから。えーじろの書く殺人事件なんて、98パーセントの確率で被害者は子供、犯人はその親だから。
全員:あー。
陶双央:ただし、残る2パーセントの場合はさらにいやらしいトラップがある。どこにどんなトラップがあるのかを警戒する必要があって。
楊花玉:ふむー……
趙二英:まぁ、警戒しておくに越したことはないわね。双央が来るまで現場に手を触れないのがいいか。
Y:触っちゃまずいくらいの認識はできるだろうな。
A:でも、魯粛さんはそーもいきません。「祖茂さん!」と顔色悪く部屋に駆け込もうとするよ。
趙二英:それはそれでやるわよねェ。取り押さえるわ。
Y:「武勇」で判定。
A:こっちは(ころころ)……6です。「武勇」は3なので。
盾親忠:……魯粛にしては、高いのか低いのか。
趙二英:サイコロ振らなくても成功(←「武勇」6)なんだけど? (ころころ)ほら、ここぞとばかりに6ゾロ。
陶双央:対抗判定で差が10点以上だと余分な効果があるンじゃなかった?
趙二英:へ?
Y:(ルールブックを確認中)……だな。数値が18だから、差は12点……やりすぎて、魯粛は気絶したことにしよう。
A:「きゅ〜……」と目を回した。
楊花玉:いいのかしら?
趙二英:……まぁ、見逃して。結果おーらいよ。
楊花玉:じゃぁ「とりあえず、双央さんが来るまで現場には手を触れないで!」と言明。
Y:やっと現場確保ができたか。では、部屋の見取り図がこんな具合になる。
趙二英:窓の外から飛んできた矢で死んだ、ということでいいのね?
Y:陳小理がいれば、その辺りの見立てもできるンだがな。誰か「治療」か「応急手当」持ってるか?
趙二英:それもないわね。そもそも、「応急手当」はともかく「治療」だって通常の手段では持てないじゃない。
楊花玉:小理ちゃんいればそれでいいものねェ、ワタシたちの場合。
戦争中に使用する場合、「応急手当」は『接敵していない場所で使用でき、レベル×3の人数だけ負傷兵を治せる』だが、「治療」は『レベル分のダイスを振り、出目の人数だけ負傷兵を治せる』となっている。接敵していても使えるのは便利すぎるため、基本システム時点では華佗と陳小理しか修得していない。
ちなみに、マニの修得している「聖水」は『死者を含む負傷兵を全て治す』という、ゲームバランスってナニ? なシロモノ。当然だが修得には『GMの許可が必要』となっている。
A:じゃぁ、郭嘉が室内に入るね。祖茂の目を閉じさせる。
趙二英:「ちょっと!」
A:「少しですが、医術の心得もあります。ひとまず、お任せください」鼻血拭いて倒れがちなので、本人と程cは、レベル低いけど「応急手当」持ってるンだよ。
趙二英:……おーらい。
陶双央:とりあえず、わたしも現場に急ぐよ。政庁の中にいる侍女を全員召集するのに時間がかかった、ということで。
趙二英:何やってンの?
Y:では、双央が到着したところで、郭嘉の検死が終わったことにしよう。
陶双央:「太守代理の陶双央です。お話は伺っています」
A:「魏の郭嘉です。……まぁ、こちらの話はさておきましょう。矢が頭を貫通しており、それによる即死です」
趙二英:それくらいは見れば判るンじゃない?
Y:ごもっともだな。
陶双央:ひとまず現場の保存かな。中には入らないでおく。えーっと、指紋の採取ってできる?
Y:できるできないじゃなくて、そもそも指紋というものの存在を知らない。舞台が『恋姫』世界だぞ? いちおう「未来知識」4以上なら判定はできるが、それがなければ判定することもできない。
陶双央:……またそれが来たなぁ。
趙二英:持ってないどころか、通常の手段では持てないスキルじゃない。
盾親忠:……私でも「未来知識」は1だから、完全にお手あげ。
楊花玉:そうなるわね。
陶双央:「この部屋に入ったのは、郭嘉さんだけ?」
楊花玉:「ワタシの判断で、中には入らないようにさせたけど……」
陶双央:では、中に入ります。祖茂さんに手を合わせてから、窓に近づく。
Y:窓の外には中庭があって、その向こうには政庁の外壁がある。壁の上では巡回の兵士が、こちらの騒動に気づいていない様子で歩いているな。
陶双央:都合がいいな。「おーい」
Y:「あ、太守様? どうかなさいましたか」
陶双央:「弓持ってる?」
Y:「御意?」
陶双央:寝台から枕をつかんで「ちょっと射ってみて」
Y:ふむ……。「は? はぁ……」と、少し困っている様子で、兵士は持っていた弓を引き絞る(ころころ)……んー、外れだな。矢は近くの壁に当たった。
趙二英:治安じゃなくて訓練しておくべきだったかしら。
盾親忠:……兵の練度は重要な課題。
陶双央:まぁ、その辺のことはまたあとでね。「うん、ありがとう。で、隊長さんに、ここに来るように伝えて」
Y:「了解しました」と兵士は走っていく。
楊花玉:守備隊長って二英さんじゃないの?
