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恋姫無双RPG リプレイ 5 「陶双央、異人を受け入れるのこと」後編

F:というわけで翌日ですが、二英から離れようとしない丁芙ちゃんも加えて、7人で階上津に向かいます。
陶双央:……そーいえば、場所は誰も確認しなかったンだっけ?
F:最初に東の方、と云ってそれきりだったかな。兵を率いているからそんなに急げないけど、まぁ3日もかかるな。
陶双央:そんなに遠くない、か。
F:で、二英。丁芙ちゃんはどう扱っている?
趙二英:アタシの馬に乗せてる、と思うけど。
F:では、夢梅さんのそりが横に来る。「趙隊長、よければその子も預かりますよ」
趙二英:も?
F:夢梅さんは、四頭の鹿にそりを引かせているンだが、すでに小理ちゃんは相席している次第だ。
陳小理:あれ、いつの間に。
F:子供好きのおばさんですから。
陶双央:それにしても、変なのに乗ってるね? 馬車じゃなくて鹿のそりなんて。
F:全員、智略で判定。今回は「智嚢」は効果を発揮しません。ただし、親忠さんの「未来知識」はアリです。
盾親忠:?

盾親忠 所属:徐州刺史陶謙配下(武官)
 武勇5智略5運営5魅力3 歩2騎4弓2
 偵察4、突破4、外国知識(東夷)4、伏兵3、訓練2、治安1、混乱1、未来知識1、賭身、陣形2(雁行、衡軛)

