「・・・なんだ、こりゃ」 高崎は、スタジオの前に大挙して押し寄せているマスコミの群れに、呆れ返った。 「・・・俺目当て、なんだろうなぁ・・・、やっぱ・・・」 いくら自分が、冤罪だと分かっていたとしても、公式発表はされているはずだし、自分は芸能人で、ハイエナどもからすれば、こんな金を生むようなネタを逃がす訳はない。 仮面を外すしか、方法はないんだろうか。 と、いきなり腕を引かれた。瞬間、息を飲む。振り返ると、そこには坂上がいた。 「玲・・・」 こっそりと、中に入る事に成功した。 「あれ?」 高崎が、メイクをしてもらう時、疑問の声を上げた。 「どうした?」 「まてよ・・・」 マスコミは、木暮警視ががっちりストップをかけているはず。 「ちょっと、メイクストップ」 高崎は、自分の携帯を取り出すと、鳩村へと電話をかけた。 「ああ、鳩村? 功のことなんだけど、公式発表した?」 『いや、藤堂さんも抑えてくれてる筈だが。どうした?』 「ん・・・。それならいいけど」 『そうそう、お前、暁のオーディション、事務所の勧めで受けたのか?』 「え・・・、それは俺が自分で決めたんだけど。どうして?」 『そのことを、被害者は調べていたらしいんだ。デキレースだったんじゃないかってね』 「冗談じゃないっ!!」 突然の大声に、坂上も、メイクの女の子も、一瞬にして凍り付いた。 「あの役は、俺が自分で勝ち取ったもんだ! そんな八百長・・・」 『なかった、と言い切れるか』 鳩村の静かな声に、今度は高崎が固まった。 「それが、今回の事件の背景なんだな・・・」 ぐん、と声のトーンが落ちた。 「安藤要の、関係者が、ホシなんだな・・・」 『隆、何考えてる』 「俺のせいで、功がまきこまれたんだな・・・」 『待て、隆!!』 「隆?」 鳩村の制止も聞かず、高崎は携帯を切った。坂上が心配そうに、鏡の中の高崎の顔を覗き込んでいる。 |