夜。留置場は快適だった。 意外に、心地いいもんなんだな。こりゃ、舞い戻ろうとする奴が多いのもわかるな・・・、と立花は思った。
妙に息苦しくて、目が覚めた。
それもそのはずだ。 自分の上に男が覆い被さって、顔まで掛けられた毛布越しに、首を絞めているのだから。
油断し過ぎていた。 両手は、男の両足の下敷きになり、首元の手を振り払う事も出来ない。
だが、男にも油断があった。 立花は自由の効く足で、かろうじて男のの背中を蹴り飛ばす事に、成功した。 男は不意をつかれ、立花の上から吹き飛ばされた。 立花は顔の上にかかっていた毛布を、思い切り取り払い、男の顔を確認しようとした。 だが、男はすでに逃走していた。
立花は、思い切り咳き込んだ。新しい空気が、いままで塞がれていた気道から、一気に肺に流れ込む。 留置場担当の警官が、立花の異様な様子に、慌ててやって来た。 「どうした?」
そう言うと、立花はその場に倒れ込んだ。 戻る |