ユニレンジャー・RYO(5)

 

囚われの身のユニレンジャー・RYO。

今は何もない地下倉庫のような場所に囚われている。

首には首輪を填められ、鎖で杭に繋がれていた。

依然として素っ裸のままであるものの、両手は自由になった。

鎖の長さは3mほどで、杭の高さがRYOの身長と同じ1m70cmぐらいなので、

RYOは半径3mの狭い範囲ではあるが、自由に行動できる。

戦闘員の見回りも少なく、逃亡のチャンスはありそうに思えた。

だが、首輪にしろ、途中の鎖や杭も、素手のRYOには如何ともしがたい。

最初は何とか逃亡の可能性を探ったRYOも、

2日・3日と過ぎるうちに諦めにも似た想いが心を支配するようになる。

しかし、RYOは全てを諦めたわけではない。

“チャンスは必ずくる。今はその時の為に、体力を温存するんだ”

RYOは自分にそう言い聞かせて、反撃のチャンスを待つ事にした。

「おい、囚人。飯だ」

寝ていたRYOのチンポを、食事を運んできた戦闘員が足で小突いた。

「うぅっ」

目を覚ますRYO。

「ヒーローがいつまでも寝てるんじゃねぇ」

RYOのチンポに向かって、バナナが投げつけられる。

「うわっ」

股間を押さえて苦しむRYO。

だが、RYOも反撃した。

下からのキックが、戦闘員の股間に命中したのだ。

「ぐえっ」

今度は、戦闘員が股間を押さえて苦しむ番だ。

「きっ、貴様。おーい、誰か来てくれ!」

騒ぎを聞きつけて、他の戦闘員も集まってくる。

「この野郎、ふざけたマネを!」

いきり立つ戦闘員たち。

だが、杭から3m以内に侵入した戦闘員は、ことごとくRYOに殴り倒された。

しかし、RYOの反抗もここまでだった。

戦闘員の一人が壁際のスイッチを入れると、RYOの首輪に繋がれた鎖が

次第に杭の中に引き込まれ、RYOの行動範囲が狭められる。

ついに、RYOの背中は杭にぴったり密着するまでになった。

こうなってしまったら、RYOは全く動けない。

背後から襲いかかった戦闘員によって、両手の自由を奪われてしまう。

「おい、ユニレンジャー。

 お前、自分の格好をよく見て見ろ。

 チンポコ丸出しで、いつまでヒーローを気取っていやがるんだ」

さっき、RYOに股間を蹴られた戦闘員がRYOに近づいて、

RYOのチンポを鷲掴みにした。

「うぅっ」

屈辱に震えるRYO。

「さてさて、どうやって痛めつけてやるか」

戦闘員がRYOのチンポを鷲掴みにした手に、さらに力を加えた時だ。

「ぎゃー」

彼の背後で悲鳴が聞こえた。

振り返ると、突然、現れた少年によって、すでに何人もの戦闘員が倒されている。

そして、彼もまた、事態を把握する間もなく、少年に殴り倒された。

 

 

「RYOさん、大丈夫ですか?。

 僕、タイムレンジャーのシオンといいます。

 あなたのこと、救出に来ました」

そう言って白い歯を見せた少年は、慎也と長野博の話を立ち聞きしていた少年だ。

「タ、タイムレンジャーがどうしてここに・・」

「それは・・、あなたには申し訳ない話なんですが・・」

シオンの話は次のようなものである。

ドルネロ一味を逮捕し、いったん30世紀に戻ったシオンは

近代考古学の研究の為に、再び20世紀に帰ってきた。

そこで知り合った慎也に精神治療の目的と騙されて、

ドリームモニターを作ってしまったと言うのだ。

「まさか、こんな事になるとは思ってもいなかったんです。

 本当にごめんなさい」

「分かった。悪いのは、君を騙した慎也だ」

「ありがとうございます。

 お詫びと言っては難ですが、ユニレンジャーのパワーをアップする為に、

 これを使ってみて下さい」

シオンはそう言うと、RYOに一本のミサンガを手渡した。

「このミサンガで、10倍の力を持つユニレンジャーに変身する事ができます。

 ただ・・」

「んっ?。ただ・・何なんだ?」

「これは20世紀の材料で作った物なので、持続性に問題があるんです。

 具体的に言うと、変身した時に装着されるのは、

 ユニフォームと、サッカーパンツ、スパッツ、サッカーソックス、サッカーパンツの

 五つのアイテムです。

 この五つが揃った状態がレベル5のユニレンジャーで、

 超能力を備えた最強のヒーローです。

 しかし、時間が経つと、このアイテムが一つずつ消滅していき、

 全てが消滅すると、RYOさんは素っ裸で中学生程度の力しかない

 ただの人間になってしまうんです」

「で、その持続力はどれぐらい持つんだ」

「はっきりとは分かりません。

 戦闘でのエネルギーの消費や、受けたダメージとの関係もあると思いますし・・。

 でも、いまなら大丈夫です。

 メデューサは戦闘員のリクルートに出張する慎也に同行してますし、

 長野は研究室にこもって、新怪人の開発に没頭してます。

 今なら戦闘員だけですから、十分に逃げ出せます」

だが、RYOはシオンの言葉に思案顔になった。

「どうしたんですか?。

 今が逃げ出すチャンスなんですよ。

 早く逃げないと、また戦闘員に苛められちゃいますよ」

「いや。それだけの力があるのなら、慎也が戻るのを待って、

 オークションの参加者たちと一緒に、一網打尽にしてやる」

「でも、レベル5の状態がいつまで続くか分かりません。

 またやられて、酷い目に遭ったりするかも知れませんよ」

「大丈夫だ。ユニレンジャーの力は、連中から逃げる為じゃなく、

 連中を倒す為に使わせてもらうよ」

「そうですか、それじゃぁ、僕は何も言いません。

 戦闘員には、ドリームモニターで今までの事を夢だと思わせておきます。  

 ご健闘をお祈りします」

フリチンにされ、雑魚の戦闘員にすらいたぶられる我が身を思うと、

RYOとしてもどれだけ逃げ出したかったか分からない。

だが、RYOはあえて留まった。

RYOは考える。

“俺がここに留まったのは、本当に慎也を倒すという理由からだけだったろうか?”

その問いに、RYOははっきりイエスと答えられない。

“戦闘員しかいないから逃げ出す”“また酷い目に遭う”“戦闘員に苛められる”

そんなシオンの言葉に、プライドを傷つけられたのも事実だ。

或いは、ヒーローとしての見栄が、RYOを留まらせたのかも知れない。

ともかく、シオンは全てを戦闘員がバナナを持ってやって来た以前の状態にして

去っていった。

賽は投げられたのだ。

今は慎也を倒す機会を待って、体力を温存しなければならない。

戦闘員がバナナを持って現れた。

「おっ、ユニレンジャー。えらく早起きだな。

 起きたところで、お前は素っ裸で鎖に繋がれた身の上なんだ。

 夢の中で活躍していた方がいいんじゃないのか」

戦闘員はそう言いながら、バナナを放り投げた。

「いえ、もう抵抗しようなど、夢の中でも考えられません。

 弱い者は強い者に従うしかないと、やっと悟りました。

 奴隷として生きていく覚悟もできていますので、

 何とぞ、戦闘員様からもそのように慎也様にお伝えいただけないでしょうか」

敵を油断させる為とはいえ、屈辱の言葉を口にするRYO。

心の中で涙がこぼれていた。