身体に対する温泉の影響
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健康との関わりで温泉が語られるのは日本だけでなく西欧にも共通します。文庫クセジュの『お風呂の歴史』によると身体の鍛錬には冷水が用いられ、温泉は治療に限って認められてきたのが西欧の風呂の利用だったようです。そこで、日本温泉科学会編『温泉学入門』p68ー71にもとづいて温泉が身体に及ぼす影響を「物理的効果」・「化学的効果」・「変調効果」および「転地効果」の四つにわけてまとめます。
●物理的効果
これは温泉に限らず入浴一般にいえることです。
1 温熱効果
これは熱(温もり)による効果で、38℃以下のぬるい湯は副交換神経を刺激して神経系や循環器系の興奮を抑え、42℃以上の熱い湯は交換神経を刺激して神経系や循環系を興奮させます。【注1】
2 浮力効果
首までつかった入浴では浮力が働いて体重が10分の1程度になるので、筋肉や関節の障害あるいは神経麻痺などの運動障害のある人は楽な姿勢で無理なく身体を動かせます。これはリハビリテーションに利用されます。
3 粘性効果
水の粘性により水中では身体を支えやすいうえに摩擦抵抗も大きいので安全に大きなエネルギーを消費できます。
4 静水圧効果
水中では全身に水圧がかかりウエストが3〜5cm細くなうそうです。また、心臓や肺が活発になるので心肺の負担が増しますが、これを利用して心肺の鍛錬に効果があげらます。
●化学的効果
これは温泉の含有成分によるもので温泉ならではの効果です。
1 皮膚から体内に吸収される薬理作用
一般的に、湯舟の湯の温度が高いとき、長時間入浴するとき、温泉の含有成分の濃度が高いときほど皮膚から成分を吸収しやすい。
2 温泉水を飲用する薬理作用
すべての温泉が飲用できるわけではありませんが、成分が腸から吸収される効果があります。
●変調効果
物理的効果や化学的効果が繰り返されることにより、身体の調子を変え、身体の機能を正常化する作用です。少なくとも2〜3週間は必要だといわれます。
●転地効果
これは入浴や飲泉を行なわず、温泉地の自然環境や気候環境に接することで精神的な療養効果が生まれることです。治療にかぎらず気分転換になるのも温泉に出向く要素でしょう。
【1】フリー百科事典ウィキペデアの「入浴」の医学的知見には、「入浴したときに熱くも感じず、冷たくも感じない温度を不感温度といい、36〜37度程度である。この不感温度での入浴したときにに消費されるエネルギーがもっとも少ない。不感温度より高くても低くても入浴中に消費されるエネルギーは増加する。」と記載されています。ここの解説は日本以外の地域の入浴にふれていますので参考になります。
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