「立花が、西條医院へ運ばれた?」 深夜3時。 「自分から西條医院へ、と言ったそうだから・・・」 西條医院は、七曲署の西條昭の父親と弟がやっている、小さな町の病院だった。 「接触する、とは言ってた。まだ、連絡はない」 真夏独特の、いやなまとわりつくような空気が、鳩村の体力を削って行く。 時間だけが、周りを置き去り、過ぎ去って行く。 あれだけ、顔が売れている高崎を、この都会で見つける事が出来ない事に、いらつきを覚える。 と、警察無線が、ある方向を示してくれた。
「・・・あのやろ」
元々、立花の事になると、自分が芸能人だと言う自覚すら飛ばして、暴走することがある。 鳩村の言葉で、暴走が止まるような気配はなく、犯人を突き止めて、「復讐」してやりたいという、鬼気だけが、身を包んでいた。 「隆・・・」 鳩村が、龍の視線の先を見ると、ジャニスの社長である、関口進が、小さく丸くなって震えていた。 「鳩村か・・・」 龍の口元が、嫌な感じに歪む。にっこりでもなく、にやりとでもなく、ただ、歪めているだけのように。 「八百長、事実みたいだぜ。そいつが全部吐いた」 感情がない、瞳。まさしく、そんな感じの凍てつく視線で、龍は関口を見下ろしていた。 鳩村は、関口の様子と、部屋の様子を確認した。 「しかも、それを被害者に話したのも、こいつだってよ。こいつは俺がいつまでもトップにいる事が気に食わなかったらしくって、あいつは俺絡みのスクープものにすれば、金がたんまり入るってことで、利害関係が一致したんだな」 龍は苦々しげに言い放った。 怯える関口の様子に、鳩村は苦笑いした。 |