F:動物について純粋に知っているかどうかの判定なので、頭のよさより文明レベルのが大きいワケです。
陶双央:そういう意味か。
 ところが、全員出目が10未満。「鹿っぽい何か」くらいの認識になってしまう。
F:「まぁ、こういう鹿なんですよ」と夢梅さんにごまかされました。よく知らない皆さんは、それ以降追及しません。
盾親忠:……「大陸は、広い」
趙二英:「アンタの国でも、馬に乗って戦闘してたの?」
盾親忠:「馬に乗ったり、牛の角に松明を括りつけたり」
F:ちなみに、その故事は史記に元ネタがあります。そっちだと、牛の頭に剣を括りつけて、しっぽに火をつけますが。
盾親忠:そっちのが効果的だと思う。「馬をけしかけて、敵の馬に喰いつかせたり」
趙二英:「アンタの国の馬は共食いするの!?」
F:かの先陣争いで有名ないけがきって馬がいるだろ。アレ、漢字だと生喰きになるンだよ。といっても、戦場という環境で興奮してそんな真似をしていた、というところだろうけど。
陶双央:えーじろ、源平時代にも詳しいね。
F:いえいえ、それほどでも。えーっと……小理ちゃんと丁芙ちゃんを乗せたそりの上には大きな袋があって、そこには甘そうな果物が入っています。食べてもいいよ、とは云われているが。
陳小理:じゃぁ、ひとつもらって丁芙ちゃんと半分こしよう。
F:丁芙ちゃんは「……ありがとう」と、ちょっとだけ笑顔。
陳小理:「どーいたしましてっすよー。あたしももらったものっすけどね」って笑う。
F:「仲良くするのはいいことですねー」と夢梅さんも笑う。「では、ちょっとためになる話をしましょうか」
陳小理:ためになる話。
F:「あるところに、ひとりの信心深い神父さんがおりました。街が洪水に飲まれ流されそうになっても自分のことは省みず、必死に住民たちの避難を誘導していました。そこへ若者が駆け込んできて『神父さん、逃げましょう!』と声をかけますが『私は最後まで残ります!』と突っぱね、逃げ遅れたひとがいないか探しに行きます」
楊花玉:立派なひとねェ。
F:「水はどんどん増えますが、神父さんはかまわずに、誰か残っていないか探し続けます。小船が近づいてきて『神父さん、こちらへ!』と声をかけても『他の方を乗せてください!』と突っぱねます。神父さんの奮闘で、この街の住人は皆さん避難できましたが、たったひとり、神父さんは溺死体で発見されました」
陶双央:……うん、立派だね。
F:「それだけに、死後に神父さんは天国に逝くことが許されました。神の御許に来ることを許されたのを喜んだ神父さんですが、天国の門を守る天使さんには、自分は生涯を主のために尽力してきたというのに、あの最期は……と少しだけ愚痴をこぼしてしまいます」
趙二英:確かに、その死に方は納得できたモンじゃないわね。
F:「それを聞いた天使さんは、残念そうに云いました『ええ、判っています。だからこそ、主はあなたに二度も救いの手をもたらしたのですよ』と」
盾親忠:……若者と、小船?
F:「人生、どんなことで救われるのか判らないものです。チャンスを逃すような真似はしないようにね」と、夢梅さんは締めくくりました。
趙二英:……反応に困るわ。
陶双央:ためにはなったけど……
 このあと、こまごまと友好ポイントを稼ぎながら、一行(+兵500)は階上津に到着した。
F:というわけで到着です。夢梅さんから「まだ日も高いですから、今日のうちに会っておきますか?」
陶双央:そうしようか。わたしと……?
楊花玉:まぁ、ワタシよね。
趙二英:アタシは兵の監理があるから、席外すわ。
盾親忠:……じゃぁ、私もそっち。
陳小理:別れたなぁ。……えーっと、丁芙ちゃんは?
F:夢梅さんのそりに乗せられたままだよ。しばらくきょろきょろしていたけど、そーっと二英のうしろに隠れる。
陳小理:……そっちだな。「行ってらっしゃいっす〜」
陶双央:「うん、行ってくるね。ガンバってね、二英」
趙二英:「何をよ!?」
F:昔のお前を知っているのは、オレひとりじゃないということだ。夢梅さんが出迎えた兵士に指示をして、パルティアからの船に案内される。途中で階上津の太守さんとも合流したけど、基本的には双央さんの意志を汲むそうです。
陶双央:なんてひと?
F:……あ、素で決めてなかった。えーっと、陳登辺りの縁戚にしておこう、うん。陳なにがし。
陶双央:……ふむ。
楊花玉:考えこまないで!
F:というわけで、船から降りて来たのは妙齢のおねいさん。
趙二英:アンタのニュアンスと世間一般の「妙齢」には、10歳くらいの格差があるンだけど。
F:この場にいない奴は黙ってろ。
陶・楊:えーじろのニュアンスと世間一般の「妙齢」には、10歳くらいの格差があるンだけど。
F:えーじろやめろ! えーっと、言葉は通じるので通訳はいません。おふたりをしげして見てから双央さんに一礼。「パルティアのカルディールと申します」
陶双央:「徐州刺史陶謙の孫の陶双央です。遠路はるばる、徐州へようこそ」……何気なく、右手を差し出す。
F:……カルディールさんは少し意外そうな表情をして、その手を軽く握った。
陶双央:ふむ……この反応、か。
F:ひと言云いましょう、カルディールさんはいやに体温が高いです。外見では普通ですが、掌はかなりの高温です。
陶双央:体温が高い……? んー……「失礼、ご病気でも?」
F:軽く笑って「よく云われますが、平熱です。この通り」と、右手を離して前髪を上げ、額を差し出してきます。
陶双央:背伸びして、額にキス。
趙二英:ぶっ!?
F:ななっ!?
陶双央:……真っ赤になったのを見計らって唇を離し「熱いじゃないですか」って笑う。
十数年前に同じことやってた奴:……どこから見てたのよ……
やられてた奴:あー……こほん。「あ、熱くもなります!」
陶双央:「御加減が悪いようならおっしゃってくださいね。ナリは小さくても腕の立つ医師がいますので」
F:――ふたりとも、武勇で判定。
陶双央:え? (ころころ)……8。
楊花玉:ワタシおいてけボリで何してるのかしら……(ころころ)14よ。
F:では、花玉さんは気づきますね。一瞬、カルディールの瞳と右手に炎が宿りました。
楊花玉:二英さんをひきはがす!
F:ですが、一瞬だけです。すぐににこやかな表情に戻って「それはありがたいお話です」で、熱のない眼を花玉さんに向けて「そこまで過度に反応されなくても……親愛の接吻なら、我が国でも行わないでもありませんので」
楊花玉:どういう反応したらいいのかしら。
陶双央:この場では、このひとを信用しておいて。
楊花玉:……この場では黙っておくわ。「双央さん、おいたはめっ、よ」
陶双央:「はぁーい」
F:……商談に入りますね。カルディールさんから陶謙さんへの要求は、今後も入港して交易したいとのこと。また、州の内陸にも商人を入れたいとのことです。
陶双央:「前者は何の問題もありません。後者に関しては、しばらく皆さんの様子を査察させていただいて、その上で決定したいと思います」
F:「即断即決、ですね」その返事を予想していたようで、カルディールさんはあっさりうなずきます。「今のところは、入港の許可をいただけたことで満足とすべきでしょう。今後の関係進展に期待します」
陶双央:……ちょっと揺さぶってみよう。花玉、巣津の話を持ち出して。
楊花玉:「話術」の高いワタシで反応を見るワケね。「揚州の巣津にも出入りされているそうで?」
F:地名を出されたカルディールさんは、少し頭の中で考えてから「ええ……そうですね。そちらは別の者が行っております」と答えます。「話術」で判定すれば、嘘をついているか判りますが。
楊花玉:では(ころころ、ころころころころ)……29ね。
