2月23日(土) “もう血も涙もない行政はやめて下さい。一被爆者として御願い致します”

 お元気ですか?
 日本では、少しは春の足音が聞こえて来ていますか?

 2月18日最高裁で、崔季K(チェ・ゲチョル)さん裁判で、勝訴の判決が出ました。
 21日には、広島地裁で、在ブラジル被爆者訴訟の第7回口頭弁論がありました。

 両裁判とも、森田会長は傍聴に行かれました。

 議員懇の議員の方が話されるには、
―― 在外被爆者の手帳取得の法案は何とかなりそうだけれど、2007年11月12日、舛添厚生労働大臣が、国会で謝罪し「同じ立場にある人に一日も早く支払い出来るよう、財務省と折衝中である」と言われた言葉は、何ら進展が見られず、補償法は厳しそうという感触のようで、訴訟を提訴しなければならない可能性が強まりそう ――
とのことです。

 裁判所で402号通達が違法である、それにより29年間の償いをするようにと最高裁判所が判決を下したことに、厚生労働省は真摯に一日も早く答える必要があると思います。

 日本は法治国家です。
 法の下に国民は皆平等です。
 海外に住んでいる我々は日本のパスポートをもっている日本人です。
 それが29年間も差別され権利を剥奪されて生きてきました。

 もう一度訴訟を提訴しなければならないのでしょうか。
 その間に年老いた被爆者が何人お亡くなりになることでしょうか。

 もう血も涙もない行政はやめて下さい。

 広島、長崎で被曝し、海外に移住し、ひとには言えず苦しみながら、生きてきた方々に、日本政府は最後の最後に、面倒をみてあげて下さい。

 一被爆者として御願い致します。

(盆子原 国彦)

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 崔さん勝訴のニュースは、『長崎新聞』が詳しく報じてくださいました。
 一審の判決も聞かず亡くなられた崔さんと、長年闘ってこられたご遺族の方々に、心からの敬意を表します。
 在外被爆者裁判で重要な判決ですので、大変勝手とは存じつつ、以下、「長崎新聞ホームページ」2月19日付 から記事を全文引用させていただきました。

崔さん側逆転勝訴 在外被爆者訴訟最高裁判決
(「長崎新聞ホームページ」2月19日付 から全文抜粋)

 日本からの出国を理由に被爆者援護法に基づく健康管理手当の支給を打ち切られたのは違法として、韓国人被爆者、崔季K(チェ・ゲチョル)さん=2004年7月に78歳で死去、遺族が訴訟継承=が長崎市を相手に、手当の未払い分を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(泉〓治裁判長)は18日、手当受給権の時効消滅を理由に請求を退けた福岡高裁判決を破棄し、約83万円の支払いを市に命じた一審の長崎地裁判決が確定。遺族側が逆転勝訴した。

 泉裁判長は、被爆者が出国で手当受給権を失うと定めた旧厚生省402号通達を「一方的な失権取り扱い」と批判。通達で手当を打ち切られた在外被爆者の権利行使は「極めて困難だった」とし、被告の市に対し「時効を主張して支給義務を免れることはできない」と結論付けた。

 崔さんは長崎で入市被爆。80年5月に被爆者健康手帳を取得し、同6月に手当を受給して帰国。402号通達で同7月以降は支給を打ち切られ、04年5月に長崎地裁に提訴した。

 一審判決は、80年7月から83年5月までの未払い手当約83万円の支払いを命じたが、二審は「手当受給権は地方自治法上の時効(5年)により消滅している」などとして原告敗訴の判決を言い渡した。

 昨年2月、ブラジル在住被爆者による同種訴訟で最高裁は「時効主張は信義則に反し、許されない」と判断。これを受け、国は同4月、在外被爆者への未払い手当について、時効と無関係に支給するよう制度を変更。長崎市は同10月、崔さんの遺族に遅延損害金を含め総額306万円を支給済みで、同12月には二審判決の破棄を求める答弁書も出していた。

