オナガアゲハ

Papilio macilentus macilentus



概要

食餌 主食:県内ではほとんどの場合、ミカン科コクサギ。ただし、県北部ではコクサギがほとんどないためカラタチなど利用しているものと考えられる。
代替:サンショウ、イヌザンショウ、カラスザンショウなどほとんどのサンショウ類が利用可能。栽培ミカン類も与えれば食べて十分に成長する。 ただ、コクサギを与えた場合と比較して、小ぶりの個体となるようだ。
増殖:コクサギ実生挿し木根伏せ株分けが可能。実生は10月頃に果実から飛び出す前の枝上のものを採取。過湿と乾燥に注意して冷暗所に保管し、翌春3月〜4月に蒔く。但し発芽率はあまりよくない。挿し木は一般的な落葉樹の方法に準じるが、やや難しい。根伏せと株分けは比較的簡単。コクサギは県内では個体数が少ないので、できるだけ山取りは避けたい。
採集 ステージ:夏型は幼虫。春型は幼虫(休眠)。卵は、食樹の葉裏に産付されるので見つけるのは簡単。 食樹の大きさに嗜好性はないようだ。幼虫は、全期間を通じて食樹の葉表で静止するが 、同属他種と比べると、一般的に最も薄暗い場所にいるので、探すのは意外に難しい。休眠蛹は ほとんどが褐色型であり、食樹が落葉樹であった場合にはほとんど例外なく食樹を離れるので探すのは結構難しい が、常緑樹であった場合には食樹上で蛹化する傾向があるため他種と比較すると探しやすい。
適期:卵、幼虫共に5月〜10月頃まで断続的。9月以降に見つかるものはほぼすべて蛹で休眠する。休眠蛹は10月〜翌3月上旬頃。
難度 幼虫:比較的容易。食樹さえ切らさなければ、ほとんど手がかからないくらいカンタン。
成虫:困難。飛翔力はあまり強くないが、比較的移動性の強い種なので、屋内での飼育は難しい。
採卵:♀は羽化直後には交尾が可能なので、比較的容易といわれる。その際には羽化から2日〜3日後の元気な♂を使用すると成績が良いらしい。
飼育法  夏季に密閉容器などで飼育した場合、過湿と高温によりウィルス病で融けて死ぬことがあるので、ネットがけの上、開放飼育にしたほうが良い。特に終齢幼虫は、蛹化などの際にかなり長距離を歩行するので、 屋内外を問わずネットがけが必須になる。コクサギは水揚げが比較的良いので、花瓶等に挿して開放飼育でも十分に可能。その際には、こまめ(長くとも2日〜3日に1回)に枝を交換すること。
備考  卵は産付直後のものを除き、タマゴヤドリバエの寄生リスクがある。また黒色に変色したものはウィルスに侵されていることが多い。5月〜7月に採集した幼虫には、蛹から脱出するアゲハヒメバチ類が寄生していることがあるが、幼虫の外見では判別できない。蛹化後、体の一部が黄色くなったりして変色したものは、ほぼ間違いなく寄生されている。

記録

採集 記録 蛹型 性別 食餌 備考
St Date Loc 産卵 孵化 終齢 前蛹 蛹化 羽化 産卵 給餌
2005年 第1化(春型)
1 E 2004/9/20 館山市藤原 ? 9/20 10/10 10/25 10/26 4/28 緑色 コクサギ コクサギ  
2 E 2004/9/20 館山市藤原 ? 9/20 10/11 10/27 10/28 4/30 緑色 コクサギ コクサギ  
3 E 2004/9/20 館山市藤原 ? 9/24 10/12 10/29 10/30 4/8 緑色 コクサギ コクサギ  
※採集総数4個体。死亡個体1(蛹)。死因は寄生バエ(ブランコヤドリバエ)蛹化脱出。羽化個体3。
2004年 第1化(春型)
1 E 2003/9/20   館山市大神宮  ? 9/25 10/13 10/24  10/25  4/3 褐色  ♂ コクサギ コクサギ  
2 E 2003/9/20   館山市大神宮 ? 9/25 10/14 10/25 10/26 4/15 褐色 コクサギ コクサギ  
3 E 2003/9/20   館山市大神宮 9/20 9/26 10/16 10/28 10/29 4/14 褐色 コクサギ コクサギ  
4 E 2003/9/27  館山市大神宮 ? 10/1 10/24 11/4 11/5 5/6 褐色 コクサギ コクサギ  
5 E 2003/9/27  館山市大神宮 ? 10/1 10/24 11/5 11/7 4/21 緑色 コクサギ コクサギ  
※採集総数7個体、死亡個体2(うち終齢(1)・前蛹(1))、死因はすべて脱皮失敗。羽化個体5。

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