乳ガンとホルモン補充療法(HRT)の関係

最新疫学研究情報No.12

米国テキサス大学アンダーソン・ガンセンターの研究チームによって、「アメリカにおける乳ガン発症率の低下は、ホルモン補充療法(HRT)の減少によるものである」との報告がなされました。

研究チームは、米国国立ガン研究所の“地域ガン登録(SEER)プログラム”のデータを用いて、1975~2004年までの乳ガン発症率を調査しました。その結果、「2003年の乳ガンの罹患率が、2002年に比べて急激に(6.7%)低下している」ことが明らかになりました(*2001年と2004年の比較では、乳ガンの罹患率は8.6%減少しています。こうした変化は、50歳以上の女性だけに見られました)。そして「乳ガンの罹患率が低下した時期がホルモン補充療法の処方が減少した時期と一致している」ことも確認されました。

米国国立衛生研究所(NHI)は2002年に、「ホルモン補充療法(エストロゲンとプロゲスチンの併用)が、乳ガンや心臓病などのリスクを高める」との判断から、当時行われていた「ホルモン臨床試験(Women’s Health Initiative)の中止」を発表しました。(*年に一度の乳ガン検診は継続して行われています)その後、アメリカにおけるホルモン補充療法の処方は、6100万件(2001年)から2100万件(2004年)にまで減少しました。

英国オックスフォード大学の研究チームによる「約100万人の閉経後の女性を対象とした調査」から、閉経後にホルモン補充療法を受けた女性は、受けなかった女性に比べて、卵巣ガンの発症リスクが20%、死亡リスクが23%も高くなることが明らかになりました。研究者は「1991~2005年までの、ホルモン補充療法による卵巣ガン死亡者は、1000人にも達している」と述べています。(ランセット2007年4月号にて発表)

出典

  • 『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン 2007年4月19日号』
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