Y:序列としてはそうなっているが、もともと夢梅の下で副隊長を張っていた張捷道というのがいてな。いずれお前たちが戻ったときには、そいつが隊長に就任することになっている。
趙二英:来るのはそいつ、と。
Y:中庭に長い棒を持った女が現れる。「張捷道、まかりこしました」と一礼して、顔を上げると、室内にある死体に顔色を失った。「太守殿、これは……!?」
陶双央:「静かに。兵に気取られてはいけません」
Y:「はっ……」と声を抑える。
陶双央:「見ての通りの状況です。この付近で怪しげな行いをしていた者がいないか、調べなさい。また、船着き場と南門を、閉鎖はせずに検問を強化すること」
Y:「御意。ですが、外壁からこちらを狙うのは難しいかと」と、窓辺に立つ張捷道は棒の先で外壁をさした。
趙二英:何が見えるの?
Y:木だ。中庭には木立があり、窓から少し離れたところに大きめの木が生えている。外壁からこの部屋の窓をまっすぐ狙うのは、木に遮られていてはっきり、無理だ。
陶双央:ディフェンスを考えると、それだけでもずいぶん大きいね。角度をつければ射線はずれるから、身を守るのはたやすくなる。
趙二英:外壁から、頭を一射でブチ抜くのは難しいわね。
陶双央:でも、木立があるということは、下で弓を引いていても上からは気づきにくいよ。現に、巡回の兵士が侍女の悲鳴に気づかなかったンだから。
趙二英:……あ、そうか。
楊花玉:双央さんの見立てでは、犯人は中庭から祖茂さんを狙ったのね?
陶双央:外壁からではない、と応えておくよ。可能性としてはもうひとつの方が強いから。
趙二英:は?
陶双央:もう少ししてからね。「ちなみに、それができる者は階上津にいますか?」
Y:「狙うだけでしたら私ならできますが、他にいるかと聞かれますと……二英隊長でも難しいかと」
趙二英:コイツ、武器は?
Y:スタッフスリング。長い棒から飛蝗石を飛ばしている。
陶双央:元ネタは天捷星の没羽箭さんだね。
楊花玉:水滸伝なんだ。
陶双央:「判りました。内密にことを進めなさい」
Y:「御意」張捷道はそーっと走っていった。
陶双央:「では花玉。この場は任せるから、ご遺体を埋葬する準備を整えておいて。郭嘉さん、こちらへ」と、廊下の侍女ともども会議場に移動する。
趙二英:魯粛も持ってね。
盾親忠:……まだ起きないの?
A:えーっと?
Y:まぁ、ご都合でアレだが、会議場についたら目を覚ましたことにしよう。
A:じゃぁ「あれ……? ここは……」
趙二英:「気がついた? 祖茂があんなことになっているのを見たアンタは倒れて、頭打って気を失ってたのよ」
A:判定していい?
趙二英:「武勇」でね。スキル「威圧」で交渉するわ。
楊花玉:二英さん、それ脅迫。
A:……いいや。「あぁ、そうだったか」と納得しておく。
陶双央:「話が済んだところで、状況を整理するね。階上津に交易を求めてこられた魯粛さんの護衛の方が、何者かに射殺されました」
Y:侍女が集められているンだったな。侍女たちは、不安そうにざわめいた。
盾親忠:……その表現でいいの?
