ゴマダラチョウ

Hestina japonica japonica



概要

食餌 主食:県内ではほとんどの場合ニレ科エノキが利用される。
代替:エゾエノキが可能。他にはコバノチョウセンエノキ、クワノハエノキ(リュウキュウエノキ)などニレ科エノキ属が利用可能という。特にクワノハエノキは葉が柔らかく て大きく、春〜秋まで常に新芽をもつので飼育成績が良いようだ。同属のムニンエノキ、ウラジロエノキについては試していない。近縁のムクノキ、ケヤキは与えてもほとんど食べない。
増殖:エノキ実生取り木(高取)が可能。挿し木根伏せもできるが活着率が低く、やや難しい。実生は10月中旬〜11月に採取、半乾燥保存し翌春に撒く。室内や温室で栽培可能な場合は採取後すぐに蒔いても発芽する。取り木は一般的な落葉樹の方法に準じる。 増殖法ではないが、実生苗の山採りも可能。大木になるので、鉢植えにしたほうが無難。ただ、採取の際に根を乾かしてしまうと活着率が極端に落ちるので、乾燥させないよう根の周りの土は落とさないように注意すること。
採集 ステージ:春型の場合は越冬幼虫(4齢)。夏型の場合は。越冬幼虫は、根際に厚く落葉の積もった食樹の、北側もしくは日の当たらない位置(幹から直径50p以内)の落葉裏で比較的容易に見つかるが、アリの巣のある樹は好まない。卵は食樹の葉裏などに単独で産付される。オオムラサキと違って必ずしも大木である必要はなく、高さ2m程度の幼木にも産付されるので、比較的探しやすいが効率は悪い。
適期:越冬幼虫は11月下旬〜翌3月下旬頃。卵は、第2化が5月下旬〜6月上旬、第3化が8月。
難度 幼虫:容易。食樹さえ十分に供給できれば、ほとんど手がかからないくらいカンタン。
成虫:困難。成虫の生態を考える限り、大規模な温室を使用できる場合などを除き、ほとんど不可能。
採卵:♀の卵巣成熟がやや遅い(羽化後1週間〜2週間)ので難しい
飼育法  食樹の水揚げがきわめて悪いので鉢植えか地植えにしてネットがけを施したほうが無難。多量に水を含ませた脱脂綿などで 枝の切り口をくるみ、その上からラップをかけてしばってやれば、密閉容器などでも飼育できる。その際には枝を立てないほうがよい。 越冬の際には食樹根際の落葉裏にもぐりこむ習性があるので、晩秋になって褐色になっていきたら、飼育容器内に新鮮な枯葉を多く入れてやると良い。
 蛹化は一般に食樹の枝や葉裏で行うが、ついている樹に葉が少なくなると蛹化場所を求めてかなり長距離を歩行する場合があるので、ネットがけを施したほうがよい。
備考  越冬幼虫から蛹化脱出するヤドリバエ類や、第1化の蛹から脱出するヒメバチ類の寄生リスクが驚くほど高い。薄黄色や汚黄褐色に変色した蛹はほとんどが寄生されている。無事羽化できたらラッキーというくらいの考え方で飼育したほうがいいかもしれない。

記録

採集 記録 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 覚醒 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2005年第1化(春型)
1 E 2004/9/21 館山市犬石 ? 9/23 3/11 3/23 4/6 4/7 4/18 エノキ エノキ  
2 4 2005/2/6 千葉市緑区 ? ? 3/13 3/23 4/6 4/7 4/19 エノキ エノキ  
3 4 2005/2/6 千葉市緑区 ? ? 3/21 4/5 4/27 4/28 5/7 エノキ エノキ  
※採集総数9個体。死亡個体5(L[4]:4、L[5]:1)、L[4]は寄生バエ蛹化脱出、L[5]は死因不明。羽化個体3。
2004年第1化(春型)
1 4 2003/12/8 千葉市緑区 ? ? 3/15 3/30 4/15 4/16 4/28 エノキ エノキ  
2 4 2003/12/8 千葉市緑区 ? ? 3/15 4/1 4/23 4/24 5/5 エノキ エノキ  
3 4 2004/2/22 千葉市緑区 ? ? 3/15 4/1 4/27 4/28 5/10 エノキ エノキ  
※採集総数100個体。死亡個体97(4齢(87),終齢(8)、蛹(2))、死因は幼虫が寄生バエ蛹化脱出(45)、死因不明(50)、蛹がアゲハヒメバチ羽化(2)。羽化個体3。

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