2005年10月17日

総務大臣 麻生太郎 様

やぶれっ!住基ネット市民行動
代表 〔氏名省略〕(註1)

住基ネットについての質問書

私たちは、住民基本台帳ネットワーク・システム(住基ネット)が国民監視の強化をもたらすことを危惧し、住基法改正時より住基ネットの導入に反対をしてきました。2002年7月には『私を番号で呼ばないで』(社会評論社)を出版し、問題提起をしてきました。

私たちは、とりわけ、住民票コードによって個人情報の照合・結合が容易・迅速になり、住基カードにより個人の行動が追跡可能となることを問題としています。

しかし住基ネットの運用の実際については、明らかになっていない点が多々あります。

つきましては以下の点について質問いたしますので、11月15日までに下記連絡先あてに、ご回答をお願いいたします。

また、ご多忙のこととは思いますが、この件について説明の場を設けていただくよう要望いたします。

(質問事項1)
住基カードの本人確認書類としての使用通知について

平成17年4月20日付で各都道府県住民基本台帳担当部長あてに、総務省自治行政局市町村課長より「本人確認書類としての住民基本台帳カード利用の周知・徹底等について」が通知されています。

この通知において、写真付きの住民基本台帳カード(以下、住基カードと略)を本人確認書類として利用できることの周知・徹底を、各部局、関係民間団体等、市区町村に対して求めています。

住基カードは、①住民票写しの広域交付や転入転出の特例処理 ②住基法別表に定める事務を行う際の本人確認 ③市町村が条例で定める事務への使用 ④公的個人認証において電子証明書や秘密鍵を保存するために使用することは、法律に規定されていますが、それ以外の利用は規定されていません。

関係民間団体等が住基カードの表面記載を本人確認書類に使用することは、それぞれの判断によることです。住基カードが、本人確認書類、公的な身分証明書として使用できるとすることの法的根拠を明らかにしてください。

(質問事項2)
本人確認情報の利用拡大における、自治体からの意見聴取および調査委員会での協議について

本人確認情報の利用業務は、当初の93事務から2003年2月の「行政手続オンライン化3法」施行で264事務に拡大したことを経て、2005年3月時点で275事務に拡大しています。

総務省のホームページに掲載されている説明資料「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み(註2)では、「情報提供を受ける行政機関や利用事務を変更する法律案を検討する場合、地方公共団体の意見を十分に踏まえ、第三者機関である住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会の審議を経て行う。」とされています。

しかし私たちの知るかぎりでは、275事務への利用拡大にあたって、地方公共団体からの意見聴取や調査委員会での審議は行われていません。

この利用事務拡大の経過と、その都度、いつどのように地方公共団体からの意見聴取と、住民基本台帳ネットワークシステム調査委員会での審議がおこなわれたのか、明らかにしてください。

(質問事項3)
国民年金事務における住基ネットの利用について

総務省の「年金に関する行政評価・監視結果に基づく第1次勧告 −国民年金業務を中心として−」では、年金未加入者について住基ネットから情報提供を受け、基礎年金番号システムとデータマッチングし、基礎年金番号を有していないもの=未加入者を把握することを求めています。また厚生労働省が、20歳に到達することにより第1号被保険者となる者について、住基ネットシステムから情報提供を受け対象者の把握を行っていると記載されています。

しかし本人確認情報は、申請、届出、請求等を行った者の情報が正確であるかどうかの照合を行うために都道府県から提供されると説明されてきました。総務省も、説明資料「住民基本台帳ネットワークシステム 個人情報保護の取組み(註3)において、「市町村の全住民の本人確認情報を行政機関に提供するような情報提供形態は全く想定されない。」とされています。

申請、届出、請求等を行っていない者について、この勧告にあるように住基ネットから一括して本人確認情報を提供を受けられるとする法的根拠を明らかにしてください。

(連絡先)〔省略〕