F:対抗判定(ころころ、ころころころ)……28です。嘘を云っている様子はありません。
陶双央:運営は5の「話術」3レベルだね。
 振ったサイコロは5つ、出目は3・4・4・6・6。
趙二英:高い能力とレベル、か。出目がいいのはコイツだからとしておいて。
楊花玉:では……「そちらにも、同じ要求を?」
F:「そうですね、基本的には入港許可と将来的な通商権を」と(ころころ、ころころころ)25です。
楊花玉:えーっと(ころころ、ころころころころ)……27ね。
F:これも本当だと思えます。
陶双央:……わたし、花玉から離してもらってる?
楊花玉:え? ええ。
陶双央:じゃぁ、カルディールさんにひっついて「そちらも、こんなに綺麗な方がお見えなのかしら?」と、意味ありげに囁きながらのどもとに指を這わせてみる。
楊花玉:制止した方がいい?
趙二英:アタシならやめさせるわ。
F:えーっと……積極的には止めないってことですかね? カルディールさんは「いえ、あちらの使者は男です!」って飛びのくぞ。
陶双央:指をわきわきさせながら「ちっ……ざんねん」
盾親忠:……そういう趣味が?
陳小理:アキラも知りませんでした……。
F:このヒトがドSなのは周知だろうが! カルディールさんは泣きそうになりながら「では、交渉が成立したということで私はこれにて!」と船に逃げ帰ります。
陶双央:「あとで医者を行かせますねー」と笑顔で手を振るよ。
楊花玉:チャンスとか、そういう次元じゃない気がするわ……。
F:「私、余計なこと云いましたかね……」と夢梅さんも呆れています。つーか、何がしたいの。
陶双央:その辺りは、合流してから話すよ。
F:そうかい……。えーっと、二英たちの方では(ころころ)……特にイベントは起こらないな。
陶双央:じゃぁ、いったん合流しようか。
F:小理ちゃんを船に送るのは?
陶双央:その前に、ちょっと相談しておかないといけないでしょ。二英たちと合流します。
F:皆さんには宿舎が用意されていますが……
陶双央:できれば、兵たちの中の方がいいな。その方が、接近されないから。
趙二英:事実ね。じゃぁ、兵には円陣を敷かせて、その真ン中に本陣を置く。
F:……夢梅さんは本業に戻るけど、丁芙ちゃんどうする?
趙二英:悪だくみの間は、余所に預けたいところなんだけど。
盾親忠:……じゃぁ、私が預かって席を外すということで。
陶双央:あら。
盾親忠:ひとりくらいは兵の監督してないと。それに、悪だくみには役に立てそうもないし。
陳小理:「そんなことないと思うっすよ」と、フォロー。
盾親忠:……軽く笑って、本陣から離れる。
陶双央:「何かあったら大声あげてねー」
盾親忠:「……了解」
F:ふむ……では、そちらで悪だくみをどうぞ。親忠さんにはイベントが起こります。
陶双央:いちばん、狙いは丁芙ちゃんである。にばん、狙いは丁芙ちゃんの持っている何かである。さんばん、狙いは丁芙ちゃんが持っていると誤解している何かである。どれ?
F:……やっぱりそっちから処理しよう。
楊花玉:いや、どれって聞かれても。どゆこと?
陶双央:そのままだよ。カルディールさんたちは丁芙ちゃんを探している、それはあの反応から明らか。
趙二英:「医術に通じた子供」ってフレーズに反応してたのは事実ね。
陶双央:そこで問題なのは、丁芙ちゃん本人を探しているのか、あるいは丁芙ちゃんの持っている何かを探しているのか、だけど。実際の所持品検査の結果、十中八九二番はないね。
楊花玉:ワタシがヘボでなければ、なんて前提はあるけどね。
陶双央:つまり、ないってコトだよ。だったら、カルディールさんは丁芙ちゃんの身柄を確保しようとしているか、あるいは丁芙ちゃんではない誰かの持っている何かの物品を探しているか、ということになる。
趙二英:ちょっと待って。いちばん肝心なことなんだけど、カルディールは丁芙の敵なの? 味方なの?
楊花玉:ちゃんと話を聞いておくべきね。双央さんは「確保」とは云ったけど「保護」とは云ってないわよ。
趙二英:……敵、という認識でいいのね?
陶双央:でなきゃ、ひそかに探してる理由がつかないからね。大手を振って探さないってコトは、表沙汰にしたくない何かがあるってこと。つまり、あの子を殺すことも選択肢に入れているンだよ。
趙二英:殺して奪うか、あるいは殺すことそのものが目的か……それを確認するには?
陶双央:わたしと小理ちゃんがふたりでお船に乗り込むことだね。こちらの手元にある「医術に通じた子供」が丁芙ちゃんではないと見せつけたら、わたしに何か交渉してくるはずだから。
楊花玉:もちろん、反対するわよ。双央さんが人質に取られたら、こちらとしては両手を挙げるしかないもの。
陶双央:そこで問題になるのは、わたしが「ナニをしでかすか判らない女」とカルディールさんに誤解されていること。
趙二英:誤解じゃねーわよ!
F:先の先を見抜いての暴挙か、アレは……。
陶双央:現状において徐州と一戦交える覚悟と戦力がなければ、わたしを直接害する行為には及ばない。また、わたしとふたりきりになるような真似は絶対にしない。少数の腹心だけを同席させて、わたしとの密談というかたちに持っていく……というところだろうね。
楊花玉:腹心とはいえ余人を介するからには、ことは穏便にせざるを得ない……ね。
趙二英:どこまで計算高いのよ……。
陶双央:というわけで、これから小理ちゃんと一緒に、カルディールさんのところに乗り込もうと思います!
F:おぅ、来い。はっきり云いますが、今回のシナリオの大半を読まれているのを改めて認めます。
陳小理:無残だなぁ……。
F:パルティアの船では、水夫たちが何やら慌ただしく動き回っています。
陶双央:その辺のヒトを捕まえて「カルディールさんお願いします」って率直に云うよ。
F:ふむ……ちょっと智略で判定。
陳小理:(ころころ)7で、11。
陶双央:(ころころ、ころ)19だね。
F:じゃぁ、双央さんは、物陰からカルディールさんがこっちを見ているのに気づきました。じーっと小理ちゃんを見ていましたが、軽く眉を寄せると出てきます。「ちょうどいいところに……」
陶双央:「どうも。何事ですか?」
F:「水夫がマストから落ちまして、怪我人が出たンですよ。そちらが例の?」
陳小理:「陳小理っす。医術は師匠に仕込まれてるから、ご安心っすよ」
F:「じゃぁ、さっそくお願いね」と、腕をおさえた水夫が倒れ込んでいるところに案内されます。
陳小理:あいよ。「治療」で判定かな?
F:その前に、もういちど「智略」で判定してみて。
陳小理:? (ころころ)……10。
F:じゃぁ気づかな
陶双央:今度は20だよ。
F:……カルディールさんは、小理ちゃんの頭巾を軽く持ち上げて、そのまま戻した。
陶双央:念のための確認、というところかな。
F:ですね。一歩下がったところで双央さんの視線に気づいて、慌てて距離を取ろうとします。
陶双央:有無を云わさず接近して「わたしの小理に興味がおありですかぁ?」
F:「いえそんな滅相もない!?」
陶双央:「わたしはカルディールさんに興味がありますよぉ?」と、髪に手を伸ばす。
F:……判った、魅力で判定してくれ。
陶双央:むっ……(ころころ)低いなぁ、8。
F:よし、抵抗した。カルディールさんは「神よ、この連中焼き尽くしちゃダメですか……」と小声でぼやいている。
楊花玉:……したの?
趙二英:アタシなら伺いなんて立てずに焼き殺すわね。
F:ンで、ややひきつった表情で笑って「徐州では、医術が盛んなのですか? こんな小さい子供なのに」と、けなげに雑談を試みるぞ。
楊花玉:痛々しいわね。