陶双央:どこまで関与しているか判らない侍女たちに、内情を暴露するわけにはいかないよ。表面上はそういうことなんだから、対外的にはそれで押し通す。まず、あの部屋の前で腰を抜かしていた侍女から、この場で話を聞きたい。
Y:親忠に手を引かれてここまで来た侍女は、顔色がないままで「わ、私がお茶をお持ちしたら、あの方はすでに頭を射抜かれておりました」と震える声で。
趙二英:「それに驚いたアンタは悲鳴を上げて、アタシたちが駆けつけたワケね」
陶双央:判定していいかな?
Y:いいぞ(ころころ)先に云うと、平目で7。
陶双央:「話術」は1レベル、「能吏」作動して(ころころ、ころころ)……惜しい、16だよ。
Y:では、嘘を云っているようには思えない。顔色からも本心だろうと推察できる。
陶双央:「では二英、その悲鳴を聞いたのはどの辺り?」
趙二英:えーっと?
Y:政庁見取り図で云うと会議場の中になるな。割愛されているが、いくらか廊下もあるンだ。
趙二英:だそうよ。
陶双央:「魯粛さんは、なぜそちらに?」
A:「双央さんがお呼びだと、侍女が呼びに来たのさ。私と話があるということだったので、祖茂には残ってもらった」
楊花玉:は?
趙二英:呼んだの?
陶双央:「わたしからお呼びだてはしておりませんよ?」ときょとん。このヒト相手の判定だと勝てないンだよなぁ。
A:いちおう(ころころ、ころころころころころころころ)……36だね。
陶双央:出せないよ!
楊花玉:ワタシでも至難な数字ねェ。
A:とりあえず「じゃぁ、どういうことなんだい?」と不審そうな表情をする。
陶双央:小手先の判定では勝てないけど、状況を進展させる手札は並べてあるよ。「お呼びしたという侍女は誰です?」
Y:……召集したのはそれが目的か。
A:誰と聞かれても……ちら。
Y:(メモを回す)
A:居並んでいる侍女たちを見渡した魯粛だけど「……あれ、いないね」
趙二英:「いない?」
A:「うん……これで全員かい? 私を呼びに来たのは、少し背の高いツリ目のお姉さんだったけど」
趙二英:「他に侍女は?」
Y:いない。というか、各自「智略」で判定。
陶双央:(ころころ、ころ)20。
趙二英:(ころころ)11ね。
盾親忠:(ころころ)……同じく。
楊花玉:ワタシは現場にいないから。
Y:では、15を超えた双央には、その外見に一致する侍女の記憶がない。
趙二英:……外部犯ってこと? 侍女に扮して侵入した何者かが、祖茂を射殺した。
陶双央:「魯粛さん、わたしのところに来る途中で、その侍女とすれ違いました?」と、第一発見者を指差す。
A:(メモを確認して)「……いや、会わなかったよね?」と本人にも確認。
Y:「はぁ……」と侍女も会った記憶はない様子だ。
陶双央:んー……(エアそろばん開始)。
趙二英:始まったわね。
陶双央:(ちょいちょい、ちょい)いや、答えは出てるの。ただ、外堀を埋めるパーツが何もないだけで。
Y:ヒトの話が聞こえているからには、そりゃ事実なんだろうな。
盾親忠:……でも、それじゃマルはもらえない。
陶双央:(ちょいちょい、ちょい)お堀があるなら空を飛べばいいだけだから、埋めるのはどーにも苦手で……。「えーっと、花玉まだかな?」
Y:あぁ、そろそろいいぞ。
楊花玉:じゃぁ「お待たせしましたー」と登場。
陶双央:「はい、お待ちしました。矢は持ってきてくれた?」
楊花玉:いいのよね?
Y:問題ないが、特徴もない。祖茂の頭を貫通していた矢は、どこででも手に入るようなものだ。
陶双央:階上津で手に入るものかどうか、調べられるかな。
Y:それを調べるには……えーっと「武器調達」だな。
陶双央:そのスキルは持ってない(ころころ、ころ)……あー、14だね。
Y:まぁ手に入るンじゃないか、というところだな。
楊花玉:ワタシもそのスキルを持っていないからには、判定し直しても逆効果よねェ。
陶双央:そうだね……「頭の他に、外傷はあった?」
A:「それは私から」と郭嘉が。「服は脱がせていませんが、見える範囲に外傷はありませんでした。また、服にも異常はありません」
陶双央:となると犯人は……ますます限られてくるなぁ。
楊花玉:誰?
