ノックの音がする。西條は、ドア越しに、 「誰?」 と声をかけた。答えはない。 ドアの外には、城西署の制服警官もいる筈だが、その警官の声もしない。 と、西條の耳に、微かに鉄のこすれる音が届いた。 「コウ、出ろ!」 功も、伊達に西部署で鍛えられてはいない。西條の声より早く、行動を起こしていた。 西條の側へと身を隠しつつ、靴を履く功に、 「さすが鳩村の弟子だな。余裕が違う」 と、苦笑した。 「だって、走れないでしょ、裸足じゃ」 「痛いもんな」 西條も軽口を叩きつつ、目線で窓を指すと、功は頷いた。 西條が再びドアに2発撃ち込み、功は窓から下へと飛び降りた。西條も続けて追う。
ロビーにいた太宰が、銃声に驚き、2階へと駆け上がった時、そこには撃ち殺された制服警官が一人、横たわっていただけだった。
「実力行使かよっ」 西條は、功へと銃を渡し、鳩村へと連絡を取るため、携帯を手にし、電源を入れた。 「ドック、無事か? コウは?」 「今の所、二人とも、五体満足だけど、この先は、わかんね」 受話器から、鳩村の耳へ銃声が届く。 「真っ昼間から派手だな」 「そりゃ、相手に言って。こっから、一番近い、4丁目の、工事現場へ行くよ。相手、サイレンサーつき」 「OK」 鳩村は、電話を切ると、大下に、 「矢追4丁目の工事現場だ」 と、告げた。 「了解。あと5分で到着」 |