ユニレンジャー・RYO(10)
「ふぅ、助かった」
吉岡毅志にガードされて司令室に戻った慎也は、ほっと一息ついた。
「どうやら、シオン君が悪さをしたみたいだね」
「そのようですが、いかがいたしましょう」
「まぁ、今回は目をつぶろう。
ドリームモニターは、こっちが騙して作らせたんだからな」
「しかし、慎也様。
シオンが作っているステルスミサイルの件で、
少し疑問な点があります」
「んっ?。何だ」
「はい。何分にも、30世紀の技術で作っておりますので、
私にもよく分からない点もあるのですが、
どうやら、ミサイルには通常の弾頭ではなく、
細菌兵器が積み込まれた形跡があります」
「なに?!」
「おそらく、他の星から持ち込まれたと思われる細菌で、
地球上では5日程度で死滅しますが、その威力はすさまじく、
3日もあれば、日本列島の全動植物を死滅させる事ができるでしょう」
「なっ、なんだと!!。そんなミサイルが何発あるんだ」
「すでに10発は」
「話が違うな。
よし、シオンを拷問にかける。
彼の狙いを聞き出すんだ」
一方、変身したユニレンジャーは戦闘員に追いつめられていた。
邪悪集団『ヒーローSMクラブ』の戦闘員とはいえ、
本来は社会の底辺に生きる善良な人々である。
ユニレンジャーは攻撃を躊躇せざるを得ない。
しかし、このままではやられてしまうのも事実である。
「よし。ユニウェーブ!」
ユニレンジャーの回し蹴りが空を切る。
すると、激しい衝撃波が戦闘員に見舞われた。
吹き飛ばされ、床を転げ回る戦闘員たち。
だが、さすがにメデューサと虎仮面は、その衝撃波にも踏みとどまった。
「ふふふ。さすがはユニレンジャー。
次は私が相手だ」
メデューサの蛇の姿をした髪が、一斉に伸びてユニレンジャーに襲いかかる。
「ユニカッター」
しかし、ユニレンジャーの手から発せられた光線(ミラーナイフのような物)は
次々に蛇の首を切り落とした。
首を切り落とされた蛇の髪は、再び縮んでメデューサの頭部に戻る。
蛇から流れ出る血で、メデューサの顔が赤く染まった。
「メデューサ。そんなにショートヘアが好きなら、いっそ丸坊主にしてやろうか」
「それで勝ったつもりか、ユニレンジャー。
戦いというのはねぇ、坊や。そんなに甘くはないのだよ」
メデューサは顔を流れる血を舐めながら、何やら呪文を唱えた。
「うぐっ」
突如、ユニレンジャーは首を締め付けられた。
さっき、首輪に付けられた鎖は切り取ったものの、首輪はそのままだったが、
その首はメデューサの蛇が姿を変えたものだったのだ。
そして今、再び蛇の姿に戻り、ユニレンジャーの首を締め付けているのである。
「くそっ」
ユニレンジャーは、首に巻き付いた蛇を引きちぎろうとするが、手が動かない。
見ると、先ほどまで填められていた手錠も、蛇に姿を変えていたのだ。
さらに、さっきユニレンジャーが切り落とし、床に転がった蛇の首から
胴体部分が生えてきたかと思うと、ジャンプしてユニレンジャーの足に巻き付いた。
足の自由も奪われるユニレンジャー。
首と両手両足に巻き付いた蛇は、ユニレンジャーの身体を
強大な力で壁に叩きつける。
ユニレンジャーは、蛇に首と両手両足を固定された格好で、
壁に大の字の磔状態になった。
♪六甲おろしに颯爽と〜、蒼天駆ける日輪の〜
突然、場違いなメロディが流れた。
「あっ、ゴメン。俺の携帯や。
はい、田淵です。
えっ、あぁ、弱っちい奴ですわ。
これからボコボコにするとこです。
えぇっ、そっちに。
これから、ええとこやいうのに。
はいはい、分かりましたよっ。
5分したら行きます」
電話に出た虎仮面が、メデューサを見た。
「阪急ファンの腰巾着からや。
こっちが片づいたら、来てくれ言うてんねん」
「そうか、何かあったのかも知れないな。
こいつは明日の大事な商品だ。
このまま放っておいても良いだろう」
「お前も律儀な奴やなぁ。
せっかく磔にしたんやろ。
5分だけ時間をもろたんやし、チョットだけいたぶったろうや」
虎仮面はそう言うなり、身動きできないユニレンジャーの股間を踏みつけた。
「うぅっ」
チャンスを待って、戦闘員のいたぶりにも耐えたRYOである。
だが、ユニレンジャーに変身したのも束の間、メデューサの圧倒的な強さの前に
磔の身になってしまった。
目から悔し涙が流れる。
「おほっ。こいつ、泣いとるで。
はいはい、坊や。泣いたらあかんよ。
今、撫で撫でしたげるさかいなぁ」
虎仮面は股間を踏みつけていた足を降ろすと、
今度はRYOのチンポを揉み始めた。
「うぅっ」
屈辱に耐えるRYO。
その時、ユニレンジャーのユニフォームがすっと消えていった。
ユニウェーブ・ユニカッターという超能力の使用と、
メデューサから受けたダメージの為にレベルダウンしたのだ。
「おいおい。この兄ちゃん、今度はストリップを始めたで。
ほらほら、じらさんと、さっさと脱がんかい」
今度はユニレンジャーのサッカーパンツに手をかけ、力ずくで脱がそうとする虎仮面。
「もういいだろう、虎仮面。
それより、早く吉岡副官のところに行こう」
「チェッ。まぁえぇ、チョット待っとれよ」
虎仮面はメデューサに促され、ようやくユニレンジャーから離れたが、
講堂の出口で振り返ると、ユニレンジャーを指さして、
「カーネルサンダー」(*1)と叫んだ。
虎仮面の指から放たれた電撃波がユニレンジャーを襲う。
「ぎゃーーー」
ユニレンジャーの悲鳴が講堂に響き渡る。
「おっ、おい。RYOは大事な・・」
メデューサが慌てて虎仮面を振り返る。
「大事な商品なんやろ、分かっとるわい。
チョット気絶してもろただけや」
その頃、シオンは吉岡毅志によって捕らえられ、拷問室に連れ込まれていた。
全裸にされ、天井から両手を吊り下げられている。
足がようやく床に届く状態だ。
「シオン君、正直に話してもらえないかなぁ。
君が『ヒーローSMクラブ』に来た時の話では、
私は君に、公には残っていない、この時代の社会の裏側の歴史資料を
提供する見返りに、君はレーダーに映らないステルスミサイルを
開発してくれる約束だったよね」
慎也が尋問を始める。
「あの時も話したが、私は人殺しなどという野蛮な事は考えていない。
弾頭を付けない、不発弾としてどこかの都市に打ち込む事で、
脅しの材料に使うだけのつもりだった。
それが君はどうだ。
聞けば、君はミサイルに細菌兵器を搭載したそうじゃないか。
いったい、どういうつもりなのかね」
だが、シオンは口を開かない。
「困ったねぇ。
もうすぐ、怖いおじさん達が来るんだよ。
それまでに話してもらえないかなぁ」
その時、ドアの向こうから「六甲おろし」の歌声が聞こえてきた。
(*1)カーネルサンダー
ご存じ、ケンタッキーフライドチキン(KFC)の創始者。
1985年、阪神が優勝した時、酔った阪神ファンが
KFCの店の前に置いてあるカーネルサンダーの人形を
川に投げ込んだ。以後、阪神が優勝していない事から、
カーネルサンダーの祟りと言われている。