陶双央:「この子が特別なンですよ。わ・た・し・の、特別でもありますけどね、ふふふ……」頬をつーっ。
盾親忠:アキラくん、かえろう。
陳小理:素に戻っちゃダメ……気持ちと理屈は判るけど。
F:(ころころ)……だんだん理性がもたんなってきてる。黙って一歩下がろうとする。
陶双央:「他の子のことも、知りたいんですかぁ……?」とささやきながら、胸に手を
F:はい、キレた! カルディールさんは「神さまぁ……!」と泣きながら逃げだしました。
趙二英:って、逃がしてどうするのよ!?
陶双央:やりすぎちゃったか。追いかける?
F:このひと、スキル「逃亡」持ってますから、追いつけません。
楊花玉:結局何も判らなかったンだけど。
陶双央:からかいやすいヒトを出されたからなぁ。失敗しっぱい。
趙二英:取り返しのつかない事態にハッテンしている気がするわ……
陳小理:えーっと……治療は?
F:もう、適当にやって帰ってくれ……。さて、場面は変わって親忠さんサイド。荷車に物資が積んであるンですが、その隅っこで丁芙ちゃんが、ちょこんと所在なげにしています。
盾親忠:近づこう。
F:足音に気づいた丁芙ちゃんはびくっと顔をあげたものの、相手が親忠さんだと判るとほっとした表情になります。
陶双央:誰かに追われてるって自覚はあるみたいだね。ただし、ここまで来たってコトは、それがカルディールさんだとは判っていない。
F:……少し困ったような表情で、リンゴを弄んでいます。
趙二英:それ、アンタがいまやってることよ。
F:オレは、少しじゃなくて心底困ってる……。
盾親忠:……大変だね。
F:同情するな!
盾親忠:丁芙ちゃんに向かって「となり、いい?」
F:唐突に再開しやがったよ……いい加減慣れてきたな。リンゴをかじっていた丁芙ちゃんは、親忠さんを見上げる。「この国の方ではなかった……ですよね?」
盾親忠:「ええ、遠くの島国」
F:「ご家族は……」
盾親忠:「死んじゃった」……よね?
F:ですね。義仲とともに、お母さんもお姉さんも。
陳小理:ゲームには両方出ないけど……義仲は誰にやられてたっけ?
F:継信だね(注1)。丁芙ちゃんはちょっと躊躇ってから「遺されたというのは……国を捨てる理由としては充分ですよね」
陶双央:ふむ……(エアそろばん開始)
盾親忠:……結果待った方がよさそう。
F:先に進んでくれ。
盾親忠:「諸行無常、だよ」
F:それで人生に諦めがつくなら、17年前になげうってる!
楊花玉:……何があったの?
趙二英:ぱんつ脱いでブラだけになったアタシが、脚を開いて「いいよ……」って云ったら、キレたコイツが優しくレイプしやがったのが17年前ね。
陶双央:ちーちゃん、それどーやってもレイプじゃないから。
楊花玉:世界中探しても有罪切れる弁護士いないわよねェ。
Y:そもそも、実兄の前でそういうナマナマしい話をするな。
陳小理:男も同席してるンだから、女同士で下ネタはしゃいでる調子で喋らんでくれないかなぁ……。
趙二英:何でアタシが責められるのよ!? 悪い……のぉ〜、2割くらい、えーじろ、よねー?
F:残り8割の責任がどこに求められるか、追及されたくなかったらえーじろやめろ。
趙二英:はい……
盾親忠:楽しいなぁ。
F:アンタのそんな嬉しそうな顔、はじめて見たよ!
陶双央:おいおいえーじろ、お話戻そう? 夫婦喧嘩はあとにして
F・趙:夫婦じゃない!
楊花玉:妻はこっちよ!
陳小理:誰か何とかして〜……
Y:それができる奴は、とっくに墓の下だ。
 (しばらくお待ちください)
F:(正気に戻って恥ずかしい)……えーっと、何だっけ?
盾親忠:諸行無常。
F:だったな。「えーっと……?」
盾親忠:「インドの教え。ものごとへの執着を捨てなさい、ってこと」
F:云い方としては天竺ですかね。「捨てられないものも、あります」
盾親忠:「何もかも背負おうとか考えてない?」
F:リンゴを持つ丁芙ちゃんの手が、ちょっと揺れた。
盾親忠:「捨てるものと背負うものを選んで、背負ったものは守りぬく。ひとは全てを守ることなんてできないから、守りたいものをしっかり選ぶの。……丁芙ちゃんが背負っているものは、本当に守りたいもの?」
F:小さな手でしっかりリンゴを握りしめて、丁芙ちゃんは震えています。「……守りたい、です」
盾親忠:「だったら、少しくらいはおとなを頼りなさい。……頼りないかもしれないけどね」
 親忠さんの設定は、1時間かけてしっかり作っています。その辺が通じている僕が相手だからいいものの、双央さんたちほか出席者は完全おいてけボリ。
F:丁芙ちゃんは、少しだけほっとしたような表情を浮かべて、食べかけのリンゴを差し出してきます。
盾親忠:受け取る。
F:すると、丁芙ちゃんの手の中から暗い光があふれました。その光が引くと、食べかけだったリンゴが瑞々しい一個に戻っています。
盾親忠:……素で驚くなぁ。
趙二英:驚いてる?
F:丁芙ちゃんはそっと笑って「二英さんのところに、戻っていますね」と走っていきました。
陶双央:……それは狙うね、うん。
楊花玉:誰も気にしてないみたいだからツッコまなかったンだけど……この子、何者なの?
陶双央:カルディールさんが教えてくれるか、あるいは二英が聞き出すかだと思ってたからスルーしてた。
趙二英:アタシかい。
F:友好ポイントマル4つだろ? そろそろ真名を捧げてくれるぞ、お前から聞けば。
趙二英:……カルディールに頼るわ。
F:敵に頼るなよ……それはそうと親忠さん、「偵察」で判定を。
盾親忠:……(ころころ、ころころころ)わ?
 サイコロは5つとも5の目。
趙二英:5ゾロ?
F:こりゃまた微妙な真似を。出目としては申し分ないですが、えーっと……7776分の1か。
陳小理:こんなのはじめて見たなぁ。
趙二英:アタシは6D6(注2)で1ゾロ出したことあるわよ……
楊花玉:ときどき思い出したようにピンゾロ出すのよね、このヒト。
盾親忠:……30。
F:じゃぁ、親忠さんは、背後に視線を感じました。
盾親忠:……距離は?
F:(ころころ)少し遠いです。ただし、すでに離れ始めています。ていうか、走って離れています。
盾親忠:射かけても?
F:届きませんね。
盾親忠:……注意すべき、と軍師さんに伝えないと。
陶双央:だね。
F:じゃぁ、合流ですね。えーっと……そろそろ日が暮れます。
陶双央:夜は、基本的に丁芙ちゃんと一緒にお休みだけど。
趙二英:アタシから離れないンでしょ?
F:親忠さんならひっつくかもしれんが、丁芙ちゃんも何となく空気を読んでいるから、お前から積極的には離れようとしないな。もっとも、戦闘になったら別の空気を読んで離れるだろうけど。
趙二英:……ちゃんとした気配りのできる子っていいわね。
父親ではありません:誰かの娘なんざ、気配りとは正反対の行動が目立つからなぁ……。二英はそのまま朝までコースとして、他の皆さんは?
盾親忠:兵たちのところにいようかと。
楊花玉:そっちにつきあっておくわね。
陳小理:じゃぁ、夢梅さんの方には小理ちゃんが行っておきます。
陶双央:わたしは待機だね。カルディールさんから接触があると思うから。
F:えーっと、二英は丁芙ちゃんに、親忠さんと花玉さんはそれぞれに、小理ちゃんは夢梅さんに、友好ポイントのマルをひとつずつつけておいてください。で、双央さんはそのまま、朝まで待ちぼうけになります。
陶双央:……また読み違えた?
F:珍しいですねー。というわけで朝になると、港の方が「敵襲! 敵襲!」と騒がしくなっています。
陶双央:来た? じゃぁ、わたしたちは街門に。
F:別方向なんだが。




































