分布 |
国内: |
北海道(南西部)、本州、四国、九州。島嶼では奥尻、佐渡、隠岐、対馬、壱岐、五島列島。北日本では産地は局地的で個体数も少ない。関東以西では普通種。 |
県内: |
市街地を除き、ほぼ全域に棲息する。 |
国外: |
朝鮮半島、中国(南部~西部)、ヒマラヤ。原名亜種は日本産で、本亜種は日本固有。 |
変異 |
形態: |
国内での地理的変異は知られていない。 |
季節: |
比較的明瞭。斑紋が相違する。春型(第1化)と夏型(第2化~)が知られる。 |
性差: |
ほぼ同型。斑紋に差はないが、♀は♂よりやや大きく、翅形が丸みを帯びる。 |
生態 |
環境: |
広葉樹を中心とする各種樹林とその林縁。日当りのよい林縁を好む。 |
発生: |
通常年2回。5月中旬~6月下旬、7月下旬~9月下旬に見られる。温暖な年には10月に第3化が現われることがある。 |
越冬: |
幼虫(4齢)。多くは食樹の根際の落葉の裏で見つかり、オオムラサキと混生することもある。食樹の途中に洞などがある場合、そこにたまった枯葉の裏で見つかることもある。食樹が幼木の場合、小枝の先に吐糸して枯葉と綴り合わせ、その中に潜む例もあるという。 |
行動: |
昼行性。飛翔は敏速。特に♂は活発で、晴れた日の日中に、はばたきと滑空を繰り返しながら♀を探して樹冠付近を飛ぶ。時に枝先にとまって翅を半開し、占有性を示すことがある。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/新芽・葉。エノキ、エゾエノキなどのニレ科エノキ属各種。飼育下ではリュウキュウエノキ(クワノハエノキ)でも生育する。越冬直後は新芽、それ以外は葉を食べる。 |
成虫: |
食植性/樹液・腐果・汚物。訪花性は弱く、主にクヌギやコナラ(ナラ類)、ヤナギ類などの樹液やヤマグワ、カキ、イチジクなどの腐果に集まる。♂は湿地で吸水したり汚物で吸汁するが、その性質はそれほど強くはない。 |
類似種: |
アカホシゴマダラと似るが、県内には棲息しない。 |
保 護: |
指定されていない。 |
その他: |
しばしばオオムラサキと混棲する。ただ本種は比較的環境変化に強く、樹林が狭くなるとオオムラサキはすぐに姿を消すが、本種は生息を続けることが多い。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類、スズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類、ハナグモ類。成虫は、ヤンマ類、トンボ類、ヤブキリ、ウマオイなどの捕食性キリギリス類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類、造網性クモ類、ハナグモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生し蛹から脱出するヒメバチ科ヒメバチ亜科のゴマダラヤドリヒメバチ(Ichneumon australis (Uchida, 1926))、シロコブアゲハヒメバチ(Psilomastax pyramidalis Tischbein, 1868)、ムラサキアゲハヒメバチ(Trogus lapidator lapidator (Fabricius, 1787))、ヒラタヒメバチ亜科のコキアシヒラタヒメバチ(Apechthis capulifera (Kriechbaumer, 1887))などが知られる。特に越冬幼虫の寄生率は高い。 |