分布 |
国内: |
北海道(北部を除く)、本州、四国、九州。島嶼からの記録はない。東日本では平地~低山地、四国・九州などの暖地では山地性の傾向を示す。 |
県内: |
市街地を除きほぼ全域に生息するが、局地的な傾向が強い。食樹の関係から県北部ではきわめて稀で、南部に比較的個体数が多い。 |
国外: |
朝鮮半島、中国大陸に分布する。日本産は分布の北東限にあたる。原名亜種は日本産をさす。 |
変異 |
形態: |
国内での地理的変異は知られていない。 |
季節: |
やや不明瞭。 大きさが相違する。春型(第1化)と夏型(第2化)が知られ、夏型の♀は後翅外縁の赤色斑列が極端に発達することがある。 各産地とも個体数は、春型が多く夏型が少ないことが多い。 |
性差: |
異型。♀は♂より翅の地色がやや淡く、後翅外縁の赤色斑が発達する。♂は後翅表前縁に黄白色の性斑をもつ。 |
生態 |
環境: |
食樹の自生する樹林内や渓流沿い、林縁などのやや暗い環境を好む。街中に姿を見せることは稀。 |
発生: |
通常年2回。4月下旬より姿を現す。寒冷地では年1回。春型のみが出現する。 |
越冬: |
蛹。食樹の枝やその周辺の、雨の当たらない場所に付着している。 |
行動: |
昼行性。飛翔はアゲハチョウ科中では最も緩やかで、樹林内の薄暗い場所に蝶道をつくって飛ぶ。夏季の日中には樹林内で休息していることが多い。 |
食性 |
幼虫: |
食植性/葉。ミカン科のコクサギが主。他にはサンショウやカラスザンショウ 、イヌザンショウ、稀にカラタチや栽培ミカン類など。 |
成虫: |
食植性/花蜜。訪花性は強く、アザミ類、ツツジ類、ユリ類、ヤブガラシ、ムクゲ、ネムノキ 、クサギなどさまざまな花で吸蜜するが、特に赤色系の花を好む。夏型の♂はよく湿地で吸水する。 |
類似種: |
クロアゲハと似るが、翅形が、♀はジャコウアゲハの♂に似るが、胸部予及び腹部側面の色調が異なる。 |
保 護: |
千葉県:C、千葉市:C、東京都:A(区部)/C(北多摩) |
その他: |
県内のアゲハチョウではもっとも見る機会の少ない種で、産地での個体数も多くない。 |
天敵 |
捕獲: |
幼虫はアシナガバチ類やスズメバチ類、サシガメ類、クチブトカメムシ類、ハエトリグモ類。成虫は大型ヤンマ類、オオカマキリ、チョウセンカマキリなどの大型カマキリ類。造網性クモ類など。 |
寄生: |
幼虫に寄生する、ヒメバチ科ヒメバチ亜科のムラサキアゲハヒメバチ(Trogus lapidator lapidator (Fabricius, 1787))、ヒメキアシフシオナガヒメバチ、アゲハヒメバチ(Holcojoppa mactator (Tosquinet, 1889))、クロハラヒメバチ(Psilomastax pyramidalis Tischbein, 1868)、前蛹期に産卵するアオムシコバチなどのコバチ類が知られ、いずれも蛹から脱出する。他にはヤドリコバチ類 、終齢幼虫から脱出するマダラヤドリバエなど。 |