南門















陶双央:さっき云った通りだよ。港には巣津から船が攻め込んでくるから、わたしたちは陸路からの敵を防ぐ。十中八九カルディールさんはこっちから来るしね。
F:……話が早いのはいいことです。夢梅さんたち階上津の守備隊と船の荒くれたちが、港の方で戦闘を始めると、それを見計らって、南方からパルティアの旗を掲げた一団を先頭に、200程度の軍勢が近づいてきます。
陶双央:降伏勧告しようか。「カルディールさーん、双央ですー」
F:先頭にいたカルディールは文字通り飛び上がった。「何でアナタがここにいるのー!?」
楊花玉:お気の毒ねェ……。
陶双央:「そちらのシナリオくらいお見通しですよ。こちらには500の兵がいます、うかつな真似はお控えいただければ、と提案しますが」
F:……ニヤリ、とカルディールは笑う。「500ね……。その程度で私の優位に立ったと思っているとは、異教徒はこれだからおめでたい!」そして、右手を高く掲げました。「ゾロアスターの正義の炎をしかと見よ!」
陶双央:ゾロアスター!?
F:カルディールの手から巻き起こった炎は、一瞬で空へと舞い上がる火柱と化しました。その炎はまっすぐに、パルティアの兵のうしろにいた巣津の守備隊へと襲いかかります。
趙二英:ちょっと待て、味方でしょ!?
F:100からの巣津守備兵は火柱に飲まれ、あるいはそのまま蒸発し、あるいは黒コゲになって逃げ惑い、あるいは火ダルマになり……で、焼き尽くされました。ひとりの兵が身体の大部分を火に包まれたまま、ゆっくりカルディールの前にまで来ますが、無慈悲な瞳に炎を宿したカルディールが馬腹を蹴ると、馬は無造作にその兵にとどめを刺します。
楊花玉:100の兵が、一撃で……!?
陶双央:(ルールブックを確認中)……これか、魔法系スキル「神火」!

神火(魔法系スキル)
 敵部隊が、使用者から見て異教徒だった場合、あるいは地形属性「木」に駐留している場合は、無条件で全滅する。
 使用者と同じ神を信仰している場合、あるいは地形属性「水」に駐留している場合は、一切ダメージを受けない。
 いずれでもない場合は、使用者の智略×100のダメージを受ける。
 PCがこのスキルを修得・使用するには、GMの許可が必要。また、雨天・降雪時には使用できない。

趙二英:だから、待ちなさいよ! こんな強力な敵が出るなら、それ相応の対応策をどっかで提示するモンでしょ!
F:最初に完全な対応策は提示したぞ。書いてある通り、このスキルは「雨乞い」さえ持っていれば無力化できる。
陶双央:……神の手による最初の救いを突っぱねたのはわたしだった、か。
楊花玉:お兄ちゃんの趣味と人生だと思っていたら、まさかねェ……。
F:完全に圧倒されている皆さんに、カルディールは笑顔さえ浮かべて「本来なら、アナタたちも神の炎で焼き尽くすところだけど、各別の慈悲よ。マニを引き渡しなさい。それで、今までのことも含めて全て許すわ」
楊花玉:まに?
趙二英:シナリオの経緯からして、丁芙のことなんでしょうね。
陶双央:……あーっ! また、本当のことを云ってヒトをだましたね!?
F:だましてませんよ、黙ってただけです。
趙二英:何なのよ!?
陶双央:マニ教の開祖マニと、そのマニを殺したゾロアスターの司祭カルディール! そのまま出していたの!
楊花玉:……えーっと、どっちも知らないワタシが云うことじゃないけど、直接本人を出されていたなら気づかなかった双央さんが悪いわ。何しろ、相手は本当のことを云ってヒトをだます謀略家よ。
陶双央:しまったぁ……。3世紀後半のヒトだから、三国志に絡められないことはないけど、黄巾の乱から100年は経ってる頃のイベントだから、完全にスルーしてたよ。
F:それはいいが、丁芙ちゃんはどこに?
趙二英:アタシが連れて歩いてる……わね。
F:では、名指しされた……偽名はよそうか、マニは全身を恐怖に震わせている。マニ教の隆盛に危機感を抱いたゾロアスター教はマニの両親を焼き殺し、本人には改宗を迫ったが、その場を逃げ延びたマニには炎への恐怖心が文字通り焼きついている。動くこともできずに立ち尽くし、震えているぞ。
趙二英:抱きしめる。「大丈夫よ、アンタを渡したりしないから」
盾親忠:前に出る。「守るべき者のために命を張る、それがサムライの生き様と心得よ」
楊花玉:「まぁ、子供を守るのはおとなの務めよね」
陳小理:えーっと……「ひとを治せとは教えられても、ひとを焼き殺せとは師匠から教わらなかったっす!」
陶双央:「あえて云いましょう、心頭滅却すれば火もまた涼しと! 脅しに屈する陶双央ではありません!」
F:おーらい、いい反応だ(注3)。突っぱねるのはいいけど、兵たちは動揺しているぞ。何しろ、100からの部隊がまとめて焼き尽くされたンだ、動揺しない方がおかしい。
陶双央:そのためだけに巣津の兵を連れだした、というわけだね。船は階上津の守備兵を押しとどめるために動員した、いずれも切り捨てるために。兵を率いる身として、そんなモン許せるわけがないよ。
F:「許せんからと云って、アナタたちに何ができるの? もう少しお利口だと思っていたのだけどね……」パルティア軍は動き出しました。ちなみに、雨が降る気配はありません。きょう一日、奇跡でも起こらなければ晴れるでしょう。
楊花玉:どうするのかを考えるのは、ワタシの役割じゃないわね。
趙二英:策は?
陶双央:……とりあえず、丁芙ちゃんは後方に。小理ちゃんが連れていて。で、兵はあえて五分する。
趙二英:いや、それは……
陶双央:この南門スペース、河の中にあるよね? つまり、地形属性は水と見たけど。
F:正解です。
スキル「神火」の影響を受けない、この南門でカルディールを迎え撃つ。ここに、小理隊を除く4部隊がいると、4部隊全てとの戦闘でドロー以上の判定をしないと、カルディール隊はこのスペースに入れないの。