陶双央:「花玉、火矢を片づけさせた侍女はここにいる?」
楊花玉:……あ、そっか。
Y:この中にはいない。楊花玉も「智略」で判定。
楊花玉:低いのよ、ワタシ(「智略」は3)。(ころころ)……あら、6ゾロだわ。15ね。
Y:ここで出るのかよ? では、あの侍女は見ない顔だったのに気づける。きょう初めて見た侍女だった。
趙二英:モブだと思って油断したわね。
楊花玉:そうみたい。
陶双央:えーじろの組んだシナリオにしては、お粗末な展開ではあるけどね。「では、太守代理として3人に命じます。現状においていちばん怪しいのは、そのツリ目の侍女もどき。門と船着き場は閉鎖してあるから、生かして捕えて」
趙二英:「了解。やっと出番ね」
盾親忠:「……兵の準備をしないと」
陶双央:あ、それはナシで。
盾親忠:……?
陶双央:兵を動かせば市民に不要の混乱が起きかねない。混乱したら、それに乗じて脱出を図る可能性がある。だったら、最初から兵は出さないで、可能な限り穏便かつ隠密裏にことを進めるよ。
楊花玉:それがよさそうね……個人戦闘なら、ワタシたちもそれなりだもの。
陶双央:腕に自信はないけど、わたしはお留守番してるから。何かあったらすぐ戻ってきてね。
3人:おーらい。
Y:二手に分かれると。政庁に残るのが双央で?
趙二英:残るアタシたちがメイドもどきを見つけに行く。
Y:では、外回りの3人。どこに行くか申告してくれ。実際の捜索活動にはスキル「偵察」を使用し、それっぽい相手が見つかったらどうするのかも自己申告。
楊花玉:ワタシ、そのスキル持ってないのよね。
趙二英:アタシは持ってるけど「運営」が低い(3)。とりあえず、もう一度現場を当たってみたいンだけど、花玉ついてきて。
楊花玉:えぇ?
盾親忠:……外に出る。
Y:別行動だな。えーっと……二英たちから。現場は、死体は別室に運ばれていて、床の拭き掃除も終えられている。
楊花玉:現場検証には不利な雰囲気ねェ。やったのワタシだけど。
趙二英:ここで、アタシは花玉を副将につけます。
楊花玉:あぁ、その手があったわね。
副将システム
身分が同格以下のPCかNPCと共同で行動する際、どちらかを主将とし残りを副将とできます。
・副将となるキャラクターの武器分類が主将のものと同じだった場合「武勇」が加算されます。
・副将の「智略」「運営」が主将のものより高かった場合、その数字に書き換えられます。
・主将は、副将の修得しているスキルを使用することもできます。ただし、副将側の常駐スキルは作動しません。
(基本システムから関係のあるところだけ抜粋)
楊花玉:この場合だと、二英さんのスキル「偵察」をワタシの「運営」5で判定できるわね。
Y:ダイスを振るのは二英だがな。副将についている間、花玉は原則、自発的な行動ができないと思ってくれ。
趙二英:で、友好ポイントも使うわ(ころっ)ん、マルの出目。
Y:サイの目に+5か……では、判定してみろ。
趙二英:(ころころ、ころ)……ぶっ!?
出目は1・1・2。
楊花玉:相変わらずのピンゾロっぷりね、オイ。
趙二英:……指揮権譲渡してもう一回判定していい?
Y:2回めのアクションになるぞ。
趙二英:えーじろならやらせてくれるのに……。
楊花玉:いちおう、14になるのかしら?
Y:この部屋の捜索で、達成値14で判ることと云われてもなぁ。
・目標値の目安
0〜3:(悪意のあるゲームマスターでもなければ)確実に成功する。:判定しなくて成功します。
歩く。寝る。
4〜9:常人ならまず判定には成功し、失敗したら周りが驚くか呆れる。
高いところの物を取る。椅子を動かす。
10〜15:普通に成功する。:基本的な判定の目標値。
屋根に登る。お茶を淹れる。
Y:床はすでにキレイになっていて、窓の外では秋風が気持ちいいことくらいか。
楊花玉:何も判らなかったワケね。
趙二英:悪かったわよ!
陶双央:あー、落ちついて。それくらい判れば充分だから。
A:なんか企んだよ。
盾親忠:……なんか企んだ。
趙二英:何か企んだわね。
楊花玉:ヤス、可哀想に。雪かき決定ね。
Y:コイツは……。次、親忠。どこに行く?
