ユニレンジャー・RYO(12)

 

 サッカー・アジア選手権決勝リーグ最終戦、日本は宿敵韓国を国立競技場に迎え撃った。

 ここまで日本は5戦全勝、韓国は4勝1引き分け。

 勝った方が優勝である。

 日本は引き分けでも優勝だが、天才センターハーフ・RYOを擁した日本の勝利を

 疑う者は、一人としていないと言って過言ではない。

 RYO−彼こそ、21世紀における最初のヒーローであった。

 2001年の天皇杯で、サッカー界では無名の大学を優勝に導き、

 卒業後もヨーロッパやJリーグからの誘いを断って、実業団の弱小チームに入団。

 廃部寸前のチームをJリーグの最強チームへと導いた。

 その芸術的なドリブルと豪快なシュートは、見る者ばかりではなく、

 相手選手をも魅了し、多くの少年ファンが彼に憧れてサッカーを始めた。

 試合開始のホイッスルが鳴る。

 試合は下馬評を覆して韓国が善戦した。

 RYOを徹底的にマークし、守りに守ってカウンター攻撃を仕掛けてくる。

 前半は0−0で終わり、後半に入った。

 RYOの表情がいつもより険しい。

 動きもいつもの精彩を欠いている。

 RYOには人には言えない弱点があった。

 それは、RYOが華々しく天皇杯でデビューを飾る少し前、

 「ヒーローSMクラブ」なる集団にコッシオという利尿剤を飲まされていた事だ。

 それが、何年も経った今となっても、時々効いてくる。

 しかも、排泄するまで激しい腹痛を伴い、そのせいか自分が一時的に

 記憶を失う事すらあった。

 “くっそー。よりによって、こんな大事な時に!”

 RYOはコッシオの腹痛に耐え、後半のピッチに立った。

 だが、すぐにRYOは自分の異常に気づいた。

 下腹部がやけに涼しい。

 気がつくと、サッカーパンツの下は何も穿いていない。

 “前半はたしかにスパッツを穿いていたはずなのに・・。

  無意識のうちに脱いでしまったのだろうか?”

 しかし、考えるいとまもなく、後半開始のホイッスルが鳴った。

 いつものように、RYOを軸にして攻め上がろうとする日本代表。

 だが、腹痛に加えノーパンになったRYOは、前半以上に動きが鈍い。

 しかも、次第にRYOのチンポが勃起を始めた。

 “な、何でこんな時に!”

 隆起の度合いを増すRYOのチンポは、次第にサッカーパンツをテント状に

 押し上げていく。

 もはや、RYOの勃起はピッチ上の選手ばかりか、観客席からも分かるほどになった。

 もちろん、この試合は全国中継である。

 テント状になったRYOのサッカーパンツは、日本全国に映し出される。

 “こんな姿を見られたくない”

 RYOの動きはますます鈍くなった。

 やがて、韓国の反撃が始まった。

 RYOからボールを奪い、カウンター攻撃に出た韓国が先取点を取ったのだ。

 後半も残りわずか。

 試合はそのまま終わるかに思われた。

 だが、日本は最後の反撃に出る。

 韓国の攻撃を防いだ日本は、逆にカウンター攻撃を仕掛けた。

 RYOにパスが通る。

 必死に戻る韓国ディフェンダー。

 “チキショー、このまま恥をかくだけで終われるかよ”

 力を尿意を堪える事に使い、本来のプレイが出来なかったRYOが、

 最後の最後で甦った。

 何かが吹っ切れたように、いつもの華麗なドリブルが韓国選手を翻弄する。

 RYOはサッカーパンツが濡れていくのも気にせず、韓国ゴールに襲いかかる。

 韓国選手の後からのスライディング。

 RYOは足を取られ、ピッチに転がった。

 だが、こぼれ玉は日本選手が取った。

 アドバンテージを取って、試合は続行される。

 RYOもすぐに立ち上がった。

 しかし・・、ブリッ。

 大歓声の中、RYOは異様な音を耳にした。

 RYOの尻から何かが流れ出る。

 コッシオの効果は、利尿だけではなかったのだ。

 それでもRYOは、相手ゴールに向かって走った。

 走る先に、味方選手からのパスが届く。

 渾身の力を込め、RYOのボレーシュートが炸裂する。

 ボールは相手キーパーの手をかすめ、ゴールへ。

 だが、ボールはゴールポストに当たると、ゴールラインを越えていった。

 試合終了のホイッスルが鳴り響く。

 喚起に沸き立つ韓国応援団。

 対照的に、日本の応援団は唖然呆然の状態だ。

 がっくりうなだれるRYOのサッカーパンツの前は濡れ、

 黄色い液体が垂れている。

 後は茶色く汚れ、サッカーソックスの辺りまで垂れていた。

 異臭を漂わせたRYOに近寄るチームメートの姿はない。

 “生き恥だ”

 涙が溢れ出る。

 再び腹痛がRYOを襲った。

 だが、もはやそれに耐える気力もないRYO。

 サッカーパンツはさらに濡れ、そして汚れていった。

 

「ぎゃはははは」

戦闘員の笑い声で、RYOは目を覚ました。

そばには、ドリームモニターが置かれている。

すべては戦闘員がセットした夢だったのだ。

「おい、今度はどんな夢を見させてやる?」

「そうだな、ふと気がつけば、新宿のど真ん中に女装して立ってたと

 いうのはどうだ?」

「う〜ん。何かイマイチだよな」

「いやそれよりも・・」

戦闘員は楽しそうに案を練る。

「まぁ、良いじゃないか。

 朝まで、こいつにいろんな夢を見てもらうとしようや」

「ははは。明日はオークションだ。

 ゆっくり寝るんだぞ、ユニレンジャー」

RYOに対するドリームリンチは、まだまだ続けられそうだ。