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── はじめに ── |
古代人をとりまいていた世界というのは、今日のわれわれからすればかなり小さなものではなかったでしょうか。
水稲耕作の行われる一繋がりの土地に集落があり、その中心にはその土地を支配する首長の館があって政治的なマツリゴトが行われるいっぽう、集落のはずれには神体山がそびえ、その麓にあるヒモロギやイワクラでは、宗教的なマツリゴトが行われる、 ── ロマンチックすぎる想像かもしれませんが、そんな地縁・血縁で結ばれた祭政一致の社会が、大部分の古代人にとっての「世界」だったと思います。
今日から見れば小さな農村に過ぎないようなそのような社会でしたが、そこに住んでいた者たちにとってはそれが宇宙であり、彼らの生活を外面からも内面からも規定するものだったでしょう。
古い神社を訪れると付近の土地の様子から、そうした古代社会のありようが、そこはかとなく伝わってくることがあります。「何かが川をやってくる」では、そうした古代人の「ローカルな宇宙」を旅行記ふうな感じでスリリングに描いてゆければ、と考えています。
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