ユニレンジャー・RYO(4)

 

ヒーローSM倶楽部に捕らえられ、オークションにかけられて

着衣を次々に奪われたユニレンジャー・RYO。

もはや、身に付けているのは、サッカーソックスとサッカーシューズだけの

素っ裸である。

隙をついて魔手から逃れたと思ったのも束の間、

RYOは自ら次の屈辱を選ぶ羽目に陥ってしまった。

しかも、落ち着いて考えるいとまも与えられない。

RYOのチンポに巻き付いた蛇は、休む間もなくRYOのチンポをしごき続けている。

進むも地獄、退くも地獄、そして留まるもまた地獄であった。

“そうだ!”

RYOの心に一条の光が射した。

“エレベータに乗って逃げれば、間違いなく女子大生のさらし者だ。

 そうなれば、正義に対する信頼を失墜させる事になる。

 だが、元の場所に戻ればどうだろう。

 確実に、連中にいいように辱められる事になるとは限らない。

 連中をみんな、倒してしまえば良いのだ”

それは、後ろ手錠の状態を考えに入れるなら、

いささか無謀な賭けと言わざるを得ないだろう。

だが、今もチンポをしごかれ続けているRYOに

冷静な判断を求めるのは無理な事だったのかも知れない。

“勝負は最初の一瞬で決まる。

 俺が飛び出せば、連中は一瞬身構えるはずだ。

 その一瞬をついて、キックで慎也を倒す”

RYOは目にも止まらぬ早さでドアを開け、慎也のいたステージに向かってダッシュした。

勝負は最初の一瞬で決まった。

慎也はドアの前にロープを張っていたのだ。

ロープに足を取られ、無様にもうつ伏せに倒れるRYO。

しかも後ろ手錠をされ、受け身のできないRYOはチンポをしたたか打ってしまった。

客席から嘲笑が起きる。

何とか体を起こそうとするRYOだが、

すぐに、戦闘員がRYOの両手両足を押さえつけた。

「くっ、くっそー」

RYOは怒りの視線をステージの慎也に向けた。

だが、慎也はRYOの視線を受け流し、

「正解は1番でした。

 それでは当選の皆様は分配金をお受け取り下さい」と

いたって事務的である。

「慎也!。これから俺をどうするつもりだ!」

戦闘員に押さえつけられながらも、RYOは必死の抵抗を見せる。

「ははは、そう急ぐ事もあるまい。

 今日のディナーショーはこれで終わりだ。

 次回まで、君には休憩してもらう」

慎也の言葉が終わると、RYOは肩にチクッとする痛みを感じた。

「うっ」

睡眠薬を注射されたのだ。

RYOの意識が急速に遠のいていった。

 

RYOが目を覚ましたのは独房の中であった。

オークション会場で睡眠薬を注射され、そのままの格好で運ばれてきたのであろう。

RYOは依然として素っ裸だ。

変わった点と言えば、両手が自由になった事と

チンポに巻き付いていた蛇がいなくなった事だ。

おそらく、メデューサの魔力が切れたのだろう。

しかし、両手が自由になったとはいえ、今は独房に囚われの身である。

これからまた、慎也たちのいたぶりに耐えねばならない。

そして、最後には奴隷の身に落とされるのだ。

ユニフォームを奪われたユニレンジャー。

果たして反撃のチャンスがあるのかと思うと、暗澹たる想いになる。

その時、どこからか声が聞こえた。

『何を弱気になっているのだ、ユニレンジャー』

はっとして、周囲を見回すRYO。

だが、周りには厚い壁と鉄の扉、そして鉄格子の入った小さな窓があるだけだ。

しかし、声は続く。

『サッカーで鍛えたユニレンジャーにとって、最大の武器はキックではないのか。

 ユニレンジャーの力はユニフォームに宿るのではない。

 そのサッカーシューズにこそ、ユニレンジャーの力が秘められているのだ。

 目覚めよ、ユニレンジャー。

 今こそ、何十億のサッカー選手のパワーを結集した

 伝説の力を見せるのだ』

声が消えた後も、RYOは暫く唖然としていた。

だが、次第にRYOの心に自信が甦る。

“そうだ。俺の武器はキックなんだ。

 さっきも両手を縛られながら、キックだけで多くの戦闘員を倒したのだ。

 俺のキックで、慎也の野郎を倒してやるぜ”

