TOP探偵社。新宿にある、中規模の探偵事務所である。 そんな探偵社に勤める、大下勇次と、鷹山敏樹。 彼らはちょっとした事件から、鳩村たちと知り合いになり、時には同じ事件を追いかける、友人ともなっていた。 「やあ、鳩村、どうした、血相変えて」 二人は、鳩村よりも2歳年下である。が、呼ぶときは、苗字を呼び捨てている。 大下がいつもの調子で、軽く挨拶すると、鳩村は鷹山の腕を引っ張って、そのまま事務所の応接間に入った。 探偵業という職業柄、応接室は防音もしっかりしているのを知っていた。 「鷹山、ちょっと大下借りてていいか」 「鳩村?」 鳩村の真意を量りかね、二人は首をひねった。 「西部署の鳩村だと、動けないんだ」 「どういう、意味ですか」 いぶかしげに問う鷹山に、鳩村は今朝の事件についてかいつまんで話した。 「なるほどねえ」 大下が、頷く。 「だから、鷹山の位置が必要ってことか」 鳩村と鷹山はとても似ている。それを利用して、今回は自分が捜査に乗り出すつもりなのだ。 「お前の位置はどうすんだよ」 「休暇を取った」 「そうじゃなくて、絶対、マークするぞ。城西署は」 「お前に頼むかな」 口調は軽いが、眼が真剣だ。鷹山は大きく息をついた。 「・・・業務外だ」 「タカっ」 大下が鷹山をにらみつけた。その視線を横から受け取っているが、鷹山はそのまま鳩村を見据えていた。 「特別手当、もらうぞ」 「鷹山・・・」 ふっと笑みをもらしつつ、そう言ってきた鷹山に、鳩村は感謝した。
探偵を雇う金額の相場は何となく知っている。 「旅行でも、行くかなー」 「おい・・・」 「北海道とか、いいよなー」 「鷹山?」 「夏に北海道、最高だねぇー」 「もしもし?」 「北斗星利用するかなー」 「戻って来ーいっっ」 腕を組んで、思考を北海道まで飛ばしている鷹山に、鳩村は慌てて呼びかける。 「お前ね、俺の給料考えろよ・・・」 「昔の俺たちよりは、取ってるはずだろ、鳩村巡査部長殿?」 わざわざ階級をつけるところ、かなり嫌味である。 「お前が犯罪者なら、速攻で殴ってるぞ」 「・・・冗談だよ」 鷹山が柔らかい笑みを返す。 「ようやく、あんたらしくなったな」 大下もそう笑う。 言われて、鳩村はハッとした。 「すまん・・・」 余裕がない、ということは、捜査をするにあたって、最大の壁だ。 「誰が手伝わないなんて言った? まかせとけ、城西署の目くらましなんて、お手のもんだ。でも、本当に旅行は行こうかな。悪りぃな、ユージ」 「ええーーーっ?」 「大丈夫、箱根の水原さんの所だよ」 「充分、大丈夫じゃないよ・・・。水さんの別荘って、天然温泉あるじゃん・・・」 大下はがっくりと、肩を落とした。 |