盾親忠:……双央さん、門と船着き場、どっちがいい?
陶双央:船着き場から来たからには、出るのも船着き場か、あるいは門から出てあとで合流するかだと思うけど。
趙二英:誰の話をしてるのよ?
陶双央:誰かは判るけど名前は判んない。とりあえず南門かな。
盾親忠:(こくっ)……じゃぁそっち。
Y:南門では、張捷道の姿はないが、普段より多めの兵士が検問を行っている。
盾親忠:……「ごくろう」
Y:「あ、盾隊長。こちら、異常はありません」
盾親忠:(こくっ)「……ツリ目で少し背の高い侍女を見なかった?」
Y:兵士たちは顔を見あわせて「さて……? 政庁からの使いなどは、特に来ておりませんが」
盾親忠:……判定?
Y:そうなるな。
盾親忠:(ころころ、ころころころころ)……出目が悪い、6Dで15だから20。
Y:それだと、とりあえず見渡す限りにはいないことくらいしか判らんな。
趙二英:全体的に出目が悪いわね。
楊花玉:お黙りなさい、ピンゾロ女。2回めのアクションでいいの?
陶双央:あ、わたしの行動が残ってるよ。魯粛さんと郭嘉さんを執務室に連れ込んでお茶してる。
A:「そんな悠長でよろしいのですか?」と郭嘉が不審そうにしてるよ。
陶双央:「うちの優秀な面子にかかれば、侍女のひとりくらいすぐに見つかりますよ」と安請けあい。
趙二英:えーじろ……義姉さんがいぢめる……。
Y:死んでないンだから祈るなよ。
A:「うん、お願いするよ……」とやや気落ちしている様子で魯粛もうなずく。
楊花玉:……そういえば、殺しちゃだめなのね? 犯人。
陶双央:現状では、孫策に犯人と徐州が関係ないと判らせるのが難しいもん。こっちで処断したら口封じととられかねないから、まずは生かして捕えて。もしくは、むしろ魯粛さんと郭嘉さんも口封じするかになるね。
趙二英:そっちのが手っ取り早いと思うわ、アタシ。
楊花玉:また返り討ちにあうわよ、ピンゾロ女。
趙二英:ひとつは2だったわよ!
陶双央:はいはい、えーじろをめぐる女の争いはさておいて。魏からの使者が来ていることで、過激な行いは『とりあえず』慎まなきゃいけないことになってる。となると、徐州の面子と未来に賭けて、犯人を見つけないといけないの。先代の頃からの功臣を殺されたからには、孫策さんが処断するでしょう。手間を省くよりは、自分でやってもらわないと。
楊花玉:そういうことなら、了解したわ。
陶双央:じゃぁ、茶飲み話ついでに侍女頭でも呼んで、行方不明の侍女もどきが何者か聞いてみるよ。
Y:政庁の侍女を束ねているのは江倫花という中年女になる。「あの……おそらく孫二粛かと」
趙二英:知らない名前ね。
Y:さっきも云ったが、お前らは侍女全員を把握しているワケじゃないからな。見覚えもないのに名を知っているはずがなかろうが。
陶双央:ごもっとも。「その者はいつからここで働いていて、また、どこから来た者なのです?」
Y:「数日前ですが、出入りの江東商人の紹介で働きだしました。身元はその商人が保証しておりましたので……」
趙二英:……ねェ。船着き場と門じゃなくて、政庁の出入り口を封鎖するのが先じゃなかったの?