 一方、原告側は二審まで約24年分の未払い手当などを求めたが、上告審では一審勝訴部分に減額していた。

【編注】〓は徳のツクリの心の上に一

長い裁判だった

崔さんの六女、崔美淑さん(42)の話:
 大変長い裁判だった。すでに未払い手当は受け取ったが、父の権利(の行使)が重要で、(二審で)負けたまま終わりたくなかった。支援者の皆さんにとても感謝している。父が生きているうちに裁判に勝っていればと思う。帰国後は墓参りに行き報告したい。

援護対策力尽くす

田上長崎市長の話:
 最高裁判決で市の敗訴が確定したことは、重く受け止めている。故崔季Kさまとご遺族に対し、これまで長年にわたりご苦労とご心痛をおかけしたことに心から陳謝し、在外被爆者の援護対策に一層力を尽くしていきたい。

ズーム 在外被爆者

 海外に居住する外国人や日本人の被爆者。厚生労働省によると昨年3月末現在、被爆者健康手帳を持つ在外被爆者は三十数カ国に約4280人で、うち韓国約2890人、米国約970人、ブラジル約160人。1974年、旧厚生省が「日本から居住地を移した被爆者には原爆特措法(当時)の適用はない」とした402号通達を出し、日本出国で手当を打ち切られる状態が続いた。2002年の大阪高裁判決を受け、03年に通達は廃止。手当受給の前提となる手帳申請には来日要件が残り、病気などで来日できず申請できない人も多数いるとされる。

解説/問われる政治の姿勢
(「長崎新聞ホームページ」2月19日付 から全文抜粋)

 18日の最高裁判決は、旧厚生省の402号通達の違法性を厳しく指摘し、行政側の時効主張を「信義則に反し許されない」とした昨年2月の第三小法廷判決を踏襲。事前の観測通り、原告の逆転勝訴で4年近くにわたる裁判の幕を下ろした。

 在外被爆者への未払い手当をめぐり、国は昨年4月、時効と無関係に手当を支給するよう制度を変更。二審で争われた時効適用の可否は、法律上も制度上も決着していた。被告の長崎市側は昨年10月、崔さんの遺族に未払い分と利子を支給し、今回の上告審へは「原告の勝訴を望む」とする答弁書を出していた。

 崔さんと遺族は、健康管理手当・葬祭料の海外申請をめぐる裁判を含め、これまで3件の訴訟で当事者となり、勝訴することで在外被爆者援護の前進に大きな役割を果たしてきた。支援者を含めた努力は計り知れない。これに対し、ここまで抜本的な対策を講じることなく、敗訴判決の積み重ねによる制度の細かな手直しを繰り返してきた政府や、長く腰を上げることのなかった政治の姿勢は厳しく問われなければならないだろう。

 在外援護をめぐる「最後の課題」とされる海外からの被爆者手帳申請では、議員立法による「来日要件」の撤廃が確実とされる。高齢化する被爆者が光明を見いだせるよう、国会論議の加速が望まれる。

(報道部・久保景吾)

「生きてる間に…」 支援者ら複雑な思い
(「長崎新聞ホームページ」2月19日付 から全文抜粋)

 故崔季Kさんの訴訟で最高裁が原告逆転勝訴の判決を言い渡した18日、支援者は喜びを見せる一方、「生きている間に救ってほしかった」と複雑な表情も浮かべた。

 判決後、最高裁の外に出た支援者は、崔さんへの報告の意味も込めて黙とう。長年にわたり先頭に立って崔さんを支えた平野伸人さん(61)は「訴訟の積み重ねの成果。喜ぶべき本人がいないのが複雑だが、崔さんが在外被爆者問題に果たした役割は大きい」と強調した。

 勝訴は昨年2月のブラジル在住被爆者の同種訴訟を受けた流れだった。在ブラジル被爆者協会の森田隆会長は「遅すぎる判決だが、勝ったことを心から祝いたい。ブラジルの被爆者も喜ぶと思う」と述べた。

 一方、韓国原爆被害者協会釜山支部の許萬貞支部長は「今後は裁判ではなく政治で解決してもらいたい。韓国には被爆者なのに証人が見つからず手帳をもらえない人たちも多数いる。被爆者を人道的見地から守ってほしい」と残る課題への救済を求めた。