14話の舞のお仕置きシーンがあっさりしていたので、書きます。
14.5 舞のお仕置き
朝の会開始のチャイムが鳴った。お喋りしていた生徒達は静かになった。がらっと扉を開けて、春樹が入ってくる。春樹が教卓の前に立つと、日直の号令がかかる。
「起立!」
がたがたと音がして生徒達が立ち上がる。「礼!」
「おはよう御座います。」
「おはよう。」
「着席!」
がたがたっと皆が座る。静かになるのを待って、春樹が口を開く。
「今日は、連絡事項を伝える前に、やることがある。」
何だろうという表情で生徒達がざわめく。「舞!」
舞がびくっとする。皆が舞を見た。
「はい!」
「昨日、学校に携帯電話を持ってきていたと聞いたんだが、本当か?」
「…はい。」
舞は青ざめながら答えた。春樹は厳しい表情になると、舞の席に近づきながら言う。
「先日、授業中に着メロとかいうのを鳴らして、お仕置き室送りになった常識なしがいた話をしたのは覚えているか?」
「覚えています…。」
「その時、俺は何て言った?」
「携帯電話は校則違反だから決して持ってこないようにって…。」
「覚えているんだな!」
「ご・ごめんなさい…。」
すぐ側に立った春樹に睨み付けられて、舞は半泣きになっている。隣のザンはそんな舞を見て不思議そうにしている。
「舞ちゃんてさ、怒られるの好きなんでしょ?何で泣くの?」
「ザン!余計な口をきかずに黙ってろ。」
「へい、へい。」
「お前も舞と並べられて叩かれたいのか!」
「嫌です。」
「だったら、ちゃんと返事をしろ。」
「はい。」
ザンは素直に返事をした。春樹を無駄に怒らせると舞がとばっちりを受けるかも…と思い直したからだ。
「さあ、舞、来い。」
舞を立たせると春樹は彼女の手を引いて行く。春樹は黒板と向かい合わせになる位置で教卓に彼女の上半身を押し付けた。制服は、ミニスカートなので、パンツが丸見えになってしまった。いつもならお仕置きは膝の上か、皆からは横向きになるように教卓に手をつくのだが、厳しいお仕置きの時は、こうやって皆にお尻が見えるようにされてしまう。その格好をされただけで舞はすすり上げた。
春樹はまだ何もしていないうちから泣いている舞をチラッと見た後、
「特に注意していた決まりに違反するような子に、パンツは要らないな。」
舞のパンツを下ろしてしまった。舞は、下着を下ろされてお仕置きされるのは初めてなので、恐怖よりも恥ずかしさが強くなって、お尻へ手をやって隠そうとした。春樹はその手を捕まえて、
「悪いのは誰だ?」
手の甲をぴしゃっと叩いた。舞は諦めて叩かれた手を引っ込めた。春樹は舞のお尻を1つ打つと言った。「本来は禁止されている物を持ってきた場合の数は10回ずつだ。けれど、携帯電話については厳しく扱うと職員会議で決まったから、手の方を10回増やすぞ。分かったか?」
「はい。」
舞はまた泣いていた。10回も増やされちゃうなんて…。
「10ずつって何?手の方って?」
ザンは小声で前の席の明美に聞いた。明美は無言で、黒板の端にぶら下がっている30センチの竹の物差しを指差した。転校してきたばかりで、しかも授業をサボっているザンは、まだ道具のお仕置きを見ていなかった。その物差しの存在にはとっくに気付いていたが、まさかお仕置きに使われる物だとは夢にも思っていなかった。『そう言えば手帳に中学生のお仕置き道具は…とかって記述があったような…。…なんか凄い学校だなあ…。』
春樹は教室全体を見る。
「今、外でも禁止されているはずの電車や病院でも携帯電話を見かけるけど、モラルの欠けた人間にならない為にも、校則を守るんだぞ。」
『見せしめな訳ね、要は。しかも酷い言われよう。』ザンは思った。舞はそんな大それたことをしたつもりはなかったようだが、時期が悪かったのだろう。『しっかし、性格悪いなー。舞がわざと違反したかそうでないか分かるだろうに…。』それなのに。それなのに人気がある春樹って…?ザンは不思議になった。
「じゃいくぞ、舞。」
