7月16日(木) “〈『中国新聞』より−〉在ブラジル被爆者手帳裁判、県が控訴取り下げ”

 私たちブラジルに住む被爆者の仲間2人が2006年、代理人弁護士らを通じて、広島県に被爆者健康手帳の交付申請をしました。ところが県は訪日しない(できない)ことを理由に、この申請を却下しました。

 2人はこの処分を違法として同年、国と県を相手取り、広島地裁に提訴しました。

 2人はいずれも提訴の前後に相次いで亡くなりました。

 08年7月、広島地裁は原告の言い分をほぼ認め、却下処分を取り消し、国に賠償を命じました。
 この判決に国は控訴を断念しました。

 しかし、県は判決を不服として、翌月、広島高裁に控訴をしたのでした。

 → 08年7月31日付 、08年8月14日付

 今年に入り、6月24日、大阪府の橋下徹知事が、同種の裁判(被爆者手帳裁判)で控訴断念を表明しました。

 → 09年6月27日付

 すると、6月29日に長崎県知事が同種裁判(原告は韓国在住の方)で控訴を取り下げました。

 → 09年6月30日付

 ……

 そして16日、広島県の藤田雄山知事も、ついに控訴を取り下げ、ブラジルの故人2人による訴訟の1審判決を受け入れたのでした。

 ちなみに『中国』紙の報道によれば、藤田知事は控訴を取り下げた理由を
被爆者援護の観点から
と語っておられます。

 それならば、最初から控訴などしなければよかったのではないでしょうか?
 「被爆者援護の観点」をお持ちなら、なぜ控訴されたのでしょうか?

 被爆地の首長が考えておられる政治判断は、私には高度すぎて、まるで理解できません。

 以下、7月16日付『中国新聞』記事を紹介させて頂きます。

(ホームページ管理者)

 

 手帳交付 県が控訴取り下げ
(「中国新聞ホームページ」7月16日付から全文抜粋)

 広島県は16日、来日しないことを理由にブラジル在住の日本人女性と男性計2人の被爆者健康手帳の交付申請を却下したのは違法とした昨年7月の広島地裁判決について、控訴取り下げを決めた。県の敗訴が確定する。

 同様の在外被爆者訴訟をめぐっては自治体敗訴の判決が続いており、6月には大阪府が控訴せず、長崎県が控訴を取り下げている。

 同日、記者会見した藤田雄山知事は「原判決に不満はあるが、被爆者援護の観点から控訴取り下げを決めた」と政治判断であることを強調した。

 広島地裁判決は、手帳取得の来日要件に一定の合理性を認めたが「来日しないという理由だけで例外なく形式的に却下したのは裁量権の乱用で違法」と判断。却下処分を取り消し、国に計165万円の賠償を命じた。海外からの手帳申請をめぐる訴訟では原告側初の勝訴だった。

 県は「控訴しなければ、法定受託事務全般や類似訴訟に大きな影響を及ぼす」とする厚生労働省の強い要請もあり「手帳交付は法定受託事務であり、県知事に裁量権がないのは明らか」として控訴。広島高裁で争っていた。

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