 (戦闘時に)敵部隊のいるマスに入ると、その部隊と戦闘になります。
 このとき、敵部隊がいち部隊だけならそのマスにとどまれますが、複数の場合(正確には、突入した部隊より数が多い場合)は、全ての部隊と戦闘を行い、戦法判定で引き分け以上を出さなければ、そのマスに入れません。
 また、複数の敵部隊と同じマスにいる場合も、やはり全ての部隊と戦闘を行い、引き分け以上の判定を出さなければ、そのマスから出ることができません。(基本システム「7 戦闘について」より)

趙二英:……つまり、まずアタシたち全員と戦闘して勝つか引き分けてから、もう一度全員と戦闘して勝つか引き分けないと、城内には入れないワケね。
陶双央:そうゆうこと。だから、いち部隊辺りの耐久力を落としてでも、層の厚さでねじ伏せる。この場を離れたら即死するンだから、守りを固める他はないよ。
楊花玉:仮に全てが打ち破られても、小理ちゃんの部隊がまだ控えている……初期値が同数なんだから、充分勝ちはあるわね。
趙二英:……よし、それで行きましょう。
F:作戦会議は済んだか? では、確認しておく。マニを保護している部隊がパルティア軍の攻撃によって壊滅した場合、マニはそのまま死亡しゲームオーバーだ。その時点でまだ生き残っている者がいても、カルディールはひとり残らず焼き殺そうとする。そして、陶謙さんには「巣津との戦闘で階上津が壊滅しました」と報告が上がるワケだ。
陶双央:表面上はその通りの戦闘だからね。
F:では始めよう。

イニシアチブ:双央隊→カルディール隊→小理隊→花玉隊→親忠隊→二英隊

第1ターン

























陳+マニ









南門
陶・楊・趙・盾









カルディール





F:前回分までのリプレイと違っているのは、『迎撃』『突撃』『射撃』のスキルがなくなっていること。そのかわり、武力値と同じ種類と枚数の戦法カードを持つことになる。なお、『防御』は残ったが『攻撃』はなくなった。
陶双央:わたしなら『迎撃』『突撃』が3枚で『射撃』は2枚だね。
趙二英:アンタはそうだけど、アタシは各2枚よ。高くなってるのね。
F:だな。さて、行動順としては双央さんからになるが。
陶双央:……パス。
F:では、カルディール隊は南門へ突入を図ります。誰から戦闘するのか、順番を決めてありますね。
陶双央:もちろん、わたしからだよ。
F:でしょうね。えーっと、いちばん「偵察」が高いのは?
盾親忠:……私、だね。
F:4でしたか、じゃぁはっきり判るな。カルディール隊は『魚鱗』の陣を敷きます。武力値は3・7・2です(注4)
陶双央:『魚鱗』の修正値が「+1・+2・+1」だから、もともとの武力値は2・5・1か……ふむ。
F:で(カードを1枚、伏せて出す)『突撃』。
陶双央:…………………………え?
F:このカードは『突撃』です
陶双央:ぅっ……え? なに、なんで……!?
F:(無言無表情で見ている)
楊花玉:……勝たせるつもり? ここでこっちが負けたら、文字通りオハナシにならないからって。
趙二英:ンなことしでかす男じゃないわよ!
陶双央:――そう、えーじろは嘘をつかない!(カードを1枚、テーブルに叩きつける)陣形は『鶴翼』(注5)で、勝負!
 双央隊(3・3・6):『射撃』 vs 『突撃』:カルディール隊(3・7・2)
陶双央:ホントに突撃……!? じゃぁ、突入はこの時点で失敗だよ!
F:常駐スキル「重騎兵」を持っています。戦法『突撃』の相性が、通常のものとは違っているンですねー。

重騎兵(常駐スキル)
 戦法『突撃』の戦法相性が変化する。
    迎撃 突撃 射撃
 迎撃:△  ×  ○
 突撃:○  △  ×
 射撃:×  ○  △
 重騎:○  ○  △
 このスキルは、北狄か西戎の出身でなければ習得・使用できない。