ぱんっ、ぱんっと春樹の手が舞いのお尻に振り下ろされる。1つだけ叩かれた時は無言だったのに、舞は大きな声で喚き始めた。普通はしーんとした教室にお尻を叩く音が響くのに、音は舞の声でかき消された。かと言って舞のお尻を見る限りでは、春樹は特に強く打っているようでもなさそうだ。春樹は五月蝿い舞に顔色1つ変えずに叩いている。
10回目は少し強く打たれた。舞はひときわ大きい声をあげ、思いきり足をばたばたさせた。自分が悪いのは分かっているのだけど、痛いのはどうしようもない。それに別にお仕置き中に騒いではいけないという程は厳しくないので、叫んでしまうのであった。残りの平手打ちも滞りなく続けられ、20回目を思いきり打たれて、平手のお尻叩きは終了した。
春樹は泣きじゃくっている舞を起こすと言った。
「ほら、舞。」
舞は泣きながら、黒板の廊下側の端に歩いていく。ぶら下がっている物差しを取ると、春樹の前に戻り、両手に物差しを乗せて春樹に差し出した。供物でも捧げるみたいなその姿に、ザンはあれが道具のお仕置きの時の決められた態度なのだと理解した。何だか別の世界に迷い込んだような気がした。
春樹は物差しを受け取ると、舞を見た。しかし舞は涙を拭っているだけで動かない。今度は自分で教卓に伏せなければならないのに…。
「舞。」
春樹は厳しい声で言うと、動かない舞を抱き寄せて、教卓に伏せさせた。物差しを右手で持ったままで、左手で左右のお尻を1つずつ打った。
「ごめんなさい、水島先生…。」
舞は謝ったが、春樹はもう1つずつ平手でお尻を打った。「ごめんなさい…。」
「他の皆は、最初は恥ずかしがっていたけれど、今ではもうちゃんと出来ているんだぞ。」
「はい…。」
「さ、これで10だけど、舞は素直に出来なかったから、痛くしてやる。」
「先生、ごめんなさい!」
春樹は首を振ると、物差しを振り下ろし始めた。ばちんっ、ばちんっ。物凄く痛く叩かれると思っていた舞は、少し力が抜けた。でもすぐに気付いた。ばちんっ、ばちんっ。物差しは座ると痛くなるお尻の下ばかりに振ってくる。舞のお尻は小さいので、物差しが当たる場所は、同じ所ばかりではないにしろ、かなり狭い範囲だ。10回でもそれはとても痛いお仕置きになった。
春樹に体を起こされた舞は前より泣きながら、パンツを上げようとした。ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。途端に手とお尻を叩かれた。
「誰がパンツを上げていいと言ったんだ?」
「え?でも…。」
お仕置きが終わったんだから、パンツを上げてもいい筈だ。舞は戸惑いながら春樹を見た。
「特に注意をされていたと分かっていて、携帯電話を持ってきたんだ。朝の会が終わるまで、お尻を出したまま立ってなさい。」
「はい…。」
春樹の言葉に真っ赤になりながら、舞は皆にお尻を向けて立った。
『ますます見せしめだね。舞みたいな目に合いたくなければ、携帯電話を持ってくんなよって言いたい訳だ…。』ザンは舞に同情した。舞は皆に警告するのに使われたのだ…。
春樹は連絡事項を伝え始めた。舞の啜り泣きが聞こえているが、ザン以外の生徒はもうお仕置きのある桃川学院に慣れているので、殆ど気にしなかった。
「舞ちゃん、あんたさあ、酷い目に合わされたね。」
「だって、校則違反したわたしが悪いんだ。仕方ないよ。」
朝の会が終わって、お尻を撫でながら戻ってきた舞は、ザンに答えた。『舞が分かってないならいいか。』ザンはそう思って、
「まあそうだね。」
と笑った。舞も微笑み返してきた。
「にしても、舞ちゃんったら騒ぎ過ぎだよ。そんなに強く叩かれてないじゃん。」
「わたしはザンちゃんとは違って、お尻を叩かれるのは学校だけだから、ちょっと叩かれるだけでも凄く痛いんだよぉ。」
舞は言う。「それに、お仕置きの最中に騒いではいけないなんて決まりないよ。」
「恥ずかしくないの?」
「真っ赤なお尻を皆に見せる方が恥ずかしかった。」
「ふーん。」
「痛かったんだから仕方ないの。ザンちゃんの意地悪。」
「悪うござんした。」
ザンは目をくるくる回した。