陶双央:ひと言で云おう、わたしを信じなさい。
趙二英:それほど心強い発言ってめったにないわね。
盾親忠:(こくっ)
楊花玉:口出ししない方がよさそうね、邪魔にならないように。
Y:……で、どうする。
陶双央:名乗っている偽名が判れば、それで充分だよ。「ということです、魯粛さん。おそらくは、孫策殿の動きを警戒した袁術の息がかかった者が、先回りしてこちらに侵入していたのかと。こちらの危機意識が薄かったことは否めませんが、必ずや探し出してお引き渡しします」
A:「あぁ、お願いするよ……」と、相変わらず悪い顔色でうなずく。
陶双央:「少し休まれた方がよさそうですね。あちらではない、別の部屋をご用意させます」と江倫花に指示。
Y:「では、こちらへ」と連れて行こう。
A:出ていったのを見計らって、郭嘉が「……で、私には何を確認されるのです?」
陶双央:「お気づきなら話が早い。この名をご存知ですか?」と、メモを渡す(渡す)。
A:(受け取る)……郭嘉は顔色を変えずに「いえ……存じません」
陶双央:判定。(ころころ、ころころ)こっちは23。
A:えーっと(ころころ、ころころころ)……あ、22だ。
Y:では、嘘をついている気配はない。
陶双央:それなら大丈夫だな。じゃぁ、その後は郭嘉さんと、外交に関する協議をしたということで行動終了。
A:「今後の関係強化を期待します」
Y:では、第2アクション。二英を副将にして花玉が判定するンだったな。
楊花玉:ワタシも友好ポイントを使って(ころっ)……よし、マルの出目。で(ころころ、ころ)……25ね。
趙二英:えーじろー……。
Y:祈るなと云うに、アイツに祈ると雪が降るンだから。まぁ、その出目ならある程度気づけるな。窓の外には、さっき張捷道が動いた足跡しかない。
楊花玉:え? 「……二英さん、ちょっとその辺りに出てみて」
趙二英:外から、実際に弓を引いてみるのね?
楊花玉:ええ、足跡がつくかどうか。
Y:結論だけ云おう。中庭に出るまでの足跡が残るし、弓を引こうとしたら踏ん張った足跡もしっかりつく。
趙二英:じゃぁ、中からアタシの姿はどう見える?
Y:丸見えだな。上からでは見つかりにくいが、部屋の中からははっきり見えている。これなら、部屋の外なりに逃げるのは難しくも何ともない。
趙二英:外壁からはダメ、中庭からもダメ……
楊花玉:……件の侍女もどきが、廊下から直接狙ったのね。
陶双央:やっぱり、そっちだったね。部屋の中には『暴れた』形跡はないんでしょ?
Y:しっかり見抜かれていたのは気に入らんが、確かに『揉みあったり荒らされたりした』形跡はない。
陶双央:じゃぁ、"あの"形跡もないよね?
Y:……それをお前に応えてどうする。
陶双央:その返事で充分。わたしの行動はコレで。(メモを渡す)
Y:(苦渋の表情)……その処理は後回しだな。親忠、はどうする。
盾親忠:……今度は船着き場で。
Y:張捷道自ら船の臨検を行っているな。「あぁ、親忠隊長。こちら、怪しげな者はおりません」
盾親忠:(こくっ)「ツリ目で少し背の高い侍女を見なかった?」
Y:「こちらには来ていない模様ですね」
盾親忠:……じゃぁ、「偵察」する。(ころころ、ころころころころ)……28で、33。
Y:船着き場にはおらず、停泊している船の中にもいないようだな。
盾親忠:……何となく、無駄なことをしているように思えて仕方ない。
Y:否定はしないな。(ころころ)……双央、こっちは12。
陶双央:(ころころ、ころ)18だね。
趙二英:何の判定?
Y:えーっと、第3アクション。何をするのか申告してくれ。
盾親忠:……いったん、政庁に戻る。
楊花玉:ワタシたちは外に出ようと思うけど。
陶双央:じゃぁ、政庁の通用門で3人が合流したところに、わたしが孫二粛を連れて現れる。「あ、ただいまー」
3人:どこで拾ってきたの!?
陶双央:「市場。問題の商人の、荷台に隠れて逃げようとしていたのを捕まえたよ」
盾親忠:……わたし、かませ犬?
趙二英:ヤス兄、張捷道のキャラシートある?
Y:あるが、見せると思うか?
趙二英:「武勇」とスキル「狙撃」だけでいいけど。
Y:む……「武勇」は4、「狙撃」は1レベルだな。
趙二英:単純計算それを上回る暗殺者を、双央ひとりで取り押さえたの?
楊花玉:ワタシたちならまだしも、双央さんにできるとは思えないわねェ……?
陶双央:「あー、みんなでわたしを甘く見て。わたしがその気になれば、甘寧のひとりやふたり片手でねじ伏せられるよ」
3人:待てぃ!