陶双央:これにははっきり『北狄か西戎だけ』って書いてあるじゃない!
F:僕もはっきり云ってあるでしょうが、パルティア人だって。まぎれもない西戎人ですよ。
陶双央:……西戎って、どこまで?
F:設定上は、涼州から西、ローマ帝国の手前までですね。さすがにあの大国は別扱いです。
陶双央:………………ううぅ。
F:まだ何か?
陶双央:……ありません。
F:次!
楊花玉:二番、楊花玉隊入ります!
F:陣形は『魚鱗』継続で(カードを1枚、伏せて出す)、これは『突撃』ではありません。
楊花玉:くっ!? 『迎撃』か『射撃』なら、『迎撃』さえ出しておけば負けはない……
陶双央:でも、今度は「重歩兵」まで出してくるかもしれないよ?
F:(コインを弾く)表か……では云おう、スキル「重歩兵」は持っていない。
趙二英:そもそも、負けないじゃなくて勝たないと足は止められないわよ!
楊花玉:そ、そうね……じゃぁ『魚鱗』の陣で(1枚、伏せて出す)これ! せー、の!
 花玉隊(3・2・5):『突撃』× vs ○『射撃』:カルディール隊(3・7・2)
楊花玉:うくっ、読み違えた!
趙二英:ええぃ、今度はアタシが相手よ!
F:オレは、お前には嘘をつくぞ。『魚鱗』継続のまま(カードを1枚、伏せて出す)このカードは『迎撃』だ!
趙二英:そー来た!? えーっと『迎撃』じゃなくて……
陶双央:いや、ちょっと待って。「嘘をつく」って嘘をついていることもあり得るけど。
趙二英:そんなモンまで考えてたら、答えなんか出ないわよ!
陶双央:相手はえーじろだよ!
趙二英:うあー!(眼を閉じて、呼吸を整える)……落ちつけ、落ちつけ……相手はコイツ。
F:まだかー?
楊花玉:余裕ねェ?
F:正直、コイツには勝てる自信があるので。
趙二英:……よし、決めた。『鶴翼』の陣で(カードを1枚、伏せて出す)せー、の!
F:――双央さん、正解。
 二英隊(2・2・6):『射撃』× vs ○『迎撃』:カルディール隊(3・7・2)
趙二英:アタシに嘘ついたー!
F:お前をだますには、本当のことを云うのがいちばんだ。では、ラストの親忠さん。
盾親忠:……ん。
F:陣形は『長蛇(+2・+2・0)』で(カードを1枚、伏せて出す)どうぞ。
盾親忠:……ノーヒント。
楊花玉:勝ちに来たわね。
趙二英:ひと晩揉み放題賭けてもいいわよ、アレ『突撃』だわ。
陶双央:今度は判るよね……アレなら、戦法相性で負けがないもの。
盾親忠:せめてドローに持ち込まないと……陣形は『雁行(+1・0・+3)』で(カードを1枚、伏せて出す)。
F:せー、の。
 親忠隊(3・4・7):『射撃』× vs ○『迎撃』:カルディール隊(4・7・1)
陶双央:裏の裏を!?
盾親忠:……ごめん。
楊花玉:揉み放題……
Hカップ:いや、その、えーっと……!?
F:あー、実に魅力的ではあるがやめておこう、オレにも家庭というものがある。
趙二英:あ、うん……。
F:というわけで、4部隊全てを打ち破ったので、カルディール隊は南門に突入成功しました。次は小理ちゃんだな。
陳小理:えーっと、えーっと……!?
陶双央:「小理ちゃん、逃げて!」
陳小理:「どこにっすか!?」いや、ホントに。
陶双央:……逃げ場所がないの? 東の船着場と南門しかない街だから、その両方で戦闘が起こってたら。
F:マニは小理ちゃんの手から逃れようとしながら「もう、もうやめてください! 私が焼かれますから!」
陳小理:「キミが焼かれたって、あたしたちが助かる見込みはないっす!」こーいうのの常で、全員焼き殺されるのがオチだからな。意地でも何とかしないと……。
盾親忠:でも、どうしたら……
陶双央:とにかく持ちこたえて、夢梅が来るのを待つ。それしか……ない、ね。
F:えーっと、小理ちゃん。夢梅さんとの友好ポイントは?
陳小理:ん? 5で、まる4のばつ1だが。
F:じゃぁ、友好チェックしてくれ。マルなら夢梅さんが助けてくれる。
陳小理:この状況をどう助けてくれるってンだ……(ころっ)ん、まるの出目。
F:では、空からベルの音が聞こえはじめた。
楊花玉:すず?
F:いえ、ベルです。(隠し持っていたベルを鳴らす)しゃんしゃんしゃん、しゃんしゃんしゃん……というベルに併せて、空から粉雪が降りてきます。
趙二英:真夏じゃなかった!?
F:見上げると、トナカイに曳かせた空飛ぶそりの上から夢梅さんが、大きな袋の中から何かをバラまいています。それは大気に触れて白くなり、地面に近づくにつれて雪になりました。見上げたカルディールも「ニコライ!? アナタまで!?」と悲鳴を上げます。
陶双央:……あははは! そっか、そうだった! このヒトもこの時代だったね!
趙二英:ニコライって……サンタクロース?
陶双央:聖ニコラウス。270年代後半の生まれとされるから、ぎりぎり三国時代と云えるンだよ。
F:まぁ、そういうことです。皆さんを見下ろして、夢梅さん……真名はニコライは「よい子のみんなにプレゼントだよ」と笑いました。よい子じゃない連中のが多いですが、いちばんよい子じゃない奴の切り札はもう使えません。
趙二英:つーか、コレどういう状況?
F:ルール上は「雨乞い」だ。

雨乞い(魔法系スキル)
 雨が降る。冬に使うと雪が降る。
 PCがこのスキルを修得・使用するには、GMの許可が必要。どれくらいの雨量でどれくらいの時間降り続くのか、もGMと協議すること。
 また、武将「ニコライ(サンタクロース)」は冬でなくても雪を降らせることができる。

陶双央:ルールブックに「雨乞い」が書いてなかったのは、この演出の都合?
F:そうです。
趙二英:あっさり認めるな!
陶双央:上等じゃない。反撃開始だよ! 「神火」さえ封じてしまえば怖くない!
楊花玉:では、ワタシのターン。カルディールさんを「威圧」するわ。(ころころ、ころ)あら、出目いいわね。21。
F:えーっと、「ええい、うろたえるな! ゾロアスターの炎を信じなさい!」と「鼓舞」に智略を重ねて(ころころ、ころころ)ぶっ!? 4D6で6!?
 出目は1・1・2・2。
陶双央:智略は5だったよね?
F:合計で11だから、10ポイント離れてて……ぅわ、士気が2下がった。
盾親忠:そこへ「混乱」もかけてみる(ころころ、ころ)……18で。
F:えーっと、「収拾」はないから智略の平目(ころころ)……11か。士気が5だから、混乱しました。「司祭様! 火が、火が……!」「ええぃ、異教徒に! 異教徒ごときに!」
趙二英:「アタシが崇める神はただひとつ、雪神だけよ!」ここぞとばかりに攻撃するわ!
陶双央:二英、スキル「斉射」使って。
趙二英:ん?

