プロローグ

『頭が痛い・・・』

ぼうっとする頭に、灯りが見えた。

自分がいる場所が、どうやら路地の奥であることが認識出来た。

灯りは、その路地から見える、繁華街のネオンのようだった。

『どうして・・・』

なぜ、自分はここにいるのか。

はっとして、腰に手を当てる。

何故、そうしたのかは分からない。

が、何かを確認したかった。

その手に、冷たい液体が触れた。

その感触に、振り返ると、見なれない男が横たわっていた。

『誰・・・?』

分からない。ただ、その男がすでにこの世の人間でない事は、胸を真っ赤に染めている血から、安易に想像出来た。

『俺・・・が?』

分からない。

『どうして・・・?』

緊張のため、呼吸が速くなる。

とっさに、深呼吸した。段々、頭がクリアになる。

だが。考えをまとめる前に、路地の入口の方から、悲鳴が上がる。

視線を送ると、こっちを見ている女性。表情は、怯え切っている。

『逃げなきゃ』

なぜか、そう思った。

『ここで捕まったら、迷惑がかかる・・・』

誰に・・・?

まだ、何も分かっていない。

 

Next


戻る