A:ツリ目で少し背の高い侍女もどきは「うむ、片手でねじ伏せられたぞ」と、ぜんぜんねじ伏せられていない表情と態度で神妙にしている。
陶双央:「ていうか、みんな甘寧のことを知ってるの?」
Y:全員、「智略」で判定。
盾親忠:(ころころ)……9。
楊花玉:(ころころ)7ねェ……。
趙二英:(ころころ)……聞かないで、お願い……。
Y:またピンゾロか? 全員ひとケタでは、甘寧という名を知らなくても無理はないな。
趙二英:何でここぞとばかりに出目が悪いのよ……。
楊花玉:誰かさんのピンゾロが伝染ったのかしらねェ。
趙二英:えーじろー……。
Y:祈るなと云うに。
趙二英:「じゃぁ聞くけど、アンタ何者? 何で祖茂を殺したの?」
A:はい、「孫策めが袁家に背く気配があったので、警戒して階上津に侵入していたのだ。案の定来たので射殺した」
趙二英:「……どっかで聞いたような台詞ね」
A:「まったくもって、おっしゃる通りでございます、ハイ」
趙二英:斬っていい?
陶双央:それは魯粛さんに任せるってば。
Y:双央が甘寧を連れて政庁に入ると、侍女たちが「さすがは太守様……!」とざわめいた。戻ってきた張捷道も「さすがは太守殿ですね」と感服している。
趙二英:アタマ悪いでしょ、コイツら。
A:魯粛は「君が! 君が!」と血相変えて甘寧にしがみついたけど、「武勇」3なので甘寧は小揺らぎもしていない。
楊花玉:双央さんも「武勇」は3よね?
陶双央:何のオハナシかなー?「そういう次第ですので。魯粛さん、その甘寧はこの場で斬るなり連れ帰るなり、お好きなようにしてください」
A:「ああ、ありがたく連れ帰るよ! ほら、おいで!」と、ひきずって歩きだすと、甘寧は逆らわずについて行った。
趙二英:……コレ、いったい何のお遊戯会なのよ。
陶双央:船まで見送りに行くよ。
A:魯粛と甘寧は並んで立つ。「さすが、と云うべきかな。聞きしに勝る智略の冴えだね」「いきなり市場で『甘寧さんおられますかー』とやられたときは、斬ろうかと思ったぞ」
陶双央:慇懃に「恐縮です」
A:魯粛は苦笑してから「……いつ、私が祖茂さんを殺したと気づいたのかな?」
陶双央:「ほとんど最初です。祖茂さんのご遺体にも部屋の床にも、射られて倒れた痕跡がなかったそうですから」
楊花玉:……あ。
趙二英:そうね……射られて死んだなら、倒れた痕跡が床と身体にあってしかるべきか。
盾親忠:……しー。
陶双央:「射られたときに誰かが身体を支えていて、静かにご遺体を床に寝かせたことになります。となれば犯人は複数で、しかも身内と考えられる。どちらが実行犯かは悩みましたが、力のある方が祖茂さんを支えていただろうな、と」
A:「で、私に目を付けたか。いや、恐れ入った」
陶双央:「なぜ、わたしを試すようなことを、わざわざひとを殺してまでなされたのですか?」
A:「試させてもらったのさ。たとえアホなガキでも南の袁家だ、勢力としては強大だからね。これから孫策殿が成すことは、極めて困難なもの。そこへ徐州が絡んできたら……」
陶双央:「漁夫の利、ですね。それに気づけない双央ではないですよ」
A:「だから、試させてもらった。この一件の真相を暴けるか、暴いたならどうするのか。暴けない程度のアタマなら介入されても怖くないし、私と甘寧を生かして返してくれるならなおさらに信用できる。悪いとは思ったけど、君の智略と人格、何より徐州の態度を試させてもらった」
陶双央:「ひとを殺してまで?」
A:「……祖茂さんは、病を患っていた。このままでは長くないのが判っていたから、自ら志願して死に役を引き受けてくれたんだ。孫堅様のところに行くのを、楽しみにしていたよ」
陶双央:「武人の心、ですかね。わたしには判りかねますが」
A:「正直に云うが、私もさ。味方を撃つあの心地悪さは、もう味わいたくないね」
陶双央:「……その言葉が偽りでないのなら、わたしは魯粛さんを信じましょう」
A:「袁術を討ったら、また来るよ」
陶双央:「そのときは、歓迎させていただきます」
小覇王 孫策と密約を交わした陶双央。それは、袁術との本格的な対立を意味していた。
北方の波乱にも巻き込まれつつある徐州を守るため、双央が下した次なる決断は、またいずれかの機会に語ることもあろう。
「陶双央、謀略を看破するのこと」終幕