RYOは立ち上がると、扉に向かってキックを放った。

バキッ!。

鋼鉄の扉が吹き飛んだ。

音を聞きつけて集まってくる戦闘員。

しかし、彼らがユニレンジャーの敵でない事は言うまでもない。

一発のキックで、数人の戦闘員が弾き飛ばされた。

その頃、慎也とメデューサは今日の客たちと歓談していた。

「ただ今、落札品を包装いたしております。

 間もなく届くと思いますので・・」と慎也。

が、その時だ。

部屋のドアが蹴り破られた。

「落札品をお届けに来てやったぜ」

そこに現れたのは、真紅のユニフォームとサッカーパンツ・スパッツに身を包んだ

ユニレンジャー・RYOの雄姿であった。

背後には、幾人もの戦闘員が倒れている。

「メ、メデューサ」

狼狽する慎也。

「お、お任せ下さい」

自信満々のRYOに、さすがの魔女も驚きを隠せない。

だが、メデューサはすぐに攻撃を始めた。

蛇の姿をしたメデューサの髪が、槍に姿を変えて、

RYOに向かって襲いかかる。

「けっ。ゲゲゲの鬼太郎じゃあるまいし。

 そんな事してたら、そのうちハゲになっちまうぜ」

RYOのキックが空を切る。

その衝撃波で、槍は全て床に叩き落とされた。

「さぁ、今度はこっちの番だ」

RYOは両手で空中に円を描いた。

すると、RYOの前に炎に燃えるサッカーボールが出現する。

「ユニシュート!」

声とともに、RYOはそのボールをキックした。

炎のサッカーボールがメデューサの身体を直撃する。

「ギャ」

悲鳴すら満足にあげられないまま、崩れ落ちるメデューサ。

もはや、慎也に抵抗の術はない。

「わ、私たちは、ただ招待されて来ただけで・・。

 まさか、こんな事になろうとは・・」

口々に弁解するオークションの客たち。

「ふん。そんな言い訳は裁判所でするんだな。

 特に、インテリ気取りの変態姉さんと、年甲斐もない強欲ババア!。

 お前らには散々な目に遭ったからな。

 せいぜい、お前らがどんな裁きを受けるのか、楽しみにさせてもらうぜ」

慎也を始め、オークションの参加者全員が逮捕される。

翌日、世界中のマスコミはこぞってユニレンジャーの活躍を報じた。

 

RYOは目を覚ました。

オークション会場だ。

「ふふふ、RYO君。なかなか楽しい夢を見ていたようだね。

 このドリームモニターで、全て見せてもらったよ」

ステージの上から、慎也の声が聞こえる。

RYOは我に返り、素っ裸で戦闘員に押さえつけられている自分に気づいた。

「私は変態だそうね」

「で、私は強欲ババアかい」

客席からも怒りの声が聞こえる。

「そ・・、それじゃ、今のは・・」

絶句するRYO。

「そう、君の夢だったんだよ。

 君は我々に捕まって、素っ裸にされた惨めなヒーローに過ぎない。

 早く現実に目覚めるんだね。

 『目覚めよ、ユニレンジャー』さ」

“クッソー、あの時の声の主は・・”

RYOは唇を噛み締めた。

 

「慎也様。次回オークションの参加名簿をお持ちしました。

 今回の参加者は、次回も全員が申し込みを済ませております」

翌日、慎也の司令室に、副官の長野博が訪れた。

「そうか、上出来だな。

もしも、RYOが自分たちとは何の関係もない、ただのヒーローだったら、

 何人かは欠席しただろう。

 連中も本業では忙しいだろうからな。

 或いは、ヒーローに味方するバカが出たかも知れない。

 だが、ドリームモニターで、自分たちとRYOが無関係ではなく、

 むしろ、自分の立場を脅かす敵である事を見せてやったんだ。

 地位や名誉のある奴ほど、我が身を可愛がるものだ。

 RYOの行く末を見る為には、何をさしおいても出席するさ。

 そして、RYOを倒す為に金を出してくれるはずだよ」

「しかし、慎也様。

 もしも、夢の中で、RYOが我々を捕らえようとせず、

 基地から脱出する事だけを考えたとしたら、

 出席者の反感をあおる効果はなかった訳ですよね」

「ははは。君まで騙されていたのか。

 あのドリームモニターという機械はね、夢をモニターするだけの機械じゃない。

 あらかじめ、こっちが設定した夢を相手に見させる事もできる機械なんだよ。

 つまり、RYOは夢の中で活躍したのではなく、

 私がそういう夢を見せてやったんだ」

得意満面の慎也。

だが、司令室のドアの向こうで、彼らの会話を立ち聞きする少年がいた事には

気づいていなかった。