斉射(戦法系消費スキル)
 戦法『射撃』を使用する際に、レベルに等しい追加のダイスを触れる。
 ただし、使用すると「補給」を受けるまでもう一度使うことはできない。

趙二英:今からコレを使うと宣言するのは「アタシは『射撃』するわよ」って云ってるようなモンよ?
陶双央:大丈夫、カルディールの戦法カードはもう『突撃』しか残ってないから。
盾親忠:……武力値が2・5・1で、『迎撃』はすでに2回、『突撃』と『射撃』は1回ずつ使用済み。
楊花玉:残っているのは『突撃』4枚、ね。
趙二英:おーらい! 『鶴翼』の陣で攻撃するわよ!(1枚、伏せて出す)
F:……せー、の。
 二英隊(2・2・6):『射撃』○ vs ×『突撃』:カルディール隊(3・7・2)
陳小理:混乱してても、戦法カード使えるンだっけ?
F:前に、混乱に関するシステム変更を行ったときに、使えるようにした。ただし、混乱状態なので攻撃力・守備力が半減するが。
趙二英:こっちは優性戦法だから武力値が倍、と……。
F:……あー、ギリギリ生き残った。

第2ターン

























陳+マニ









南門
陶・楊・趙・盾
カルディール















楊花玉:「いざ」
盾親忠:「……いざ」
陳小理:「やぁっておしまいっす!」
陶双央:「とどめを刺す役を譲ってもらって悪いね、二英」
趙二英:「こういうのは主人公の役目でしょ」
陶双央:というわけで、スキル「謀略」発動!

謀略(計略系特殊常駐スキル)
 戦闘時の攻撃力を、武勇ではなく智略で算出できる。
 このスキルは常駐するが、相手と智略で対抗判定を行い、勝たなければ発動しない。

陶双央:(ころころ、ころ)(注6)19!
F:(ころころ)くっ、6ゾロだが17……負けです。「ゾロアスターの炎が、こんなところで……!?」
陶双央:「文殊菩薩の叡智を思い知りなさい!」
 結果は……まぁ、云わずもがなということで。


F:えーっと、陸上部隊が壊滅したことで、船着き場でも動揺が広がって、攻め込んできた艦隊は引き揚げ始めます。もっとも、パルティア船も含めて、大半が東シナ海の藻屑になりましたが。
楊花玉:そっちに救援する余裕はないから、ちょうどいいところかしら。
陶双央:だね。
F:これにより、巣津は事実上壊滅。階上津の被害も小さくありませんが、名実ともに東海岸最大の交易港となったことになります。
趙二英:ライバルに物理的に勝利したワケだしねェ。
盾親忠:……パルティア船、沈んだ?
F:はい?
盾親忠:……外洋航海に耐えられる船が、失われた。
陳小理:「親忠姉さん、ふるさとに未練があったっすか」
盾親忠:……小理ちゃんの頭をなでる。「あるけど、ない」
陳小理:「どっちなんすか」でも、なでられるままになっていよう。
F:……まぁ、南門を破られかけたことと相まって、復旧には時間と費用がかかるだろうけどな。
陶双央:おばあさまには、更迭がてらここの太守に報告に行ってもらうよ。しばらくはわたしたちが陣頭指揮を取るべきだと思う。
楊花玉:それがいいわね、更迭はともかく。
趙二英:そうね、守備隊長がいなくなるワケだから、防備は固めてないと。
F:……気づくか。
陶双央:お見送り、できるかな?
F:まぁ、友好ポイント5の子供がいますから。夜になると、夢梅さんことニコライは、すでに空飛ぶそりに乗りこんでいました。「この街で、子供が危険なめに遭うって占い師さんに云われたから、じっくり待っていたのよ。きょうの惨劇を乗り越えたからには、私の役割は終わったわ」
趙二英:またアイツか……
楊花玉:でも、今度はそのおかげで助かったンだから。責めることじゃないわよ。
陳小理:「……まだ、何か起こるかもしれないっすよ?」
F:「世界中の子供たちに夢を与えるのが私の仕事。あなたたちだけを助け続けることは許されないの。……でも、どこかの空から、必ず見てるわ。何かあったら、呼ばれなくても来るからね」
陳小理:「お願いっすね」
F:で、マニちゃんに手を差し伸べて「どこかに行くなら、送っていくわよ?」と声をかける。マニちゃんは皆さんを見上げるけど。
趙二英:「アタシの手の届く限りは、守り抜くわよ」
盾親忠:「守るものがあるなら、引きとめたりしない」
F:マニちゃんは少し考えたけど、いい表情でニコライの手を取った。「皆さんには、本当にお世話になりました」
陶双央:「いつ帰ってきてもいいよ。徐州城は、マニちゃんと夢梅さんのためならいつでも門を開くから」
F:ニコライが軽くムチを振ると、そりは空を滑るように動き出した。遠くなるそりの上で、マニはいつまでも手を振っていたけど、その姿が月よりも星よりも小さくなって、やがて見えなくなってしまう。

 徐州のユカイな仲間たちは、帰ることを選んだ少女を失い、帰らないことを選んだ女を得た。
 そんな彼女たちの次なる物語は、またいずれ語ることもあろう。

「陶双央、異人を受け入れるのこと」終幕



注1 佐藤継信、真名は紅葉。あのゲームでいっとう好きです。……もっとも、当時割とアレな二次創作書きましたが。
注2 「6面ダイス6個」の意。10面ダイス3個なら「3D10」、8面ダイス2個なら「2D8」と表記する。ちなみに6D6でピンゾロが出る確率は46656分の1。
注3 人選の段階で予想できた反応。泰永はともかくこの面子には、子供を見捨てるような真似はできない。
注4 なお、実際の『真・恋姫』では『騎・槍・弓』の順で並んでいるので、ちょっと混乱するかもしれない。
注5 修正値は「0・0・+4」で、『射撃』系最強の陣形。
注6 このスキルそのものが計略系なので「智嚢」の効果を受けている。また「謀略」発動中にも「智嚢」の効果はあり、双央さんは実質智略7で戦闘できる。

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