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Come Si Produce Olio(製油)

 ”Spremitura a Freddo(スプレミトゥーラ・ア・フレッド)”若しくは”コールド方式”という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?どちらもその言葉の指す通り、”加熱をせずに抽出された”という意味で、よく、エキストラ・ヴェルジネ・オリーヴ・オイルの瓶のラヴェルに、”このオイルは正しい方法で造られたよ、”と押し付けがましく記入されている文句です。本来ならば、エキストラ・ヴェルジネ=”Spremitura a Freddo”であるべきものですが、食文化を大事にする国イタリアでもビジネスはビジネス、酸味の最低基準が1%未満であれば、エキストラ・ヴェルジネを名乗れてしまう法律の中、そういった法の付け目に割り込む業者が後を絶たなかったために、そんな商品との判別を一般の消費者に理解させる目的で記入されるようになったここ数年の傾向でした。後に説明する近年の法的改革により、もはや消費者の信頼を得るには充分でなくなった”エキストラ・ヴェルジネ”の商標の替わりに、まずはDOC,そしてそれがDOP、IGP、BIOの新しいイメージを作り出し、定着しつつある現在、おそらく消えてゆくだろう”Spremitura a Freddo”の謳い文句ですが、改めて、良い品質のオリーヴ・オイルを生み出す為に必要な作業の肯定を確認する為に、基本的な概念を説明して置きたいと思います。
 まず、
”Tradizionale a Presse”ですが、その名”Tradizionale(伝統的)”の言葉に表れるように、最も古典的なやり方で、多少の機械の形や、動力の変化こそあっても、古代ローマのころから行われている方法です。もはや数少なくなったこの方式は田舎でしか見られず、近所の農家が総出してフラントイオ(搾油所)に押しかけ自分の順番を待っている光景は微笑ましいものですが、欠点を挙げれば、最大限にそのエキスを絞り取るプレスの為、スーパー最高級品を生み出すには、余分なエキスをも搾り出してしまうこと(軽くプレスすれば逃れられる欠点)と、断続的な仕事で、人手を必要とするため、工賃が高くつくこと。
 次は最も良い品質のオリーヴ・オイルが取れると言われている
Sinorea”方式。機械自体が高値ですが、人手も少なく済み、何よりも速いため、効率の良い方法。この方式で浮き立たされた油成分はロースト・ビーフの中心の赤み部分のみのような、いわゆる最高部位にあたる訳で、それを単独で商品化するか、後から浮き上がる油成分のそれと混ぜるかは、生産者の依存によるところですが、とにかく機械自体を所有、または借り入れる環境にあるならば、おそらく最上の方法。
 最後の、”Ciclo Cotinuo”方式ですが、”
Sinorea”方式に於ける攪拌作業を自然に油成分が浮き上がるのを待つ”デカンター方式”に入れ替えたもので、やはり浮き上がる油成分の品質は格別なもの。使用される水が自動的に循環するように仕組まれている為、人手も最小で済み、24時間止まらせず稼動できる為、効率も悪くないですが、唯一の欠点はデカンティングに掛かる長い長い時間。
 
Tradizionale a Presse
(トラディツイオナーレ・ア・プレッセ)
いわゆる最も伝統的な方法 : ”Molazza(石臼)”でオリーヴの実を粉砕し、真ん中に穴のあいた直径1,5メートルほどの円形のトレイに、そのペーストを塗りつけ、圧縮の機械にそのトレイを重ねていく。トレイがぎっしりと詰まったら、時々水をかけてやりながら(オイルの抽出を促すためと、プレスにより上がる機械の温度をさげるため)、40分から1時間かけてゆっくりとプレスする。こうして抽出された液体を遠心分離機にかけ、オイルと水に分ける。
Sinorea(シノレア) ”Molazza(石臼)”若しくは”Gramola(こね機)”によって用意したペーストを敷き詰めたトレイを専用の機会に挿入し、特殊な攪拌により、油成分を浮き立たせたものを、遠心分離機にかけ、純粋なオイルを得る。
Ciclo Cotinuo
(チクロ・コンティーニュオ)
”Molazza(石臼)”若しくは”Gramola(こね機)”によって用意したペーストを、自動的に遠心分離機から送られてくる水に浸し置き”デカンター方式”つまり、自然の法則で浮き上がってくる油成分を汲み取り、そして遠心分離機にかけ、純粋なオイルを得る。

 さて、以上の3つが、現在主に見られる搾油のシステムですが、どれも一切の加熱、科学的加工をを行わぬ”Spremitura a Freddo”方式です。ここでふと、お気ずきになったかもしれませんが、特に後2者の方式に於いて、良質の部分を1度、または2度に分けて搾り取った後の部分は、プレスにかけて廉価商品を作る、若しくは売り渡すことになります。ここで紹介した方法にこだわる業者の場合、良質の”エキストラ・ヴェルジネ”を造りたいがために、高価な作業費を惜しまず努力している業者であることが基本である為、大抵の場合、残り部分は買い取られるケースが多く、そんな残りの部分で造られるオイルが、アフリカあたりから流れてくるオリーヴの一番搾りなどと様々なブレンドを重ね、750ml瓶で10.000Lireを切ってしまう(実際5.000くらいのものまでは存在します)エキストラ・ヴェルジネを造り上げてしまうのです。ちなみに、カテゴリーのコーナーで紹介する”フィーネ”や”ピューアー”に利用されるのもこの部分で、最下層の”サンサ”に至っては、搾油の際の全ての絞り粕に加熱、そして化学的加工を施して造り上げられたオイルです。このように、本当に品質にこだわり、その方針のもとに造られるエキストラ・ヴェルジネ・オリーヴ・オイルというものは、最低でも一瓶あたり20.000Lireの単価でなければ元すらも取れないと言われ(南イタリアでは、若干値が下がります)、さらに、全ての収穫、そして実の選別などを人手の手作業で行えば、その数値は軽く倍増し、一般消費者には手の届かぬものとなってしまうだけに、また違うマーケティングの確保の必要性が謳われ続け、近年の新しいイメージ作りを推し進める格好となったのです。       ”DOP.IGP.BIO”へ続く