ふわふわ君

| | 目次へ

  19 リトゥナのお祖父ちゃん  

途中

 ケルラが、ラークが作ってくれた玩具で遊んでいると、ラークが側にやってきた。
「ケル、リトゥナが来たぞ。」
 ラークの後ろから、リトゥナが顔を出した。
「ふわふわ君、あそぼ。」
「うんっ。」
 ケルラは玩具を玩具箱へ入れると、リトゥナを追い越して、外へ飛び出した。
「ふわふわ君ったら、待ってよー。」
 リトゥナが笑いながら、後を追いかける。

 トゥーリナ達の家。トゥーリナはギンライの部屋にいた。窓の外を見ている父親へ声をかける。
「親父、たまには外へ出ないか?今日は風が気持ちいいんだ。」
「そうだな…。この村へ引っ越してきてから、一度も外へ出ていない気がする…。」
「2・3度は出たぞ。」
「そうだったか…。」
 ギンライはそれを思い出そうとした。気づかないトゥーリナは、父親へ言う。
「俺が車椅子を押すから、外へ行こうぜ。」
「…ああ。」
 トゥーリナは時間が惜しそうだったので、ギンライは後でそれを思い出すことにした。トゥーリナに抱き上げられ、車椅子に座る。
 この村に来てからは、実験まがいの薬物治療を受けていない。そのせいなのか、体は楽だけれど、力が入らない。もう、一人では、車椅子に座るどころか、それを動かすこともままならない。治療を受けないことによって、寿命は延びたのか、縮んだのか。ギンライは分からなかったが、別に生に執着しているわけではないので、どうでも良かった。長く生きて、息子たちと交流するのでも良かったし、早く死んだとしても、キシーユに地獄で会えるのだ。だから、どうでもいいのだ。

 ケルラは、当然いつものように、リリミィ達の所へ行くものだと思っていた。でも、リトゥナの考えは違うようで、ケルラはリトゥナの家の方へ連れて行かれた。
「リーにゃん、僕、ミーにゃんと遊びたい。」
「あのね、今日は、ふわふわ君をお祖父ちゃんへ紹介したいの。最近は、発作が前よりも少なくて、今なら、会えるから。」
「にゃ?おじー、にゃん?」
 ケルラは大きな目を丸くした。「しょーかい?」
「僕のお祖父ちゃんに、僕とふわふわ君が会いに行くの。」
「それ、しょーかい?」
「そう、それが紹介だよ。」
 ちょっと違うけど…と思いつつ、リトゥナは言った。「さ、行こう。」
「…みゃー…。」
 皆と空で遊んだ時、ケルラはリトゥナのお祖父ちゃんを見た。前にも見たことがあったけど、今も、別に会いたいとは思わない。それより、皆と遊んだ方が楽しい。でも、ケルラはリトゥナにそうは言えなかった。リトゥナはそれがとてもいいことだと思っているのだから…。

 父が座っている車椅子を押しながら、トゥーリナは教会へ向かっていた。
「な、風が気持ちいいだろ?」
 村人たちの視線が痛かったので、彼はことさら明るく言った。かつての第一者がやつれた姿で変な物に乗っかって移動しているので、物珍しいのだろう。
「そうだな。」
| | 目次へ
Copyright (c) 2010 All rights reserved.
 

-Powered by 小説HTMLの小人さん-