のトンボ


 9月。まだ残暑は厳しいが、水辺のアシは穂をのばし始める。小川や池沼の水もまだ温かく、 メダカ やカエルなども活発だ。小さな池沼では夏の渇水期に水が減り、葉を広げたヒシやヒツジグサに覆われて水面はほとんど見えないまま。やがて秋の長雨のシーズン、さらに次々と近づく台風によって、池沼の水かさは一気に上昇し、溢れ出ることもある。盛夏の間水辺にいたトンボたちは、稲刈りが終わる頃、数を減らし始める。また、この時期に は成虫で冬を越すトンボが羽化し、雑木林に散ってゆく。

 10月。秋晴れの季節だが、毎週のように近づく台風によって、周期的に天気が変わる。一雨ごとに気温は下がり、水温も下がってゆく。稲刈りの終わった田んぼの刈り株から 、2番目の穂が顔を出し始める頃、夏のトンボはそろそろ次の世代へ後事を託し、姿を消す。また、盛夏の間、暑さを避けて涼しい林の中に隠れていたヤンマやアカトンボたちが、伴侶を求めて水辺に戻ってくる。 一方、成虫で冬を越すトンボたちは雑木林の縁などで、冬に備えて食欲旺盛だ。

 11月。台風もそろそろ落ち着き、秋晴れの日が多くなってくる。県内北部の内陸部では冷え込み始めるが、さすがに温暖な千葉県ではまだ霜や氷が張ることはない。そろそろヤンマたちも姿を消し。水辺に残るのはアカトンボの姿だけである。また、雑木林で旺盛な食欲を見せていた成虫越冬のトンボたちも、そろそろ冬ごもりの準備を始めるようになる。

 秋に姿が見られるトンボは、春に羽化した種と、夏の間に羽化する種があるが、いずれも夏のうちに成熟する種と、晩夏以降に成熟する種がある。前者はイトトンボ科(6種)、モノサシトンボ科(1種)、 アオイトトンボ科(1種)、サナエトンボ科(2種)、トンボ科(1種)、エゾトンボ科(4種)があり、いずれも秋の早いうちに姿を消す。後者はイトトンボ科(2種)、 アオイトトンボ科(3種)、ヤンマ科(5種)、オニヤンマ、トンボ科(2種)のほか、秋のトンボの代表格であるアカトンボ類(12種)がここに入り、秋遅くあるいは冬の初めまで姿が見られる。また、このほかに夏〜晩夏に羽化し、そのまま冬を越す種があり、イトトンボ科(1種)、アオイトトンボ科(2種)が知られるが、いずれも未成熟状態である。


最終更新日 2003/10/29

凡例
未成熟個体が中心の時期
両者が混在する時期
成熟個体が中心の時期
休眠している時期
ほとんど見られない時期

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